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鎌倉ヴァンパイア・ヴィンテージ ~独占欲強め銀髪メイド様は、私(の血)を独り占めしたい~~  作者: つきよ


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第36話【お願い、プリマお姉さま!】

今日はアルバイトがお休みだったが、私は洋館へと足を運び、書斎でアナスタシアさんとソフィア様に私の計画を説明していた。


「なるほどね……配信って、インターネットでゲーム実況とかをしているやつよね」


さすがは日本のカルチャーに詳しいソフィア様だ。すぐに私の話したこと(システム)を理解してくれた。

逆に、アナスタシアさんはピンときていないようだ。


「それは、タウン・クライヤー(街の触れ役)のようなものでしょうか……?」

「うーん、情報を発信するという意味では近いわね。でも、ちょっと違うわよ」

「しかし、世界に我々の存在を発信することになってしまいますし……これこそ、世界各国のお姉さまたちにも相談しないといけない案件かと……」

「まぁ……大方の子たちは面白がって賛成してくれるでしょうけど、約一人は絶対に反対するでしょうね……」

「やっぱり、リスクがあるんですかね? それこそヴァンパイアハンターが来るとか……」


私は今になって、自分の提案が無茶なことだったと思い始めた。

そうだよね、ある意味、敵対組織に自分から居場所を教えるようなものだし……。


「いや? ヴァンパイアハンターなんて、中世からフランスのボニーが活躍した頃に皆殺しにしたから全然脅威じゃないわよ。それなら普通に軍隊のほうが危ないわね」

と、ソフィア様が笑い飛ばすと、隣でアナスタシアさんもクスリと笑って同意した。

「ええ。むしろ彼らに『私たちの弱点だから』と言って銀のアイテムを作らせて持たせて、よくこちらから襲撃していましたね。銀が必要になったらハンターを襲おう! って感じで」


(『そうだ 京都、行こう』……みたいなノリ……)

なんというか……皆さんと一緒にいると、私の常識のパラメーターがどんどん崩されていく。


おもむろに、ソフィア様はゲーミングPCでカタカタとタイピングをして、誰かに連絡を取り始めた。


「ちょっと、今からファーストに連絡をして会議をしましょう」


私は、ずっと気になっていた疑問を隣のアナスタシアさんに聞いてみた。

「あの……ヴァンパイア同士なら、使い魔とかテレパシーとかで連絡しないんですか?」


「テレパシーは距離が近い場合は使いますが、遠いと難しいですね。使い魔も、伝書鳩の時代は使っていましたが時間がかかりますし……今はこっちの方が早いので、インターネットがメインになります」

「え、すごい、それって私とかでもわかるんですか?」

「ええ、ちょっとまってください、やりますよ」

(きこえますか?....)

「ええ!すごいASMRみたいにきこえる!」

「ただ、使うと疲れるのであんまりやりません...」


意外と近代的な通信プロトコルなんだな、と思った。


やがてビデオ通話が繋がり、ソフィア様はモニターの向こうの相手にVTuber計画を説明した。


『絶対にいけません!!』

スピーカーから、ファーストさんの怒鳴り声が響いた。

『その前に、お嬢様。私に話さないといけないことがありますよね?』

「な……なにもないわよ……」

『アビーから全部聞いております! 先日の一件、二度とあんな無茶は許しません!』

「悪かったわよ……。だから、もう二度としないためにこの計画を……」

『これから私の部下を何人か、日本の館に駐在させます。そうすればそんなふざけた計画、しなくて済みますわ!』

「ええ……あんたのところ、軍隊みたいに規則正しい生活するじゃないの……」

『これからは朝6時に起きて、21時には寝てもらいます!!』

「やめてちょうだい……! ともかく、この計画はあんたの妹分しぐれが考えたのよ。若手の芽を潰すのは、我がファミリーの掟に反するわよ!」

『300歳以下は赤ちゃんですので、却下です』


取り付く島もないファーストさんに、アナスタシアさんがソフィア様と席を代わって顔を出した。


「ファースト姉さま、私からもお願いいたします……。何かあったら、私が対応しますから……」

『ナースチャ……。脳筋のセカンドやヒルデと違って、頭脳系のあなたがいれば心強いけれど……』


すると、アナスタシアさんと席を代わって私の隣に来たソフィア様が、小声で耳打ちしてきた。


「ファーストは、ナースチャに弱いのよ。血の系統でいうと直系の姉妹だから……これ、いけるわ」


小悪魔風に笑うソフィア様。

モニターの向こうでは、ファーストさんが『でもね……うーん』とまだ渋っている。


その時、ソフィア様がアナスタシアさんに向かって、指パッチンをして合図を送った。目線をこちらに向けたアナスタシアさんに、顔の横で両手を丸める「猫のにゃんにゃんポーズ」を送る。

それを見たアナスタシアさんは、小さく首を横に振った。

さらにソフィア様は、私を指差して「3本の指」を見せた後、顔の横に両手を当てて「スヤスヤのポーズ」を出した。するとアナスタシアさんは、カメラの視界の外でこっそり親指を立てる(グッドポーズ)。

(……何をやってるんだろう、このヴァンパイアたちは)


いや、私も何か助け舟を出さないと……!

そうだ! アナスタシアさんは以前、「ファーストとセカンドは、ソフィア様が面倒くさがって番号で呼んでいる」と言っていたけれど、昨日の夜、私はソフィア様から本当の理由を聞いていたのだ。


『当時のローマには女性の個人名を呼ぶ習慣があまりなくてね。長女をプリマ、次女をセクンダと呼んでいたの。のちにイギリスに渡って英語がメインになった時、外交的に英語で呼ばれ始めて、自然とそれが定着しただけ。……二人も、どこかそう呼ばれるのを寂しがっているかもしれないわね』


……そうだ、あれを使おう!

私はスマホの画面に大きく文字を打ち込み、アナスタシアさんに向けて見せた。


【プリマお姉さまと呼んで!】


不思議そうな顔をしつつも、アナスタシアさんはその画面に従って声を弾ませた。


「プリマお姉さま……お願いします!」

『プ……ッ!? プリマ姉さま呼びは……反則よ……うーん……』


目に見えて動揺するファーストさん。さらにソフィア様が、私には分からない謎の合図をアナスタシアさんに送る。


「私のお願いを聞いてくれたら、お嬢様に相談して……姉さまがいるアメリカに会いに行く手はずを整えますから」

『ナースチャが来てくれるの!!? ――ゴホン。……まぁ、久しく会っていないものね。わかりましたわ。でも、本当に大変な事態になったら、同じ館にいるアビーにすぐ相談するのよ!』


すごく元気になったファーストさん。本当にナースチャのことがお気に入りなんだな……。

すぐにソフィア様が席を代わり、ファーストさんに言う。


「ありがとうね! あなたもチャンネル登録よろしくね」

『ええ。あんまり羽目は外さないでくださいよ……』

「大丈夫よ。というわけで、私もアメリカに行くから」

『は……承知いたしました。誰かにお会いしますか?』

「スノーキーのところのムーニーと仲良くしてた、ジョーの子供たちが今の大統領なの?」

『お嬢様、いつの時代の話をしているのですか……。今は、旧バイエルン王国出身の一族の者が大統領です』

「懐かしいわね。ワイン用の葡萄が有名なところがあったわよね」


そしてビデオ通話が終わり、ソフィア様がふう、と息をついた。


「VTuberっていうのは私も知っているけど、まずはその『イラスト』が必要よね」

「私もあまり詳しくないですが、そうですね」

「絵なら描けるけど、色々と準備があるわね。よし、なんだか楽しくなってきたわ。コミケの準備と並行して頑張っていくわよ!」


こうして、私たちのVTuber計画が本格的に始動した。


……この時、私はまだ知らなかった。

先ほどアナスタシアさんが私に向けて見せたあの『3本の指』のジェスチャーが、私とアナスタシアさんだけの『3日間の秘密の旅行』を許可するという、恐ろしい密約のサインだったとは……。

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