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ブラッドカラー  作者: 福乃 吹風
71/195

71話 ミライは妹に会いたい

 あれから三年の年月が経っても、リアたちの行方がわからずにいた。イルルも未来予知でやってはいてくれているが、リアたちの居場所は特定できないでいる。そしてノアも未来に行ったまま帰っては来なかった。

 ニューダ社は社長代理として親父が受け持ちながら、カディヴィアの仕事を手伝っている。社長室でそんなことを考えながら資料に目を通していると、パパと幼稚園の格好をしたミライが入って来た。


「ミライくん、待つっす」


 タングは最近となってミライの子守担当を引き受けてくれて、ミライはあっかんべえをし、俺の膝に登り始めるから乗せてあげる。


「ミライ、タングを困らせちゃ駄目だぞっていつも言ってるだろ」

「むう。だってタングがいるから…」


 お友達ができないってわけかとミライが通っている幼稚園は、カディヴィア学園内の隣にあるカディヴィア幼稚園。そこにはピチピチの能力者たちがいる幼稚園でもある。

 一応社長の息子でもあり警護はつけるべきと思って、子守担当を作ったが逆効果だったかとミライの頭を撫でた。


「ごめんな。ママのこともあって、ミライを一人にさせたくないんだ」

「ミライ、ノゾミに会いたいよっ」


 ミライはあまり泣かなくなったものの、涙目を見せて俺のことをじっと見つめる。妹とはっきりしたのは、ある一通の封筒。

 差出人は不明であり最初は処分するつもりだったが、ミライが勝手に開けちゃって、そこに入っていたのはティルと写っているリアが出産した写真と、成長していく赤子の写真。それからメッセージカードが入っていた。

 メッセージカードには姉貴とワイズの子、名前はノゾミで性別は女の子と書かれてあって、キアがわざわざ送ってくれたんだと。


「いつになったら会えるの?」


 ミライはこの写真をもらってから、そればかり言っていて、ごめんなと優しく抱きしめてあげる。何も手掛かりがなくて、今お手上げ状態なんだ。

 野良のファンズマとそして天魔という化け物退治が増えているから、それに対応してばかりいた。


「社長、お客様がいらっしゃいましたよ」

「そうか。応接室に案内してくれ、コルア」


 何か手掛かりを掴めれば一番いいとミライを降ろして、俺はしゃがみ幼稚園の帽子を被せる。


「これからお仕事だから、タングと待ってられそうか?」

「うん。パパ」

「ん?」

「ママはパパのこと、忘れてないよね?」


 その言葉に俺は心にしまい込んでいたことがあった。ミライはリアと別れ際に発動させてしまったのではないかとミライはそれに恐れている。


「大丈夫。ママはミライのこともパパのこともちゃんと覚えてる。だから心配はいらないよ」


 そう信じたいけれど、この三年間手掛かりがなかったのは、リアに何かが起きたとしか言いようがなかった。ミライは俺に手を振り、タングと一緒に自宅へ行ってもらって、俺は応接室で待っている人と接触する。

 ノックをして扉を開けると、そこにはロンゴールとリアたちの母であるナユが来日した。


「来てしまってすまないな」

「いえ。それで情報というのは?」


 この三年、リアたちの捜索をしていたら、ふらっと現れたのがロンゴールで親父の妹であり、リアたちの母であるナユを連れていたことに一同疑ってしまったこともある。

 けれどナユは自分の子すら忘れてしまっていることもあり、ノアはそれによっていなくなってしまったようなものだ。


 ロンゴールはタブレットを見せてもらい、噂では聞いていたがデッドハラン王国があった場所に、新たな国ができていた。


「私が放したファンズマもいなくてな。おそらくここにリアたちがいるのではないかと考えている」

「リスヴィオン王国、王はフィカス王。元ライディー社がやっていたことを同じようなことを…え」


 信じられないことで会社名がR・D社。俺は思わずロンゴールの瞳を見ると、やっぱりそうなんだと確信する。


「R・Dとなってるが、ライディー社という意味だろう」

「てことはフィカス王は、オーケル館長」

「おそらくな。すでに各土地に施設を建設済みで、研究が行われているようだ」


 そうなるとファンズマを完全に倒す目的で動いているってことでいいんだよな。ここに商談を持ち込むことは可能なのだろうかと考える。


「行くには覚悟が必要になってくるぞ」


 ロンゴールはスライドして社長が誰なのか見せてもらうと社長がまさかのまさかだ。ティルが社長兼総司令官となっている。ニューダ社のこと忘れてるだなんて、何してんだよ。


「このこと親父はなんて?」

「焼かれそうになって、こっちに来たということだ。行くんだったらギーディスと一緒に行ったほうがいいかもしれない。何が起きるかわからんからな」


 後で親父に連絡するかとタブレットをロンゴールに返し、違う件を吹っかけられた。


「ミライは大丈夫そうか?」

「写真を送られてきた辺りから、妹に会いたいとは言ってる。シフォンもいなくなったことで能力が薄れてる可能性があるから、気をつけてはいる。いつエンディードが出てもおかしくはない状況だ」

「すまない。ナユの孫にまでエンディードが伝染するとは思ってもいなかった。改めて謝罪させてくれ」


 頭を下げられてしまい、頭上げてくださいと上げさせる。

 ロンゴールはエンディードが消えないと判断していたことにより、エンディードを操れる人物まで作り上げた。けれど結局、アイズとアイズを助けようとしたノースは行方知らずとなっている。


「私が消す方法を探していればこうなることはなかった」

「いや、どちらにせよ、リアたちはあの人たちに狙われる対象でした。ですので今は俺たちに協力をお願いします」

「わかっている。ミライのためにも、全力を尽くすと誓おう。デンパット王国で広告は作成をしてもらっているようだが、ミライを本当に晒すのだな?」

「はい。もしかしたらリアが帰って来てくれるんじゃないかと思ったので。それにたとえミライのことを忘れてしまったとしても、ニシャが細工してくれたことでリアは思い出すんじゃないかって気がします」


 これは天空都市ウラデュエに広告が届くのかわからずともかけてみる価値があると思ったからだ。ニシャに会って、全て打ち明けた時、ニシャは絶対に届けさせようと言ってくれた。今それで度々デンパット王国に訪れることがある。 


「ソアレはどうしてます?」

「ソアレはだいぶ良くなったよ」

「それはよかったです」


 ロンゴールが住んでいるのはバンジャの架空世界で、身を潜めていながらリアの捜索に当たっていた。ただ相変わらずクロウは遊び半分でルシャンダに攻撃をしているらしく、ルシャンダは仕事にならないでありますと怒ってたっけ。


「ニュラン町には行ってみたか?」

「まだ。何かわかったんですか?」

「いや。私もまだ把握仕切れていない部分があるが、ミライのリセット、そしてワイズの無効化で治せるかもしれん。行くかどうかはワイズに決めてもらいたい」


 ミライの能力がもう完全に使えるようになっているのなら試す価値はありそうかもしれない。


「一度、行ってみます」

「ならヒアラに連絡をしておく。近々ワイズ社長が来るからと」

「ありがとうございます」

「また何かわかり次第、報告しにやって来る。それからミライに会わせてもらえないか?ナユが何かを思い出せるかもしれん」

 

 何度か会わせたけれど、何も効果はなかったが、再度チャレンジしたいのだろう。わかりましたと応接室の扉を開けて自宅へと向かった。

 家に入りリビングに入るとタングが馬となって遊んでもらっていて、俺が帰って来たことで俺のところに来る。


「おかえりなさい」

「ただいま。おばあちゃんとおじさん来たから、挨拶」


 こんにちはと笑顔を出しロンゴールはミライの笑顔をパシャリと撮っていた。おじいちゃん目線で見ているなこの人と思いつつ、俺は茶葉を出しお茶を作る。


「わんぼがやるっすから、座っててください」

「いいよ。いつも任せっきりにさせちゃってるし、これくらいは」

「そうっすか。ワイズ、後で少し話したいことが」


 うんと相槌を打ちお茶を二人に出す。ミライはなぜロンゴールたちがやって来たのかわかっているような感じで、リアの母さんの膝にのりほおを触れた。

 そして俺は無効化をするため、リアの母さんに触れると倒れそうになり、ロンゴールが支える。もしかして行けたかとソファーに寝かせ、起きるまでロンゴールと遊んでもらうミライであった。


 夕飯を作っていたら目覚めたようで、ロンゴールが大丈夫かと答えると、ロンゴールと困惑し始める。ミライはやったとはしゃぎ、火を一度止め、おばさんと声をかけたら、リアはと聞かれた。

 なんて説明すればいいのだろうと悩んでいたら、ミライがリビングにある棚の引き出しからあの写真を見せながら言う。


「ミライの妹、ノゾミ。離れて暮らしてるの。キアお姉ちゃんも、ママと一緒にいる。ママに会いたくても、どこにもいないの。おばあちゃん」

 ミライの言葉で何かを思い出したかのように、ミライと優しく抱きしめ涙を流す。タングはヨウミを連れて来るようで、俺の家を後にした。


 ヨウミが来たことにより、ミライはタングと別室にいてもらい、リアの母さんは教えてくれる。


「夫、ルワードに話したの。デッドハラン王国で何をされたのかと今もロンゴールを愛していることを。そしたらルワードの師匠であるパトレア様という方に私を託し、愛弟子であることをやめると言った」


 なぜ妻をその人に託したんだろうと、リアの母さんはその続きを語る。


「リアたちがルワードの子ではなかったことが判明したの。リアたちはパトレア様の子たちだから偽装はもうしたくないと」


 頭が追いついていけてなくとも、ヨウミとロンゴールはなぜか納得している様子だった。


「そこでパトレア様はルワードに最後の指示を与え、私の父を処刑するよう命じた。私はおとぎ話に出てきた、天空都市ウラデュエに幽閉され、記憶も抹消されてたわ。ワイズとミライがやってくれたことで、思い出せたの。感謝するわね」

「行き方はわかるか?」

「わからないけれど、ノールト城の天空にあるんだと思うの。一度見たことがあったような気がして」

「なるほど。そう言えばロンゴールよ、父上はどこにいるのだ?この三年探しても見つからなかったぞ」


 ロンゴールはタブレットを出し、ある映像を見せてくれる。それは変わり果てた老爺で、ベッド生活を送っていた。


「架空世界で生きてはいるが、時間の問題だろう。デッドハラン王国に来た際、手紙をもらったようだな。それが遺言を意味していたそうだから、会わせることができなかった」

「父が変わり果てるというのはそういうことだったのか…」

「ジェバールはもう何百年も生きているファンズマになる。もし会いたいというのならば、聞いておくがどうする?」

「会わせてくれ。我が輩の父親なのだ」

「よかろう。話はつけておく」


 何百年というのは不老不死のじいちゃんかと一瞬思ってしまった。


「私もできる限りのことはやってみるわ。まずはギーディスと話をしてからでいいかしら?」

「また行ったらなんて言われるかわからないが、明日訪ねてみよう。では私たちはこれで失礼する」


 ありがとなと玄関まで送り、扉が閉まったことで、ヨウミと話す。


「空飛べるファンズマっているか?そいつと話してウラデュエがどこにあるのか確認をしておきたい」

「緑土地グリディアの南方面にフウトウという街がある。そこに知り合いがいるから聞いてみるとしよう」

「頼む。俺は一度ミライを連れてニュラン町に訪れてみるから、それが終わり次第、幹部を集めて話すからそれまでに」


 承知したとヨウミも帰るようでタングを呼び二人は自宅へと帰った。ミライはバイバイと手を振っていて、俺はしゃがみミライに伝える。


「ミライ、明日、お出かけすることになったけど、絶対に俺から離れないって約束してくれるか?」

「うん、おばあちゃんみたいに記憶がないの?」

「そうだ。困ってる人たちがいるから、助けに行こうな」


 うんといい返事をもらって、お風呂に入り、ミライを寝かせつけた後、タブレットでビデオ通話をする。出ないかと切ろうとしたら、なにワイズお兄様と布団に包まっているニディア。


「ニディア、ナユ叔母さんが記憶を戻せた。一歩前進ってとこだよ。だからさ、ニディア。そろそろ、引きこもるのはやめないか?」


 ニディアはこの三年間、何もできなかったことで引きこもり生活をしている。親父と母さんはなんて言ってるのかは定かではないけれど、二人は仕事が山積みでニディアに構ってあげられていないと感じたから、こうしてビデオ通話にし話をしていた。

 ごろんと寝返りをするニディアで、まだ宝物が修復していないように見える。兄貴はどうやってニディアと接していたのだろうかと、悩むとワイズお兄様と呼ばれた。


『ニディア、隠してたことがあったの。怖くて、誰にも言えなくてっ』

「大丈夫。俺は責めたりしないよ」

『一度っビリーに捕まっちゃってっパトレア様がいるあの都市に連れて行かれたっ。アイズお兄様が危険だから、キアと引き離してくださいって言われて、指示に従っちゃったのっ。そのせいでっアイズお兄様とキアにノースまでがっ』


 ニディアは寝っ転がりながら涙を流し、ごめんなさいと俺に言う。だからノールト兵があの場にいたのか。


「ニディアが責任を感じる必要はない。だから自分を責めるな。ピットたちが俺たちの強さより上回っていたことなんだから、気にすることはないよ。みんなも心配してるから、落ち着いたらでいい。みんなに顔出しにきてくれ」

『…うん。ありがとう、ワイズお兄様。ワイズお兄様は大丈夫?』

「大丈夫って聞かれると大抵の人には大丈夫って答えちゃうけど、リアがいない三年間は正直辛かった。けど俺にはミライやルシャンダたちが支えてくれてるから平気だよ」

『ワイズお兄様は強いね。ニディアはティルのこともあって、まだショックが大きいけど、ワイズお兄様のように少しずつ心を強くしてみる。いつも連絡してくれて、励ましてくれて、ありがとう。そろそろ寝るね』


 おやすみと告げて、ニディアの通話を終えると、タングからのビデオ通話が入り応答する。


『ニディアちゃんと通話中っすか?』

「今終わったところだよ。それで話ってなんだ?」

『ミライくんがお絵描きをしたやつで気になったことがあったんすよ。今スマホに送るっす』


 ピコンと鳴りスマホで見せてもらうと、これはと赤いのと黒いので描いた絵だった。ちょっと待ってろとお絵描き帳を確認すると見つける。


「何を意味しているのかミライ、何か言ってたか?」

『夢の中で出てきたらしいっすよ。わんぼが思うに赤いのが炎魔ホムヴァルで黒いのが影魔ドゥシャーだと思うんす。それで二人描かれているのわかるっすか?』


 赤いそばに俺っぽいのと黒いそばにいるのが髪の毛が銀色で塗られ、黒の衣服を着たやつが描かれてあった。


「俺ともう一人…」

『ティルっすよ。ティルは島に運んだ時に銀髪だったんす。それともう一枚の絵が気になってたんす』


 もう一枚送ってもらいどこに描かれてあるかなとペラペラめくって見つける。これは何を意味しているんだ。


『ミライくんにこの絵はなんっすかって聞いたら、ママとの秘密って言われたんす。夢で会えるわけじゃないし、リアちゃんが今、どんな状況でいるのかもわからないっすから、なんとも言えなかったっす』


 ミライが描いたのはヨウミがファンズマになっているようなものが指輪を持っている絵だっだ。ヨウミが誰かにプロポーズと考えるも、ヨウミはリアファンということもあって結婚願望はないはず。


「ヨウミには見せたのか?」

『見せたっすけど、子供の落書きだからそんなに深く考える必要はないと思うって言われたっす。わんぼ的には何かを意味しているんじゃないかってワイズに相談したんすよ』


 ヨウミが指輪を掴んでいる絵、子どもがここまで描けるような絵ではなさそうな気もするな。


「教えてくれてありがとう。また何かあったら随時、報告を頼む」

『わかったっす。明日、有給使わせてもらうことになってるっすから、代わりにハディックが同行するっす』

「了解。ゆっくり休めよ。それじゃあ、おやすみ」


 おやすみっすと言われ、通話を終えた後、俺は再度ミライが描いた絵を一枚一枚確認していく。リアや俺たち家族の似顔絵、みんなの似顔絵だったり、島で見つけたものを真似して描いてあるのもあった。さっきの二枚が重要な絵かもしれないと最後の絵をみると、これはなんだ。一面に真っ黒に塗り潰されていて、何を描いたのかはっきりしない。

 ルシャンダだったらこれくらい修復できるかもしれないと写真を撮り、ルシャンダに送っといた。クレヨンを確認すると黒がやたら減っているのが見える。帰りに雑貨屋さんでクレヨン追加で買ってあげるかとタブレットをテーブルに置き、ミライが寝ている横に寝て俺も就寝した。


 翌日、ミライを私服に着替えさせ、いつでも食べれるようにとおにぎりを作っている。リアの弁当が恋しいといつも朝弁当作る時に思っている自分がいた。


「パパ、まだー?」

「もう少しでできるからリュックに必要なもの詰めておくんだぞ」


 そう言っていても、ミライはいろいろとおもちゃを持っていきそうだなと作りながら、未来の様子を見る。

 ハンカチ、ティッシュを自分で詰めており、余計なもの持っていくなよと見ていたら、俺がミライの名前を決めたノートを入れてリュックのチャックを閉めたのだ。

 お守りとして持っていくんだなと思い、俺のリュックにはおにぎりや水筒を入れてローブを纏い、ミライにもローブを着させる。これでよしとミライの手を握り、玄関に鍵をかけフリジンダ社へと向かった。

 モニター室にはすでにハディックが着ており、ハディックとミライはハディックに飛びつく。


「おはようであります。ニュラン町行きのゲートはできていますであります。それから」

「後で確認する。ゲートを」


 あいあいさーとゲートが開き、ハディックはミライの手をしっかりと握り、ゲートの中へと入った。まずはヒアラの家を訪ねに行こうとしたら、早速野良のファンズマが出現し挑もうとした時のこと。

 上品な白いローブを身に纏った人物に先手を行かれ、ファンズマが消えていく。風によってローブが降り、ミライがキアお姉ちゃんと叫んだのだ。


 キアは俺たちを見て、周囲を確認し、俺の手に何かを託した後、姿を消してしまった。何をくれたんだと託したものは紙屑。それを広げてみたら、リアの字だとわかり、そこには思いがけないことが書かれてある。


 ワイズ、ルシャンダ、レッツォ、ウバン、ネフィラ、エリュウ、チーシャ、と名前が次々書かれてあって、最後には私の愛しいミライ。忘れちゃいけない人たち。これを見れば顔を思い出せなくても、きっと大丈夫とあった。

 忘れちゃいけないということは、リアは今、記憶が曖昧だということなんだ。なのになぜこれを俺に託したんだよ。リアに一体、何が起きてるんだと頭を悩ませていたら、天魔ジェルロが現れ、ハディックが倒してくれる。


「ワイズ、大、丈夫?」

「悪い。ちょっと混乱してるだけだ。急ごう」


 キアが俺にこれを託したということは、リアがあの都市で天罰をもらっているのだと理解した。一刻も早く助けに行かなくちゃとヒアラの家へと向かう。



 ニュラン町には着てほしくはなかったけれど、姉貴がピンチになっているし、何もできない僕ができるとしたらワイズとの接触だった。

 ここでニュラン町の住民たちの記憶が回復したら、ニュラン町を丸ごと破壊するだろう。それでもワイズはなんとしてでもニュラン町の住民は助ける。

 家に帰り姉貴の部屋に入りたくても、衛兵がいて近寄れない状態になっている。姉貴がノゾミを産んだ辺りから、姉貴に変化が見られ、姉貴は何度も脱出しようと試みた。けれどパトレアに何度も捕まり、姉貴は大人しくノゾミの世話をしている。姉貴のそばにいたくても、パトレアの指示で僕はR・D社で働き、ファンズマ退治をしていた。


 R・D社に戻り、ノールト人がR・D社員、そして幹部はあの六名ということになる。シフォンはもちろんティルの秘書として動いており、僕はビルーの下で働いていた。

 さっきワイズたちに会ったことは伏せておこうと、僕のデスクへと行き報告書を作成していく。やっぱりショートに戻そうかなと結構伸びた髪の毛を束ね、続きをしようとしたら、グックに呼ばれ、陸軍元帥室へと入った。


「さっきどこに行ってたんら?パトレア様は全てキアの行動を把握しているんらから、正直に答えるらよ」


 僕のプライバシーには触れんなってあれほど言ってるのに、きっちり僕は監視されているようだ。姉貴のようにされたら、僕は他のみんなのことも忘れるのは確実。

 はあとため息を出し。グックに報告した。


「ワイズがニュラン町に目をつけ始めた。時間の問題だと思う」

「そこにミライはいたのから?」

「いたよ。後、ハディックも一緒にいた」

「ワイズが目をつけ始めるとは想定内らよ。ヘリットもベインもこちら側にいる。記憶は戻せないら」


 そうは言ってもワイズは一度記憶を失った経験がある。ミライとワイズが能力を使えば、記憶は元に戻ることさえもこっち側は知らないというのか。


「キア、ワイズにあれ渡して何になるんら?渡したとしても意味がないらよ」

「燃やされるよりましだと思ったから、ワイズと接触しただけだ。姉貴をこれ以上、苦しませないでもらえると嬉しいんだけど」

「さあそれはパトレア様が決めることだら、らいたちが言ってもその通りにはならないらよ。それにリアはノゾミを置いて脱走したんら。罰を与えたいところらしいらけど、ティルがそこまでにしてもらいたいとストップが入っているらから大丈夫らよ」


 ティルは時折いつものティルに戻ることがある。それはきっとティルの心が抵抗している証だ。それを悟られないように、ティルは姉貴のそばに寄り添いながら、R・D社の社長として動いている。

 けれどティルはオーケルのように研究者として研究をしているから、帰るのは姉貴が寝た頃だとティルは言っていた。


 姉貴に会いたいと思いながら、報告をし終えた後、デスクに戻り報告書をさっきグックに報告した通りに訂正していく。

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