5話 再会
「......」
誰かが呼んでいる気がする。
「おーい、斂二くんやーい。起きないと鼻フックするぞぉ~?」
「やめろ!!!」
最悪の起こし方をしようとする悪友の声で目が覚める。
「やっぱり昌か......変な起こし方するんじゃない。」
「へいへいっと......というかお前はこの状況じゃなくて俺の起こし方のほうに驚くのな。」
言われて周りを見渡す。
気づけばどうやらさっきまでいた筈の狭い岩窟ではなく、石造りの広間のようなところにいた。
床には巨大な血で書かれたような魔法陣があり、その上に先ほどまでの僕のように意識を失っている数人のクラスメートたちが寝かされていた。
それだけでもあまりいい雰囲気ではないというのに、打ち壊された神殿兵のような形をした石像がゴロゴロと転がっているので余計に退廃的だ。
「うわ、なんだここ。」
「ようやっと気づいたのか、斂二。」
「ねぼすけさんだね!」
「本当ね、誰かさんが死ぬほど心配していたわよ。」
「そうさ、あの燐華ちゃんはなかなか珍しかったから面白かったけどね。」
「なっ.......そんなことはなひ!」
「うわ、噛んじゃうぐらい動揺してるじゃん。」
「!!!」
羞恥心が限界まで達した燐華がドゴッと重い蹴りを昌の背中へ放つ音が響く。
......どうやら僕の友人たちは異世界でも平常運転なようだ。
暫く経って全員が起きると共に、昌がみんなへと号令をかけ、自らの元へ集める。
「よーし、全員起きたな。......一応先に起きた俺らが歩き回ってみたんだが、見た感じここには足元の魔法陣?みたいなものとそこのでっかい扉しかなかったんだが、どうする?」
「いや、どうするも何もここから出てみるしかないだろう。」
照介が冷たく言い放つと、あちこちからブーイングが上がる。
「じゃあ他にどうするのよ?ずっとここにいるわけにもいかないでしょ。」
しかしそれも怜の援護射撃により沈められ、みんなが押し黙ってしまう。
重い空気の中、意外な人物が口を開く。
「もしかしたらさ、ゲームみたいになってるかもよ。」
それはいつもクラスの端っこでオタ話に話を咲かせている通称・オタク三銃士の一人、凩だった。
「どういうことだ?」
昌が不思議そうに聞く。
「いやね、僕がよく見るライトノベルとかではね、自分のステータスとかをみるとチート級のスキルとかアビリティがあってそれで無双する、って展開が多いからもしかしたらこれもそうなのかなって。」
その言葉を聞いた皆が感心したように言う。どうやらゲームとかは皆がやっているが、そんなところには目がいかなかったようだ。
自然と皆のテンションが上がる。
「それで!?どうすればそのステータス?が見れるんだ?」
クラスメートの一人が興奮したように言って、皆の視線が彼のほうへ集まる。
「いや、えっとね。今いろいろ唱えたり念じてみたりしてるんだけどなかなか見つからなくて......」
押されたように小声で彼が言うと、三銃士のもう一人、陰山がふと気が付いたように、「鑑定だ!」と言い放つ。
「......ああ、そうか!皆、鑑定って唱えてみてくれ!できれば他の人のほうへ向かってその人の内面を見る感じで!」
凩も何かつかめたのか、皆に指示を出す。
「「「「「鑑定(っ!)」」」」」
そして指示通り(一人勢いがいいやつがいたが)唱えてみる。
.......
...........何も起きないな?
それは皆も同じであるようだった。
が、しかし直人だけは不思議そうというよりかは怪訝そうな顔をしていたので声をかけてみる。
「どうしたんだ、直人。何か見えたのか?」
「いやな、なんかよくわからないんだけど、ノイズみたいなのが視界の中に見えているんだけど.......これがそうなのか?」
「ん?直人はどこを鑑定したんだ?」
「いや、この床に向かってやってみただけなんだけどね。」
.......どうやら直人だけは『鑑定』が使えるようだった。
次話、説明回にする予定です。
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