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第二話

「オイコラそこの男子ッ! 何サボってんだ!」


 私立百合園学院の二年一組教室。そこに私の怒声が教室内に響く。それを聞いたクラスメイトの男子は、「ひゃうっ!?」と情けない声を上げて、慌てて掃除を再開した。

 そんなやる気の欠片もない彼らを見て、私は一つため息をつくと、手に持っていた机をゆっくりと床におろした。

 ――「おねえちゃん」に助けられてから、私は彼女に追いつけるぐらい強くなりたいと思い続けて来た。そして、その思いを現実にするために、色々なものに手を出してきた。

 剣道、柔道、空手、ボクシング……できることならなんでもやった。私はそこまで才能がある方ではなかったのだが、常に本気で取り組んできたことが幸いして、どれも上位の成績を収められるぐらいにまでは習熟した。

 ……ただ、その弊害というのももちろんある訳で。


「(……いやー怖い怖い、やっぱ『百合園の鬼神』の名は伊達じゃねーな……)」

「(本当だぜ全く……松崎のやつ、黙ってりゃスタイル抜群の美人なのによぉ……)」

「コラそこ! 駄弁ってる暇があったら働け!」

「「はひぃーっ!?」」


 ……口調が完全に不良のそれとなってしまった。いや、私自身理解はしている。男子に舐められないように、とか考えてわざとこの口調にしていたのが原因だという事は。

 ただ、最初は演技だったはずなのにだんだんとそれが当たり前になり、今ではその身体能力の高さも相まって、完全に“そういう人”として見られているのだ。

 別に以前の様にいじめを受けない分には構わないのだが、男子の「触れてはいけない」みたいな扱いは少し寂しかったりする。

 その分女子生徒からは「姐御」なんて呼ばれて慕われているのだが……正直、きゃぴきゃぴうるさいだけなのであまり嬉しくない。

 何だか“友人”としてではなく“恋人”として付き合おうとしてくる輩も相当数いたりするから、手におえないのだ。

 それに――


「……はあ」

「…………お? 鬼神の黄昏タイムだぞ」

「マジ? 今日ちょっと早くないか?」

「……オイゴラ、何度言ったら分かんだテメーラ」

「「はいすいませんでした」」


 二度叱られてなおも駄弁りだす男子を睨みつけ、近場の机を運ぶ。

 ……未だ私の心をつかんで離さない想い人の姿を思い出しながら。

 そう、私には既に想い人がいる。だから誰かに言い寄られようと、絶対になびかない。むしろ鬱陶しい。

 想い人がいるという話は誰にもしていない。きっと話したところで笑われるだけだろうから。

 ――たった一度いじめから救ってくれただけの人が好きだなんて、夢を見るのも大概にしろ、って言われるだろうから。

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