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想いは力に。されど暗闇

 



「マクシミリアン王! こちらへ!」

「っ! すまないっ」


 小高い段差の上から伸ばされる少年の手を取り、足元を見下ろす。

 視線の先では、聞き取れない呻き声を上げ助けを求めるかのように手を伸ばす化け物の群れ。

 冷や汗を流しながら、勇成国の王太子であるブリジットとスペルディア王国の王マクシミリアンはほっと一つ息を吐いた。

 今いる場所は、薄暗い地下水路。ゆく先々で現れる化け物の群れから逃げ回るうちに、いつの間にか二人は避難場所はおろか、人がいるであろう場所から遠く離れた場所へ追い込まれていた。


 幸いにして目立った傷は無いが、ここまで常に走り続けていて二人は立ち上がるのも億劫な疲労に尻を着いて一息つく。

 偶々化け物には登れない高所を見つけられたから良いが、ここから何処へ逃げれば良いのやら。

 二人は珠の様な汗を拭いながら、邪魔な服を脱いで極力身体を軽くしつつどうしようかと目を合わせる。


「はぁ……これからどうしましょうかマクシミリアン王」

「そうだな……流石にこの場所の構造までは深く理解してないが、確かこの先に地上への出口があった筈だ」

「ではそちらへ向かいましょう。前衛はお任せください」

「すまない、苦労を掛ける」

「いえ、これでも鍛えてますから」


 ニコっと少女にしか見えない顔で少年の様に快活に微笑むブリジットは、150㎝も無い体躯に合わせて作られた荘厳な盾を誇らしく掲げる。

 ここまで逃げ続ける事が出来たのも、ブリジットが迫る化け物をこの盾で相手してくれたのが大きい。

 日頃から勇者アレックスとの鍛錬に励むブリジットは、愚鈍な動きの化け物相手なら遅れは取らない。


 対してマクシミリアン王は生まれてこの方、体裁を整える以上に剣を持つことも無く、過労死必須のデスクワークによって体力の衰えが著しく走り回るだけで精一杯。しかしこれが普通。30も中頃のデスクワークがメインのマクシミリアンにとって、若さとは眩しすぎる。


 視界の悪い地下水路を、ブリジットの先導で慎重に進み続ける。


「……つかぬことを伺いますが、あの化け物達、何だか違和感を感じませんか?」

「あぁ、それは俺も思った。化け物に意思は感じ無いが、その動きには作意めいたものを感じるな」

「はい、何だか誘われているというか、嫌な予感がします」


 振り返って、嫌な予感に二人は険しい表情を浮かべる。

 ここに来るまでは必死で考える余裕が無かったが、冷静になれば腑に落ちない所が多々あった。

 そもそも、最初に二人が動き出したのは城の上に位置する舞踏会会場だ。それがどうして真逆に位置する地下水路に逃げ込む羽目になったのか。


 化け物に意思の類は見当たらない。しかし、その群れの動きには違和感を覚える。

 例えば、二つに分かれる道があれば、片方の道からだけ群れが詰め寄って来た。他にも、常に後ろから追いかけられ、気付けばここに追い込まれていた。


 意思の無い化け物にしては、そのタイミングが絶妙に覚える。一体二体では無く、相手しきる事が出来ない群れなのも違和感だ。


「昔、キツネ狩りに行った時を思い出す」

「キツネ狩りですか? 僕はしたことが無いですね」

「年寄りの趣味だからな……っと、すまない。君にする話じゃなかったな」


 ブリジットにある人と違う部分、金色の毛並みの狐耳とモフモフの狐尾。それが示す通り、ブリジットのキツネの特徴を持つ亜人だ。

 貴族の娯楽とは言え、その狐人に出す話題では無かったと神妙な顔で謝るが、ブリジットは苦笑して大丈夫と小さく尻尾を揺らす。


「大丈夫ですよ、たしかに狐人はキツネの特徴を持っていますが、動物のキツネと亜人種族としての狐人は全くの別ですから。ゴブリンと人位違いますよ……それより、どうしてキツネ狩りを?」

「すまない。キツネ狩りは、猟犬を放って獲物を追い込むんだ。逃げ場の無い所に追い込んで罠や自分の手で狩るんだが……」

「この状況がそれに似てると……ん? 何か聞こえませんか」

「声? 何も……いや、確かに声が聞こえる。生存者か?」

「行きましょう!」


 話途中で二人は化け物の呻き声とは違う、確かな生者の声と戦闘音を聞き取るとその音の方へ駆け出す。

 こんな場所に居るという事は、自分達と同じように追い込まれた人間なのだろう。見捨てる。なんて言葉は欠片も無いとブリジットは駆けだし、その後をマクシミリアンも追いかける。

 走り続ければ、直ぐにその音の主へとたどり着いた。


 金色の豪奢な縦巻きツインテールをたなびかせる、軍服を纏った少女が化け物の群れを前にしている光景を目に捉える。

 慌てて助け出そうと一歩踏み出すが、その必要は無いと即座に理解する程にその戦う背中は逞しい。


「鬱陶しいですわ! レッドベリル!」


 【宝石の力を引き出す魔法】を使い、右手の人差し指にはめ込まれたレッドベリルの指輪から、燃え盛る業火を決して広くない地下水路一杯に吹きすさびかせ、数えるのも億劫な数の化け物の一切を炭化させたクリスティーヌは汗を滲ませながら一つ息を吐くと、こちらへ走ってくるブリジット達に気付いて目を丸くする。


「ブリジット殿下!? 何故こんな所に」

「クリス叔母様でしたか! ご無事で良かったです」

「君は……その軍服はローテリア帝国の」

「マクシミリアン王も!? っこれは失礼しました、このような姿でお恥ずかしい限りですが、ワタクシはローテリア帝国、フィーリウス家が義次女、クリスティーヌ・フィーリウス・ローテリアと申します。何故お二人がここに? 避難されてる筈では?」


 人の気配が無い地下水路。このような場所で出会う筈も無い人物に、慌ててクリスティーヌは帝国式の礼を取り、何故。と当たり前の質問を送る。

 クリスティーヌはここまで度重なる戦闘をこなしてきたのだろう。

 黒を基色とし赤を添色とした詰襟の軍服に綺麗な肌と髪は煤と血で汚れ、魔力を多々使った影響で顔色は悪く、至る所に決して軽傷とは呼べない傷を作っている。


 しかしそれでも、クリスティーヌは自分よりもブリジットとマクシミリアンに目立った傷が無いのを見て安堵の表情を浮かべた。

 ブリジットは傷の心配をしつつ、ここに至るまでの状況を説明する。


「つまり、殿下方はあの化け物の群れにここまで追い込まれたと。それと作為めいたアレらの動きですが、残念ながらワタクシは分かりませんわ。ここには生存者の救出に来ただけですもの」

「生存者……そうか」


 三人の視線が、地面で折り重なる人の死体に集まる。

 家族三人の死体。必死で逃げて来たのだろう、母親は素足で血だらけで、子供を庇う様に覆いかぶさって血を流している。

 父親は少し離れた所で、最後まで抵抗していたのだと分かる必死の形相で食い殺されている。

 子供は……せめて苦しまない様にと母親の手で一息に死んでいた。


 クリスティーヌはその一人一人を、嫌な顔一つせず労う様に見開かれた瞼を落としていく。

 その後ろで、ブリジットはせめて神の御許へ行ける様にと祈った。


 クリスティーヌのその姿は、自らが望んで傷だらけになって他国の人間を助けて来たのだと一目でわかり、マクシミリアンが食い入る様に見つめて重たく口を開く。


「君は……そんなになるまで戦っていたのか。何故、君は帝国の人間だろう」

「人を救うのに国も種族も関係ありませんわ。それに、力があるのにそれを民の為に使わないなど貴族の名折れ、何より美しくありませんもの」

「……凄いな」

「凄くなんてありませんわ、ワタクシはワタクシの矜持に従い、かつ貴族としての責務をこなしてるだけですわ」


 淡々と語りながら立ち上がる彼女は、本当に心から当たり前だと思ってるのだと分かる。だからこそ眩しい。

 生まれながらにして課せられた責務を、高潔と呼べる行いを見返りを求めず傷だらけになっても全うする姿は、決して17歳の少女が出来る事では無い。


 王としての職務を、贖罪として死んだ目でこなすマクシミリアンには余りに眩しすぎる姿だ。


 ——これではどっちが大人で、王に相応しいのか分かった物では無いな。


 思わず目を逸らすマクシミリアンは暗闇の先から、ゆっくりと近づいて来る水を弾く足音に気付いた。


 パシャッ。パシャッと近づいて来る足音は、化け物の様にゆっくりだが、直感的にそれは人の足音だとマクシミリアンは思う。

 クリスティーヌとブリジットはこれからどうするかを話していて気付いていない、気付いてるのはマクシミリアンだけ。

 その足音が近づいて来る方の闇を、マクシミリアンはじっと見つめる。


「っ!! 危ない!!」


 だから反応できた。

 闇の向こうから突出してきた、肉の槍に叫びながら二人を押し飛ばした。

 背中を薄く裂かれながら、致命傷だけは避けたマクシミリアンの突然の暴挙に二人は驚くも、闇の向こうから伸びて来た肉の槍に気付くとすぐさま臨戦態勢を取りマクシミリアンの前に立ち塞がる。


「マクシミリアン王! 僕の後ろに!」

「ブリジット殿下もお気をつけくださいまし! あれは今までの化け物とは明らかに違いますわ!」


 気持ち悪い触手の見た目をした肉の槍に、クリスティーヌの魔法が迫るが流々と避けながら闇の向こうへ帰っていく。

 二の手は来ない。

 その代わり、水を弾きながらの足音を響かせながら近づいて来る。

 化け物だろうか。化け物以外無いだろうという予想とは別に、二人の耳には生者しか発さない音が届く。


「その男を何故庇う」

「人……?」

「っ!? いえ、あれは最早人ではありませんわ」


 生者のみが発する言葉。渋い男の声は暗闇に木霊し、感情を押し殺した声にブリジットは首を傾げる。

 しかしその声の主が、天井から漏れる月明りの下に現れると、クリスティーヌは一歩前に踏み出して一瞬の緩みも許さない警戒態勢を取る。


 確かに人だ。しかしその姿は人とはかけ離れている。

 右半身に寄生でもしているのかと思う様な、脈動する肉の塊はその当人の体躯より大きく歪な形を取っている。

 正常な状態では無いのは明らかだが、それが自らの意思に反して右半身に寄生している訳では無いのだろう、男は蠢く触手の這う右腕をマクシミリアンへ向ける。

 何処か、その肉の塊は自分達を今まで追い詰めていた化け物に似ている。


 そして、その男をマクシミリアンは知っていた。


「……ダーウィン伯爵」

「ダーウィン伯爵? ……確か悲劇の王太子妃の実夫……」

「ほう、流石に忘れては居なかったか。愚王が」

「っ……忘れるものか」


 ダーウィン伯爵。初老ながら精悍な顔つきと、隆々な体つきが老いを感じさせない力強さを纏っている。

 しかしその生命力ある肉体に反して、その眼は酷く濁っている。どれだけの絶望を味わえばそんな目が出来るのか、一瞥されただけでブリジットの尻尾は逆立ちぞっとする寒気が盾を持つ手の平に汗を滲ませる。


 ダーウィン伯爵の侮蔑を籠めた言葉に、マクシミリアンは苦しそうに答え俯いた。

 ダーウィン伯爵はこのスペルディア王国では有名な存在だ。悲劇の王太子妃の父として、全てを奪われた伯爵として。


「そうだ、忘れるものか。貴様ら王家が、この国の人間が私の娘にした事を。家族にした事を、領民にした事を忘れた事を片時も忘れた事など無い」

「……」

「困ったらだんまりか……やはり愚王の名にふさわしいな。ならば愚王らしくその首を差し出せ!!」


 苦し気に俯くマクシミリアンへ向かって、憤怒の怒号を轟かせながらダーウィン伯爵は異形と化した触手の槍を振るった。

 鋭く、俊敏なその触手ははっと顔を上げたマクシミリアンの命を奪うべく迫る。


「ッ!」


 ガキィィィ……ン……。


 しかし、目を瞑る間もなく迫る触手がマクシミリアンの命を奪う事は無かった。


「……ふぅ、間一髪でした」

「ワタクシの前で、簡単にこの様な狼藉がまかり通るとは思わない事ですわ」


 阻んだのは、ブリジットの盾とクリスティーヌの宝石の盾。二重の防御はそれ以上の侵入の一切を許さない。

 毅然と立ち塞がる二人を前に、ダーウィン伯爵は二重人格なのかと疑う程に感情の一切を殺した相貌を浮かべながら、右半身に寄生し蠢く触手を束ね巨人の如き腕を形成する。


「邪魔を……するな!」

「なっ!? ワタクシのオブジディアンが一撃で!」


 振り下ろされた異形の腕は、クリスティーヌの黒曜の盾をガラスを砕くかの様に簡単に破壊した。

 決して脆くない、折角新調したばかりのオブシディアンの破片の向こうで驚愕の表情を浮かべるクリスティーヌへ迫る剛腕へ、ブリジットは割って入る。


「させませんっ!」


 今度はその異形の腕の動きは止めることは出来た。

 小さな体躯で、身の丈を遥かに超す異形の腕を受け止めるブリジットは苦しそうに呻きながらも歯を食いしばって、くじけそうになる膝に力を籠める。

 痺れる腕に意識を取られたブリジットは、再びその腕を振るおうと振り被るダーウィン伯爵を前に寒気を感じるが。


「氷石の真槍! ベニトアイト!」


 やられたままで終われないクリスティーヌの魔法が、ダーウィン伯爵へ無数の弾幕を降らせ土埃が舞う。

 20近くの美しい宝石の槍を隙なく降らせた。避ける素振りは無く、あっけない幕引きあって欲しいと願うが、その願いは届かないだろうと二人の表情は物語る。


「化け物ですわ」

「……どうして、そこまでして……」

「どうして? だと」


 土埃の中から、身体中に宝石の槍を突き刺さらせながらダーウィン伯爵はゆっくりと立ち上がる。

 身を護る為に身に纏う触手を更に侵食させ、今では全身の80%は蠢く触手に覆われている。

 普通なら致命傷。そして決して痛みを感じない訳では無いのだと、ダーウィン伯爵の表情は痛みに堪えていた。

 それでも、彼は憎しみの籠った目を守られるだけのマクシミリアンへ向ける。


「真の絶望を味わったことも無い子供に分かる筈も無い」

「貴方の境遇は聞き及んでますわ。悲劇の父親、ダーウィン伯爵。そして、何故スペルディア王国国王、マクシミリアン王を狙うのかも、理由は分かりますけれど……だからといってこんな事は間違っていますわ」


 この状況と、ダーウィン伯爵の姿。そして動機、決定的な証拠は無いがクリスティーヌは言外にこの騒動の首謀者だと語る。

 しかしそれは間違いでは無いだろう。ダーウィン伯爵は鬱陶しそうに眉を潜めると、自虐気味に口元を歪めた。


「分かったような口を利くな小娘。間違ってる? そんなの分かってる。復讐した所で誰も報われない? 当たり前だ、ソレを殺した所で家族は帰ってこないし、国を混乱に導くだけだろう。だが……だからといって全てを奪われ尊厳の限りを奪われた家族を目の当たりにして、のうのうと生きていくなんて出来る筈も無いだろう。これは私のただの我儘だ、それを阻むというなら……殺す!!」


「っブリジット殿下! お下がりください!」

「ダメですクリス叔母様!」


 身に纏う触手の鎧は、ダーウィン伯爵に力を与える。

 復讐する為の力を、決して後には引けない命を燃やして作る力を。


 ダーウィン伯爵の姿が、怒号と共にブレたと思ったら一瞬にして肉薄する。

 反応出来なかったブリジット殿下の前に、クリスティーヌが間一髪で立ち塞がり持てる全ての技術を駆使して止めようとするが、尽くを破壊されその身体を壁に吹き飛ばされた。


「っっかはっ!?」

「叔母様!」

「よそ見とは余裕だな! 勇成国の王子!」

「っ!!」


 がれきに埋もれ、血反吐を吐いて倒れ伏すクリスティーヌへ駆け寄る事も許されず、ダーウィン伯爵の剛腕を間一髪で受け止め、僅かに力を流して受け止める。

 盾を持ち、護る事を主体に日々の鍛錬を重ねたブリジットは何とかその苛烈な猛攻に耐えるが振るわれる攻撃の殆どを目で捉えられない。

 無意識に、身体に刻まれた経験と本能的な直感だけで耐え凌ぐが一歩、更に一歩と後ずさり続け、欠片も反撃の隙を突くことは出来ず苦し気に歯を食いしばりながら一瞬の気の緩みも許されない中でダーウィン伯爵へ言葉を投げかける。


「貴方の怒りは分かります! でもマクシミリアン王だって被害者なんですよ!」

「だから何だ! 免罪符になると!? 操られていたから罪は無いと!? 私の娘は弁明の機会も与えられなかったぞ! 家族は事を知ることも無く殺されたぞ!」

「でも!!」

「甘えた事を抜かすな若造が!」

「ぐぁっ!」


 そもそも、体格に遥かに劣るブリジットが堪え切れる事など出来る筈も無く、受け止めた盾ごとその身体を大きく殴り飛ばされてマクシミリアンの元まで吹き飛ばされる。

 盾は盛大にひしゃげ、重たすぎる一撃は直接食らっていないにもかかわらずブリジットに立ち上がる体力を残さない。


 何とか立ち上がろうとするもそれが出来ないブリジットの前に、マクシミリアンがゆっくりと立ち塞がる。


「マクシミリアン王……いけません、逃げてください」

「……すまない、これは俺の罪だ」


 しかし彼は武器の一つ持っていない。マクシミリアン王が魔法を持っているとは聞いたことも無いし、何かをしようというそぶりも見せない。

 諦めの表情を浮かべ、首を曝け出すかのようにただ無防備に立っているだけ。


 ダーウィン伯爵は、その姿を侮蔑気に睨みつける。


「そうだ、こうなったのは全て貴様の所為だ。貴様はあの時その首を我が家族に捧げるべきだったのだ」

「……分かっている。だがそれが出来なかったのは俺の弱さが原因だ……だから、頼む」

「マクシミリアン王!?」


 マクシミリアンが、その場に膝を着く。そしてそのまま、汚れる事も厭わずに地下水路の地面に額を当てた。

 決して一国の長がしてはならない姿。

 首を曝け出し、全てを相手にゆだねる姿勢。


「……それで、私の復讐が果たされると思ってるのか」

「分からない。だが、俺に出来るのはこれだけだ」

「良いだろう、娘への手向けだ。家族にしたのと同じように、貴様の首を街門に吊るしてやる」


 ゆっくりとダーウィン伯爵が近づいて尚、マクシミリアンに何かをする様子はない。

 本当に、心から首を差し出すつもりなのだ。やっと見つけた贖罪の機会を得たとでもいう様に、マクシミリアンはその時を待ち続ける。


 そして、それを決して見過ごせないブリジットは、必死で立ち上がろうと震える腕を立てるが、上手く力が入らない。


「駄目、です……マクシミリアン王。そんな事をしても何も解決しません……」

「すまない。だが、きっと俺はこの時の為に生きていたんだろう。せめて、君は彼女を連れて逃げてくれ」


 ダーウィン伯爵はブリジットに目もくれない、マクシミリアンだけが狙いなのだ。立ち上がって、クリスティーヌを連れて逃げる事は出来るだろう。

 そうすれば良い。誰だって自分の命が一番大事だし、ブリジットもクリスティーヌも、人の上に立つ事が生まれた時から決まっている身分。保身を最優先にすべきだ。


「そんな事……っ! 出来ない!」


 必死で、歯を食いしばって、ひしゃげた盾に手のひらを食い込ませて立ち上がった。

 何がそこまでブリジットを突き動かすのか。少なくとも、彼の黒い目には確かな意思が宿っている。

 マクシミリアンにも、ダーウィン伯爵にもない。生者の眩いきらめきが。


 必死で立ち上がろうとするブリジットを尻目に、ダーウィン伯爵はマクシミリアンの首を奪おうと腕を振り被る。

 処刑台のギロチンの様に、焦らせる様にゆっくりと。大きく、積もった憎悪を燃やして。


 立て! ここで立たないでいつ立つ!

 何のために今まで努力してきた!

 何のために今日までアレックスの姿を見て来た!

 必死で努力してきたのは、何のためだ!


「僕はっ!」


 心臓が煩い。

 全身を流れる血が焼ける様に熱い。

 頭も割れそうに痛い。

 でも思考は今までで一番はっきりしている。


 悲鳴を上げる肉体の奥深く。人に依っては心と、宗教的には魂と言われる部分が激しく脈打った。

 まるで、ここに居ると主張している様に。

 そしてそれは、ブリジットの願いに応えるように形を変える。


 不完全で、歪で、でも確かな形に。


「あの人の様になりたいっ!!」

「死ねぇっ!!」


 首を晒しその時を待つだけだったマクシミリアンは、ぎゅっと目をつぶって衝撃に備えた。

 しかし何時まで経っても自分の意識は途切れないばかりか、痛みも衝撃も訪れない。

 何が起こった? と顔を上げた彼が見たのは、金色に輝く半透明の荘厳な盾に阻まれるダーウィン伯爵と、自分の前に立つ黄金の毛並みをたなびかせるブリジットの背中だった。


「……何が……」

「はぁっ……はぁ。っこれは……僕の……魔法?」

「ぐぅっ……小賢しい! こんなもの!」


 眼前で光放ちながら拳を防ぐ盾に、ダーウィン伯爵は苛立ちの咆哮を上げながら何度も何度も渾身の力を籠めて殴り続ける。

 実物の盾と違い、ブリジットの魔法に依って作られた障壁とも呼べる盾は衝撃に震えて尚、確かな強固さで耐え続ける。

 ブリジットが苦し気に呻くも、黄金の盾はまだ壊れない。

 息は荒く、肩で息をするダーウィン伯爵は一歩下がり、身に纏う肉の鎧を右腕に収束させながら毅然と立ち塞がるブリジットを睨みつける。


「何故そこまでしてソレを守る! ソレに守られる価値は無い! ソレが罪を贖い賢王として身を捧げれば私も思う所は無かった! だがソレは王としての責務を贖罪としたのだぞ! 私の家族を奪い! 国を混乱に陥れ! そして王の名すら穢した! 何処まで私の家族を! 国民をバカにすれば気が済むと思ってる!!」

「……マクシミリアン王の王としての在り方は確かに褒められたモノではありません。父上も、母上も苦言を述べる事は多かった」

「ならば——」

「でもそんなのは関係ないんです!!」


 キッとダーウィン伯爵へ、確かな意思を宿した黒色の瞳を向ける。

 そこに宿った光は、余りに眩しく純粋で、無意識の内にダーウィン伯爵は後ずさっていた。


「僕が憧れたあの人は絶対に諦めない! 僕が目指したあの人は困ってる人を絶対に守る! 僕が好きになった人は重たい肩書を背負っても、その行動に迷いは無かった!」


 それは王族としての理由でも、政治的な理由でも無かった。

 ブリジットが立ち上がったのは、立ち塞がったのは、魔法に覚醒したのは、ただただ自分勝手で心からの願いだから。

 憧れがブリジットを立ち上がらせる。

 目標は進むべき道を示す。

 想いが力に変わる。


「ここで! 立ち上がれなければあの人の隣に立つことは出来ない! 僕はそれが嫌だっ!!!」

「……だったら、夢想したままソレと共に殺してやろう」


 ダーウィン伯爵の全身を覆っていた肉の鎧が、全て右手に集まる。

 脈打つ筋肉に力を籠めれば、その腕が振るう威力は途轍もない物だと簡単に予想がつく。本能的な恐怖がブリジットの尻尾を逆立たせるが、ブリジットは竦みそうになる身体を叱責し使い方は分からないが何をすればいいか分かる魔法の盾に力を籠めた。


 きっとこれが最後だ。

 例え防いでも、その次を防げるかは分からない。防ぐだけしか出来ない、攻撃しなければ終わりはない。

 だけど、ブリジットの頭に先の事なんて無い。

 ただこの一撃を防ぐことだけ。それだけに、全身全霊を掛ける。


「おおぉぉぉ!!」

「ああぁぁぁ!!」


 振るわれる憎悪の拳と、情景の盾がぶつかる。

 轟音と衝撃は地下水道全体を震わせ、足元の水が二人から逃げる様に弾け飛ぶ。

 ダーウィン伯爵の全力の一撃は異常なほど重い、重すぎて手足が吹き飛んだ様な錯覚すら覚える。まだ覚醒したばかりの不安定な魔法の盾は、明滅してその姿を朧げにする。

 思わず震える膝が地面に触れそうになるが。


「っ! ……うぁぁぁぁ!!」


 吠えて、歯を食いしばって耐えた。

 消えかけた黄金の盾は、さらなる輝きを纏わせる。

 一秒が遠い。

 亀裂が走る。

 関係ない!

 ただ耐えろ! 耐えて耐えて耐え抜け!!

 一秒で良いから耐えろ!!。


 バキンッ!


「わぁっ!!」

「ブリジット王子!」


 十分耐えた。

 きっと誰もがそう褒める。

 砕けた黄金の盾と共に、吹き飛ばされるブリジットは完全な魔力切れでもう立ち上がれない。

 悔しそうに呻きながら、再び立ち上がろうと歯を食いしばるが震える身体に力が入らず汚水の中に身体を倒した。

 稼いだ時間は何分だ? 何秒だ?それすらも分からない。

 ダーウィン伯爵は消耗しているようだが、そのまま一歩踏み出している。

 意味はあったのか? ただの時間稼ぎでしか無かったのか、いや、時間稼ぎにすらならなかったのか。


 目だけは諦めていないブリジットが睨みつけるも、状況は変わらない。


「ぐっ……流石に消耗しすぎたか……」

「その身体、自分の命を削ってるのか。しかも今のでかなり……」

「だから何だ」


 血の塊を吐いたダーウィン伯爵は、明らかに限界が見えている。

 身に纏う肉の塊は、彼の命を代償に力を生み出している事は明らか。命を燃やして得た力を振るう彼は、ただマクシミリアンを殺す為だけに明日を捨てたのだ。

 決してブリジットの行動は無駄では無かった。きっとあと少し耐えていたらまた結果は違ったかもしれない。

 しかし現実はブリジットが地に伏せ、ダーウィン伯爵が立っている。


 もう終わり。マクシミリアンの脳裏にその言葉が過ったが、それを希望がかき消した。


「よくぞ立ちましたわ! それでこそ男の子ですわ!!」


 吹き飛ばされ、がれきの中に埋もれていた筈のクリスティーヌが毅然と立っている。

 自身に満ちた声を張り上げ、毅然と立つ姿は彼女の心を表す様だ。

 しかしその姿は満身創痍。

 頭から血を流し、豪奢な縦巻きツインテールは解け風に靡いている。息も荒く、よく見れば身体は小さく震えている。

 それでも彼女は立ち上がった。ブリジットが稼いだ時間が、彼女を立ち上がらせたのだ。


「クリス……叔母様っ!」

「魔法の覚醒、おめでとうですわ。そして後は任せなさい、貴方の行動は無駄では無いと……証明しましょう!!」

「そんな満身創痍で何をするつもりだ」

「それは貴方もですわダーウィン伯爵。ワタクシの大切な甥を傷つけた報い、そして貴族の誇りに傷をつけた報い、取らせますわよ!」


 指に嵌めた指輪全てが煌めく。

 出し惜しみする余裕はない、体力も残ってない。全てを一撃に、一瞬に掛ける。

 だがそれはダーウィン伯爵も同じ。

 血反吐を吐きながら、再び右腕一本に全てを掛けた。


 最後に立ち上がれるだけの体力があれば良い。

 最後に殺せるだけの時間があれば良い。


 勝負は一瞬で決まる。

 その一瞬に、二人は全てをつぎ込む。


「ひと時の煌めきに全てを!」

「その希望が幻想だと知れ!!」


 満天の星々の如ききらめきが一面を埋め尽くす。炎が、氷が、黒が。圧倒的な暴力の嵐が、その恐ろしさに反して彼女の生き方を表す様に激しく、美しい。

 その全てに、ダーウィン伯爵は真正面から迎え撃つ。

 避ける余力が無いのもあるが、彼は決して避けない。それもまた彼の生き方を表してるかの様に、愚直に、正々堂々と。


 爆発によるすさまじい衝撃が巻き起こり、ブリジット達は衝撃に耐えるしかない。

 水路全体が崩れてしまうのではと危ぶまれる程の衝撃に、目を開けられずその瞬間を見逃してしまった。

 二人はどうなったのか。土埃が晴れるまでがもどかしい。

 焦る。駆け寄りたいのをぐっと我慢して結果が分かるのを待つ。心の中ではクリスティーヌの勝利を信じてる、だがもし、という不安が一歩を踏みとどまらせた。

 ガラリと天井の一部が崩れ落ち、月明かりが差し込む。勝者を照らすスポットライトの様に。

 それに照らされたのは……。


「……気分はどうですの」

「……最悪だな」


 毅然と立つクリスティーヌと、彼女の喉元に細い触手の穂先を突き付ける、()()()()()ダーウィン伯爵の姿。

 薄皮一枚に迫る穂先は、薄く彼女の喉から血を滴らせている。

 ほんの少し、後僅かにでも前へ倒せばクリスティーヌの喉は突き破られる距離だ。

 それでもなお、クリスティーヌの顔に焦りはない。そして、ダーウィン伯爵もまた動かない。


「貴方の動機はどうであれ、その真っすぐさは流石の一言ですわ」

「気づいていたか」

「お恥ずかしながら、倒れ伏してる時に」


 ちらりと横を見れば、水路の先に化け物の群れが鎮座している。

 待てと言われた犬の様に、静かに見守っている。意思が無いならありえない行動。あるとすれば、それを指示する者がいる場合だけ。

 この場においてそれが出来るのは一人だけ。ここまで、邪魔者の入らない場所へマクシミリアンを誘い込む算段を付けていた者だけだ。


「何故ですの」


 化け物を使えばもっと簡単にマクシミリアンを殺せた。クリスティーヌに立ち上がる時間を与える事も、ブリジットが魔法に覚醒する事も無かった。

 クリスティーヌの問いに、ダーウィン伯爵は自虐気に笑った。


「自分の手で殺してこその復讐。それだけだ」

「嘘ですわ」

「っ……」


 クリスティーヌの翠の瞳は決して揺らがない。真っすぐに、全てを知っていると言わんばかりにダーウィン伯爵には眩しい目をしっかりと見据える。

 そして見逃さない。彼の瞳の揺らぎを。躊躇いを。


「貴方は今日まで何度も復讐の機会はあった筈ですわ。世論を味方につける事も、政的に陥れる事も、ましてや今この時も」


 本当に殺すつもりなら、勿体ぶる必要はない。ブリジットもクリスティーヌも早々に、確実に潰してからマクシミリアンへ行けばよかった。

 それにもっと早くに復讐をする機会は有った。マクシミリアンの王としての権威は強くない。他に継ぐべきものが居なかったから王に成っただけ。様々な事が有ったから政争が無かったから今日まで王であれただけ。

 その気になればダーウィン伯爵を旗印に反旗を翻す事も出来た筈だ。


「それが出来なかったのは、貴方が最後まで鬼になり切れなかったからですわ。それが貴方の甘さであり、優しさですわ」


 クリスティーヌの、傷だらけだが嫋やかな指が喉元に突き付けられる触手の穂先に触れる。

 簡単に、ボロリと崩れた。

 それを分かっていたのか否かは関係ない。しかしそれを見送ったダーウィン伯爵は、深く息を吐くと腕を下ろす。

 諦めた。力なく項垂れる後ろ姿が、それを物語っている。


「娘は……優しい子だった、人の痛みに寄り添える……良い子だった。そして……この国を愛していた。妻も、息子達も」


 彼を復讐者にまでたらしめた要因は、家族の喪失。そして、彼を最後まで人に繋ぎ止めたのも、また家族の存在だった。


「私の我儘で、家族が愛したはずのこの国を……家族を奪ったこの国を騒乱に陥れる事に……最後まで決心が出来なかっ——っ!? ごほっ! ごほっ!」

「ダーウィン伯爵!」


 もうダーウィン伯爵の身体は限界だった。

 人並外れた力には、必ず代償が付きまとう。ダーウィン伯爵にとっての代償が、命だっただけ。

 咳き込む彼が吐き出す血の量は泥の様に濃く、明らかにもう命の灯火が僅かな事が明らかだ。

 慌てて駆け寄るクリスティーヌを抑え、ダーウィン伯爵は顔を上げた。


「……良い、こうなる事は承知の上だ。それより帝国人の君に伝えるべき事が有る」

「ワタクシに……」


 彼の最後の言葉。その眼に秘められた覚悟を見据え、クリスティーヌは頷く。


「教えてくださいまし。貴方にソレを、力を与えたのは誰ですの」

「……この騒動を仕組んだのは、私にコレを与えたのは帝国の……いや、それよりもっと手強い、過去の——」

「喋りすぎ」


 真実を知るチャンスは、ダキナの声と共に撃ち出された杭に心臓を貫かれたダーウィン伯爵の姿で、消え去った。


 即死だった。杭に貫かれたダーウィン伯爵は、驚愕の表情を張り付けたまま呆気なく息絶えている。

 悪党にはお似合いの最後とでもいう様に、薄暗い地下水路の地面に倒れ、恨み言も想いも真実も告げる事無く死んでしまった。

 何が起こったのか分からないと目を見開く三人の中で、一番最初に冷静さを取り戻したのはクリスティーヌ。


 天上の穴からダーウィン伯爵を狙撃した女——ダキナ——へ向けて声を張り上げる。


「っ何者ですの!!」

「…………」

「待ちなさい!! くっ! 身体が……」


 見下ろすダキナを拘束したい。ただでさえ真実を聞き出せぬままダーウィン伯爵が死んでしまったのだ。

 この騒動の犯人を、真実に繋がる証拠を手にしなければならない。

 だが意思に反し、限界ギリギリで立っているクリスティーヌにその力はもう欠片も無い。立っているのすらキツイ、意識を保ってるだけで限界。


 慌てて追いかけようと一歩踏み出そうとするが、既に限界を振り絞っているその身体は膝から崩れ落ちる。

 セシリアと相対してる時とは打って変わって、興味の欠片も無く一瞥すらしないダキナの背中を見送るしか出来ない彼女は、悔し気に顔を歪ませて地面を叩く。


「っぁあ!!」


 勝利の空気は欠片も無い。

 あるのは後味の悪い結末だけ。

 何も得られず、何も救えなかった。


 そしてこの結果に、最も苦しむのはマクシミリアン。


「俺が……俺の所為で伯爵は……伯爵まで……やはり俺があの時イザベラの後を追って死んでいれば……」

「マクシミリアン王……」


 無力を嘆き、後悔の言葉を零し項垂れるマクシミリアンに、ブリジットは掛ける言葉を見つけられない。

 人生経験も浅く平和に生きて来た彼が、何を言った所でその言葉は薄っぺらくなってしまうだろう。


 だが、その言葉に反応できる者が一人だけ居た。


「俯いてはいけませんわ、嘆いてはいけませんわ」


 彼女だけは、暗い空気なんて知った事では無いと、何時もの様に尊大に言葉を紡ぐ。

 その言葉一つ一つ、積み上げてきた自信による重みがある。


「下を向けば先が見えなくなる。ワタクシ達は人を、民を導く誇りある貴族。道を見失えば光も見失う。どれだけ悔しくても、辛くても、一歩でも良いから前を向いて歩きなさい」


 顔を上げて気づく。背を向けて、震える膝を抑えて立ち上がる彼女の空いた手が、血が滴る程握り込まれているのに。

 悔しいわけがないんだ。怒らない筈が無いんだ。

 あと少しで得られそうだった答えを奪われて。曲がりなりにも最後は真っすぐに戦った男をあんな雑に切り捨てて。敵とすら認識されなくて。


「俯きたくなっても虚勢を張りなさい。後悔を抱いてもがむしゃらに前へ進みなさい。怒りを力に変えなさい」


 自分に言い聞かせながら立ち上がる彼女につられ、自然とブリジットとマクシミリアンも立ち上がる。

 その背中は、人を導くその背中は確かに小さいが、何か言いようの無い力があった。


「まだ終わってませんわ。まだ、まだ救いを求める声はある。助けてと伸ばす手はある。ならばこんな所で躓いてる訳には行きませんわ。貴族であるならば、民の為に命を賭しなさい!!」


 そうだ。まだ終わっていない。

 ならやるしかない。後の事なんて考えなくて良い。今は出来る事を一つでも良いからやるんだ。

 立ち上がり、一歩を踏み出せ。


 しかしその努力を嘲笑うかの如く、状況はさらに悪くなる。


「っ!!??」

「何だ!? なんだこの強烈な圧は……!?」

「こ、怖い……」


 骨まで震わせる強力な圧が、塊の様な魔力の波が、3人の足を止めさせた。

 余りに強すぎる圧の出所は、真上。つまりこの城の頂上から発せられてる。


 上では、ダーウィン伯爵を唆した者達は何を目的としているのか。分からない事ばかり起こる。

 だが一つだけ、はっきりとわかる事がある。

 これが、始まりだという事だけが。


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