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クラスのアイドル(1)

どんなクラスにも一人はいるキャラクターというものがある。


例えば普段目立たないのに文化祭になると急に輝き出すやつとか、みんなのおかんみたいなやつ、あるいは授業中に工作とかしてるやたらと多才なやつ、その他秀才やギャルや本の虫など様々あるが、その中にクラスのアイドルというものがある。文字通りそのクラスで一番可愛く、人気のある女子生徒のことだ。二次元の世界では、裏の顔があったり計算高い女であったりといった設定を付けられることもしばしばである。




さて、そんなクラスのアイドルが女を愛でる男こと、愛男めでおのクラスに在籍しているのであった。


「柏餅さん、また告白されたらしいぞ、たけやんに」


ゴシップが大好物な瓶谷は心底嬉しそうに言う。


「だけやんってどこのたけやんだよ」

「さあ?」

「適当だな……」

「まあなんだ。要するに、柏餅さんは今日もモテるってことだ」


柏餅結かしわもちゆい、いわゆるクラスのアイドルだ。クラスで一番可愛くて男女関わらず、特に男子からは絶大な人気を誇る。


「しかし、あれだけ可愛ければモテるのも頷けるな」

「お?」


すると瓶谷かめたにが今日一番の嬉しそうな表情を見せる。


「何だよ」

「いや、お前にもあるんだなーと思ってな。その……審美眼みたいなものが」

「そりゃ俺にだって、可愛いか可愛くないかの判断基準ぐらいはあるさ」

「ほほう……。是非とも詳しく聞きたいね、女を愛でる男こと愛男くんは一体どんな女の子を可愛いと思うのか」

「待て待て、俺はただ判断基準があると言っただけで、可愛いからどうとかそういうのは……」

「誰が可愛いって??」


突然飛び込んで来た声に、愛男と瓶谷は思わずその方向を見る。噂をすればなんとやら、我らがアイドル、柏餅結であった。


「おお!柏餅さんじゃないですか!今ちょうど柏餅さんの話をしてたんだよ!」


こういう所が一般的な女好きと女を愛でる愛男との明確な違いであろう。女好きは女を見るとすぐに話しかけるが愛男は違う。絶対に話しかけない。愛男の名誉のためにも一応言っておくが、決して緊張して話しかけられないのではない。あまり気軽に話しかけて良いものではないと思っているからだ。


「あたしの話?え、なになに、可愛いってあたしのこと??」

「そうそう、なんかまた告白されたみたいじゃん。たけやんに」

「おい瓶谷、それだと毎回たけやんに告白されてるみたいじゃないか。どこのたけやんか知らないけど」

「ははは、小那古くん面白いこと言うね」


クラスのアイドルに褒められる愛男。


「そうなんだよ、愛男は面白いんだよ」


お前は黙ってろ瓶谷。と、心の中で愛男は言った。


「たけやんっていうのは、一組のたけやんね。確か……野球部だったかな?」

「相変わらずすごいね、柏餅さん。この前はバスケ部の部長に告白されてなかった?」

相変わらずどこからそんなネタを仕入れてくるのかと首をかしげる愛男をよそに二人はどんどんと話し込んでいく。

「高二になってからは初めてだよ。去年も合わせると十九人かな。もちろん全部断ったけど」

「わずか一年の間に十九人とは、なかなかのもんですよ。逆に付き合いたい人とかいないの?」

「うーん、特にそういうのはないかなー」


完全に蚊帳の外に置かれた愛男は二人の軽快な言葉のキャッチボールを眺めていた。柏餅結の社交性もさることながら、瓶谷の社交性も侮れない。というかこいつ、女の子にも積極的に話しかけているが、こいつこそ女好きなのではないだろうか。人のことを変態性癖だとか抜かしておきながら、こいつこそが真の変態性癖ではないか。愛男は瓶谷を見ると、瓶谷も愛男を見た。


「あ、そういえば、愛男が柏餅三のこと可愛いって言ってたよ」

「は?」

「え!それほんと!?」

「え、いや、本当といえば本当だけど……」

「いや~照れるなぁ~」


あっはっはと笑う柏餅。愛男は余計なこと言うなという視線を瓶谷に送ったがとうの瓶谷はどこ吹く風、あっはっはとアホ面さらしていた。社交性の高い二人は楽しそうだが、愛男は全くもって楽しくない。


「あ、そうだ」


と、そこで柏餅は何かを思い出したように言った。助け船が来たとほっとする愛男。


「あたし達、今日日直だったじゃない?それで先生がちょっと来いって…………たぶん、掃除のことだと思

うんだよね……」

「掃除!?……すっかり忘れてた……」


助け船じゃなかった。泥船が助けに来たというべきか。柏餅の言うとおり、愛男と彼女は今日日直だった。日直の主な仕事は黒板消しとプリント配り、そして空き教室の掃除だ。愛男はそれをすっかり忘れて、つい、いつも通りの掃除場所に行ってしまっていた。


「あたしもすっかり忘れてて……。たぶん今から掃除しろって事なんだと思う」

「ああ……。面倒くさいが仕方がないな」

「まず職員室に来いって言ってたから、ちょっとお説教食らうかも…………」

「憂鬱だ」


愛男と柏餅は重たい足取りで教室を出て行く。教室を出る直前、愛男はふと一人残された瓶谷の方を振り返る。するとそこにはイベント発生おめでとうと言わんばかりのにやにや顔があった。帰って来たらだらしなく開いたあいつのアホ口にありったけの柏餅を詰め込んで窒息死させてやる。愛男はそう心に誓った。


ようやく女の子が出てきました。今回はクラスのアイドル、ということで。


やっぱりどこのクラスにもいますよね、可愛い女の子っていうのは。まあ人がいれば一番が決まるのは当然と言えば当然ですが。


僕の記憶の中にもそういう男子の間で人気な女の子とかいまして。結構気になってましたね、裏の顔とかあるのかなぁとか、自己嫌悪とかあるのかなぁとか。


まあそんなこんなの妄想の中で生まれたのが柏餅結ちゃんです。

ちょっと気持ち悪いですね(笑)

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