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第七話

「なあっ、何してんだてめぇ!」

「何してんだ、はこっちのセリフだボケ!?」


 狼狽しているもう一人の男の怒声に、思い切り怒鳴り返してやる。それだけで男は怯み、及び腰になった。


「……松崎、さん……?」


 そんなつぶやきが、耳に届いた。白崎さんだ。

 彼女の言葉を聞いた男は、虚を突かれたようにこちらを見て、次第に顔を青ざめさせていった。


「ま、松崎って……まさか、あの『百合園の鬼神』か!?」

「……本当に不名誉だけど、そうよ」

「――ッ、す、すいませんっしたあーっ!?」


 私の正体を知るや否や、昏倒している方の男を見捨てて逃げていく。薄情な奴だなあ、と考えながら、私は白沢さんに手を差し出した。


「ほれ、立てるか?」

「あ……う、うん……」

「……大丈夫そうだな。怪我はなさそうだ」

「……あ、あの」

「?」

「あ、ありがとう、松崎さん」


 あの時の「おねえちゃん」の様に、彼女に接する。スカートに着いた砂を払うのを確認して、手を引いて路地裏から出ていった。

 その後荷物を放り投げてきていた事を思い出し、慌てて取りに行ったあと、近場のベンチに二人で座って話をすることにした。


「……しっかし、なんであんな奴らに?」

「じ、実は、ちょっと肩がぶつかっちゃって……」

「……それで切れた。と?」

「…………うん」

「はあぁぁ……随分なバカもいたもんだね……」


 白沢さんがあんな目にあっていた理由を聞いて、思わず脱力してしまった。

 そんな私を見て、白沢さんがくすりと笑う。どうやらそこまでトラウマになっているわけではなさそうで一安心だ。


「……男の人に怒った松崎さん、ヒーローみたいでかっこよかったよ」


 不意に、そんな事を言われた。

 どう反応すればいいのか分からず、結局出てきたのは「……ありがと」というたった一言だった。

 ヒーローだなんていわれるのは初めての事で、何となく恥ずかしい。顔が熱くなっている気がする。

 ……が、次の白沢さんの一言で、その熱は一気に冷えていった。


「……私も小っちゃい頃に、さっきの松崎さんみたいなことしてたっけな……「おねえちゃん」なんて呼ばれたりして」


 思考が止まった。何も考えられなくなった。

 それは、私がずっとあこがれていた人で。

 私が恋焦がれている人で。

 だけど、ここにいるはずがない人で。

 何が何だか分からなくなった。

 まさか、白沢さんが「おねえちゃん」なの?


「……どうしたの?」

「ッ、」


 不意に顔を覗き込まれる。その心配そうな表情は、まさしくあの時の「おねえちゃん」で。


「…………おねえちゃん?」

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