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鎌倉ヴァンパイア・ヴィンテージ ~独占欲強め銀髪メイド様は、私(の血)を独り占めしたい~~  作者: つきよ


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第24話 最近、私の親友、大庭しぐれの様子がおかしい。

最近、私の親友である大庭しぐれの様子がおかしい。


こいつは高校からの付き合いだけど、飾らない性格で、お嬢様学校であるうちの学校には珍しいタイプだった。中学の時に同じクラスになり、席が隣だったことで自然と話す機会が増えたのだ。

しぐれはちょっとオタク気質に対して、私は映画が好き(しかも邦画より洋画派)。ふたりとも趣味のジャンルはまったく合わないのだけれど、お互いの好きなものを教え合うような、居心地のいい関係が続いていた。


――そして、私は今。

鎌倉駅の近くに新しくできたカフェに、しぐれと来ているのだが。


「あの、しぐれさんや」

「なんだい、よしのさん」

「……なんで景がいんのよ!!!?」

「まぁまぁ、いいじゃないですか」


私たちの向かいの席で、ショートウルフの髪に紫のインナーカラーを揺らしながら、学園の有名人である梶原景がストローでアイスティーを啜っていた。


「あんた、今日バイトお休みだから私とカフェに行くって」

「言いました……」

「じゃあ、なんで梶原がいんのよ!!」

「これには、相模湾よりも深い訳がありまして……」

「その……今日アルバイトお休みだから、よしのと一緒に出かけるって言ったら、『行きたい』って、景ちゃんが……」

「深くはないわ! 八幡宮の源平池より浅いわ!」


私が頭を抱えていると、当の梶原は悪びれる様子もなくしぐれにすり寄った。


「三浦、いいじゃんか」

「……あんた……ちょっと最近、乙女っぽくなったよね……」

「はぁ!? うっせえぇぞ」


顔を真っ赤にして凄んでくる梶原。どうやら乙女は禁句らしい。

私はため息をつき、気を取り直した。


「まぁいいわ、本題に入るわよ。さぁ、詳しく聞かせてくれるかしら? しぐれ、いや『鎌倉の柴犬』さん」

「だから、そのあだ名で呼ぶのやめて!!! すごく嫌なんだけど!」

「お似合いじゃない。普段は害が無さそうなのに、触るといきなり吠えて噛んでくる。まさに柴犬じゃん」


数日前。しぐれは、梶原の親衛隊ファンクラブのようなものだに呼び出しをくらい、囲まれたらしい。

そしてあろうことか、そこで『親衛隊の隊長をフルボッコにした』というのだ。


普通なら休学問題レベルだが、なぜか向こうは学校にチクらなかったらしい。後ろめたい理由があったのだろう。

しかし、ゴシップに飢えている女子高において、この件はすぐに広まった。

女子の勢力図は川のように日々変わっていく。誰と誰が喧嘩したとか、一軍女子がハブられたとか、そんなせわしない勢力図の中に、しぐれは彗星のように現れた。

しかも、お嬢様学校には珍しい『物理的な喧嘩』を吹っかけてきた相手を返り討ちにしたとなれば――。


「なるほど……事情はわかったわ」

「そうでしょ……。まぁ暴力は絶対にやっちゃいけないけど、本当に怒りが湧いてきたんだよ……」

「まぁ、あんたのその性格なら怒るのもわかるけど、あんたそんな武闘派キャラだっけ?……」

「うん……まぁ……最近? 筋トレしてて、それで……熱くなった感じ?」


私は疑わしげに、しぐれの細い二の腕をペタペタと直接触りながら言った。


「そんな、筋肉がついているような感じはしないけどね」

「ちょっと、くすぐったいよ〜。……ただ、今回のことは私にも譲れないことがあったし」

「なるほどね……。そんで、梶原。元々はあんたが元凶なんだから、自分の女達ぐらい自分で管理運営しないとダメじゃない。しっかりしなさいよ」

「私だって、知らない奴らばっかりで困っているんだよ……」

「あんたねぇ。あんたみたいに顔だけは整っていて、バンドもやってて、ウルフカット系の女が女子高にいれば、こうなるのは目に見えていたはずよ……」

「本当にマジで、意味わからないわ……三浦……」


こっちが意味わからないわよ、と思いつつ、私はゴホンと咳払いをして仕切りなおした。


「ともかく、今後親衛隊とどう対応していくか。私の案は二つ」


私は指を立てて説明を始める。

「一つは、和解よ。私も部活を通して何人か親衛隊の知り合いがいるから、そこから『今回の件は痛み分けで』って感じで仲介するの。そんで、あんたたち二人が『遠い親戚で、梶原の親が東京の永田町にいるから一緒に住んでもらうことになっている』って誤解を解けばいけると思う」


「もう一つは、親衛隊も最近は二つのグループに別れているらしくて、『穏健派』と言われているグループがあるの。そこと協力して、梶原、あんたがみんなに直接誤解を解くのよ」


すると、大人しく聞いていた梶原が口を開いた。

「私も三浦の二つ目の案に賛成だ。確かにこんな事になってしまったのは私の責任だから、ここで私から直接伝える」


「自分で言うのもあれだけど、私は部活とか一軍女子とも仲良くしているから、顔は広いの。……今回の件になる前に、親衛隊には『しぐれはそういう子(悪女)じゃない』ってちゃんと伝えてたし」

「本当にありがとう……よしのが親友で私、良かったと本当に思っているよ……」

「わ、わかったから、くっついてこないで! 離れなさい!」


感動して抱きついてくるしぐれを引き剥がす。


「そんで、しぐれはどんな作戦を考えてきたの?」


私が尋ねると、しぐれはゴホンと芝居がかった咳払いをした。


「私は――『各個撃破戦法』を採用します」

「……な、なにそれ?」


初めて聞く物騒な単語だった。


「私のアルバイト先の……雇い主の博識なご令嬢にも相談したんだ」

「ああ、あんたのバイト先の、金持ちの女主人だっけ?」

「そうそう、ソフィア様ね。すごく色んな経験をしている人なんだけど、作戦プランを考えてくれたの」


そう言ってしぐれは、鞄から大きなファイルに綴じられた資料を取り出し、ペラペラとめくりながら説明に入った。


「それ、しぐれの考えじゃなくて、そのソフィアさんの考えじゃ……」

「たしかに! へへ……」

「まったく……しょうがないんだから」

「三浦、大庭にちょっと甘くないか?」


いきなり割り込んでくる梶原を無視して、しぐれは真顔でプレゼンを再開する。


「ええと。今回のように双方の条件が譲れない場合、外交としての手段は残されていない」

「……そうね、相手は『梶原としぐれとの接触を禁ずる』だっけ?」

「うん、無理だよね。そうなると――軍事作戦行動となる」

「……う? ……うん? うん?」


女子高生のお茶会で絶対に聞くはずのない単語に、私の脳がバグる。


「現在、敵グループの長は負傷により指揮系統が混乱している。その状況を突く」

「敵って……」

「今まで向こうが攻撃側だったが、今度はこちらから攻撃を仕掛ける。向こうの肩書きがある副隊長の四名が、各個一人のときに奇襲を仕掛けて攻撃をする」

「し、指揮官クラスを攻撃すれば、あとは『とりのあい』?」

「あ、『うごう』だ。その漢字の読みは」


すかさず梶原が訂正を入れる。


「ありがとう、景さん。『烏合うごうの衆』となるだろう。……ということです!」


しぐれがドヤ顔でファイルを閉じた。


「いやいや!!! それ完全に『戦争』みたいじゃん!!! おかしいわよ!」

「わたしは、景さんはいい人だと思っている。誰にも景ちゃんを渡さない」

「しぐれ……」

「ちょいちょい、百合ってないで! おかしいわよ、それ! 一人の時に奇襲かけるって、ただの闇討ちじゃない!」


私が全力でツッコミを入れるが、しぐれは「でも、ソフィア様の言っていることなら……ね?」と、梶原を見つめる。


「うん。悔しいが、今回の案は私も納得している」


なんで!? なんでそんな「仕方ないよね?」みたいな納得の仕方なの!?


「それに、何かあったら『これ』使ってって言われているし」


そう言って、しぐれがカバンからゴトリと出したのは――黒い鈍光を放つ『拳銃』だった。


「な、なにこれ! 拳銃じゃない!!」

「うん。脅すのに使いなさいって。さすがに本物じゃないでしょ」


私の父がこういう銃を使う遊び(サバゲー?)をしているので、なんとなく構造とかはわかるけれど、だいぶ重いし、見たこともない古めかしい形をした銃だ。


「なんか、ニッケル? だと色が目立つから黒いのがいいって言われた。なんだっけ、カンガルーって名前の銃?」

「違うよ、ルガーって言ってたよ。ドイツ製だから安心してって言われてましたよ」

「そうそう」

「そうそうじゃないわよ!! てか梶原、あんたもなんでそんな従順な話し方になってんのよ!」


カフェの店員さんに見られないように、私は慌ててその物騒な鉄の塊を鞄の奥に押し込んだ。


「ともかく! これは使わないし、その作戦は却下! 梶原、あんたがみんなを説得するの!」

「……わかった」


しぐれって、言うときは言う性格だったけど、こんな物騒な子だったっけ?

……それとも、そのソフィアさんって雇い主の影響なのだろうか?

私は、親友を取り巻く見えない「闇」に、少しだけ背筋が寒くなるのを感じていた。

【用語解説】

・百合っている

イチャイチャしている表現

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