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テセウスの船

 


 夕食も終わり、それぞれが床に着く準備を終えた夜更け。

 セシリアは割り当てられた部屋にて、黒いタンクトップとスキニーパンツ一枚のまま、アイアスから受け取った純白のリボルバーを使って神経質な程真剣な表情でイメージトレーニングを重ねていた。


 その真紅の瞳が向ける先、銃口が向く先にはこちらを濁った熱の籠った眼で見つめる憎たらしい笑顔の女の幻覚。

 引き金に掛かる指に自然と力が入り、カチッ。と撃鉄が空撃ちする音がセシリア以外に居ない明かり一つない部屋に響き渡る。

 それを皮切りに、セシリアの集中力が切れた。


「……ふぅ……」


 疲れの籠ったため息を吐きだし、セシリアはリボルバーを握りしめたままベットに倒れ込む。

 そして残った左手を額に押し当て、疲労で鈍る頭に最後の仕事だと鞭打って明日からの予定を組み立てる。


(セバスチャンさんの稽古を受けたら、消耗した弾を作って……あ、師匠にも相談して新しい装備を作らないと。後は防具の新調もしないと……あのシャツ高かったのになぁ……新しいコートかシャツ、何か良いのあれば良いけど……それも師匠に相談しないとなぁ……)


 やる事は沢山ある。そう長い間は滞在出来ない。

 また何時最悪の状況になるかは分からない。だからこそ、常に万全の状態を保っておかないといけない。

 だが、疲れた頭が真面に働いてくれる事も無く、次第に瞼が落ちてゆく。


 セシリアはベットのシーツを、隣に居ない誰かを想う様に握りしめる。


(ママ……今日は一緒に寝てくれないんだ……)


 ベットの冷たさが肌に刺さる。セシリアとしての人生で一番質の良いベットだと言うのに、欠片も気持ちよさを感じない。


『人様のお家ですし、セシリアも成人した事ですし偶には別に寝ましょう?』


 一緒に寝ようと誘ったセシリアが、躊躇いがちにマリアから言われた言葉が脳裏に反芻する。

 言ってる事は分かる。余所の家で母娘とは言えいつもみたいに抱き合って眠るのはよろしくないかも知れない。

 大人になる一歩として同衾を辞めるのも、世間一般的には正しい事かも知れない。


(……なら大人になりたくなんて無いな)


 だが、それがセシリアの望みかと言えば全くの逆だ。

 セシリアが望むのは何時だってマリアだけ。マリアさえ傍に居てくれればいいのに、その想いに反して、マリアは何故か気まず気に去って行ってしまった。


 その時の光景を思い出して、前世で自分を捨てた母親の背中と被って胸に鋭い痛みが走る。


(いやだな……前の事を思い出すとか何年ぶりだろ……)


 思い出したくない過去を振り払う様に強く目を瞑れば、セシリアの意識は瞬く間に微睡みに溶けて行った。


 あっさりと夢の中に落ちると、懐かしい夢に移り変わる。


 そこは愛衣であった頃の光景。

 夕暮れ時の公園で、愛衣は同い年位の少女と向かい合っていた。

 相手の顔はぼやけていて良く見えない。だけど、その女の子が顔を真っ赤にして何を言っているのは分かった。

 何も分からない。だけどその女の子が愛衣にとってとても大事な人で、その人の必死に言葉を紡ぐ様子を見てると、胸がきゅーっと締め付けられる様な、()()()()()()()()()()の様な気持ちになる。


『愛衣の事が……す……す……』

(この子……誰だっけ……たし……か……)


 その言葉の先を聞くことも出来ず、意識が完全に落ちてゆく。

 穏やかな寝息を立て始めたセシリアは、一つ、寝言を零して夢も見られない位完全に眠りに着いた。


「ち……なつ……ちゃ……」


 静かな寝息が響く寝室に、暫くしてノックの音が響く。


「セシリアー起きてるかい? ちょっとマリアを借りたいんだけど……って寝てたか」


 マリアに用があったらしく、部屋を訪れたアイアスは申し訳なさそうに後ろ髪を掻きながら、毛布も掛けずに眠るセシリアが冷えない様に整える。


「全くこの子は……腹が冷えたらどうするんだい。マリアも珍しく居ないし……トイレかねぇ?」


 普段は気難し気に皺の寄ってる眉間も、今は孫を見る様な優しい表情でセシリアの柔らかな母譲りの蒼銀の髪を撫でる。

 毎日母娘抱き合って眠る姿を見ていただけに、まさか別れて寝てるとは思わないアイアスは暫く帰ってくるのを待っていると、何故か遠慮がちにマリアが入って来た。

 その姿は再びベットに入ろうとしている訳では無く、心配になって見に来たかの様でアイアスは首を傾げてしまう。


「何だい? 一緒に寝ていたんじゃないのかい」

「アイアスさん。その、はい。別々に寝ようって私から……でも、ちゃんと寝れてるかどうか心配になって……」

「? 別に別れる必要は無くないか?」


 何故態々そんな事を? と訝しくアイアスに、なんと言ったらいいのか分からないとでも言うような曖昧な笑みを浮かべつつ、マリアはセシリアが穏やかな寝息を立てているのを確認すると安堵する。

 そんな姿を見て尚の事、普段通り一緒に眠れば良いのにと言葉にはしなくてもありありと表情に浮かぶアイアス。


「まぁ、二人で話し合ってるなら良いけど。それよりマリア、ちょっと時間良いかい? 久しぶりに寝酒でも交わしながら」

「構いませんが……お酒ですか? 私は遠慮しとこうかと」

「なに、素面じゃ語り辛い事だろうからね。教えてくれるかい? アンタらの親の事を、トリシャとガンドっていう人の事を」


 しかし母娘の間に深入りするつもりは無く、アイアスは元々の用事を目尻を柔らげたまま告げる。

 遠慮していたマリアだったが、アイアスの口から出た名前に意見を変える。

 大恩ある二人で、セシリアにとってもマリアにとっても本当の親の様に良くしてくれて、大きな二人。


 アイアスに直接の面識はそうなかった。

 一度だけ、セシリアを預かる旨を伝えた時に邂逅したが、それだけだ。

 だが、その時の二人の親をしている姿は、アイアスの記憶に何時までも残った。


 だからこそセシリアだけでなく、マリアにとっても血の繋がりは無くても親である二人の事を、死して風化させるのは示しがつかない。

 心の底から、二人の事を知りたいとその眼は雄弁に語る。


「……そう、ですね。わかりました、お付き合いします」

「なら、先に隣で待ってるよ」


 最後の別れを言う間もなく別れてしまった二人の事を話す機会に、マリアが頷くとアイアスは寝室を後にした。

 優しくセシリアの額を撫でながら、マリアは先に寝室を後にするアイアスの背中を見送る。

 一人になった部屋で、マリアは愛おし気にセシリアを見つめる。


「んん……ままぁ……」

「はい、ここに居ますよ」

「んふぅ……」


 うなされてるセシリアの手を握り、優しく声を掛ければ穏やかな寝息を再開する。

 セシリアの中でのマリアの存在の大きさを感じ、マリアの垂れ目がちの空色の瞳は深く柔らぐ。

 愛おしさが充ちた、優しい優しい母の目だ。


「何時も貴女ばかり大変な思いをさせて……こんな母親でごめんなさい」


 その優しい空色の瞳に一抹の揺らぎを隠し、マリアはセシリアの()()()()()()()()、額に触れるだけの口づけを落とす。

 よく眠れる様に、という気持ちと。

 胸に仕舞いこんだ想いを籠めて。


「おやすみなさい、セシリア」


 その声音は、優しく。されど、寂し気でもあった。



 ◇◇◇◇



「……やっと見つけた」


 とある国の城の一角で、一人の少女が空を見上げていた。

 ()()()()()()()()()()を見上げながらも、しかしその虹色の瞳は月なんてちんけな物など映してはいない。


 その少女は絶望していた。

 恋した人との未来が断たれた現実を前に、未来を映すその眼は色を失った。


 その少女は渇望していた。

 恋した人の命がその手から零れ落ちる事を、ただ黙って見ることしか出来なかった後悔から、もう二度と手放さない絶対の力を欲していた。


 その少女は確信していた。

 二度目の空を見た時、自らが恋した人も同じ空を見ていると。そして、これは運命なんだと。


「あはっ……あはは、あーっはっはっはー! やっと! やっと見つけた!!」


 その胸に湧き上がる狂的なまでの歓喜に耐えきれず、狂ったような笑い声が夜空に響き渡る。

 当然、その声を聞く者は多い。だが、誰一人として異常を覚えた様子は無い。その笑い声が誰によってもたらされたかを悟ると、肩の力を抜いた。


『姫様か……笑うなんて珍しい』

『普段は人形の様に感情が無いか、狂ったように異国の言葉で誰かの名前を呼んでるかだからな』

『姫様のお陰で美容と服飾に革命が走ったのは良いけど……天才はやっぱり何処か可笑しい物なのね』

『お礼を言った時の姫様の顔、あれはまるで鬼よ鬼。訳わからないわ』


 有象無象の畏怖の声がそこらかしこに潜み響くが、少女の歓喜の笑い声は鳴り止まない。


「はーはー……はぁ、15……いや、前も含めたら20年ぶり位かな。笑うって楽しいや」


 何十分も経って漸く嬌声は鳴りやむ。

 笑いすぎて肩で息をする虹色の少女は、ふらふらとベットに恍惚とした表情を浮かべながら倒れ込んだ。


 その虹色の目は爛々と輝いていて、まるで長い時間我慢してきた極上の好物に手を付ける直前の様で、飽くなき獣性を秘めている。


「おっとっと、寝る前に整理しないと。私の魔法は結構先を見る時は曖昧だからなー、便利だけど不便なのがネックだよねー」


 いそいそと少女はペンを手に、見慣れない字を慣れた手つきで紙に書きこんでいく。

 そこに書かれた字を読めるのは、書いた本人を除けばたった一人だろう。

 それをぶつぶつと呟きながら、少女は書き殴り続ける。


「恐らくあの未来はそう遠くない、問題は見えたあの子の目だよね。あの目はこの国ではかなりまず……いや? もしかしたら……あぁダメ、それはダメ……だって……だってそれってあんまりにも……」


 ベキッ。とペンが折れる。

 蝋燭に照らされながら上がったその顔は……嗤っていた。


「さいっこう過ぎる……」


 少女は再び虹色の瞳を輝かせ、虚空を眺める。

 その虚ろな瞳が何を見るのか。仮初の幻想(未来)か、狂気か。

 いずれにしても少女は興奮が昂りすぎたのか、鼻から一筋の赤い線が走る。


「成程。そんな事が起こんだ……ま、どうでもいっか。一応父親には言っとこうかな。でもなー、あの人陰気で苦手なんだよねー」


 思った未来が見えなかったのか、鼻血を拭いながら少女は背もたれに凭れ掛り、脚で机を押しながら揺り籠の様に揺らす。

 例えその眼が国の危機を見たとしても、少女に気にした様子は無い。他人事の様に呟くさまは、とても城に仕える者達から姫と呼ばれているとは思えない。


「そりゃあ操られたとはいえ、愛した人を自らの手で殺したら病むよねー。同情するわー、ま、私はもう二度と間違えないけど」


 魔法を使いすぎた影響で、足元をふらつかせながら少女は布団に潜りこむ。

 目を閉じた彼女は再び生れ落ちてから15年間、見ない日は一度も無かった夢を今日も見る。


 茜色に染まる世界で、自らの手の中でまるで彼岸花の様に真っ赤に染まった、美しい少女を慟哭と共に抱きしめる少女の夢。


 腕の中で赤く染まり、微笑のまま眠る様に目を閉じる少女は、美しく、残酷だった。


 それは余りにも突然で、凄惨で、狂ってしまう程に綺麗な失恋。

 ともすれば絵画の一枚にもなってしまいそうな悲恋の始まり。


 血に染まる少女は、抱きしめる少女にとって初恋の人だった。

 一目惚れだった。

 桜並木の中で、背筋を伸ばして歩くその美しい姿に少女の心は奪われた。

 少女は、それからもその少女に声を掛けられぬまま、ただ眺めてるだけの日々が続いた。


 その初恋の相手は、孤独だった。


 クラスメイトに話しかけられて嬉しそうにする癖に、会話が続かなくて悲しそうにするのも、寂しそうにクラスを眺めるのも、実は身体を動かすのが好きで体育の時間が来ると目を輝かせるのも、普段は出来合いなのに偶に食材を買って嬉しそうに家に帰るのもすべてが好きだった。


 気高く歩くその姿からは予想できない、儚く弱いであろう心。それを知った時無上の母性の様な庇護欲が生まれた。

 私が守らないと、私だけが守れる。


 少女は、席替えを期に腹をくくって初恋の人に話しかけた。

 自分でも鬱陶しいだろうと思う位しつこく、根気強く傍に居続けた。その結果、少女と初恋の人は親友と呼べる位仲良くなれ、少女はその日の晩は朝になるまで火照った身体の所為で眠れなかった。


 少女は親友という関係にひとまずは満足し、孤独な少女の理解者は自分だけという環境に背骨に甘い刺激を走らせ続けた。

 勿論、正常な感性が働き、少女の為を思って自分以外の初恋の少女の隣に立てる人を紹介もした。


 だが、少女の口はここぞという時に想いを紡げ無かった。

 下手な三流ラブコメの様に、じれじれとした焦燥の様な時間ばかりが過ぎていた。幸か不幸か、そんなラブコメのヒロイン達の苦悩を理解できるようになってしまったのは余計だろう。


 だがそれでも、悩んで悩んで、漸く想いを告げようとした日。


 初恋の人は目の前で命を落とした。


 自らの腕の中でどんどん冷たくなっていく恐怖が。命が鮮血と共に緩やかに流れ落ちていく絶望が、少女の心をいとも容易く壊した。

 何も出来なかったという後悔が、少女の世界から色と未来を奪った。


「未来を失った私が、未来を見る魔法を得るなんて……神様は皮肉屋だよね」


 ただ泣き喚く少女は、己の無力さを嘆くばかりで生きる気力も失った。


「ありがとうは嫌い」


 まるで呪詛だ。

 初恋の人の、最後の言葉が何時までも耳にこびりついて離れない。

 無力な自分に向けられた言葉が、劇毒の様に心を蝕む。

 罵られたらどれだけ良かったか、叫んでくれればどれだけ良かったか。

 死にたくない。お前なんて嫌いだと。


 そうすれば楽になれたのに。

 すぐさま初恋の人の元へ行けたのに。

 だが出来なかった。

 耳にこびりつく呪詛(お礼)が、あと一歩をいつも踏みとどまらせた。


 初恋の人が命を賭しても救った命があったから。誰かを守って死んでしまった心優しい初恋の人への侮辱に思えて。


 初恋の人の葬儀は小さな物だった。

 母親は居ない。

 親戚縁者も殆ど居ない。

 友人も、極ごく少数。


 初恋の人の父親の慟哭と、すすり泣く何人かの友人だけの葬儀を、少女は涙の一つも流せずに眺めていた。

 そこでどうして初恋の人が母親物の創作物を好んだか知って、知らない事があった事に空っぽの心に隙間風が吹いた。

 そこで現れた、少女が命を救った少年と母親に、少女は思わず怒鳴りそうになった。


 お前が居なければ! お前があの時飛び出さなければ! 何度も何度も心の中で叫んだ。

 だが叫ぶ権利は少女には無かった。そんな物は己には無いと、肉を裂く程に拳を握り込んで耐えた。


 初恋の人が死んだ責任は自分に合ったのではないか。

 あの時告白していれば、あの時考え込まなければ、あの時公園に行かなければ、あの時傍から離れなければ。


 次第に、自らへの後悔は初恋の人をひき殺した相手への憎悪に変わった。


 何度も、何度も何度も何度も何度も夢の中で殺した。

 あらゆる方法で、甚振って辱めて踏みにじって。


 だが、犯人はいつの間にか罪を受けていた。

 行き場のなくなった憎悪は時間と共に鎮火した。

 それと比例する様に、否、あの日流した涙と共に生気も失った。


 ただ寝て起きてを繰り返す日々。

 真面目にやっていた部活も辞めた。あれほど好きだった走る事も、どうでも良くなった。

 将来の為の勉強も、失った淡い光に包まれた未来を失ったが為に放棄した。

 励まして、心配してくれた友人や家族も、返事を返す気力も無く流れて行った少女を見て、次第に声を掛ける事は無くなった。


 生きる気力も、死ぬ気力も無い日々。

 ただ惰性で生きる日々。


 高校を卒業こそしたが、生きる気力の無い少女が次に進む事は無かった。

 ただ親への申し訳なさから、バイトだけはする日々。


 生きる気力の無い日々だったが、何かが変われる事を期待しての選択だった。

 だが、何も変わらなかった。それがまた少女の心を閉ざした。


 生きてるのか死んでるのかも分からない日々を送っていると、職場の男性に告白された。

 当たり前の様に断ったが、それでも男性はしつこく、いつの間にか面倒に感じて了承した。


 少女を、男性は愛していたのだろう。

 一生懸命話しかけて、少女を思った理想的なデートもしてくれて、情事だって気遣いと愛情に溢れていた。


 だが少女の灰色の心は、その全てを受け止める事無く流れ落ちて行った。

 寧ろ、日々を重ねるごとに初恋の人の影は濃くなっていった。


 ある日、男性は少女に問うた。


「——さんは、俺の事を愛してないですよね」


 その言葉に何と返しただろうか。肯定だったか、否定だったか。今となっては思い出す事も無い記憶の欠片。

 だが例えどちらだろうと、隠そうともしない少女の態度で気付いていたのだろう。男性は理解していた筈だ、つまりそれは答えを求めてはいない質問。


 男性は泣きそうな歪な笑顔を浮かべると、少女の首に手を掛けた。


 灰色の世界が狭まり、死が迫ってくる。

 だが、少女は一切の抵抗を見せる事は無かった。

 後悔も、恐怖も無くただ受け入れた。


 薄れゆく意識の中で、少女は確信した。


 故に少女は呟いた。心からの感謝を込めて。


 ——ありがとう。


 次に少女が目を覚ました時には、少女は少女では無かった。

 例え自らの髪と目が宝石の様に七色に輝いていようと、定義的には人間では無くなっていようと、少女に気にした素振りは無かった。

 今自分がいる場所が、天国だろうと地獄だろうと。人だろうが人で無かろうがどうでも良かった。


 確証があったから。

 初恋の人がここに居る。と。

 それだけが、灰色の心に昏い火を灯した。


 だから決意した。覚悟した。

 もう絶対に間違えない。


 初恋の人に既に好きな人が居ようと関係ない。真の理解者は自分だけだから。

 その心も体も、真に寄り添えて守れるのは自分だけだから。

 もう二度と殺させない。例え神だろうと悪魔だろうと、その恋を阻むものは容赦しない。


「母親は……いるだろうけど、関係ないよね。だって私は貴女のママなんだから。うん、その為なら何でもできるよ、何事もほどほどに全力を出すのが私だから」


 傍に居る事は許そう。

 だがその席は既に少女の物だ。

 少女の為だったらなんにでもなれる。

 母親だろうと恋人だろうと、親友だろうと性奴隷だろうと、この身この心全てを捧げられる。


 好きで愛していて恋していて愛おしくて美しくて可愛らしくて。

 好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きですきですきですきですきですきですきですきでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキでスキで。


 例えどんな姿になっていようと愛する自信がある。

 醜悪な化け物だろうと醜い容姿だろうと、貴族だろうと庶民だろうと奴隷だろうと、人だろうと亜人だろうと魔獣だろうと悪魔だろうと。


 絶対に見つける。そしてもう離さない。貴女を愛してるの、好きなの、恋してるの、止まれないの。


「好きだよ……愛衣」


 だから。


 待ってて。


 もうすぐだよ。


 次は離さない。。


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― 新着の感想 ―
[良い点] お、おー……。 ちかちゃん病んじゃってる……。 もしもあいが死なずにいたらちかちゃんルートもあったかもしれないのかぁ……。なんか切ないなぁ。 私はマリアとセシリアの百合的進展を楽しみにして…
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