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8話 犠牲



何かに襲われ仲間が喰われた。


しかも、その頭の無い屍体が何かと共に飢えた獣のように追いかけてくる。


それは僕たちに致命的なほどの恐怖と狂乱を生み出した。


「うわああああああ......」

「牧村!今行く!」


牧村はクラスでも目立たなく、教室でいつも本を読んでいるような奴だったが、とても懐が深く聞き上手なためにクラスの相談役だった。

僕も何度か世話になった。


そのことか脳裏をよぎり襲われている牧村のほうへ向かおうとする。


「ぐっ、来ちゃだめだ!『拘束』!」


しかし、それは牧村が詠唱と共に放った制止の声に阻まれ急ブレーキをかける。


そして、植物の蔓の壁が何かを押しとどめる。きっと牧村の特殊技能だろう。


「なんでだ!?」

「いいかい、ここからは誰も無駄死にするんじゃない!極力、戦力をのこしてなんとか打開策を見つけるんだ!それには、榊原君、君が要だ!きっと自分では気づいていないだろうが、このクラスの真のボスは君なんだ!君には持ち前の頭のキレの良さトカリスマがある、そして何よりその優しさがある!だから君が指揮を執ってみんなを導いてくれ!ここは暫く僕が押しとどめておく!わかったらいいからみんなのもとに走るんだ!」

「ぐっ......うわああああああ」


僕は胸の中からせりあがってくる何かを堪えながら、走る。


正直、頭のキレだとかカリスマだとかは全然わからない。


が、牧村が稼いだ時間を無駄にできない。


僕は一度ちらりと後ろを窺う。


牧村は......口元に笑みをたたえながらサムズアップをしていた。


その体から図太い植物の蔓を生やしながら。


それを見て始めて、牧村が最初から助かるつもりなどないことを悟った。


「牧村!ありがとう!絶対忘れてやんないからな!」


僕はそう言い残すと無我夢中で走り始めた。


心の中でもう誰も死なせないと誓いながら。






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暫く駆けると一人の女子が走っているのが見えた。


あれは......(ひじり) (めい)か?


「大丈夫か、聖?」


僕は見るからにつらそうな聖に声をかける。


彼女は元々体自体もそんなに強くは無い為、学校を休むことが多々あった。


ただ、頭脳明晰で学校を休む回数が多くとも、学年1位を逃すことはないので、陰では「不死の女神」なんて呼ばれていたりする。


しかも、彼女は大企業のCEOの父親を持つお嬢様で、元アイドルの母親似の美貌も持っている。


つまりは手が出ない高嶺の花として学校中に名が知れていた。


「ええ、まだ大丈夫です。」


見るからにさっきよりも息の上がっている聖。


彼女はアルビノで視力がそこまで良くない、いやむしろ悪い。


彼女がその儚げな美貌に嫉妬した上級生たちにいつもかけている度入りサングラスを盗られ、必死に取り返そうと虚空に向かって手を伸ばしていた。


その時は偶然通りがかった僕たちが取り返したが、その後も何度か同じようなことがあり、最終的には彼女が出歩くときにはクラスの誰かが、というか僕たち7人がそばに着くことで事態は収束したものの彼女にとってそのサングラスはかなり大事なものだ。


それが今は左のレンズは割れて罅が入っており、右に至ってはレンズ自体が無かった。


「......前見えるか?」

「......厳しいですね、ですが大丈夫です。」


僕はその返答に若干呆れつつ苦笑する。


例の件もあり僕たちは仲良くなってわかったのだが、聖は極度の負けず嫌いで我が強い。


彼女は所謂ドジっ子で(これも仲良くなってから知ったのだが)、よく転ぶしよく怪我をする。


階段の2段目からたたき落ちた時、思い切り顔を打って鼻血を出していても涙目になりながら、「大丈夫です」と言い切っていたぐらいだ。


「いや、どう見ても大丈夫じゃないだろ。......背中のるか?」

「いいえ、といつもなら言うのですが今はそんなことも言ってられないですね。燐華さんには申し訳ないですけど、お願いしますね。」

「ああ。」


僕はなんで燐華が出てきたかを不思議に思いながらも彼女を負ぶって走り出す。



......遠くから遠吠えが聞こえた気がした。






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