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行間 ミスリードの神様
一方その頃
『少女たち』が二宮垂の記憶を神妙な表情で見つめている時、それをどこか遠い空から傍観する、
少年の姿をした者がいた。
彼は、百年ほど前から、この世界の一部の人々に『神』と崇められている存在だった。
名を『カイスト』と言った。
どこか遠い空の、誰にも気付かれない場所で、
カイストは胡坐をかいてひとりごとを呟く。
「あーあ、垂くん。やっぱりこうなると思った。」
その言葉の意味は、今のところはカイスト以外に理解できる者はいなかった。
「『少女たち』だっけ?あいつらはたぶん最後まで分からないだろうなぁ。
二宮垂という人間が壊れた、本当の理由。」
誰にも意味の分からない言葉を、誰もいない場所で呟く、端から見ればちょっと痛い人に見えるが、カイストは口に出さずに入られないほど、愉快で仕方なかった。
「だって垂君、『亡霊』の力で、手がかりとなっている大事な記憶を失っているからねぇ。いくら彼女達が除いたところで、無いものは観られないんだよ。アーハッハッハッ!」
そう言って、笑い転げるカイスト、その意味は、今はやっぱり誰も分からない。
そう、今は。