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鎌倉ヴァンパイア・ヴィンテージ ~独占欲強め銀髪メイド様は、私(の血)を独り占めしたい~~  作者: つきよ


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第43話 アメリカ編【ワルキューレの騎行】

今回のシーンはグロテスクな表現が含まれています。

地下駐車場には、十台以上の黒塗りの車が綺麗に整列されていた。

昨日よりも確実に多くのプラエトリアニたちが整列をしている。スーツの人間と、どこかの特殊部隊みたいな軍服を着た三人の小チームで構成されている。ざっと五十人ほどだ。


集団の最前列。昨日までの服装とは違い、喪服のダークスーツの出で立ちのソフィア様が立っていた。

「あれから、245年経ったわね。あの時の汚名を晴らす時が来たわ」

静かな地下駐車場に声が響く。

「我が親友たるコーンウォリス将軍も、インドで最期を迎えるまで、このことを憂いていたわ。……準備にすごく時間がかかったけど、最後のピースが揃った」

ソフィア様が冷たく目を細める。

「裏切り者たちへ葬送の儀を行いましょう」

まるで、中世の王が戦前に戦士たちを鼓舞するような演説だった。


マスターが彼らに、各自に指定されたリストを渡す。受け取った小チームから車に乗って駐車場を出ていく。これから残忍で恐ろしい245年越しの復讐が開始されるのだ。


* * *


私とマスターは、ソフィア様たちが乗る先行車に続いて、二人きりで車を走らせていた。

「マスター、この計画どう思ってますか?」

私がハンドルを握りながら尋ねると、助手席のマスターは窓の外を見たまま低く答えた。

「どう思っているって……我々の第2の掟を知っているだろ」

「自分が受けた屈辱は忘れろ、友が受けた屈辱は忘れるな……」

「そういうことだ」

「しかし、今回の殺害リストにはただ裏切り者の子孫というだけの人物もいますよ……」

「そんなの関係ない。我々の掟は絶対的なんだ。こうして、本来いてはいけない我々が生きてこれたんだよ」

「しかし……今回のはソフィア様のただの私怨じゃないですか……」

「まぁ……たしかに、そういう考えもあるが、これは私たちが生きていくための術でもある」

「……」

「我々には掟は絶対である。一人では生きていけないのだから」


* * *


ある郊外の豪邸へ着いた。

ソフィア様の護衛が塀を手慣れた動きで上って裏からドアを開けた。

それにソフィア様、アナスタシア姉様、ボスが続き、私たちも続く。

すると、ソフィア様が振り返って私たちに言う。

「若いそのこの二人は戦闘の経験はあるかしら?」

マスターが答える。

「私は、50年代の時にマフィアと銃撃戦はありますが、ローレンはないかと」

「そう、平和世代の子ね。もし気分が悪くなったら休憩してなさい」

「は……はい」


護衛の三人が家に侵入して室内をクリアリングしていく。

二階の書斎まで来た。そしてドアを蹴り破る。

「なんだ!あんたたちは!!?」

そう騒ぐ中年の男性に、護衛の一人が銃で殴り掛かる。

その男性を椅子に縛り上げて、その正面に置かれた椅子にソフィア様が腰かける。

「どうも、初めまして、映画監督さん」

「強盗なのか?……それとも私の映画について文句があるのか?話を聞くぞ……それなら金も渡す、警察にも言わないぞ」

「ふふ、ある意味映画について話があるわね」

「なんなんだ……」

「あなたが2000年代に作った独立戦争をテーマにした映画についてよ」

「ああ……20数年前のそれか……それがなんだ、内容に不満なのか?」

「いくつか、あるわ。もちろん、アメリカで作っているのだから、アメリカがヒーローでイギリスが悪なのはわかるわ」

「そうだ。当時の歴史と一部脚色があるが、非常に正確に作られた映画だ……」

「正確に……ね……あなたたちがやったことが書かれていないけれども?」

「わたしたち?……なんのことだ?」

「近くの中立であった村をあなた……テンプル騎士団が襲って、男は殺し、女は慰みものにした話よ」

その男の顔色が少し変わった。

「すまないが、なんの話なのか、わからない。そのような文献は残っていないぞ」

「ええ、そこは今駐車場になっているから、掘り出せば何か出てくるかもね?」

「……すまないが、私は何も関わっていないぞ。どこの者たちか、知らないが……」

「あなたたち、テンプル騎士団は昔は勇敢で何度も戦ったけれども、騎士道精神にあふれていたわ。でもあなたたちは違ったようね?」

「そんな、空想の世界だろう……まるでその時代から生きて……生きて……」

「やっとわかった?」

「その金色の髪……赤い目……カラコンではないのか……お前は……西の……」

「テンプル騎士団……当時はフリーメイソンだっけ?あなたたちのロッジの連中が犯した罪を隠すために、あの映画を作って、私の親友まで馬鹿にした映画を作ったのよね?」


男は観念したように震え出した。

「わかった、話すから……!我々の支部の古い倉庫に日記を見つけた。当時の大陸軍にいたメンバーが記載した日記で、そこには支部組織としてイギリスに不利になる情報を流していた、さらにお前たちが隠れ蓑にしていた村を襲ったともあった。我々としてはあってはならないことだ。だから、ハリウッド関係の仕事をしている私含めてのメイソンたちが映画を作ったんだ……」

「今の録画しておいた?」

そうソフィア様が、後ろにいたアナスタシア姉様にいう。

「ええ、映像もばっちりと」

「それを取って公表するのか?……それはやめてもらいたい、そもそも、昔の話だろう?!」

「当時の者たちは全員墓の中だ、いまさら、昔のことを掘り返してどう……」


ズシュッ!


ソフィア様が男の太ももにナイフを突き立てる。

「いったぁっ!!何をするんだ?!」

「貴様らは、ここで死体で見つかる。自分たちが犯した罪に苛まれて、自殺を図るんだ」

「な……何を言ってるんだ……血がどんどん出ている……頼む……救急車を……」

「今、傷口を治してあげるから、安心しなさい」

そういって、ナイフを抜いて傷口を塞ぐソフィア様。


「お前たちも記録に残っていたぞ……名前のない連隊……ネームレスと、男装はしているが、女たちだけで構成された不死身のやつら……」

「相変わらずアメリカ人は、ネーミングセンスは最悪ね」

「なら、話は早いわね。私は、復讐にきたの。死してなおも、物語とはいえ侮辱された友人のコーンウォリス将軍のために……」

そしてもう一度ナイフを刺す。

「私だけではないわ、他にも言いたいことがある子がいるから」

そうすると、ボスが男の前に立つ。

「お前たちが襲撃した村は、中立の村だった。村の子供たちに文字の書き方や、食料を渡していただけだ」

「知るかよ……俺には関係ない……」

「関係あるんだ。よく聞け、私たちが到着したときには、殺された者たちと、辱めをうけ、天国にいったあとも、辱められた姿のままの状態の子たち……それを貴様らは自分らの組織のために無かったことにしたのだ」


ボスは男の指を一つずつ折る。

「痛い!!やめろ!!もう……やめろ!!」

そうして、男の体を治しては破壊するのを繰り返した。

そして、最後にきれいな体にして首に縄をかける。

ソフィア様が冷たい顔で見下ろした。

「我々の友人が受けた屈辱、辱めを忘れない」

「それ相応を貴様と、貴様の家族にも行う」

「な……どういうことだ?!!」

「貴様の嫁の墓はすでに暴いてゴミ箱に捨てた。それに貴様の子供は……先ほど動画が送られてきたから、見せるわ」

その動画をみた男は、ただ涙を流しているだけだった。


「その絶望のまま、逝きなさい」

男の足元の椅子を蹴飛ばした。


奴の血が体のあちこちについたソフィア様が天を見て、何か言っている。たぶん友人たちへのメッセージだろう。その姿はすごく美しく、魅力的だった。

ソフィア様が私たちに近づく。

「汚いところを見せてしまったわね。でも見てほしかったの。あなたたち若いヴァンパイアは経験をしたことがないだろうけど、我々はこういう非人道的な生きものなの。だからこそ、人間らしくありなさい。自分のためではなく他の者のために生きるのよ」


ソフィア様の言葉の意図がわからないが、本能的にわかった気がした。


* * *


その後、駐車場に戻ってきたら、朝に出ていった車も揃っていた。

どうやら、各々自分のすべきことをしてきたのだろう。

先ほどの空気とは一転してお疲れ様パーティーをしている。さっきまで殺しをしていたであろう姉様方がどんちゃん騒ぎをしている。


わたしは、会場の隅っこで頭の整理をしていた。

そこにアナスタシア姉様がきてくれた。

「大丈夫ですか」

「あ……姉様……すみません、いろいろと考えることがあって」

「そう……あなたはまだヴァンパイアになって100年もたってないから無理もないわ」

私の考えを察したように、独り言のように言う。

「たくさんのヴァンパイアではない友人と別れると、その人との思い出だけが自分の中に残るの」

「私たちぐらいになると、そのかけがえのない思い出や約束を大切にすることでしか人間らしさを保てなくなるのよ」


「なるほど……なんとなく分かっているのですが……」

「感情がなくなってくるの……全部に新鮮味がなくなってくるから……」

アナスタシア姉様はあんまり雄弁ではないタイプだと思うが、一生懸命伝えてくれようとしてくれるだけで心が楽になった。

「よく人と話したり、自分に思い出を作ってあげて。ファースト姉様に言って休暇をとるように言ってあげるから、日本に来て、ヒルデに会ったりして。喜ぶと思うから」

「ありがとうございます……休暇はほしいのでそのところはお願いします」

「ええ、もちろんよ。あなたの今の気持ちは無理に押し殺さなくていいの。だれかに相談したり、訴えたりしてぶつけていきなさい。喧嘩になっても死ぬことはないんだから」

「たしかに、そうですね。ふふ、なんか気が楽になった気がしました」

「そう……よかったわ」


「あの、アナスタシア姉様は今たのしいですか?」

「数百年ほどはただ仕事をするだけでしたが、ここ数か月は好きな子ができて楽しいです」

笑顔というほどではないが、その表情は柔らかかった。


その後、ソフィア様とアナスタシア姉様は日本に帰られた。

【あとがき・用語解説】


大陸軍(Continental Army)

1775年、アメリカ独立戦争において13植民地がイギリス本国に対抗するために組織した正規軍。総司令官はのちの初代大統領ジョージ・ワシントンです。


プラエトリアニ(Praetorian Guard)

史実では、古代ローマ帝国における「皇帝近衛兵(皇帝の直属護衛部隊)」を指す言葉です。本作では、ソフィア様たちに仕える、


テンプル騎士団とフリーメイソン

中世ヨーロッパで最も力を持った騎士修道会「テンプル騎士団」が弾圧されて滅亡した後、生き残った残党が海を渡り、地下に潜って秘密結社「フリーメイソン」の基盤を作った……という有名な歴史ミステリーが元になっています。


チャールズ・コーンウォリス将軍

アメリカ独立戦争におけるイギリス軍の猛将。ヨークタウンの戦いでアメリカ・フランス連合軍に降伏したことで知られていますが、実は非常に部下思いで有能な人物であり、のちにインド総督としても活躍しました。

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