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—mutate— ミューテイト  作者: 甘味処びわ
3/4

「能力」

『早く能力を使いなさいよ水流誠司』

話しかける・・・というより脳に直接働きかけるように無機質な少女の声が頭を響かせた。

「・・・一体何なんだ。お前はどこから俺に語り掛けている」

辺りを見回すがひとらしき気配は感じない。

『ん~・・・シンパシー?』

「出会い頭に共感など抱かん」

コイツは何を言い出すんだ。

『あ、テレパシー!』

なんだ?あほの子なのか?

「コンタクトを交わしていない上、脳が覚醒状態にある今その力説は通らない」

『知らないわよ。出来てしまうんだから仕方ないじゃない』

なんだその証明を放棄した子供のような万有理論は。

「状況説明でも情報連結でもない。故にガンツフェルト法でもない事が結論付けられる」

『何言ってるのかサッパリだわ。これだから化学オタは』

このガキ・・・!

「化学にオタクなどない!俺は理論に基づいてこの非科学的状況をお前に説いてるんだ」

『あっそ。でもそんなこと話してる暇なんてないの』

だからなんなんだよコイツは。

「・・・。で、何が言いたいって?」

『能力を使いなさい』

・・・。

「は」

『今世界では戦争が起こっているわ』

「それは見ればなんとなくわかる」

現状、数百メートル先で殺しあってる訳だからな。

『そこであなたにはこの世界を救ってもらうわ』

なるほどな・・・。

「嫌だよ」

『そういうと思っ・・・何でよ』

「まず前提として救うの定義を教えろ。二つの勢力があったとして戦争が起きている以上、和解などあり得ん。俺がどちらか一方に加担したとして自分の所属した勢力が勝ち、相手側が負けた場合、これは救ったとは言えない。こちら側が富んだとしても相手側は破滅している訳だ。まして一人で世界を救うなんぞ出来たものか。他をあたってくれ」

これが最もらしい正論だ。漬け込む余地もない。

『はぁ、馬鹿ねあんた。あんた馬鹿よ』

「な・・・」

俺の説明の何処に不備があったというのだろうか。謎で仕方がない。

『別にあたしはどっかに所属しろなんていってないじゃないの』

「じゃあどうしろと」

『あなたに敵対する者たちだけを排除するのよ』

だから。

「それこそおこの沙汰というものだ。何の力も持たない一般市民がどうすると言う」

『最初に言ったはずよ。能力を使いなさいって』

駄目だ、会話にすらならん。まったく話を聞かんなコイツも。

「俺に能力なんてない。運動も人並み、勉強だって理数系以外ポカンだ。出来ることといえば円周率を唱える程度だ。そんな俺に何をさせるつもりだ」


『私があんたに授けたのよ』


「・・・何?」

『私が授けた。能力名は【原子及び元素の構築】。それともう一つ【構築物の解体】』

今までお喋りで脳の弱そうだった奴が突然シリアスに、賢そうな印象を与える話し方をしたと思えば。

「ありえない。馬鹿らしい。不可能だ。能力とやらを与えるのも元素を創り出す事も」

『出来るのだから仕方ないじゃないのよ』

コイツはこれしか言えんのか。

「またそれか。理由になっていないだろ」

『でもあんた、気になってることない?』

何か核心につくように問いかける少女。

「な・・・くはない・・・が」

すると楽しそうに。

『そういうことよ』


『あんた、今見えてるでしょ。空気の流れ』

そんなもの・・・

「し、しらん。これが空気という保証はない」

『それも能力の一部と思ってくれていいわ』

あ、あり得ない。

「そ・・・そんな非科学的なもの、信用するに値しない」

『なら試しなさい。頭で創り出す元素を想像し創造しなさい』

「そ・・・んな」

そんなこと出来てしまう筈がない。そんな、こと、出来てしまったら・・・。

『さぁ』


気付いたらやり方を知っていたかのように。

まるで息を吸うかのように。

「・・・っ」

空間に右手をかざし、酸素を想像した。

『・・・どう?』

得意げに、小悪魔的に、いたずらに少女は問いかけた。

「わか・・・らない。これが何なのか」

俺の約1メートル前方に半径30センチほどの球体が浮かんでいた。

『あんたは何を想像したの?』

またも得意げに問うてくる。

「酸素・・・だ」

『なら酸素なんでしょうよ、それは』

分かったかのように、諭すように眼前の物体を酸素と断定した。

「だ、だがまだその物体が酸素だという証拠がない」

『ならその球体の中に入ればいいじゃない』

「もしそれが酸素なのだとしたら有毒でしかないじゃないか・・・って」

しまった。

『そうね。あんた、もう信じてるじゃないの』

はめられた。

「まだ完全に信じたわけじゃない!こんなもの机上の空論でしかない」

『わかったわよ・・・と、話過ぎたみたいね』

「なにがだ・・・て、あれは」

敵がすぐそこまで来ていた。

戦姫に助けられた時にいた小隊の倍ほどの数の敵兵が。

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