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ブラッドカラー  作者: 福乃 吹風
88/195

88話 約束

 わんぼと大事な人との約束の話っすよ。まだリアちゃんたちが逃走生活を送っていた時のことっす。出会いの場所はブルーバスの土地にある、深海の国、マーメイル王国だったっすよ。

 わんぼはヨウミさんに頼まれてある任務で、マーメイル王国に訪れていた時のことっす。逃走者を逃すなというマーメイル兵の声を聞き、わんぼは真っ先に助けようと動いたんすよ。


 どこにいるんすかねと動き回っていたら、屋根を軽々と走って逃げていたっす。わんぼはマーメイル兵に邪魔されないように水槽をいくつか降らせ、こっちっすと合図を送り、わんぼのところに来て、逃走を手伝ったっす。 

 これくらい撒けば大丈夫っすかねと様子を伺っていると、その子から言われたっすね。


「なんで助けてくれたの?ライディー騎士団の仲間?」

「違うっすよ。わんぼは半ファンズマでエピルス集団の一員っす」

「エピルス?聞いたことがない」

「まあ、まだ表には出ていない集団っすからね。それより、逃走者がここにいるのは危険っすよ。特に王国はライディー社と手を組んでるって聞いてるっす」


 告げるとそうなのと息を整えていて、マーメイル兵の声が聞こえたから、こっちっすとその子の手を取って逃げたっす。一旦地上に出たほうが良さそうっすかねと建物の間に入りマーメイル兵を撒いたっす。

 するとその子を引き寄せていたから、この馬鹿となぜか殴られる羽目になったっすよ。パンチの後が頬に残っていながら、その子は赤っ恥でいたっす。


「いきなり手を取って、建物の間に入ったら抱き寄せられ、マジであんたわっかんねえ!」

「ちょっ大きい声出さないでっすよ。気づかれるっす!」


 走ってくる足音が聞こえ、口を塞ぎながら身を隠し、過ぎ去っていくのを待ったっすよ。少し我慢するっすと瞳を見るも、今でも暴れそうな雰囲気だったっす。まずいっすと思いながら過ぎ去って行くのを確認が取れ、パッと手を離したっすよ。

 そしたらその子は再びわっかんねえとわんぼに行って、建物の間の奥へと行ってしまったっす。一人じゃ危ないっすと追いかけるも、その子は軽々と屋根に登り姿を消されてしまったっす。


 大丈夫っすかねと任務を続行しようとしたら、離せと叫んでいる声に、ありゃとわんぼは助けに入るため、多少シャガヴァを出し、助けに入ったんすよ。

 ガラシャディの姿となって、周囲にいたマーメイル兵を倒し、その子を抱っこして王国から脱出したんす。


 降ろせ変態とジタバタするもんすから、気絶させ地上へと登ったんすよ。ブルーバスの土地にあるエピルスの溜まり場まで運び、起きるまで待っていたっす。

 ヨウミさんには多少任務が遅れることを報告しつつ、その子が暴れると思って水は入っていない水槽の中に閉じ込めたっすよ。


 少しして起きたらしいその子はここから出せと強く叩かれるも壊れることはないっす。


「いいから出せ!変態半ファンズマ!」

「変態って言われても、わんぼはただ助けただけっすよ。落ち着いてっす」

「落ち着けるわけねえだろうが!」


 俺はなとガラスに拳をつけ、頭もつけるその子がぽたっと雫を床に落としたんすよ。訳ありの逃走者っぽいっすと言葉を待っていたら、あることを言われたんす。


「ファンズマにっファンズマに弟を奪われたんだ!せっかく侵入できたと思ったのによっ!お前のせいで台無しだ!」

 そこで気づいたんすよ。わんぼの部下が教えてくれたある組織についての情報をっすよ。ファンズマに奪われたとなれば、大抵のことはわんぼたち四天王はヨウミさんから教わっていたっす。

 涙目でわんぼに訴えているその子は、悔しそうな瞳で唇を噛んでいたっすよ。目的はどうやら似ているような気がして、その子に伝えたんす。


「わんぼはその組織と関わりはないっすが、協力はできるっす。わんぼもその組織について調べていたっすから」

「あんたに何ができんだよ!あの王国に入るのだって、やっとだったんだ!それなのにっ」

「弟くんはすでに王国を離れていると思うっす。弟くんがいる場所はブルズン」


 えっという表情で誰もが驚くっすよ。わんぼも一度、侵入したことがあるっす。あそこには秘密の研究所が設置されていることを、誰も知らないまま人間たちは囚人たちを閉じ込めているんすから。

 

「あそこは刑務所だと聞いている。そこにいるはずがない!」

「人間の目なら見られないんすよ。わんぼやそれ以外のエピルス集団はこの目で確かめているんす」

「突破するには難しい。どうやって侵入すればいいんだ?」


 行くにしても行けば捕まるどころか処刑確定っす。だから人間の協力者が必要になると思ったんすよ。


「頼む、力を貸してくれ」

「いいっすけど、まずは人間に侵入できるよう手配してもらわなくちゃならないっす」

「誰か当てはあるのか?」


 あるっすよと告げたら、今すぐそいつに会おうと言われ、会ってくれるかわからないっすけど連絡することにしたんす。その前に水槽を解除してあげたっすよ。

 解放されたその子からそう言えば名前聞いていなかったっすと、思い出して聞いたっす。


「わんぼはタング。君の名はなんて言うんすか?」

「俺か?俺の名はドキア。鍵がなくても扉を開けられる鍵能力者。よろしくな、タング」

「よろしくっす。早速知り合いに連絡してみるっすね」


 よろしくなと笑顔を向けられつつ、ある人物に連絡を取ってみたっすよ。潜入捜査としてわんぼの協力者である、ムージュ・アガンさんに連絡したっす。

 勤務中だからさすがに難しいっすかねと切ろうとしたら、繋がりドキアにも聞こえるようにとスピーカーにしたっすよ。


「ムージュさん、貴重な子の弟さんがブルズンに入ったケースわかるっすか?」

『数人、新しく研究所に入ったのは確認が取れている。ただ以前より強化されているようだ』

「侵入はやっぱり厳しそうっすか?」

『鍵さえあればなんとか行けるだろう。もしかして貴重な子ってドキアか?』


 なぜドキアのことを知っているんすかと顔を見せ合っていると、ムージュさんからあることを言われるっす。


『ドキアは俺の娘でもある。すまない、ドキア』


 ドキアは何かを思い出したかのように親父となぜか壁につき、そっかとわんぼは閃いたっす。ムージュ・アガンは実の娘を殺害したことにより、容疑をかけられていたとされているっすけど、あれは違うんすよ。

 まだその当初は誰がやったのかわからず、一度留置所から脱走をして、ヨウミさんのところに来たんす。それからはムージュさんは協力者として動いていたんすよ。


『ラキューがあの研究所に連れ去られているのか。確認はできないが来る時は再度連絡をくれ。準備はしておく』

「ありがとっす。一応、ヨウミさんに報告してから連絡するっすね。それじゃあ」

 通話を終えてわんぼはヨウミさんに報告後、わんぼの部下少数とドキアで、ムージュさんの能力を借り侵入したんすよ。合図を送りながら、囚人たちに脱獄かと言われながらも、人間には大きな壁に見えるかもしれないっすけど、研究所の入り口がわんぼたちには見えるんっす。


「ここにあんのか?」

「わんぼの手を握るっす」


 はぁと少々怒っているのか照れているのかわからない表情を出すドキアでまた騒がれたらアウトっすよ。ほらとわんぼが手を差し出すと、もの凄い嫌な顔を出しながらドキアがわんぼの手を握ったっす。

 そしたらなんじゃこりゃと大声で言うもんだからわんぼと部下たちで口を押さえ隠れたっすよ。刑務官たちが侵入者かとわんぼたちを探しているようだけれど、気づかれていないようっすね。ふうとドキアの口を塞いだままだったっすから、ドキアはなぜか目をぐるぐるにして気絶してしまったっす。


 せっかく侵入したのに失敗で終わりそうと思ったっすが、研究所に入っていく人間の皮を被ったファンズマが入り、その隙にわんぼたちは研究所に侵入したっすよ。

 ドキアはまだ起きないっすから運ぶのに大変だったっす。ここは分かれて探し出したほうが良さそうっすねと思い、部下たちを分け手分けして探すことにしたんすよ。わんぼはほったらかしたら大変のドキアをおんぶしながらどんな研究所なのか気づかれないように動いたっす。すると起きたのかドキアが再び大声を出そうとしていて、しっとやや怒り混じりで言ったんすよ。そしたら口元を手で押さえ、悪いと言い、下ろしてあげたんすよ。


 わんぼは警戒しながらドキアに注意したっす。


「いいっすか?なんとか建物内に入ったっすけど、ファンズマは勘が鋭い生物っす。人間の匂いはすぐ嗅ぎ分けられっすから、ドキアはわんぼから離れないようにっすよ。今からわんぼ、人間の匂いを消すためにファンズマになるっすから」


 おっおうと言われわんぼはガラシャディの姿となり、人間の匂いを消したっす。ドキアを守りつつ建物自体を確認したところ、ヨウミさんが言っていたことを実験している場を見たんすよ。

 一人一人椅子に固定されており、能力を吸い取ってファンズマがその能力を使う姿。契りの書に違反していることにヨウミさんはずっと悩んでいたっす。


 人間が持つ能力は優れているっすから、ファンズマも欲しがるのは当たり前のことっすよ。あの子たちを救うにしても、他に囚われている能力者がいるかもしれないっす。

 そう思ったんすがドキアが嘘だろと小声で言っており、そのフロアを見ていたんすよ。もしかしてここにラキューくんがいるんすかとドキアに確認したんす。


「ラキューくんがいるんすか?」

「いや、ちげえ。縛られていない子いるだろ?あれ、チーシャじゃねえかよ」


 どれどれとドキアが指している方角を見ていると、小柄な女の子がファンズマと楽しそうにお喋りしていたっすよ。疑いたくもなかったっす。

 その当初、リアちゃんの仲間だと知らなかったわんぼは、チーシャちゃんとその後会うことになるだなんて思わなかったっすよ。


「意味わかんねえ。なんでファンズマと仲良くなってんだよ」

「落ち着いてっす。とにかくラキューくんが無事か探すっすよ」


 信じられない光景を目の当たりにしたドキアは動揺を見せ、突っ立ったままで嫌がるだろうけれど、手を握って他を探したんす。

 どこかにいるはずっすとドキアに鍵を開けてもらい、確認していくもラキューくんはいなかったっすよ。他にも隠れ研究所があるんすかねと歩いていたら、警報が鳴ってしまいわんぼたちが侵入したことがバレたようっす。


「今日はここまでにするっすよ。ドキア?」

「わっかんねえよ!」


 わんぼの手を振り払って、まさかとわんぼは水槽を降らすも、避けられてしまい、ドキアを追ったんすよ。ドキアの能力は貴重っすから、こんなところで捕まってほしくないっすと向かったその先に離せと暴れているドキアを見つけたっす。

 ドキアを助けようと動こうとした際に、背後から風の力が来て、元の姿に戻ろうとした時、ドキアの叫びによってわんぼは首に何かが刺さり、倒れてしまったっすよ。力が入らなくてコツコツと足音が聞こえたっす。


「ふふっ。いい獲物見つけちゃった。こんなところにガラシャディがいるとはねえ。連れて行きなさい」


 不覚でなんとか力を振り絞り水槽を出しても小さな水槽しか出なくて、意識が遠のいたっすよ。



 

 目を開けるとわんぼは人間の姿に戻ったっすけど、目の前にはわんぼの部下たちが十字となって固定されていたんす。全員逃げ切れなかったらしく、ドキアはと周囲を見渡してもドキアの姿はなかったんすよ。

 あの子たちみたいに能力を奪われてしまっているんすかと、ここはムージュさんに助けを求めたほうがいいかもしれないっす。けれどスマホは没収されているようで、なんとか連絡手段を取らなければと、ノデッドに聞こえているかわからずとも、わんぼの声を聞いてくれていると信じるしかないようっす。


 わんぼが起きたことでわんぼを取っ捕まえた女がわんぼの顎に触れたんすよ。


「あらあら、ガラシャディと思えば半ファンズマのようね。可愛い顔立ちしちゃって、食べちゃいたい気分だわ」

「ドキアをどこへやったんすか?」

「そうねえ、知りたいなら、わたくしめたちに従ってもらおうかしら?それができなければ、ここであなたの部下たちは死ぬわよ。従うなら部下たちは解放してもいい。どうかしら?」


 従わないでくださいと部下たちが叫んでおり、だまらっしゃいと強風を吹かせ、思うように言葉が発せられない状態になっている。


「ふふっ。簡単なお仕事なのよ。あなたは四天王と呼ばれているようね。ならヨウミというファンズマの帝王の息子を殺しなさい。前々から邪魔だったのよね。たかが半ファンズマでファンズマの帝王と呼ばれているんですもの。歴とした帝王のお子さんがいらっしゃるというのに。なぜかしら」


 帝王の間に生まれたのはヨウミさんだけではないんすかと混乱していたら、いらしたようよと言われそちらに向けた。その姿に見惚れてしまうほどの美貌すぎるファンズマで、帝王と似た姿で性別は女性っすかね。

 

「ウィンダ、下がりなさい」


 かしこまりました、姫とウィンダというウィゼンというファンズマはいなくなったっす。それによって強風は止みしゃがんでわんぼの顔を触手で触れたんすよ。

 ふわふわした触手っすねと心の中で思いながら、じっとわんぼを見る姫という子の瞳は色鮮やかっす。


「妾は父君を恨んでいる。なぜ妾がいながらも、人間の遺伝子を借り、ヨウミという忌々しい弟ができたのか。母君は悲しみに落ち死したのだ。わかるか?この気持ち」

「わんぼに言われても、わからないっすよ。姫様がなんと言おうとも、わんぼはヨウミさんを尊敬してるっす。まあ多少、世話を焼かされることもあるっすけど、ヨウミさんは立派に成長なされたっすよ」

「戯言を!」


 触手で頬を潰され顔が凄いことになってるっすと思いながらも、姫様はどこか悲しくて寂しくて涙目になりながらわんぼに言い放ったんす。 


「弟が生まれたことによって、妾は人前に出るなと父君に言われたのだ!悔しくてっ悔しくて!なぜ妾は母君と一緒に身を隠しながら生活をしなければならなかったのか!妾と母君は父君によって捨てられたようなもんだ!」


 帝王はヨウミさんがリアちゃんに殺されかけた辺りから、帝王は姿を膨らませているっす。姫様のところに戻っていないわけも知りたいっすけど、帝王がいつ現れるかわからないっすから。

 両手両足は完全に縛られていたとしても、ガラシャディの姿になれば縄は解けるっす。ガラシャディの姿となって縄がブチっと切れたっすよ。そしたら姫様の長い触手たちに動くのではないと拘束されちゃったっす。


「絶滅したファンズマの遺伝子を持つお前を、妾の僕となって忠誠を誓ってもらう。出なければ部下も侵入した子も妾がお前の前で殺してやろう」

「いやいや、わんぼはヨウミさんを裏切れないっす。そもそもわんぼは半ファンズマ。到底」


 ひっと姫様と言いたくても、帝王が帰ってくるかもしれないし、姫様の事情を探れるかもしれないと感じたっすよ。部下とドキアが無事に帰れるのなら、従うに越したものはないっす。


「わかったっすよ。姫様の僕になってあげるっす。但し、条件があるっすよ。捕まえた子たちは逃がすべきっす」

「それはできない話だ。あの子たちは自ら志願した子たち。能力があるせいでライディー騎士団に狙われる対象。能力を奪ったとしても、その子たちの生きる未来はないだろう」

「なら訓練させればいいんじゃないっすか。ライディー騎士団に立ち向かえる強さを与える代わりに、能力を少しずつもらっていけば、助かるはずっす」

「それは考えたことはなかったな」


 あのやり方はさすがにないっすよと思っていたら、検査着を来た少年が走ってきたっすよ。


「姫様、お願いです。お姉ちゃんを解放してください」

「ラキュー、この部屋に入るなとあれほど言っているであろう。下がりなさい」

「嫌です。お姉ちゃんは僕をずっと探していた。お姉ちゃんの能力を奪わないで」


 そしたらさっき見かけた子チーシャが姫様を困らせないのと現れ、ラキューの手をとりいこうとしたっす。するとピタッと止まり、わんぼの耳元で囁いたんすよ。


「リアはヨウミには渡さないの。再会した時、お話聞かせてなの。それと言っておくけど、どんなに振り回されようとも、リアは最終的に姫様のところに辿り着く運命なの。だからその時に」


 言われた言葉に待つっすと言ってもチーシャはニカッと笑って、ラキューくんと一緒に行ってしまったっす。ラキューくんも自ら選んだということっすか。

 なかなか離してくれない姫様だから人間の姿に戻ったっす。


「妾の僕になったからには、裏切ったら妾が食ってやろう」


 じゅるりとよだれを出している姫様で、姫様の食事になるのはちょっと嫌っすよ。ここはうまく従って、逃げる道があるのなら、その時に逃げるっす。

 解放されたわんぼは忠誠を誓うために跪くと、姫様はわんぼの前に立ち手を差し伸べられたっすからその手にキスをしたっすよ。


「ヨウミの弱点を随時、報告してもらう。ラキューも連れて帰って構わないが、ヨウミにこのことは話すな。お前らもだぞ。誰かが妾のこと口にしたら、命はないと思え」

「わかったっすよ、姫様。姫様の名前聞いてないっすけど、なんと言うんすか?」

「妾か?妾の名は、ヨウ。母君が教えてくれたのは太陽のような光のように育ってほしいという意味が込められている」


 太陽からとったんすね。てことはヨウミさんって夜の海ってことっすか。昼しか現れない眩しい太陽、そして夜の海。ここなら月夜に輝く星でもよかったんじゃないっすかと思ってしまうも、それは置いといたっす。

 もしかしたらまだヨウミさんたちの兄弟が見つかるかもしれないっすから。


「ならヨウ姫と呼ばせていただくっす」

「好きに呼べばいい」


 ヨウ姫はわんぼの部下たちも解放してくれて、ドキアがいる部屋に入るとこれはやりすぎじゃないっすか。ドキアは鍵能力者でもあるから、逃げられないようにと鎖でぐるぐる巻きにされていたっす。

 やりすぎではないっすかと思いながらも、鍵を開け解放されたドキアは威嚇しながらわんぼの後ろへと隠れたっすよ。


「ラキューがいる部屋だ。ラキューを連れてここにはもう侵入してくるな。さもなくば、お前の命とラキューの命はないと思え」

「てめえ何か企んでるだろ!」


 わんぼにしがみつきながらそう言っていて、あまり深く関わらせないほうがいいかもしれないっす。


「ドキア、急ぐっすよ」


 おいっとドキアの手を引っ張って、ラキューがいる部屋へと入るっすよ。ラキューはぬいぐるみを持って少し落ち込んでいたけれど、ドキアがラキューと抱きしめてあげたっす。

 ラキューは驚いて、どうしたのとびっくりしながらも、ドキアがよかったと言っていたっすよ。


「お取り込み中、悪いんすけど、早めに出ないと後々言われそうっすから、出るっすよ」

「みんなは?」

「みんなはまた今度出してくれるみたいっすから、行くっすよ」


 本当は違うんすけどドキアとラキューはわんぼの言葉を信じてくれて、研究所から脱出したのはいいっすがそこで警報音が鳴ってしまったっす。

 わんぼは返してくれたスマホで、ムージュさんに連絡をしていると、刑務官に囲まれてしまったっすよ。このやり口はやりたくなかったでありますが、水槽を降らせ刑務官を閉じ込めたっす。


 そこにムージュさんが顔を出して、早く急げとわんぼたちを逃がしてくれたんすよ。そしたら研究所からチーシャが出て来て、ムージュさんは顔を青ざめていたっす。


「ムージュさん?」

「急げ!」


 そう言われわんぼが脱出をした後、ムージュさんは顔を出してわんぼに言ったんすよ。


「俺はここまでのようだ。ドキア、ラキュー、なんとしてでも逃げ切れ!いいな!」


 そう言って時空の扉が閉まり、ラキューがお父さんと叫びながらも、ドキアが止めていたっす。お父さんがと泣き出すラキューで、わんぼは真っ先にムージュさんがやったとされている記事をスマホで確認したんすよ。

 ムージュさんが殺したとされている娘さんの名前、公表はされていないっすけど、裏のネット情報で検索をかけたっす。そこにはずらりとチーシャの写真が出ていたっすよ。


「なあ、タング」

「なんすか?」

「あの小娘、ただ者じゃねえ気がする。親父が実の娘を殺したという記事が出た時には、親父はいなかった。だけど一つ言えるとしたら、親父に言われてたことを思い出したんだ。俺、頭悪りぃからすっかり忘れてたけど、紫遺伝子の研究所で何人かが毒死で死んだ。だけど霊安室に運ぶ際にチーシャだけが蘇ったらしい」


 霊安室に運ぶ時に蘇るのは、正直ゾンビかなにかと思うも、チーシャはごく普通の子だったっす。


「チーシャってどんな能力っすか?」

「すり抜ける能力って聞いたことはある」


 すり抜ける能力=幽霊能力者ってことっすかと愕然としてしまったっす。仮に幽霊能力者だとすれば、本体があったとしても幽体離脱で自由に動けるっすよね。


「教えてくれてありがとっす。とにかくムージュさんのことに関してはわんぼがなんとかするっすから、ドキアとラキューくんはどこかに身を潜めるっすよ」

「じゃあ、約束な。俺とラキューもタングを待ちながら、ある程度仲間は増やしとく。だから親父を救ってくれたらまた会おうぜ。こんなに親切にしてくれるファンズマに出会えたのは初めてだ。サンキュー、タング」


 ドキアはわんぼにハグして、この短時間でわんぼの心臓がドキドキしていて、部下たちはなぜかよっ英雄と歓声をあげたんすよ。なんか照れるっすと長いハグが終わり、ラキューくんと一緒にどこかへと行ったんす。

 無事にいてくれると信じてわんぼたちはあのことを塞ぎながらヨウミさんと接していたんすよ。



 その後、ドキアとラキューはダディゴと出会い、一緒に暮らすことになった。けれどリアたちとの出会いによってドキアはチーシャと遭遇することになる。

 島暮らし初日、チーシャの部屋に入り、チーシャを壁まで追い詰め、問い質した。


「あの時、親父をどうした?タングからなんも連絡がこねえんだよ!なんか知ってんだろ?」

「タングは姫様の僕なの。だから連絡も一切ないってことなの」

「ふざけんな!タングは親父を救出して、会いにくるって約束してるんだよ!」

「約束を守り続けている、お馬鹿さんなの。約束は破られるの。ラキューを守りたければ、ルシャンダに頼んで島から出てなの。それともラキューを姫様のところに戻してあげてもいいの」


 ドキアはくそったれと言い放ち、チーシャの部屋を出て、ドキアはルシャンダに頼み、ラキューを残して島を出ることにしたのだ。そして後日、ドキアはファンズマの組織、レヴェラにて囚われの身となったのである。

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