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運命の悪戯  作者: リル
一章 少女の重い枷
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13

長らく停滞していてすみませんでしたΣ( ̄。 ̄ノ)ノ


今日はクリスマスです。

全く内容はクリスマスとはかけ離れていますが、ささやかでもプレゼントになればと思います(((o(*゜▽゜*)o)))


震えながらも自力で立ち上がったリーフェルがそう尋ねると、3人の女官たちは顔を見合わせた。口を開いたのは、最初に話しかけてきたぽっちゃりとした女官だった。

 「そうか、あんたは知らなかったんだね。新人は昼が遅いからねえ」

 「いやね、昼休みに入る少し前だったよ。陛下が参加されている部屋が急に騒がしくなったのよ」

 「何事かと思ったら、医師たちが集まって陛下が運ばれなさってね。何やらお倒れになさったそうでさ、私たちはアッスモード様が現れるのを待ってるのさ」

 「……へいかが、そんな……っ」

再びリーフェルが青くなったとき、ざわめきが一段と騒がしくなった。

「ほら、アッスモード様が出て来なさったよ」

興奮した声で肩を叩かれ、リーフェルも遠く人垣の山から微かに見える、王の側近を見つけた。

「皆の者!陛下のお命には別状はない。お疲れが溜まっただけである。さあ、陛下がお元気になられたとき、少しでも楽をしていただくために精を出そうではないかっ!!」

確実に声が届かないと思っていたにも関わらず、リーフェルのいる距離までしっかりとアッスモードの声が聞こえたので、リーフェルは驚いてしまった。これも『ちから』一種かと思うと、思いの外感慨深いものがあった。しかし、さらに驚いたのは、地を揺るがすほどのアッスモードに応える声だった。

耳を塞ぎたくなるほどの大声援の中、アッスモードは医院の中に入っていき、人垣もやがて散っていった。

ひとり、リーフェルだけが流れに逆らい、医院に駆ける。小柄な少女が必死に走っていく姿を気に留める者はいなかった。

しかし、医院に入ろうとすると、両脇に控えていた兵たちが黙っていなかった。石畳を踏んだところで、リーフェルの目の前で槍が交差される。

「通してくださいっ」

「ならん。ここには陛下がおられるのだ。高位の医師以外の立ち入りはアッスモード様より禁じられている。ましてや女官など…」

「私はっ」

そのとき、ドレスの隠しから布が一切れ落ちた。あっと思う間もなく、それは兵士に拾われてしまう。

「これは……っ!!!」

目を見開き、言葉を失う兵を見て、リーフェルは思いきり目を瞑った。

(どうしようっ!私の正体がばれてしまう…)

落ちた布きれはカルレーテが彼女に持たせたものだ。表には、王族しか持つことを許されない紋章が刻まれている。「水」と「羽」が天界を表す紋章なのだそうだ。

「……お前はっ何者だっ!!何故(なにゆえ)この紋章を持っている!?答えろっ!!」

厳しい誰何(すいか)の声。首に槍の先が据えられても、リーフェルは答えなかった。いや、答えられなかった。ただ、いつもつけている首飾りを握りしめた。

沈黙に、張りのある男の声が響いた。

「何事だ。騒がしいぞ、衛兵!人は負い返せとあれほど……」

見知った男の出現に、リーフェルは思わず声を上げた。僅かに身を乗り出したときに槍の刃先が喉元の肌を微かに傷つけたが、彼女は構わなかった。

「アッスモードさんっ!!」

「え、あなたは……ひ__っ」

女官服のリーフェルではぱっと見ただけではわからなかったらしい。アッスモードは思わず「姫様」と呼びかけて、衛兵がいることを思い出した。そして、ひどく慌てて指示を出す。

「衛兵っ今すぐ刃先を下ろせっ!その人は良いっっ!!」

アッスモードの命令に、しぶしぶと兵たちが槍を下ろす。リーフェルは堪らず、アッスモードに抱きついた。

「ああ、大変失礼をいたしました。怖がらせてしまいましたね…。お怪我はありませんか?」

「大丈夫です。槍の刃が怖かったわけではないの。ごめんなさい、どうしても陛下が心配で……」

アッスモードから身体を離し、彼を見上げるリーフェルの頭に手を置き、アッスモードは笑った。

「良いのです。あなたには陛下をご心配なさる権利がある。さあ、行きましょう。陛下があなたを呼んでおられます」

「あっ待って、アッスモードさん。私…」

リーフェルを連れて医院に入ろうとするアッスモードを引き止める、リーフェルは、王族の紋章を持っていることを知られてしまったこと耳打ちした。

「ああ、そうですか……」

一瞬、思案顔を作ったアッスモードは、しかし、すぐに衛兵に向いた。

「この方は唯一無二の我らが姫様であらせられる。黙っていて悪かった。だが、いずれ陛下が正式に発表されるだろう。それまでは、どうかこの方のことは黙っていてくれぬか。余計な混乱は生みたくないのだ」

誠実に部下に頭を下げる男を見て、リーフェルは誤魔化すこともできるだろうにと思った。それでも、誠実に話すのは誤魔化せば、不信の種を作ることになることを彼がきちんとわかっているからなのだった。

「姫様!」

いつの間にか、衛兵たちは初日のカルレーテのように、額を地につけていた。

「申し訳ありませんでした。どうか、無礼をお赦しいただけませんか」

大の男の何人も跪かれ、リーフェルはいよいよ困ってしまった。

「いっいいえ。正式に公表されていない身で皆の前に現れ、混乱を招いたのは私の安易な考えのせいだわ。謝るのは私の方だわ。あなたたちは己の仕事を全うしただけでしょう。どうぞ、これからも頑張ってください」

最後に微笑みを残し、衛兵が某然と見守る中、アッスモードに付き添われて、リーフェルは医院の奥に入っていった。

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