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一人じゃ出来ない事

一か月ぶりの更新になって本当にごめんなさい(;'∀')

ウマとハルファでthis gameしてタイラントしてましたw

半分冗談で本気で体調崩してました(;'∀')皆さんも、コロナで色々大変な時期だと思いますが、体調にはガチで注意してください。

アイコス便利ですね




「……ここは」


 未だ精神世界からの脱出を果たせていないセシリア。彼女は、目を覚まして直ぐに違和感に警戒の色を浮かべた。

 何時もだったら死んだら真っ白な精神世界に戻される。そこでもう一人の自分であり、死んだ双子の姉に文句を言われながら小休憩を取る。今回もその筈だったのに、何故か全く別の風景の中に放り込まれていた。


「日本じゃない。現実……って感じでもない?」


 一瞬現実に戻ってこれたのかと思ったが、空を見上げて違うと首を振った。

 見慣れた空ではない。黒い雲の向こうには血の様に赤い空が広がり、その中でも決して交わる事は無く存在感を放つ真紅の月が見下ろしていた。

 記憶にすらない光景。日本でも、セシリアの世界でもない。なのに何故か、懐かしさを覚える。


「……とりあえず、進むしかないかな」


 赤い空と真紅の月に見降ろされながら、セシリアは雑路の上を進む。草木の無い、砂利と岩だらけの地面は空の色と相まって地獄に思える。だが地獄にしては静かすぎる。何の音もしない。何の気配も感じない。

 世界に一人だけ取り残されたような、物寂しさだけが供だった。


 物寂しさだけを頼りに、セシリアはただ歩いた。道はある。一本だけ、遙か先まで続く何もない道が。

 歩いて、歩いて。ただひたすらに歩き続けた。

 代り映えしない風景に何も起こらない道のり。時間の感覚すら無くなっていく。

 やっぱり戻ってみようと思っても、背後には深い全てを呑み込む様な闇が広がっている。そこに入ってはいけない、入ったら二度と戻ってこれなくなると本能的に理解出来るから、前へ進む。闇はセシリアの歩みに比例して後ろに張り付いている。決して襲い掛かってくるわけではないが、常に傍に居る。


 ざっざっ。と自分が地面を踏みしめる音だけを聞きながら歩き続けて、次第に熱の籠った息を吐く。


「はぁ、はぁ……何時まで続くの」


 どれだけ歩いただろうか。一時間にも、丸一日にも感じられる距離を歩いた。喉が渇いて身体が水と休息を求める。滝の様に流れる汗が黒いシャツに染み込んで、重たく肌に張り付く。鬱陶しさのあまりシャツを脱いで、タンクトップの襟元を仰いで冷たい風を味わおうとしたが、風と言う風を一切感じなくて肩を落とした。

 精神世界だから風を感じられないのなら、疲労も汗もかかないで欲しいと切実に思うばかり。


「はぁ~。休んでてもしょうがないし、また歩くか~。めんどくさいな~」


 汗で重たいシャツを脇に抱えて、ため息を吐きながらセシリアは再び歩こうとする。いやいやではあるが、止まっていた所でしょうがない。結局、何が何だか分からなくて何をしたら良いか分からなくても、セシリアは歩き続けるしかないんだ。


「——お?」


 そう思って一歩踏み出したセシリアは、驚きに目を丸くする。

 何かきっかけがあった訳でも、境界線を踏み越えた訳でも無い。突如として世界が変わった。

 赤と砂利しか無かった物寂しい世界が、数え切れない程の花と植物に満ちた世界に切り替わる。唯一空だけは同じで、赤い空と真紅の月が太陽の代わりをしている。

 しかし先ほどの風景とは全く違う印象を受けた。太陽が無い筈なのに、暗さを感じない。穏やかで心休まる明かりと、天上の如き色取り取りの花々に暫し呆然となる。


「——ら——ですね」

「——そうねぇ——」

「!?」


 呆然としていたセシリアだが、人の話し声と近づいて来る気配を感じて傍の木に身を隠した。ここが何処で、何なのか分からない以上下手な行動はしたくない。

 だから息を潜めて声の主に警戒していたセシリアだったが、その姿を捉えるとまた別の意味で言葉を失う。


「ありがとうございます、ナターシャさん。こんな綺麗な場所を教えてくれて」

「良いのよぉ。引き籠ってたらぁお腹に障るしねぇ」


 マリアと、ナターシャがそこに居た。背中に純白の翼を生やしたマリアは腹が膨れている。よくよく見れば、記憶よりも顔立ちが若い。彼女は膨れた腹を慈しみに満ちた手で撫で、愛情深く囁く。そしてナターシャも、将来はどんな風になるのか。なんて語りながらマリアを支える。

 その姿は、今の確執なんて欠片も無かった。

 だから、理解した。


(私が生まれる前……魔界でのママの記憶なんだ)


 ここは過去の世界。しかも、自身が生まれる前のまだマリアが天使であった頃の記憶、風景だ。

 何故こうなったかを、現実で何が起こってるのか知る由も無いセシリアには分からない。ただ再びマリアを見れた事が、若い頃のマリアを見れた事が嬉しくて頬を緩ませた。


(可愛いな、この時のママ。今よりちょっと幼い? 系だし、歯を見せて笑う姿初めて見たかも。はぁ~可愛すぎて泣ける)


 昔のマリアの姿にだらしない表情で口を隠す。自然とニヤケ面を浮かべてしまう。

 セシリアが知っている母親は、笑う時はいつも目を細めて穏やかに貴婦人の様に笑う。それが罪悪感によって心から笑えないんだと今なら分かる。

 だから、記憶にあるのとは違う表情を見れた事が嬉しい。何より、自分がこんなに愛されて生まれる事が出来たんだと再確認出来た。


「あら、今蹴りましたよ。ふふ、凄い暴れてる」

「えぇ~? やんちゃ過ぎでしょぉ、ちょっとは落ち着きなさいよぉ」

(お姉ちゃん!! ママの身体もっと大事にしてよ!!!)


 飛び出したい。今すぐマリアの前に出て、ハグして感謝を伝えて愛してると言いたい。しかし流石に貴女の未来の娘です、何て言って混乱させないだけの理性は残っているから、じっと唇を噛んで胎の中の赤子に落ち着けと念を送るだけに留めた。

 本音の所は生来のビビりが発動しただけなのだが。

 会いたいが、会うのが怖くて足踏みしてしまうセシリアは小枝を踏んで乾いた音が響いた。


「誰だ!!」

「っ!?」


 ナターシャの鋭い声が響く。敵意と警戒が滲んでいて、即座に応戦状態に移る。

 果たしてここで正直に姿を現して何とかなるのだろうか。そもそもここは現実ではない、死んだ所でまた元の精神世界に戻るだけかもしれない。しかしそれはダメだ、ここで終わってしまってはいけないと直感的に思った。

 だからと言って何が出来る訳でもない。セシリアはただの冒険者だ、それも魔獣と正面から戦う事しかしてこなかった狩人。気配を消して音も無くこの場を立ち去る技術は持ち合わせていなかった。


「マリア様、ここでお待ちください。様子を見て来ます」

「ナターシャさん、気を付けて下さい」

(ヤバイヤバイ! 多分見つかるのは不味い)


 こちらへ警告を発しながら近づいて来るナターシャを攻撃するわけにもいかなくて、脂汗を滲ませながら後ずさるセシリアは逃げ道を探すが、あるのは綺麗さ以外取り柄のない花ばかり。

 どうしようもなくて後ずさっていてセシリアは、突如足を踏み外して浮遊感に襲われた。


「なっ!?」


 穴なんて何処にもなかった筈なのに、セシリアの身体が大穴の中に落ちていった。意識すら溶け込む様な、深い闇の底へ。

 花畑が遠ざかっていく。長い浮遊感は、しかし恐怖を感じさせなかった。まるで水の中を沈む様な感覚で、柔らかい何かに包み込まれる感覚は冷たさと同時に温かさに包まれる。

 この不思議な感覚と奈落の穴も、長い時間を過ごさせた。


 流れる闇の中は、様々な記憶が漂っている。さながら、記憶の海の中の様に誰かの思い出や記憶がセシリアの瞳に映った。


『見てくださいナターシャさん! こーんな大きなドラゴンの背中に……わわわ!!』

『あはは!! スライム塗れになっちゃった! って、わわ! 違うんです。これはちょっと悪戯を……』

『私は大事な会議の場に、ブーブークッションを仕掛けました……うぅ、廊下に正座なんてあんまりです』


 流れてくる記憶はどれもマリアの物。マリアが今までの人生で抱いて来た、温かくて大切な記憶ばかりだ。

 過去の映像をぼんやりと眺めて、知らないマリアの姿をたくさん見た。


 昔のマリアはかなり悪戯好きな所があったみたいだ。強面のオーガの騎士にピンク色のスライムをかけて、ナターシャと一緒になってゲラゲラと笑っている。

 明らかに獰猛な動物の背中に乗って、迫力満点のご遊戯を楽しんで周りをハラハラさせながら大爆笑していたり。

 悪戯や散歩のやり過ぎで、廊下のど真ん中で正座させられている記憶もある。

 しかしそのどれもが笑顔と喜びに満ちていて、釣られて笑顔を浮かべる。 

 極めつけの一等眩しい記憶が再生されれば、どうしてその記憶だけ光が強いのか一目で理解出来た。


『大きくなったら、ゆっくり旅をしたいですね。家族四人で、色んな景色をこの子達に見せてあげたい』


 膨らんだ腹を撫でながら、隣に立つ夫であろう男と将来を思って理想を語る姿がそこにあった。生まれてくる子に対する無上の愛情。本当に、心からセシリアともう一人の生まれてこれなかった双子の姉に対する愛情があるんだと心が温まる光景だ。

 疑う気持ちは欠片も無かったが、マリアからの愛情を再確認してセシリアの心が満たされる。


「とと……」


 そんな光景に微笑んでいる内に、記憶の劇場は終わりを告げ足裏に確かな感触が伝わる。

 どうやら、ここが終着点の様だ。

 見渡す限りの闇。灯り一つ無く、地面を踏む感覚が無ければ平衡感覚すら失われそうだ。しかしセシリアは進むべき道を分かっているのか、確かな歩みで先へ進む。

 深い闇の中を進む内に、すすり泣く弱弱しい声が聞こえた。


「ママ」


 すすり泣く声に導かれるままに闇の中を歩いていると、ポツンと弱弱しい光の中で蹲る大好きな母の背中を見つけた。彼女はセシリアの呼びかけに答える様子は無く、ただただ涙を流し鼻を啜る音だけを聞かせる。

 近づこうとしたが、見えない壁の様な物に阻まれて近づけない。

 今すぐにその小さな背中を抱きしめて、大丈夫、泣かないでと支えてあげたい。夢の中とは言えそれが出来なくて、歯がゆい気持ちで不可視の壁を殴りつけた。


『ごめんなさい……ごめんなさい』


 マリアはただ涙ぐんだ声で謝り続ける。何に謝っているのかを聞くことは出来ない、慰める事も出来ない。

 何も出来ない無力感に深いため息をついたセシリアは、見えない壁に凭れ掛って座り込んだ。背中合わせには、一人分の距離が出来ている。


『ごめんなさい』

「謝らなくて良いよ。私はここに居るから」


 背中合わせで、慰めの言葉をかけるが効果は無い。どうすれば良いのか分からなくて、膝を抱えるセシリアの前に誰かが現れた。

 男が居る。

 黒い髪は女の様に長いが、一つに細く纏められていて風も無いのにゆらゆらと揺れている。

 顔立ちは何処か懐かしさを覚える、切れ長の眦と精悍な面立ち。しかし相手に威圧感は与えない柔らかい雰囲気を身に纏っている。

 何より、暗闇の中でもはっきりと見える真紅の瞳が相手が人間では無い事を裏付けていた。


「誰」


 とは聞いたが、セシリアは敵意を見せなかった。

 最初は悪魔が現れたのかと思ったが、肌の色が違う。青い肌ではなく、セシリアと同じ白い肌だ。真紅の瞳に白い肌。そして自分とマリアだけの精神世界に現れる男が無関係の類とは思えない。何より、不思議と他人の気がしなかった。

 男を体育すわりで見上げたまま、セシリアが無言で睨んでいると男は肩を竦めてセシリアの隣に腰を下ろした。


「……」

「……」


 二人共、一言も言葉を発さない。

 セシリアは脱いだシャツを手持ち無沙汰に弄りながら、流石に異性の前でタンクトップ姿はどうなのだろうと汗の不快感に顔を顰めながら着る。男は見るべきものなどない暗闇の先をぼんやりと眺める。身体を傾ければ肩が当たりそうな距離だが、その僅かな距離が遠く感じる。

 そろそろこの沈黙も苦痛に感じて来た頃合いで、男が意を決すように息を吸った。


「名前を……教えてくれないか」


 溜めに溜めたと思ったら、そんな言葉を掛けられた。顔は背けたられ、今の男がどんな顔をしているのかが分からない。

 何を言われるのかと緊張していたセシリアは、予想外の陳腐な質問に肩透かしを食らって小さく笑う。


「人に名前を尋ねる時は、自分から名乗りなさいって言うけど?」


 悪戯心で素直に答えて上げないセシリアが挑発する様に口端を引いて答えれば男は目を丸くした後、軽く噴き出す様に笑って口元を手で抑えながら目を細めてセシリアを見た。


「はは、そうだな。失礼だったな」


 男は愉快そうに静かに笑うと、今度は柔らかい微笑みを浮かべた。その微笑みは見覚えがある。セシリアをそこらの子供と変わらずに普通に接してきてくれた、大人たちが浮かべていた微笑み。


「名乗りたいが、その資格が無くてね。そうだな……俺の事はパパと呼んでもらおうかな」

「それもう実質名乗ってるじゃん。じゃあ私は、世界で一番可愛い愛娘ちゃんって呼んでよ」


 男は名乗らない。それはここが現実では無いから。生きた人間ではないから。

 そこに居るのがマリアの記憶による物か、セシリアの力が生み出した残滓かも知れない。でもそれで充分だった。

 雰囲気の和らいだ二人は他愛ない会話を重ねた。


「今は楽しいか?」

「辛い事は沢山あるけどね。日本で生まれ変われたらって思う事はあるよ、でもママが居るからそれだけで幸せかな」

「友達は出来たか?」

「うん。とっても可愛いくて頼りになる女の子と、変な絡み方をしてくる貴族の女の子とか。他にも沢山いるね」

「今は学生か?」

「冒険者だよ、学校は貴族専用。知ってる? 勇成国っていう国、絶対日本人が作ったのにそこら辺の詰めが甘いんだよ」

「あぁあの勇者の国か。まぁ差別と迫害を無くすので手一杯だったんだろう、あんまり悪く言ってやるな」

「やっぱり初代勇者ブレイドってのと知り合いなんだ。ていうか何でブレイド? 日本人でしょ?」

「趣味らしい。完全に黒歴史だよな」


 生まれて初めて会う相手。だが返す言葉は饒舌で、身振りを交えながら機嫌が良くなった。

 男はセシリアの言葉一つ一つに嬉しそうに頷いて、15年間で何があってどんな風に過ごして来たかを聞いて来た。

 それは長い、とても長い時間だ。15年分の空白を埋める様に、二人は沢山語り合った。

 語って、語って語り合って。時にはジョークも交えて楽しく笑って、時には神妙に耳を傾ける。

 気のせいか、いつの間にか暗闇の向こうが白みがかっている気がする。まるで夜明けの直前の様で、ゆっくりとその光はセシリアの元へと広がってくる。


「朝か」


 どうやら時間切れらしい。

 そんなに話し込んだ気はさらさら無かった。だがここに時計があれば、短い針が一周はしていただろう。

 名残惜し気に呟いた男に、セシリアも前を向いて無言で同意する。


 現実ではないこの世界に果たして朝はあるのだろうか。向こうから見える光は夕焼けの様に赤い。セシリアの愛衣であった頃の前世の最後の様に、真っ赤な赤い光だ。

 その光は男だけを器用に避け、セシリアを照らす。二人を境界線で裂くように、光と闇に二分された。


「最後に、一つだけ聞かせて欲しい」


 闇の中に取り残されたまま、男は立ち上がって聞いて来た。その視線は見えない壁に阻まれた向こうで、声を押し殺して泣き続けるマリアの背中へ注がれている。


「マリアは好きか?」


 愚問だ。

 今更聞くまでも無い事。

 答えの決まりきった質問に、苦笑いを浮かべる。


「好きとかそういうんじゃないよ」


 夕焼けに照らされたセシリアは、一人で立ち上がる。

 手を借りず、自分の足で立ち上がる。


「愛してる」


 色々変わってしまった。

 故郷を襲われ、育ての祖父母を殺された。友達も失った。平穏も、安らぎすら失われた。

 例え化け物になっていたとしても、元とはいえ人間だって殺した。生きた人間だって本気で殺そうとした。

 お気に入りの空色の瞳だって変わってしまった。

 一か月も経ってないのに、もう随分と昔の事の様に思える。それ位、目まぐるしい日々だった。


「悪いとは思ってるよ。でも文句は無しだからね、クレームは直接で」


 しかし変わらない物は確かにある。

 気持ちだけは、変わらなかった。

 振り返れば、何も変わっていない気がした。初めから、不変の気持ちだったかもしれない。


「私がママを絶対に幸せにするから」


 マザコン極まる娘は、キリッとした顔で指を突きつける。なまじ顔が良いから様になるが、言ってる事はただのマザコン宣言だ。

 言われた男が相手だけに、男は苦笑しつつ安堵する様に肩を竦めた。


「はは、立つ瀬が無いな」


 男は安心しきった表情でそれ以上を語る事は無かった。聞くべき事は聞いた、もうこれ以上言葉は必要ない。

 ただ、まだやるべき事は残っているのかセシリアへ近づく。


「覚悟は良いか」

「全然」


 構えを取る男に、セシリアは警戒無く腕を広げて受け入れる。この人なら大丈夫、害になる事は絶対にしないと言う信頼感がある。

 男は心を鎮める様に息を吐き、右手を引く。

 その右手に黒い靄が纏わりついた。マリアが身に纏っていた靄にも似ているが、それとは少し違ってキラキラと輝いている。まるで、夜空の星々の様な綺麗さだ。

 しかしそれがただ綺麗なだけのエフェクトではなく、攻撃するための用意である事は、一目瞭然。

 目は逸らさなかった。


 血飛沫が舞う。

 男の右腕が、セシリアの心臓を貫いた。心臓を鷲掴みにされ、背筋にうすら寒い感触が走る。しかしそれもすぐさま燃えるような熱にかき消された。


「ぐっ……!! ぁ“ぁ”ぁ“あ”あ“ああ!!!!」


 ただ胸を貫かれた痛みではない。男の腕に纏わりついてた黒い靄が、魔力がセシリアの身体の中に流れ込んでいく。水と油が相反する様に、他人の魔力が流れ込んでくる拒否反応に全身を引き裂かれる様な激痛と虫が這う不快感がセシリアに絶叫を上げさせた。


 耐えろと男が言っている気がするが、身体の中に異物が流れ込んできて魂をこねくり回されているセシリアには聞き取る余裕は無い。

 歯を食いしばって、指を手に食い込ませて必死で激痛に耐える。

 自分の身体の中に流れ込んでくる魔力が、セシリアの魂を喰らい裂いていく。セシリアの真っ白な魂にこびり付く、黒い泥を男の魔力が根こそぎ引き千切っていく。だがそれは、セシリアの魂ごと引き千切る強引な所為で、全身の神経に針を突き刺すような激痛に苛まれた。


「ぐぎぎ……!! っはぁ!! ……ぜぇ、ぜぇ……」


 必死で耐えて、耐え抜いたセシリアは暴れ狂う激痛が止んだ瞬間、膝を着いて倒れた。

 二度目だから耐えられた。昔に、アイアスの手で無理やり魂から魔法を引き出された時の経験が無ければ、耐えられなかっただろう。

 魂なんて感知出来ない物が上げる激痛は肉体の激痛を上回る。脂汗を垂れ流し、穴と言う穴から血が滴る。


 気づけば男の姿は無かった。役目は終えたとばかりに、その姿を忽然と消している。文句の一つでも言いたかったがそんな余裕も無い。

 だが身体を満たす一体感が、男がセシリアに力を与えてくれたのだと確信する。


「はぁ、はぁ……女の子なんだからもっと優しくしてよ」


 血を拭い、セシリアは立ち上がる。

 身体はふらついて痛みが後を引くが、何をされたのかは理解出来る。何をすべきかも理解したセシリアは、マリアを隔てる不可視の壁に向き合った。

 すべき事は変わらない。その力を与えられただけ、後はいつも通りだ。


 拳を振り上げる。


「おらぁ!!」


 あれほどどうしようも無かった不可視の壁が、突き破られた。ガラスが割れるような音が響いて、マリアへ一歩近づく。

 そして壁を一枚割ると、感情の濁流がセシリアへ吹きすさぶ。


『ごめんなさい……逃げてしまって、ごめんなさい』


 流れ込んできたのは後悔。

 夫と、友と、故郷を見捨てて一人だけ逃げた事への深い後悔の念がセシリアを歩みを邪魔する。

 共感する。同情もする。だけどセシリアは更に前へ進み、また一枚壁を割った。


『ごめんなさい……私の所為なんです。セシリアに傷ついて欲しくないのに』


 無力感。

 同じだけの後悔と共に、何も出来ず娘が傷つけられていくのを見ているだけの自分を、酷く罵って嫌悪して痛めつけていた。

 本当は普通に育って欲しかった。争いも何も知らず、ごく普通の子供として育てて上げたかった。なのにそれが出来ない、止めることも出来ない。

 娘に守られて、娘を戦わせてしまう自分が、普通の子供に産んであげられなかった親としての後悔はマリアの心を茨に包み込ませた。

 共感はしない。同情もしない。だってこれはセシリアが選んだ道だから。


『ごめんなさい……娘を……娘を愛してごめんなさい』


 最後の壁は酷く脆かった。触れるだけで崩れ落ちる壁を抜けたセシリアを迎えたのは、罪悪感だった。

 親として何も出来ないのに、親らしい姿なんてろくに無かったのに、親として失格の気持ちを抱いてしまった。

 それがどれだけ罪深い事か。どれだけ残酷な事か。

 過去への後悔と無力感に苛まれるマリアにとって、それは死んでしまった方が良いと本気で思う程に、追い詰めた。


「ママ。私はこの気持ちは、ごめんなさいじゃないと思うよ」


 セシリアは弱弱しい彼女の背中を見つめる。思ったのは、小さな背中だなと。こんな小さな背中に、沢山の物を抱えているんだ。セシリアだって沢山の物を抱えていると思っていた。

 だが、マリアの感情を魂で感じた今、自分の抱える物なんて些細な物だと分かった。

 恋をする事は良い事だと思っていた。例えそれが倫理に反する事でも、しょうがないと。だってそれだけ魅力的なのだから。

 しかしマリアはそうではなかった。ただでさえ自責の念が強かったのに、娘への恋心という親として最もしてはいけない事は、マリアをただ追い詰めるだけだった。


「っ!」


 小さくて沢山の物を背負った、誰よりも見慣れた背中へ指先が触れると、拒絶する様に弾かれた。指先からじくじくと痛みが走り、尾を引いて痺れさせる。良く見れば触れた所が火傷した様に爛れている。

 傷口から伝わるのは、痛みと熱だけではない。

 今まで感じたどの想いよりも強く熱い、愛が伝わる。セシリアの恋心なんておこがましく感じる程の、燃えるような恋と爛れる程の愛。


「嬉しいけど、出来ればこれは言葉で聞きたいな」


 爛れた指先を噛み千切って、セシリアは挑戦的な笑みを浮かべた。

 自分より強い想い? 自分より重たい過去? 冗談じゃない、こちとら生まれ変わってもマザコン気質は変わらなかったんだ。どれだけセシリアが母親を求めたと思っている。死んでも変わらなかったマザコンがこの程度の熱に怯えると?


 負けず嫌いさが発動したセシリアは、躊躇う事無くマリアに抱き着いた。


「っぐぅぅぅ!! 両親揃って痛い事ばっかり!! 絶対後で文句言ってやる!!」


 抱き着いた面が尋常じゃない熱で焼けていく。激痛だが、男から受けた痛みに比べれば文句を言う余裕だってある。

 肉が焼ける痛みを歯を食いしばって耐えながら、全力で抱きしめる。小さな背中に背負った物ごと、マリアの熱に負けない程の強さで。

 私だって負けないんだぞ。私の方が想いは強いんだぞ、と。


「ごめんなさい。ごめんなさい」

「謝らないで!!」


 だがマリアは今だ自分の殻に籠ったままだ。これだけ強く抱きしめても想いは届かない。ならもっと強く伝えるまでだ。人間らしい行動で。


「この気持ちを否定しないで! 辛いのは分かる! でも私が居る! 私が背負う! ママの全てを、ママの人生を私が貰うから!」


 言葉は通じた。マリアの謝罪の声が止んだ。涙が止まった。でも後一つが足りない。

 言葉では足らない。まるで善人の言葉を信じられない子供の様に、恋人の気持ちを信じ切れない女の子の様に。

 兆しは見えたが、決定打には欠けた。

 古来より気持ちを通じる為に必要なのは一つだ。

 やる事は一つしかない。セシリアが夢の中で何十回何百回と繰り返した練習の、本番だ。


「ママ。大好きだよ」


 やるべき事は分かってる。

 相手の顎を掬って、物欲しげな目を見ながらしてあげるだけ。たったそれだけ、顔を近づけて触れれば良いだけなのに。

 涙に濡れたマリアの目を見つめたまま、動けない。


(あぁ、ぼんやりとした表情で見上げるママ可愛い! じゃなくて!! しろ! やっちまえ私!! 死ぬほどしたじゃん、ここだって同じ精神世界なのに!!)


 チキった。

 土壇場でチキりやがった。

 今目の前にいるマリアが、自分が作り上げた幻ではないと分かっているから足踏みしてしまう。

 唇を噛んで、狼狽えて、行け、行け。と自分を前に押し出そうとする。あとちょっと、後ちょっと顔を前に出すだけで良いんだ。だがセシリアの初心な部分が尻込みする。


「ぁ……」


 そんなセシリアの躊躇いが、漸く殻が剥がれかけたマリアに焦りが募る。尻込みしてる場合ではない。痛みに歯を食いしばって必死で伝えたのに、その言葉を証明出来なくてどうすると言うんだ。


(やってやる! 女は度胸!!)


 頬を全力で叩いて余計な思考を吹き飛ばして、衝動的に動き出した。


「んっ!」

「ぁん……!?」


 半ば押し倒す様に身体をつんのめさせ、柔らかい唇を重ね合わせた。

 勢いが強すぎて歯が当たって、口の中に俄かに血の味が広がる。緊張しすぎて感覚も分からないし、抱きしめた方が良いのかダメなのか手は宙を彷徨う。

 初心と言うか童貞らしさが出過ぎたキス。

 だが、目だけは逸らさなかった。

 真っすぐに、空色の瞳に真紅の瞳を映り込ませる。嘘ではないと、これが私の本気の気持ちだと、それだけは真摯に伝えた。


 逸らさない真剣な視線だけでは無い。共有される熱い吐息に、唇から伝わる熱に、マリアの身体に触れた時の燃えるような痛みよりも熱いこの想いを多分に載せて。

 重ねた唇だけは怪我を負わず、やがて銀の糸を引きながら離れた。

 ゆっくりと、マリアの空色の瞳に光が灯る。


「っ……セシ、リア?」


 気持ちが伝わったのか、驚きに目を見開かれているマリアから初めて謝罪以外の言葉が呟かれた。殻を破る事に成功したらしい。良かったと安堵するセシリアを、マリアは何が起こったのか分からない様子できょとんと見上げている。

 セシリアが生み出した幻覚でも虚像でもない。本物のマリアがここに居る。それだけで、さっきまでキス一つに恥ずかしがっていた姿なんて忘れ、その細くて脆い身体を折れんばかりに抱きしめた。


「え、あれ? セシリア!? どうして……」


 マリアの、本物のマリアの声を聞いて熱い物がこみ上げて来た。何か言おうと思ったのに、上手く言葉を紡げなくて代わりに抱きしめる力を強める事で返事の代わりとした。

 抱きしめられるマリアは何が何だか分からなくて困惑してるが、暫くするとおずおずと抱きしめ返した。


「本物……なんですね」

「うん。うん!」


 長い事離れ離れになっていた。時間にしたらそうでもないが、心情的には耐えきれない程の長い年月を経ての再会にすら思える。

 だから、嬉しくて涙すら出てしまいそうだった。


「なんだか、背が伸びた様な気がします」

「色々あったんだ。外に出たら話したい事が沢山あるよ」


 長い抱擁は、流石にそろそろ終わりにしようと名残惜し気に離れた。

 マリアは感慨深げに見上げ、セシリアは嬉しそうに目を細めながら髪を撫でた。互いに言葉なく見つめ合い、二人だけの世界に入る。いつも通りの母娘というには甘すぎる雰囲気を醸し出した。

 どれだけの非日常にあっても、この二人にかかれば瞬く間に変わらぬ日常へと変わる。


「でも、どうやって外へ出ればいいんでしょうか」

「う~ん……ん?」


 二人共正気を取り戻したが、さてどうやってこの精神世界から抜け出すべきかと首を傾げた所で、マリアは懐に重みを感じる。

 脇に銃を納める形のホルスターの中に、純白のリボルバーが鎮座している。アイアスから誕生日祝いとして貰った、セシリアの為だけの銃が。この精神世界に来てから、もう一人のセシリアの精神世界でしか使えなかったリボルバーが、自分を使えと言わんばかりの圧を放ってそこに居る。


「なんで。今までお姉ちゃんの所でしか使えなかったのに」

「お姉ちゃん? ……セシリア、これアイアスさんを感じます。何か、繋がりを」


 リボルバーを手に取って、二人して眺める。

 掌に伝わる重みは、確かに本物の重みだ。金属の冷たさとグリップのざらざらとした肌触り。普通の銃ならもっと軽いが、セシリアの為だけの銃は持つだけで直ぐに疲れるのが分かるほど重い。だが今は、そこにまた違う重みを感じる。

 重みを味わいながら、銃身を撫でた。

 バカ重い銃に相応しい、バカ太いヘビーバレルの銃身。殴ったらこれだけで人を殺せそうな程の固さと重さを持つ。


「弾は……一発しか入ってない」


 弾倉を横へずらして中を改めれば、一発だけ弾が入っている。薬莢すら無い。そんな訳は無かった。直前に使った時は五発全て入ってたし、自決用の一発しか使ってない。

 つまりチャンスは一度きりとあの不愛想な年寄りが、むすっとした顔で文句を言っている顔がありありと思い浮かべられた。


「何かを撃て。と言う事でしょうか」

「何かって、何もないよ」


 チャンス()はあっても、何も撃つ対象が無い。明るくなってきたとはいえ、見渡す限りの闇の中。ここは精神世界の真っただ中だ。

 何もない場所を撃って、一度しかないチャンスを不意にする度胸は無い。

 じゃあどうしようと二人で首を捻ってると、遠くから腹に響く音が聞こえた。


『フザケルナァァァァァ!!!!』


 遠くの方から響く音は、地獄の底から響くような怨嗟の怒号だった。

 闇の中でも存在感を放つ、おどろおどろしい呪いと怒りの泥がセシリア達に向けて近づいて来ている。

 泥の塊は、巨大な女の様に見える。泥の女が、地面を巨大な手で殴りつけながら這って来ている。

 セシリアには覚えのない化け物は、マリアには何かを理解した。

 

「あれは……天使の力」

「天使!? どうみても悪魔とか化け物とかの類でしょ!」

「あぁいえ、堕天使の力です。堕ちた力が、私の所為でああなってるんです」


 暢気に会話してる間にも、泥の女は刻一刻と近づいて来る。身体を崩しながら、怨嗟と怨恨だけで襲い掛かってくる。

 空色の眼球から流れ落ちる赤い泥が、まるで涙の様で。痛ましい程に必死だった。


『ワタシをヒテイするナァァァ!!! オマエが!! オマエがノゾンだんダロォォォ!!!』


 マリアがこの世界から抜け出せば、現実の世界に居るマリアは存在を失う。セシリアの様に同調は出来ない。あれは沢山の人がセシリアに力を貸してくれたから出来た事だ。

 何より、怨嗟に塗れた力にその気は無いだろう。


「まぁ、撃つべき相手が来てくれたって事かな」


 セシリアにも、その気はさらさら無かった。大好きなマリアにあんな気持ち悪い物は要らないんだ。

 迫りくる泥の女に、セシリアは一発しか入ってないリボルバーを向けた。

 ゆっくりと上から下ろし、片手で狙いをつける。撃鉄を倒し、後は引き金を引くだけ。


「……はは」


 慎重に狙いを定めたセシリアは、後はもう指を引くだけと言う所で乾いた笑い声を漏らした。

 何故撃たないのか。それは震える銃口が理由。


「ごめんママ。ちょっと引き金引けない」


 さんざん無理して来た反動がここに来て現れた。最早セシリアの身体に引き金を引く力すら残っていなくて、重たい銃を泥の女に向けるので精一杯でしかなかった。引き金位は引けるだろうと甘く見積もり過ぎて、いざ引き金に指を掛けたらその力すら無くて笑えた。

 引き攣った笑みを浮かべてマリアを見ようとしたセシリアは、横から支える様に伸ばされた手に虚を突かれる。


「私、決めた事があるんです」


 マリアが、セシリアの身体を支えながら引き金に手を重ねる。

 彼女は強い意志を強調する様に、真っすぐに前を向き続ける。もう顔色は窺わない。何を言われようとも、絶対にこの意思だけは曲げないと言うようにセシリアを見なかった。


「もう二度と、あなたに背負わせません。もう二度と、逃げません。もう……誰かの背中を見上げるのは嫌なんです」


 言葉にして、宣言する。

 行動にして、証明する。

 後ろではなく、隣に立つ。引き金を引かせるのではなく、共に引く。

 今まで逃げてばかりだった彼女は、もう逃げる事を選ばなかった。


「……ママ」


 マリアの覚悟を、小さく震える重ねられた手の震えと共に感じた。

 セシリアの胸中に浮かぶのは、大好きな母親を戦わせてしまう忌諱感。守り切れなかったが為に辛い選択をさせた後悔。戦わせたくなかったからこそ、セシリアは血反吐を吐いてでも戦い続けたんだ。

 だがそれ以上に、嬉しいと思ってしまった。

 嫌だけど、本気で嫌だけど嬉しいと。

 そしてマリアの覚悟が硬い物だと疑う余地も無いからこそ、それ以上は何も言わない。

 ただ真っすぐに同じ先を見つめ、小さくて脆いと思っていた身体に少しだけ肩を預けた。


「分かった。でも、あんまり危ない事はしないでね」

「貴方がそれを言いますか?」


 引けないと思った重たい引き金は、末恐ろしい程に軽く感じた。交わされる軽口の様に、気負う物が無い。

 二人分の力で、決別への手向けを添えた。


『ァ“ァ”ァ“ア”ア“ア”!!!』


 泥の女は、それだけは止めろとでも言うように絶叫を上げながら巨大な腕を振り上げる。振り上げた腕が半ば溶け落ち、身体も殆ど原型を留めていない。ただただ醜悪な姿に、二人は憐れみの視線を向けた。

 それは泥の女にとっては、腸が煮えくり返るほどの屈辱なのか、青い眼球が憤怒の炎に歪んだ。

 産毛が逆立つような殺気を直前で浴びながら、二人は未来の為に引き金を引く。


 ドパンッ!!


 放たれた最後の銃弾は、今まさに腕を振り下ろそうとした泥の女の眉間を貫いた。衝撃に泥の女は仰け反り、天に祈る様に目を見開きながら空を仰ぐ。

 見開かれた双眸から、静かに涙の様な泥が流れた。


『イヤ————』


 悲痛な遺言を言い切る事無く、女の頭は50口径炸裂徹甲弾によって弾け飛ぶ。地響きを鳴らしながら倒れた女の身体は、もうそこに魂の欠片も残っていないと証明する様に溶け落ちて、地面に空色のネックレスだけを残して消えた。

 悪では無かった。あれもまた、マリアの弱さが生んだ化け物だった。

 喜んでいいのか、悲しめば良いのか正しい答えを見いだせない二人はただ無言で、悼む様にネックレスを拾い上げる。


 そのネックレスこそがカギだったのか、二人の目の前に眩いばかりの空間の歪みが現れた。まさに、この囚われた精神世界からの出口が。


「……行こ」

「えぇ。今度は、二人で」


 セシリアが差し伸ばした手を、マリアは握りしめる。

 そして、今度は何があっても絶対に離れない様に。離さない様に力強く指を絡ませた二人は、光の中へ一緒に進んでいった。


 最後に光の中でセシリアが振り返ると、そこに男と少女が居たような気がした。


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