第3話 お勉強会しようと思ったんですよ
相変わらず暑い日が続く中、相変わらず何時も通りな二人。
たまには、と思いちょっと行動するようですよ?
樹海探索から約1週間。
相変わらず金属の叩く音が響き渡る工房内は何時も通り平和だった。
生活の為、そして自分がやりたいから今日も工房で作業し続けるリエルラ。
それを全力でサポートしつつお店の店員も務めるシエルラ。
姉妹である二人の大体いつも同じような平凡だけどそんなに退屈でもない1日が過ぎていた。
カンカン・・カンカン・・と鉄を叩く音が鳴り響き、それが止んだ後。
「よし、売れ筋のいい武器をまた作ったよっ」
リエルラが武器を作り上げて、それをシエルラに手渡した。
「これ人気だよね、じゃ、また店頭に置いてくるね」
シエルラは笑顔で店頭に向かっていった。
シエルラを見送った後、工房内でお茶を汲み、椅子に腰掛けてちょっと一服する。キンっと冷えたお茶が今日も美味しい。お茶を飲みきった後に軽く背伸びをし、「・・ん~っ」というちょっと気の抜けた声を漏らす。
「最近は結構売れ筋いいしありがたいけど、こう、何か面白いことないかなぁ」
単純作業を繰り返す事があまり好きではないリエルラは、何か新しいことをやりたがっていた。
とはいえ、新しい武器を作ろう!というのも何か気が引ける。
「んー・・何か・・新しい技術・・・。こう、何かの仕掛けで動く武器とか作れたらなー・・。まぁ、魔法使えるわけじゃないし、夢みたいなものだよねぇ・・」
なんて独り言を呟いたりしていた。割と大声で。
「はー・・シエルラは魔法使えるのに私は使えないからなぁ・・脳筋だし。アッ自分で言っちゃった」
セルフツッコミを決めつつ、工房内を見渡す。いつもと変わらぬ風景、見てて飽きたりはしないが少し新しい風を入れたい気もする。
そして、あることを思いつく。
「・・そうだ!他の人の技術を学べばいいんだ!何か面白い事知れるかもしれない!」
そう、(簡単に言えば)勉強である。
「こうとなればー・・よし、今日の営業おしまい!ペンとノートと小銭持ってちょっと街の他のお店に行こう!」
一度決めたらすぐ実行、それがリエルラ流。
店頭で店の整理をしていたシエルラに、
「シエルラー!今日は勉強しに行こ!!」
「えっ!?いきなり!?」
とほぼ無理やり営業終了にさせて、お出かけの支度をさっと済ませて二人は店から出ていった。
「というわけで急遽お勉強会をしようと思ったわけですが!」
「リエルラぁ・・・本当に唐突だね・・?」
「いつものことじゃん?」
「そうだけどさー・・もうちょっと事前に言ってほしいなぁ・・」
ちょっと呆れてるシエルラを引っ張りながら街の通りを歩くリエルラ。
シエルラは若干引っ張られつつもリエルラに付いて行った。
「そういえば、勉強会とか言ってどこ行くの?」
「とりあえず、なんかいつも面白そうな物作ってるヴァンド先生の所に行くよ!」
「ええっ!?」
ヴァンド先生、正しくはヴァンドギエフという街の中でもかなり大手の鍛冶職人の工房に行くというのだ。ちなみに、リエルラとは顔は知り合ってる仲ではあるが勉強会は一度もやったことはない。
「ヴァンド先生・・だ、大丈夫なの?向こうは大手だよ?私達のところみたいに知る人ぞ知るとかってレベルじゃないから相当忙しいと思うんだけど・・?」
「あ、大丈夫!あそこ従業員多いからヴァンド先生自体は多分ひましてる!」
「そうなのかなぁ・・」
大丈夫!と決めつけているリエルラと、大丈夫かなぁ・・と心配するシエルラ。
あれこれおしゃべりしながら、気づけばヴァンドギエフの工房の前に到着していた。
工房の前にあるお店の中には、冒険者がちらほらと入っているのが見える。
「この時間でもこれだけの人がいるってすごいね・・」
それを見たシエルラがボソッと呟く。
「まぁ何言おうが大手だからねー、これだけ居ても不思議じゃないね」
わかりきっている表情のリエルラはそう言って、お店の中に入っていった。
カランカラーン、と扉についているベルが鳴く。
リエルラらに気づいた店の店員(男性、ちょぴりクールでイケメンな感じ)が挨拶をする。
「いらっしゃい、おや、珍しいお客さんだ」
「あ、お久しぶりです!えと・・リヴトさん!」
「今日はちゃんと名前間違わないでくれたね、嬉しいよ」
「流石にそろそろ覚えました!!」
リエルラが少し恥ずかしそうに、でも少し照れながらそう言った。
「で、今日はどんな要件で?」
店員であるリヴトが尋ねる。
「んと、鍛冶のお勉強をしたいと思ってヴァンドギエフ先生と会いたいから来ました!」
「なるほど、今師匠いるかなぁ・・ちょっと見てくるね」
「はーい!」
要件を知ったリヴトは、店の奥に小走りで入っていった。
「大丈夫かなぁ・・」
相変わらず心配なシエルラ。
「ま、大丈夫でしょ!」
相変わらず前向きなリエルラ。
「もし無理だったら、大人しく帰って寝ればいいかなーとか思ってるし」
「相変わらずのマイペースだねリエルラ・・」
数分後。店の奥からリヴトが戻ってきた。少し息が荒い。
「んと、師匠は今大事な依頼の品を作ってる最中だから、あんまり会話は出来ないけどそれでも構わないなら見学ならOKとのことです」
「よし見学します!」
即答であった。
「では、こちらへどうぞ」
二人は、リヴトに連れられて店の奥へと進んでいった。
すいません、書いてて日付けが変わったので明日続きかくと思います。
ヴァンドギエフ、どんな人でしょう?
おっさん?老人?名前とは裏腹に女の子?もしかしたらショタ?
それがわかるのはまた次回。