サイボーぐぇ 01
01 積極的になろう
僕は今日から高校生である。
中学では特別なことは何もなかったので、高校では頑張ることに決めていた。
中1,中2、中3と、僕は鬱々とした、陰気な中学生だった。
女子との会話も『業務連絡』しかなかった。
あれは会話と呼べるような代物ではない。
もう、目立たないようにクラスの隅にいるのは嫌だ。
高校生なのだから、何事も積極的に取り組んで行こうと思っている。
何しろ、そのために必死になって受験勉強をし、名門と呼ばれる高校に入学したのだ。
通学路を歩く僕の周りには、品の良さそうな女子生徒が花々のように眩しく咲き誇っていた。
「きゃー、誰か助けてー」
ほら、こう言う時に、もう見てるだけじゃなくて、すぐに行動を起こすのだ。
悲鳴が上がった方を見ると、予想以上の美少女がいて、道路の方を見ながら叫んでいた。
道路上には…… ドスンとした体型の三つ編み眼鏡女子が子猫を抱き上げようとしていたが、その向こうからは大型トラックがブレーキ音もあげずに坂を下って突っ込んできている。
居眠り運転と言うやつだろう。
「なむさん!」
僕は飛び出すと眼鏡女子を抱き上げて、って重くて持ち上がらない。
勉強ばかりしていたから、元々非力だったのが、更に非力になっていた。
「いっ、変態ぃ?」
「ち、違うよ!」
助けようとしているのに失礼な女だな!
しかし、駄目だ、これじゃ、助けられない。
トラックはぐんぐんと迫り来る。
しかし、歩道からは例の美少女が祈るように見ている。
「どうりゃ!」
「ひどぉ、そのかけ声は失礼よぉ~」
僕は三つ編み眼鏡女子を、何とか道路の外側に押し出した。
なのに文句を言われた。
こんな運命なのだろう。
当然だが、反動で僕が逃げる暇はなかった。
大型トラックが突っ込んできたが、僕はあの美少女がちゃんと見ていてくれたかどうかの方が気になった。
ドッカーン!
「ぐぇー」
僕は道路から弾き出され、意識からも、ついでに夢の人生からも弾き出された。
念願の高校デビューも、美少女との交際も、やはり夢で終わってしまいそうだった。
最初から、無理な夢だったかもしれないけどね。
積極的になるのにも、準備とか訓練は必要だったのかもしれない。
それとも、これが華々しい高校デビューなのだろうか?
つづく