死にゆく少女と死ねない鳥
白い壁。白い天井。その中でも一際白いベッド。 ここは少女の病室。
ある日、不死鳥は少女に出会った。
少女と不死鳥は仲良くなった。
不死鳥のくだらない冗談で少女が笑い、それを見て不死鳥が喜ぶ。
本当に無邪気に笑う少女。
そして
不死鳥は、恋に落ちた。
それから、不死鳥は毎日毎日、彼女のもとへ通った。
彼女に会うため、彼女の笑顔を見るために。
ある日、彼女は言った。
「不死鳥さん。もうここには来ないでくださいな。昨日、私の余命は3週間だとお医者さまに言われました。これ以上あなたに会えば、きっと見苦しい姿をお見せしてしまいます。」
死。
それは不死鳥には全く縁のない単語だった。
不死鳥は考えた。不死鳥は悩んだ。
彼には誰かの病を治すことはできない。ただ自分の病を治すだけ。自分自身を治すことだけしか、できなかった。
彼女と離れるのは嫌だ。
彼女と話せなくなるのは嫌だ。
彼女の笑顔が消えてしまうのは嫌だ。
そして不死鳥は思いついた。
「そうだ。僕が死ねば、彼女と同じ場所に行けるのかな。」
そして彼は自殺した。
しかしどんなに死にたいと願っても蘇ってしまう。
死ぬ。
蘇る。
死ぬ。
蘇る。
死ぬ。
蘇る。
彼女の死まであと一週間。
死ぬ。
蘇る。
死ぬ。
蘇る。
死ぬ。
蘇る。
彼女の死まであと一日・・・
最後の日、不死鳥は少女のそばにいた。
泣きながら、言った。
「君のいない世界なんて、僕は認めない。待っていてくれ。必ず死んで、君のもとへ行くから。それまでどうか待っていてくれ。」
すると、少女が目を開いた。
最後の力を振り絞って、言った。
「そんな、悲しいこと、言わないで、ください。私は、この世界が、好きですよ。
あなたは、生きて・・・
生きて、私の分まで、この世界を愛してください。
私も、もっと生きていたかった・・・
生きて、あなたと・・・
でも、生きていられるのは、あなただけ。
だから、あなたに、お願い。
生きて。
そして、私の分まで、この世界を、いっぱい、いっぱい、愛して。
綺麗な綺麗な、私の愛しい、不死鳥さん・・・」
そして彼女は息をひきとった。