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中級魔導士は地球に転生致しました  作者: A×A
乳幼児期  シチュエーションが理解できない
2/10

第一話  エクスプレインしてない

 

 ここから、主人公視点に変わります。



 真っ白な大きい建物からでて、移動する途中。


 外に目をやると、沢山の魔導要素。

 あぁ、この場所は風に親和性があるんだな。

 流れゆく景色を見ながら、そんなことを思った。

 

 とりあえず、『微風』でも唱える。


 まずは、頭の中で魔導方程式を解き、それに合わせて魔導要素を自分の魔力でもってつなげる。

 この場合、主につなげるのは「風」の魔導要素だ。

 今世でも、自分の魔力は「風」に属しているらしく、繋げやすい。


 最後に、自分の言霊によって、実体に起こす。


「んにゃ、あーああ、あばばば」


 無理だ。ちゃんと言葉が形成されない。

 

 因みにこの行為は生まれてからずっと行ってきたため、不可能だなんてとうに分かってる。

 一種の現実逃避ってやつだ。だって。


 自分が赤ん坊になっているという状況に、誰が頷けるのだろうか。



「あ、ぶぶ」

「どうしたの、あーちゃん?」


 僕を抱き、顔を覗き込んでくる女性は僕の新しい母。黒い髪に、黒い目、全体的にのっぺりした顔立ちだ。

 

「あはは、退屈してるんじゃないか? あーちゃんは」


 そう呟きながら、僕たちの乗っている馬のない車を運転している男性が僕の新しい父。黒い髪に、黒い目、全体的にのっぺりとした顔立ちで、ひげがちょろっとだけ生えている。

 ガラスを二つ金属で繋いだものを、顔につけている。


 さて、僕がさっきから連呼している、「黒い髪、黒い目、全体的にのっぺりとした顔立ち」というのは、この地域の特徴らしい。今まで出会った人の多くが「黒い髪、黒い目、全体的にのっぺりとした顔立ち」だった。


 たぶん、僕だってそうなのだろう。

 

 僕のいた国では、人々は皆、色とりどりの髪や目、耳の形をしていた。尖った耳。青に、緑。金にピンク。

 そして。

 薄い紫の髪に、薄い水色の瞳。


 リカルドは、今どうしているだろうか?


「はぁ? ビビりめ。ママンの腹から出直してきな」


 初めてチームを組んだ時の、リカルドの台詞を思い出した。

 まさか、お前のせいなのか。

 お前のせいで、僕は赤ん坊からやり直しているのか。

 お前の言霊は、お前のあられもない暴言でさえも実体化するのか。


 だったら僕も、僕の言霊でもって、これから言う言葉を実体化しよう。


 禿げろ。



「ん、にゃぁぁぁぁ」


 無性に腹立たしくなり、僕は身をよじって泣いた。この体はどうにも自分の感情が出やすいらしい。


 よく分からない小さなベッドに閉じ込められていたときは、自分は死んでしまったのだという悲しみと自分は赤ん坊からやり直すのだという虚しさに、しょっちゅう泣いていた。

 母に、「元気な子ね」なんて言われていた。


「あら、お腹が空いたのかしら」


 あ、まずい。

 そんな母の一言と共に、差し出されるそれ。


 大人としては余りにも恥ずかしい行為。


 まぁ、確かにお腹が空いているのでありがたく頂戴しよう。


 悲しいことに、何度も繰り替えす内にもう慣れた。

 僕はもう、大人じゃない。諦めた。


「んぐ」


 うまい。





「着いたぞ」


 僕らの乗っている馬のない車が、止まった。魔導路を確認できないから、魔導車でもない。これは何の原理で動いているのだろう?


 母と一緒に車から降りる。風の魔導要素が僕のほほをくすぐる。


「あーちゃん、ここが貴方の家よ」


 見上げると、そこには一つの建物があった。

 僕の国の家々とよく似た設計だ。

 白い壁に、橙色のかかった茶色い屋根。

 小さい庭には、芝生と色とりどりの花が咲いている。


「あ、んあ?」




 言い遅れたけど、僕の名前はアルバート。中級魔導士だった男だ。

 生まれ変わって新たに授かった名前は、山崎有馬。


 僕は多分、この世界で生きて逝く。



 

 やっと本編。

 言葉が理解できるのは、きっと赤ん坊補填です。

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他作品 連載「俺が死ぬと世界が終わるらしい」 →男子高校生がある日「おめーが死んだら世界終わるから」と予言された上に、世界中から命を狙われるハメになる話
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