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サイボーぐぇ 07

 07 挨拶しよう



 呼吸は鼻でも口でも可能だったが、自然呼吸ではなく、どうやら心臓と同じように興奮すると自動的にピッチが上がるようだった。


「食欲があると言ってましたが、味覚とか嗅覚はどうなんですか?」

「流石はサイボーグA、良いところに気付いたな。実は最初は舌などいらないと思っていたのだが、それだと上手くしゃべれないだろうと気付いて、身体と同じ人工筋肉にセンサー付き皮膚を貼り付けておいた。感覚は記憶が補ってくれるだろう」

「どう言うことですか?」

「甘いとか辛いはセンサーが刺激と受け取るが数値化されて伝わるだけで、実際に区別がつく訳ではない。例えば寿司や天麩羅を食べても、目で見て記憶にある味を思い出して当てはめるだけだ」

「目をつぶって食べると、何だか判別できないってことでしょうか?」

「そう言うことだな。レトルトカレーと最高級インドカレーでも、見た目で区別できなければ同じ味になるだろう。逆に考えれば、レトルトでも最高級カレーを思い出しながら食べれば最高級の味になるから便利じゃないかな。寿司でも焼き肉でも酒でも、最高級と思えば最高級だぞ?」

「いや、酒は飲んだことありません」

「そうか、酒の味がわからないとは可哀想な奴だな。私は仕事以外では酒ぐらいしか楽しみがなくてな。男もいないし…… あっ、サイボーグA、お前、もしかして女の味は知らないのか?」

「もも、勿論ですよ。当たり前じゃないですか」

「じゃあ、女の匂いとかもわからないか? ちょっと、私のここを嗅いでみろ!」


 先生は右手の甲を差し出した。

 ここと言うのはそこだった。

 匂いは存在するが、何かはわからなかった。


「ちょっと、なめてみろ!」

「ええっ、それは……」

「いいから、早くしろ!」

「はいぃ」


 ペロッとしてみたが、当然、良くわからない。


「ひゃぅ、ど、どうだ? 興奮するか?」

「いいえ」

「興奮しないのか?」

「はい」

「うーん、困ったな。どうすれば知らないものを判断できるようにできるのだろうか?」

「いや、記憶になければ駄目ですよね」

「そうだが、折角…… ちんぴん(小声)が助かったのに、意味ないじゃないか! そうだ! これは興奮するか?」


 先生は何を考えたのか、立ち上がると僕の目の前でスカートを持ち上げた。

 美しいピンクのパンツが見えた。

 当然、興奮する。


「ど、どうだ? 興奮するのか? どうなんだぁ?」


 どう答えれば良いのか、童貞の僕にはわからなかったが、その時、部屋のドアが開いて幸運と不運が入ってきた。


 トトン、カチャ。


「坂下くん、気がついたんだってぇえぇぇ!」


 僕は反射的に立ち上がって、右手を挙げて挨拶した。


「やあ、初めまして。僕は坂下ではなく、サイボーぐぇ!」

「きゃーーー! 変態! 来ないで!」


 美少女は、僕の期待していた方の世界一とも呼べる美少女の方だったが、タイミングが悪く、僕は立ち上がって、立ち上がったものを見せてしまった。

 僕はちゃんと挨拶しようと思っただけなのに。

 美少女は、近くのデスクの上にあった目覚まし時計を投げつけて、僕の挨拶を中断させた。

 先生は目を閉じてスカートをめくったまま、まだ『どうなのだ』とか言っていた。

 結構、テンパっているようだ。


「ばかー!」


 バタン、ガチャリ、パタパタパタ……


「ぐぇー」


 リリリリリリ……


「どうした? あぁ大丈夫か、サイボーグA? 眼球が割れてしまっているぞ。それほど私に興奮したのか?」


 僕は簡単に、今起こった出来事を説明した。


「なんだ、そうなのか…… 気付かなかったな。それより、私の目覚まし時計が壊れてしまっているぞ! どうしてくれるんだ!」


 先生は、急に不機嫌になって当たり散らした。

 泣きたいのは、こっちだからね。



 つづく

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