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鎌倉ヴァンパイア・ヴィンテージ ~独占欲強め銀髪メイド様は、私(の血)を独り占めしたい~~  作者: つきよ


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第19話「親公認の同棲とソフィア様のデートプラン」


ストライキが無事に終わり、景ちゃんが私の家に住むことが正式に決まった。

そして、私たちが自宅に着くと――見慣れない高級車が、家の前に停まっていた。


「ママ!?」


車から降りてきた女性を見て、景ちゃんが声を上げた。


「景、元気にしていましたか」


静かなトーンで景ちゃんにそう言った後、彼女は私に向かって軽く会釈をした。


「どうも、初めまして。景の母です、大庭家次期当主様」


「え、あ! はい……初めまして……!」


(すごい。服の上からでも分かる、景ちゃんよりすごく大きい……)


「そういえば、かおるさんはお元気ですか?」


薫。女性の名前に間違えられがちだが、紛れもない私の父の名前だ。


「え、あ、はい。今は海外にいますが……元気です。父をご存知なんですか?」


ずっと細目だった景ちゃんのお母さんが、少しだけ目を開いた。


「ええ。薫さんとは『許嫁』だったので、よく知っています」


「ええええええ!?」


「何度もお会いして、すごく親密だったのですが……私が不甲斐ないばかりに……」


「大庭家、いや、父の代わりとして謝ります! 大変申し訳ございません……!」


「いいのよ。全然昔の話ですから。……今は独身ですか?」


(あ、この人全然諦めてない!?)


「い、いや、結婚して母と海外におります……」


「なるほど……。でも、大庭家のお祖母様に『薫さんの件で申し訳ない』と言って今の夫を紹介して頂き、景が生まれたという感じです」


「なるほど……?」


そこで、景ちゃんが慌てて口を開いた。


「あ、あの! 電話でも話した通り、大庭さんと一緒に暮らすことになったので……!」


「ふむ、分かったわ。その辺は、お父さんには私が説得しておくわ」


「あと、許嫁の件も……」


「分かっているわ。私も、向こうの家には正直あんまり良い印象がありませんでしたし」


(許嫁の件? どういうことだろうか)


「えーと、しぐれさん。不甲斐ないうちの娘ですが、末永くよろしくお願いいたします」


「あ、いやいや! こちらこそ?」


「うちの娘が大庭家に嫁ぐのであれば、うちの実家も大変喜びますし。今の日本の制度では色々(同性婚など)ありますが、それはうちの夫に何とかしてもらいます」


「えっと……それはどういう意味で……?」


「娘から聞いております。プロポーズを受けたと。今の時代、そういうのもありますよね」


「うんんんんんん!?!」


(したけど! したけれども!! あれは勢いというか、ノリというか……言えない)


「私も、薫さんとまた接点ができて嬉しいですわ」


「あ、その辺はまた改めてお話をしましょう……! でも、お父様はご納得していただけるか……」


「そこは問題ありません。今の夫をその地位にさせたのは、うちの実家の力ですから。その辺は……ね?」


私が「はて?」としていると、景ちゃんが横からそっと耳打ちしてきた。


「お父さんの今の仕事は『国会議員』で……お母さんの旧姓は『足利あしかが』で……」


「足利って……もしかして、あの足利グループの……?」


足利グループといえば、私でも分かる。旧財閥系と言われていて、商社、鉄道、インフラ……何でもありの超巨大グループだ。


「あ、あぁ〜! よろしくお願いいたしますぅ!!」


権力にめっぽう弱い私であった。


翌日の放課後。

私は景ちゃんと共に、洋館へアルバイトに出勤していた。

昨日の景ちゃんママの圧倒的なプレッシャーと、「国会議員の力で同性婚をどうにかする」というスケールのデカすぎる発言で、私の脳内はまだ少しキャパオーバー気味だ。


だが、出勤するなり、私はさらに頭を抱えることになった。


ソフィア様の書斎には、いろんな人がいた。人といっても、たぶん全員ヴァンパイアの人たち(財団の人間)だと思う。

あちこちで電話をしたり、深刻な顔で打ち合わせをしたりしており、普段は物静かな書斎が、まるで洋画に出てくる『軍隊の作戦会議室』のようになっていた。


「ヘリ部隊、3機用意完了しております!」

「SAS、SBSの両特殊部隊も、すぐに展開できるよう配置済みです」

「赤坂周辺は封鎖できないと、警察庁から泣きつかれていますが……」

「アメリカの戦争省ペンタゴンからは、空母の出港については15時間後に可決するとのことです!」

「ロシアのCBP(国境警備局)から、アメリカが日本海域に空母を展開させるようだが、そちらが関連しているのかと問い合わせが来ています!」


「……一体、何が始まろうとしてるんですか……?」


私が入り口で呆然と呟くと、紅茶を持ったソフィア様が、横からヌルリと現れた。


「『第一次デート作戦』よ」


「すみません、先ほどから聞こえてくる単語のほとんどが物騒すぎて理解できないんですが、第三次世界大戦でも始まるんですか?」


「何を言っているのよ。デートよ、デート」


ソフィア様は優雅に紅茶を啜った。


「よろしければ、そのデートプランを教えていただけますでしょうか……」


「いいわよ。今回の作戦の『参謀』なのだから、知っていて当たり前よね」


「ええ……いつの間に参謀に……」


ソフィア様がバサッと広げたブリーフィング用の資料には、こう書かれていた。


【デート作戦 進行チャート】

一、ヘリポートで待ち合わせ、ターゲットに目隠しをして軽井沢の別荘へヘリで移送。

二、別荘で昼食(※食事に媚薬を混入)。

三、自主制作映画を鑑賞(ヴァンパイアとの生活がいかに素晴らしいかを洗脳……もとい視聴させる)。

四、その後『私のものになるか』を選択させる。

 (※その際、別部隊がターゲットの家族を捕獲。断った場合、家族の様子をモニターで中継して圧力をかける)

五、契約書(血の盟約)を結ばせる。

六、アロマの効いた部屋でマッサージする(リンパを中心に)。

七、一緒に寝る。


「……oh」


「どうよ。完璧で抜かりないプランでしょ?」


ソフィア様が、ふんす、とドヤ顔で胸を張る。


「あの、すみません。これ、どう見てもデートプランじゃなくて、どこかのテロリストの『拉致監禁・脅迫作戦』みたいです。あと、後半がやけに生々しいです」


「言ってくれるじゃない。これでもだいぶ控えめにしたつもりよ? 動かす部隊の数も、そんなに多くないわ」


「いやいや、デートに『部隊』とか『軍事用語』使いませんから……! てか、地味に『別部隊が家族を捕獲』ってありますけど、完全に犯罪ですからね!?」


「なるほど。では、参謀であるあなたの意見を聞かせてちょうだい」


「まず、これ全部ナシにしてください! 一回目のデートなのに、何でそんなに欲望全開なんですか! マッサージと契約書は却下です!」


「そ……そんな……」


ソフィア様が絶望したような顔になる。


「普通にお食事に行きましょう。それで、向こうの行きたいところを聞いて、意見を合わせていけば問題ないです」


「相手の意見を……聞く……!? 目から鱗だわ……!!」


本気で驚愕しているソフィア様を見て、私は遠い目になった。

(アナスタシアさんやヒルデのあの重くて強引な性格は……間違いなく、このボスの背中を見て育った影響なんだな)


「あと、一回目なので過度なスキンシップはNGです」


「血を吸うのは?」


「NGです。まぁ、すごくいい雰囲気になったらワンチャンスあるかもしれませんが……。あ、ドーピング(媚薬)も絶対ナシです。なんですか媚薬って。薄い本じゃないんだから」


「だって、あらゆる事態を想定して、対策を万全にして臨まないといけないのよ……!」


「いやいや、デートって『相手を知ること』『一緒に楽しむこと』が前提だと思うんですが……」


私が諭すように言うと、ソフィア様は「ハッ……!」と雷に打たれたような顔をした。


「……いや、『盲点だった』みたいな顔しないでくださいよ」


「色々と難しく考えすぎたみたいね……ありがとう、しぐれ。その『共感』のプランで行ってみるわ。具体的に、何をすればいいの?」


「大人のデートってよく分からないのですが……まずはどこか景色のいいところにお出かけして、お昼を食べて、少し歩いて夕食を食べて解散、って感じでどうですか?」


「ざっくりしているわね……」


「デートなんて、ざっくりしたプランだけ決めて、あとはその場のノリと雰囲気に任せるのが一番です! ……あんまりしたことないですけど」


「あえて決めない……なるほど、臨機応変な対応力が試される、いい案だわ!」


こうして。

ソフィア様の初デートまで、あと数日となった。


(第19話 完)

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