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第三話

「よーし、皆いるなー」


 次の日の早朝。ホームルームが始まり担任の出欠確認が終わる。普段ならここで解散、一時限目の準備となるのだが……今日は何時もと毛色が違う。


「さて、今日は以前から言っていたように、転校生がクラスに来るんだわ」


 そう、転校生だ。

 この学院はクラス替えがないため、二年の中ごろにまでなってくるとメンバーに新鮮味が無くなる。だから、そこに新しいクラスメイトが入ってくるというのは結構興味をそそられる事だ。

 もちろんそんな事情がなくとも『転校生』というのはワクワクするものだが、この学院ではそれ以上だ。


「「「おおぉーーーーーーっ!!!!」」」


 ……朝から喧しい。興奮するのは分かるし、私も内心結構ワクワクしているから人の事は言えないが、しかしうるさすぎじゃないだろうか。


「ハイ静かに! 隣のクラスに迷惑だよー!」


 そんな先生の苦労の甲斐あって、なんとか静まった。……五分以上かかっているが。


「じゃー、早速来てもらいましょー」

「……なあ、どんな子かな」

「可愛いといいなあ」

「お前、女子って決まってるわけじゃねえぞ?」


 昨日私が幾度も怒鳴りつけた二人組が、欲望だだ洩れの会話を垂れ流している。相変わらずだ。

 ――と、担任が教室のドアを開いた。全員の視線が其方へ向かう。


「……おお……可愛い……」


 そんなつぶやきが聞こえた直後、教室が歓喜の渦に呑まれた。

 何せ、入ってきたのはとんでもない美人さんだったから、当然だろう。

 肩口で切りそろえられた黒髪は小川のせせらぎの様にさらさらとなびき、濃褐色の瞳にはまるで満天の星空の様な光を纏っている。

 目鼻立ちもアイドルに負けないぐらい整っており、新雪のような白い頬にほんのり色づく桃色が可愛らしい。

 身長はそこそこ高めで、すらっとした体系がお淑やかな雰囲気を作り出している。

 そんな超絶美少女がクラスメイトになるとあれば、盛り上がらない訳がないのだ。

 担任に案内されて、黒板の前に立つ彼女は、クラス内を見渡して微笑み、自己紹介を始めた。

 ……そしてその時、私は強烈な既視感に襲われた。


「初めまして、南楼高校から転校してきた『白沢愛華』と言います。これからよろしくお願いします」

「――――ッッ!?」


 10年前のあの日。私が最後にいじめを受けたあの日。

 クラスメイトの男子達から助けてくれた後、しきりに私を気遣ってくれた、あの「おねえちゃん」。

 最後に去っていくときの満足そうな笑みと声が、彼女と重なって見えた。

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