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鎌倉ヴァンパイア・ヴィンテージ ~独占欲強め銀髪メイド様は、私(の血)を独り占めしたい~~  作者: つきよ


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第33話【武衛の宝編】武衛の宝の発掘、館までの長い道

ソフィア様たちが乗っている車と、たぶん護衛のメイドさんたちが乗っている黒いアルファードの後に、工事現場で見るような重機が続く。重機には「足利建設」とあったので、たぶん景ちゃんのお母さんの実家の会社だと思う。


私たちは面倒くさいけど、下駄箱に戻って来客用の玄関に向かった。

するとすでに、ソフィア様とうちの学校の、あんまり私たちには馴染みのない初老の理事長さんが対応していた。


「大庭さんもお久しぶりですね、日本に戻っていたんですね」

「ええ、ちょっとこの件で、関わらせていただいております」


どうやら、大人チームは知り合いらしい。私たち子供の知らない関係があるのだろう。


「これは、お久しぶりです、代議士」

「いやいや、毛利さん、いつもお世話になっております。急なお願いで申し訳ございません」

「問題ありません、代議士にはいつもお世話になっておりますので。それで、こちらが例のイギリスの大使の……?」

「お初にお目にかかりますわ。イギリス特任大使のソフィアと申します」


景ちゃんのお父さんと理事長さんがあいさつしていた。理事長って毛利っていうんだ。よく麻酔銃で撃たれてそう。


「ええ。それと、この子たちも同席してもよろしいでしょうか」

「うちの生徒さんですね。もちろん大丈夫ですよ」


私たち生徒には縁のない応接室に案内された。てか、メイドさんたち今日はスーツなんだ。


「それで、うちの学校に遺跡があるとか?」

「ええ、その辺は大使の方から」

「あなた、すっごく私の古い知人に似ているわ……びっくりしたわ……」


突然、ソフィア様が理事長に向かって話しかける。


「そうなんですか。どちらの方に?」

「大江って名前なんだけどね。もう800年ぐらい前になるわ」

「それは面白いジョークですね。たしかに私の名前は毛利ですが、鎌倉時代の大江氏の直系で……よく外国の方なのにお詳しいのですね」


理事長さんは、たぶんジョークだと思っている。


「そうだったのね。でもジョークではないわ。800年前から生きているのだから」


突然ぶっこんできたな。


「え……それは……」

理事長さんは困惑した様子で、景ちゃんのお父さんの方を見ている。そうなるよね……。

景ちゃんのお父さんは、ソフィア様の正体と、この間の文の件を解説した。


「その文に書いてあったのは、私が武衛に酒の席で『学び場所を設立したい』と話したことがあって、御家人の大江に、よく二人で語らった場所にお寺を設立するようにしたから、そこに私のお宝も置くように指示をしたっていうの」

「はぁ……確かに、私の祖先の大江がお寺を作ったと聞いておりますが……私が聞いた話では……」


理事長さんは、学校に伝わる歴史を語ってくれた。

当時のお寺とは変わっていて、源平合戦などの戦争や貧困で孤児になった子たちに、生きるための術や読み書きを教える施設を作るように言われたが、子供たちを集めてただ読み書きや作物の作り方を教える施設を作ると朝廷などに警戒される可能性があったので、寺であれば問題視されないということだった。

そして、寺から江戸時代には藩校となり、明治になって学校になったと。


「確かに辻褄は合いますが……これは学校の歴史として、資料が誰でも閲覧できるようにできておりまして……」

理事長さんは困惑しながら言う。無理もないよね。


「さすがは優秀な文官だった家系の子ね。この子たち(大庭、梶原)みたいに、簡単には信じないわよね」

「いやいや……」と景ちゃんと私のお父さんがリアクションした。


私から見たら理事長さんは60歳ぐらいに見えるのだけど、ソフィア様からみたら子なんだろうな……。


「私のことは聞いたことないの?」

「確かに、先ほど教えていただいた紅の方は聞いたことがありますが、当時の文献にも出てこず、頼朝公の側室なのかとぐらいにしか……」

「側室って……フハハハハ!……あなたの先祖とこの子(梶原)の先祖に、報告書の作り方をレクチャーしてあげたりしたのに……あ……」


ソフィア様は悪戯っぽく笑い、理事長を覗き込んだ。


「これは、どうかしら。武衛が側近で寵愛していた畠山重忠を取り合ったって話は?」

「ぶぁぁ!!……なぜそれを?!」

「ふふ、それはその場にいたからよ。衆道という雅な遊びをしていたの、公家出身の大江と武衛ぐらいだったもの。大変だったわよ、自分のおきにの重忠を大江が寝取ったって武衛がガチギレして、斬首するまでいったのよ。それをなだめるためにいろいろしたんだから……」

「え……確かにそのお話は、我が一族しか知らない話です……しかし……」

「まだ、あるわよ。そんで、焼きが回った大江が義経にてを……」

「わかりました、信じます……だからこれ以上は……」


衆道ってなんだろうと思いスマホで調べたら、BLだった……。


「寺があった場所は、現在は旧校舎のところに小さな石碑があります。ご案内します」

「ありがとう。それと気になったのだけど、文の中に『私が寂しくないように家臣たちの由縁たちが集まる寺にもする』って書いてあったのよ。これだけはわからないのよ」


その問いに、理事長は静かに口を開いた。


「ふむ……私もわかりませんが、ただ思い当たるのは、その寺を建てる時に、当時の御家人たちから今でいうところの出資をしていただいたと聞いております」

「なので、寺に御家人の家督をとらない次男などを寺にいれる風習があって……ここが私立の学校としたときに、その縁を大切にするように、御家人だった苗字をもつ子孫の子たちがこの学校を入学したときは学費を半額にするなどしました」


理事長はさらに声をひそめて付け加えた。


「平成の頃に、平家の方々も入れるようになりました。これはあんまり外に言えませんが、梶原さんなどゆかりある方々なら知っている話ですが……」


お父さんがばれちゃった...って顔をして私を見ている、あの時はうちもお金なかったから、別に怒ってないよ


「そう……前に三者面談でこの学校に生徒の名簿を見たときに、よく見た名前があったから、すごく懐かしい思いになったわ」

「そうですか。寂しくないように、ですか……。頼朝公は残忍なところもあると聞いていましたが、お優しい方なんですね」

「……ええ、そうよ……根はやさしい子なの」


そうして、わたしたちは旧校舎の例の石碑に向かった。

そこは草などが茂っていて、石碑がどこにあるかわからないが、私にはすぐにわかった。私の家の蔵で見た式神が6体いたから……。

この能力で幽霊とかみえちゃわないよね……。


「ええと……だいぶ整理されていないので、どこにあるのか……」

と理事長さんがキョロキョロしている。


「大丈夫よ、場所はわかったから。では、はじめましょうか」


重機などで作業員さんがそこを掘り起こしていく。古い寺跡が見つかってからはスコップで掘り出している。すごいな、作業員さん……さっきまで明るかったのにもう暗い。

すると作業員さんのひとりが大きな声で

「なんか、出てきました!」


それを聞いたソフィア様は深い穴に服が汚れるのもためらわず、駆け込んでいく。

そこには、土の中にあった木製の箱がでてきた。それを素手でソフィア様がこじ開ける。作業員の皆さんが唖然としている。それはそうだよね……。

うちの蔵と同じで漆の箱があった。でも家紋はうちのではない。


「あれは……源氏の家紋……」理事長が驚いている。

「あったわ……」


ソフィア様が箱を開けると、日本刀ではなく古い剣がでてきた……。作業員の人たちの部外者の方は知らないだろうけど、私たちはそれが国の秘宝だとわかる。


ソフィア様はそれを丁寧に戻して、箱ごとメイドさんたちに渡した。その時にメイドさんたちのスーツの内側に、拳銃のようなものがちらりと見えた……。よくみたら私がしっているメイドさんたちじゃない……ここ日本だよね?……。


そして、校門前に戻った私と景ちゃんは私の家に帰ることになった。景ちゃんのお父さんと私のお父さんはそれぞれの家に帰るとのこと。

ソフィア様の車が校門についた。そして、わざわざ車からおりてきた。


「二人とも、今日はお疲れ様。ちょっと顔をよく見せて」

「あ、はい」


数秒、わたしたちの目をずっと眺める。


「今まで本当にありがとうね。うちへのアルバイトは当分大丈夫だから、来週の月曜日にまたきてね」

「あ、はい。なにかあるんですか?」

「ちょっとこの剣の保管場所とか、しらべるから」

「そうなんですね、わかりました」

「ちょっとふたりとも、きて」


私たちふたりに抱きついた。


「ちょっと、ソフィア様、なんですか……」

「当分会えないから、二人の栄養素をね」


そしたら、いきなり首にソフィア様が嚙みついてきた。私と景ちゃんはふたりして、いったっと叫んでしまった。


「ちょっと、いきなり何をするのですか!」

つづけて私も、

「痛いですよ! 栄養とるってそういうことですか!?」

「違うわよ、マーキングよ。これであなたたちは安全だから」

「意味がわかりませんよ」

「いいの。じゃあ私はいくわね」

「はい、また来週!」


私は景ちゃんと二人で家に戻った。


「いきなりかみつくなって……なんだろう……」


私はふと、スマホを取り出して、画像フォルダをスクロールする。

そして、前にとった頼朝からソフィア様にあてた文をみる。


「これなんてかいているか……わからないよ……」

すると景ちゃんが、

「そういえば、最近、そういう古いくずし文字を分析してくれるアプリあるみたいだよ」

「そうなの? それ教えて!」

「あ、わかった。でも、試験段階だから、わからないかもだけど」


私はアプリをダウンロードして画像を分析にかける。

するとソフィア様が言っていた文章がでてきた。所々、わからないところがあるけど……これって……。


「景ちゃん、ごめん、私、館に今からいく!」

「え! 突然どうしたの?」

「ちょっとあのソフィア様をぶん殴りにいってくる!!!」

「え、私もいく!」


私は、全速力で館に向かう。もうあたりは真っ暗で私の息の音しか聞こえない。

間に合うかわからないけど、大切な友達が、馬鹿なことをしようとしている。


(第34話 完)

【作中用語解説と歴史背景】


【毛利氏と大江氏の歴史的関係】

毛利氏の始祖は、鎌倉幕府の政所別当(初代)を務めた文官・大江広元です。


大江広元の四男である季光すえみつが、父親から相模国愛甲郡毛利庄(現在の神奈川県厚木市周辺)の所領を受け継ぎ、「毛利」を本姓として名乗ったことが始まりです。


のちに中国地方を平定した戦国大名の毛利元就や、幕末の長州藩主である毛利家などは、すべてこの大江広元(毛利季光)を祖とする血筋となります。



【武士の男色(衆道)と当時の年齢】

「衆道」という呼称が定着したのは江戸時代に入ってからですが、武家社会における男色の風習は鎌倉時代にはすでに存在していました。


元々は平安時代の公家や、寺院における僧侶と稚児の間で行われていた風習が、権力を持った武士階級にも波及したものです。


武家においては、主従関係や戦場での強い結束(御恩と奉公)を背景に、主君が特定の家臣(若衆)を寵愛する文化として根付いていきました。


源平合戦が本格化した治承4年(1180年)時点における、該当人物たちの歴史上の年齢(数え年)は以下の通りです。


源頼朝:34歳

大江広元:33歳

源義経:22歳

畠山重忠:17歳

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