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未来 思わせぶりなプロローグ
二宮垂はごく普通の高校3年生の男子だった。
私立の高校に通っており、一つ下の妹がいる。
部活には入っておらず、スクールカーストは下の上くらいの、特におかしな性格をしているわけでもない、学園もののラノベに稀に出てくるような穏やかな少年。
そのはずだった。
けれど今、垂の姿は先程説明した人物像からかけ離れていた。
死んだ魚のような感情のない瞳、小さくカタカタと歯がぶつかる音がする口。
右手に持った銃。まるで誰かに洗脳でもされてしまったかのような有様だった。
垂の目の前には、実の妹である彩華が泣き出しそうな顔で必死に訴えていた。
やめてくれ、お願い。という叫び声とも取れる言葉は、垂には届かない。
やがて垂は、覚悟を決めたかのように溜息をひとつ吐くと、震えの止まった右手の指に力を入れ、
自分の頭に向けた銃の、引き金を引いた。