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中級魔導士は地球に転生致しました  作者: A×A
幼稚園生  僕とお隣さん騒動
7/10

番外  僕とコーラと姉騒動

 番外その一。

 あらすじにもある、有馬少年とコーラの出会い。

「なぁ、ありま。ここ。どうするんだ?」

「えっと、ここは技を強くする為に光、黄色を使って」


 僕、山崎有馬は只今、通君の家におよばれしてます。


 お母様方は今、ダイニングでお菓子をつまみながらほほほとお喋りにいそしんでいる。

 僕たちは今、和室にいる。


 何をしてるかって? 

 今どきの子供といったら何だか分かるでしょ。


「そう、そこ。そこはこうやって……」

「うん」

「火の、魔導要素を加えます」


 目の前の平テーブルに広がる紙。

 そのうえに散らばる図形。


 魔術です。魔術をやっております。



「ねぇ、通君。これ」


 テーブルの上には他にも、お菓子と二つのコップ。


 問題はコップ。熊のキャラクターがガラスに描かれている。

 中には、液体が入っている。


 どす黒くて、泡のぶくぶくと出ている液体が。

 他人からもらったものにケチをつけるのはあれだと思うが、言わせてもらおう。


「これ、何?」


 なんだ、これは!?

 酒なのか。酒を子供に出すのか?

 酒でなくても泡はでるのか!?


「コーラ」

「酒?」

「ジュースだよ、のんだことないのか?」


 通君はあっさりと答えた。


 酒でないと知って、僕はコップを持ち上げる。

 そのまま、光に透かして見る。


 血の色。紅い。


 飲めるのか、これは。

 毒、毒なのか。何だかんだいって、あの時僕に怒られたことを根に持っていたのか?

 あれから仲良くしてきたじゃないか。


 僕は通君を内心怯えながら見た。

 通君はがりがりと一生懸命に紙に魔法陣を刻んでいた。

 僕の視線に気付いたのか、振り向く。


 きょとんとした顔つきで、こちらを見ている。

 これが演技だったら、彼は悪魔であろう。


 僕はもう一度、コップをまじまじと見る。

 と。



「たっだいまぁああっ」


 いきなり、怒鳴るような声が聞こえて、僕はびくりと体を震わせた。

 手に持ったコップの中の液体も、揺れる。

 更に表面が泡立った。


「おかえり、梅花。今、通の友達がきてるよぅ」

「えぇっ。ほんと!」


 どしどしとした足音が大きくなっていく。

 どんどん近づいてくる。


 ばぁあん、と横開きの扉が開いた。

 

「ただいまっ、通ぅぅううっ。元気にしてましたかぁっ」


 それと同時に、三つ編みのお下げの少女が部屋に飛び込んできた。

 そのまま通君に抱き着き、頬を合わせてすりすりする。


 海軍風の服を着ていることから、たぶん中学生とやらだろう。

 この世界は性別関係なく学べるからいい。


 僕は状況が理解できず、ぽかんとそんなことを考えていた。

 いや、完全に状況が理解できないというわけじゃない。

 たぶん、この人は。


「おかえり、梅ねぇ」


 通君がぎゅっと顔をしかめる。

 やっぱり。通君の弱いけど守りたがり屋のお姉さんか。


 彼女への仲間意識が芽生える。


「友達いるから、やめて」


 確かに、姉との公開ハグは男の子にとってなかなかにきついだろう。

 まんざらでもなさそうだけど。


「嗚呼。そうだった。そうだった」


 通君の姉君はそういうと、ぐるんっと勢いよく首をこちらに向けた。

 こわい。


「君。有馬くん?」

「……はい」

「やっぱり!」


 彼女は、通君を抱きしめたまま一気にまくしたてる。


「おとなりの女の子を、自分の身を犠牲にして助けたというあのありまくん! うちの通がお世話になっておりますぅ! 通幼稚園だとどうなの? 元気? かわいい? かわいいよねー。いや、かっこよさもあるか。完璧すぎて怖い。ね、どうなのそこのとこ。教えて教えて。ありま君しかしらない通の姿を!」

「梅ねぇ!!」


 芽生えかけた仲間意識が、根っこごと吹っ飛んでいった。

 僕の好感度メーター音を立てて落ちる。

 こわい。


 そういいながらも通君の姉君は、通君の頭をなでたり頬っぺたをつついていた。

 通君が傍若無人になった理由が分かる気がする。

 この姉のせいだ。


 仮令悪いことをしても、彼女は可愛いといいながら通君をほめたたえてしまったのだろう。



「あれ、有馬君? それ飲まないの?」


 思考を遠くに飛ばしていると、ふと彼女に訊かれた。

 僕の片手にある全く手の付けてないコップに気が付いたらしい。


 また、コップのなかの液体に目を戻す。

 相変わらず泡が立っている。


 固まっている僕に、通君の姉君はまた問う。


「ふふ。もしかして、飲めないんだぁ」


 彼女は笑う。笑い顔は、よく通君に似ていた。


「子供だなぁ」


 にひ。


 前世では貴方より年上でした!


 なんとなくイラッときて、腹が立って、自分の口元にコップを持ってくる。

 人工的な、花のような香りがする。


 そのまま、僕は一気に飲み干した。

 そして、彼女に訊いた。


「これ、どうやって作ってるんですか?」


 なんだ、これは。

 甘い。とにかく甘い! あとすごく喉に来る! しびしびする!


 僕は、未知の飲み物におののいた。


「え、えぇっと。まぁ、科学?」


 彼女は、いきなりのことに眉を下げて答える。


 科学。かがく。

 ……錬金術だと。


「錬金術の発展でこんなのも出来るのか!? がっ、ゴホ」


 むせた。気管の辺りまで、しびしびとしたものがくる。




 これが、僕とコーラと通君の姉との出会い。

 コーラとはこれから長い付き合いになる。


 なんとなく、癖になるよね。

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他作品 連載「俺が死ぬと世界が終わるらしい」 →男子高校生がある日「おめーが死んだら世界終わるから」と予言された上に、世界中から命を狙われるハメになる話
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