9話 『災厄』
初評価いただきました!ありがとうございます!
※グロ表現あります。苦手な方はお避け下さい。
「ハァ......ハァ......」
「大丈夫ですか?」
やはり人一人分、いくら女子の中でも一番痩せ型に見える聖でも背負って走るというのは厳しいものがある。
しかし、だからと言って彼女を見捨てるわけにもいかない。
「重いんでしたら下ろしてくれてもいいんですよ?」
「いや、そんなことはないから安心して。......もう少しでつくかな?」
今まで走った分を考えるともうすぐあの部屋に着けるはずだ。
一つ深呼吸して聖に声をかける。
「今から飛ばすから、ちゃんと捕まっててね。」
「え?はい、わかりましたぁぁぁぁぁぁぁぁ」
唐突にスピードが上がり悲鳴が上がっているのを後ろで聞きながら、僕はラストスパートをかける。
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<side 牧村>
榊原君たちを見送った後。
体がミシミシと音を立てている聞きながら一つ、溜息をつく。
「さすがにキツイかな......」
すぐそこまで来ている死の音のような唸り声は止むどころか増えるばかりで、体とそこから延びる蔓が軋む音まで増えてくる。
『拘束』。
僕の特殊技能なのだが、どうやらこいつは一癖も二癖もあるものだったようだ。
自分が代償にしたものの大きさで全く効果が違う。
例えば魔力だけだと精々人間一人を拘束するのが手一杯なようで、これが魔力の最大値だとクラス1個は余裕で拘束できたりする。......と何となく察した。
理屈はわからないが。
とりあえず僕はそれを奴らに喰われそうになった時、命そのものを掛けた。
我ながら思い切った決断だったと思う。
「そんなキャラではなかったはずなんだがなぁ。」
しかし、後悔はない。
あとはもう誰一人死人が出ないことを願うばかりだ。
ふと、今さっきまで聞こえていた唸り声が聞こえないことに気付いた。
......行ったか?
僕は安堵する。
「そんな執着しないのか?」
獣だったら狩り終わるまでは執着すると思うんだが......。
そして僕は足が濡れているのに気付いた。
......血だ。
「......ということはっ!」
これが僕の最期の言葉となった。
最期に見えたのはギッシリ歯の並んだバケモノの口の中だった。
............榊原。
僕は言い間違えたかもしれない。
これは、無理だ。
............グシャッ。
バリバリバリバリバリバリ......!
バケモノは牧村を食い終わるとのそりのそりと歩み始める。
その様は目の無い巨大な黒い獣のような―――『災厄』が迫っていた。
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