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サイボーぐぇ 08

 08 高望みしよう



「破片が残ると拙いから動くな!」


 先生は小型掃除機ハンドクリーナー(机用)の先端のアタッチメントを『隙間ノズル』に取り替えると、僕の眼窩がんかに突っ込みながら。丁寧にガラス片を取り除いた。

 涙は出ないが、ちょっと痛いな。


「心配するな。幻痛だ」

「しかし、この細い目に新しいガラスの眼球を入れられるのですか?」

「上部が開く構造になっているから簡単だぞ。換えの眼球を作る方が面倒だな」


 一度『頭を切り開く』とかは嫌だったが、目の上が『パカッ』とか開くのも嫌な感じがした。

 自分の目は見ることができないので、想像するしかなかったけど。

 掃除が終わると、先生は残骸のCCDが壊れていないか検査をしていた。

 僕は大人しくベッドに座って待っていた。

 毛布を掛けて、失敗しないようにする。

 右目からコードがプラプラしているのが左目の視界に入ってくるので、少々、鬱陶しかった。

 先生は、作業用ルーペで丹念に調べていたが、途中で携帯端末を使って誰かと連絡を取り合っていた。

 メールか何かなので内容はわからなかった。

 けれども、その姿が女の子っぽかった。


「メール打つの早いですね」

「ああ、これができないと、女子の友達はいなくなるからな」

「男子はどうなんです」

「さあ、男子など見たことないから知らん」


 これは男子がメールを打つとこを見たことないと言う意味だろうな。

 男子を見たことないなんて、あり得ないからだ。

 だけど、あんまり男には縁がなさそうに見える。


『男はみんな、圏外』


 とか、言いそうな性格をしているからだ。


「CCDは大丈夫だが、レンズは交換だな……」


 先生はブツブツ言いながら引き出しを漁るとボロそうなデジカメを幾つか取り出した。


「随分と古いタイプばかりですね」

「ああ、中古と言うよりは廃物だな。この手の商品は5年もするとスペックが低くて誰も買わないんだ。捨てるのをもらってきたんだよ」

「それが僕の目になるんですか?」

「人間の目は画面の中央部が判別できれば十分だから、100万画素程度でいいんだ。周辺視野などはわかればいい簡単なものでいいから、4Kとか8Kとかは必要ない。それに固定焦点のレンズなんか、それほど進化してないんだよ。進化しているのは撮像素子の方なんだ。ハイCCDとか、スーパーCCDとかな。これは旧式の安い奴だから違うがな」


 所謂『バカチョン』と言う奴だろうか?

 確かに綺麗に写るけど、少し不満だった。

 何となく、安い部品とか廃物とかで作られているって、気分が悪いよねえ。

 最先端技術アドヴァンスとか、最高級ハイグレード部品パーツとか、最高性能ハイパフォーマンスとかに男の子は憧れるものなんだ。


 贅沢とか、高望みって思われるかもしれないけど、身体が木造もくぞうなんだから、少しぐらいは自慢できる部分は欲しいよね。


 クラス最高性能とか。

 学級クラス最高の巨乳とか。

 全学校オープン級の美少女とか。


 トントン、ガチャリ。


「いやぁ、さっきはごめんねー。大丈夫だった、サイボーぐぇ?」


 最高の美少女が戻ってきた。

 戻ってきてくれた!


 高望みは、した方がいいよねえ。

 でも、名前は少しだけ変な風に覚えられている気がした。



 つづく

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