7話 絶望の足音
それぞれが自分の能力を知り、体感時間で1時間ほど休んだ後、僕らは扉の外へ出ることにした。
最後まで怖がっていたり、渋っていた人もいたが何とか説得し、出発したのだった。
「なんか不気味だな。」
誰かが小声で溢す。
扉の先は洞窟になっていて、光源がないため1メートル先の人の顔すら見えない。
そのせいで皆、緊張しきって誰も話そうとせず、洞窟の中には足音だけが響いていた。
......
......空気が重い。
ふと、昌が何かに気付いたように「あっ」と声を上げる。
「どうしたんだ?」
「魔法だよ!」
「は?」
「魔法を使って光をだせばいいんだ!」
ちょっとした無音の時間が広がる。しかし、それは直ぐに歓声へと変わった。
「そうだよな、魔法が使えるんだよな!」
「おい、昌お前今までの人生で一番輝いてんじゃねーの!?」
「おい、それはさすがにないだろ!俺はいつも輝いてるんだよ!」
「こういう時だけ頼りになるわね。」
「だけは余計だ!」
皆どうやらいつもの調子が戻ってきたようだ。
その後、直人と凩が協力し数人の魔力特化のステータスを持っている人たちを選び出し、打ち合わせをする。
「それじゃあいくぞ!『光輝』!」
「「「「「『光輝』」」」」」
急に視界が開ける。
成功だ。
「「「おぉー!!」」」
僕らはひとしきり喜んだあと、役割分担を決め先ほどまでの数倍のスピードで進んでいった。
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10分ほど進んでいくと、自分たちの『光輝』以外の光が見えてくる。
おそらく出口だろう。
......しかし何故か僕は嫌な予感を覚えた。
「あ、やったぞ!出口だ!」
一人の男子が走って出口に向かっていく。
「おい、待てよ!」
僕が制止するが聞こえていないらしくどんどん先へ進んでいってしまう。
僕の胸騒ぎは収まるどころかむしろひどくなっていく。
その間にも触発された数人が彼と同じように出口に向け走って行ってしまう。
近づくにつれ、僕は違和感の正体に気が付いたのだ。
空が赤く染まっているのだ。
それは、まるであの教室で最後に見た光景のようで―――
悪寒が走る。
「止まれェェェ!!!!」
柄にもなく大声で僕は叫ぶ。
―――しかし、遅かった。
僕の声に気付いて止まった彼らに犬のようなフォルムをした何かが飛び掛かる。
その数瞬後、もう彼らの首はそこにはなく、彼らの身体はばしゃりと音を立てて崩れていった。
沈黙が流れる。
「きゃああああああああああ」
「うわああああああああああ」
その沈黙を破ったのは悲鳴にも近い叫び声だった。
「戻れ!戻るんだ!」
そして、僕たちは機転を利かせた昌の号令に従って全速力で走り、来た道を戻っていく。
しかし、奴らのような獣が獲物を逃すわけはなく、一啼き遠吠えを上げるとこちらに向かってくる。
......奴らが駆ける音は僕らにとって絶望の足音だった。
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