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ブラッドカラー  作者: 福乃 吹風
7/195

7話 スノーリア国②

 エピルスという組織を立ち上げ、言わばライディー騎士団の反乱軍というべきだろうか。まだ数人しかいなくてもノアの指示に従い、できた組織。

 ノアの行方は知らずとも逃走者が危険になりそうなら救い、選択肢をあげている。組織へと入るかもしくはライディー騎士団が見つけられない島へ案内するかだ。確かそこの島には妹さんが住んでいるという情報をもらっている。


「ヨウミさん、エピルスのビラ配り終えたようっす。これからどう動くんすか?」

「そうだね、今は民の信頼を得られなければ、先には進めない。状況を観察しつつ民の協力者を増やそうか」

「了解っす。引き続き、みんなにはビラを撒くよう伝えるっすね」


 タングに礼を伝え、タングは部屋から出て行き、我が輩はある写真たてを手にとりながら椅子に座った。我が輩の初恋であった子は、館長によって奪われたようなもの。

 今はどうなってしまったがわからずとも、必ず救いに行くからねと写真にキスをし、机に置いてあることについて調べていた。


 スノーリア王国は今も尚、雪が降らない状況であり、おそらく我が輩の読みでは、ホデュヴィによって雪が降らない状況になっているのだろう。

 ホデュヴィは水遺伝子の子が好物と聞いたことがある。仮に王国内の誰かがホデュヴィだとすれば、王族は間違いなく殺害される可能性も高くはない。そこにライディー騎士団が加われば能力者を持つ子を引き取るだろう。

 今は使者に様子を見に行ってもらっているから、そこで判断することにした。



 さっきのことが気になるも、一旦私とワイズは素材屋さんに来ていた。ありとあらゆる素材や布が多くある。厚手の素材じゃない素材をありったけいただきたいのだけれど、事情を絶対に聞かれそうだ。

 それにしても店主さんが見当たらず、ベルを鳴らしても来てはくれない。もしかしてと恐る恐る奥の部屋へと入ってみたら布の下敷きになっていた。


 慌てて布の束をどかし、脈を測ってみると生きていて安堵しワイズがベッドまで運ぶ。しっかりとした生活をしているから、ただ単に布の束が落ちたのだろうと理解した。

 それにしても素敵な服が多くあり、見ていたら起き上がってあんたたちエピルスの仲間と女の声がする。しかし見るからに男性ですよねと目をパチリしているとただの逃走者かと男性の声に戻った。この人何と固まっているとまた女の声になって喋り出す。


「あたしの名はクーヴァでエピルスの協力者。それで子猫ちゃんたち。要件は何かしら?」

「スノーリア王国の付近にあるコユキューラ村が尋常じゃないぐらいの暑さで、気象病を患っている人たちがいるんです。素材が豊富だと知り、代理で買いに来ました」

「あぁあそこね。素材はいくらでも渡すわ。但し条件があるけどいいかしら?」


 条件ってなんだろうとクーヴァさんが立ち上がり、ついて来なさいと地下室へと案内してもらった。そこには大量の服が散乱としている。


「破棄してほしい。あなたたち、能力者なら燃やしてほしいわ」


 一着見せてもらうとこれは子供服で、何着見ても子供服だった。これはみんなが喜びそうと提案する。


「あの、これ全部もらってもいいですか?」

「本気?これは全て失敗作で作ったものよ」

「いいえ。どれも素敵ですし、もったいないです。それにちょうど服の調達もしなくちゃなって思ってたところなので」

「まあ、そういうならあなたたちにあげるわ。それと再度聞くけど、エピルスと関わりはない?」


 クーヴァさんに言われ、私とワイズは知りませんと告げると、何かを考え始めた。クーヴァさんはエピルスの協力者なんだと分かっていたけれど、なんだろうか。

 

「あなた名前は?」

「私はリアで、一緒にいるのがワイズ」


 名前を教えると小声でヨウミの初恋と疑問形で再び考え込み、とにかく運べるようにと服を畳む私たち。少しして畳むのを手伝いながら教えてくれる。


「エピルスはヨウミという海の能力者を持つ子がリーダーとなって動いているわ。まだ数人しか集まってはいないけれど、逃走者を見つけたら保護活動を行ってる。もし仲間探しとかしているのなら、エピルスと接触して聞くのが一番早いわよ」

「どうやって接触できるんだ?」

「さあね。突然と来る時もあれば全く来ない日もあるわよ。まあ強いていうならあなたたちと同じところにマークがあるくらい。ただ、あなたたちと全く違うマークがエピルスね」


 私たちの遺伝子マークの他にあるというのと不思議に思っていると、クーヴァさんがメモに書いてくれた。遺伝子マークと違い、細長い二本が描かれているもの。

 これもライディー社が行っているものだとしたら、一体なんの研究を行なっているのかがわからない。


「ルシャンダ、このマーク見覚えあるか?」

『んーないでありますが、あっちにいた頃で読んでいた本に記されていたような』

「私たちのマークは遺伝子そのものだけど、これって優性遺伝子か劣性遺伝子じゃない?」


 無線で話し合っているとお客さんが来たっぽく、クーヴァさんは一度お店へのほうへ行ってしまわれる。少ししてルシャンダが見つけたらしく、リングが光ってタップした。


『和吉たちは人間同士の遺伝子でありますが、エピルスの場合、母親が人間で父親がファンズマらしいであります。想像するだけでゾッとするであります』


 ライディー騎士団にもファンズマがいるんだとしたら、私たちは今まで何をさせられていたというの。このことはまだみんなに伝えないほうがいいのかもしれない。


「このことはまだみんなに伏せておこう。混乱させたくない」

「そうだな。俺たちが今までやって来たことが無意味だったなんて知ったら、みんな落ち込みそうだ」

『そうでありますね。このことはみんなに伏せておくであります。他にも調べてみるでありますね』


 お願いねと話し終えるとクーヴァさんが段ボールを持ってきてくれて、そこに男女別に仕分け一度ここに置かせてもらうことに。


「涼しげな素材と布よ。あとは村にある衣服店とかに渡せばいいわ」

「ありがとうございます。この件が終わり次第、荷物取りにきますね」

「気をつけなさい」


 お辞儀をしてゲートを開いてもらい、コユキューラ村へと戻ってみると村が荒らされていた。道端で倒れている村人に聞くとホデュヴィに襲われ、ウバンとネフィラにそれから村人、少数がスノーリア国へと連れ去られたそう。

 二人がいるから大丈夫と信じたいけれど、二人の無線が落ちているから私たちに知らせられなかった。とにかく村長の娘さんに素材を渡して出発しなければならない。

 

 そう思って行こうとしたら、その人に止められ村長の娘さんがホデュヴィだったと言う。振り返ってみるとそう言えば娘さんは気象病は軽かった。もっと早く気づけばよかったと私はその人に素材を渡し真っ先にスノーリア王国へと向かう。


「ネフィラとウバンに連絡が取れないのが難点だな」

「うん。まさか私たちが行っている間に、こうなるだなんて思わなかった」


 行っている間に襲ったとしても、ルシャンダはありとあらゆる箇所にGPSをつけているから位置情報を教えてくれる。


『500メートル先にいるであります』

「王国に入られる前に連れ戻さないとな。GPSがあるならゲート開けないのか?」

『無理であります。移動中でありますし、停止してくれないとゲート開けないであります』


 移動中のところに辿り着けないのねと諦めつつ追ってはいるものの、走っていてもただ離されるだけ。馬もさっき見たら暑さで動けそうになかったから、借りれなかった。

 間に合ってと願うしかないと走っていたら、黒豹が私たちを通り抜けてその先へと行く。何が何だかわからずとも私たちはネフィラたちを追いかけて行った。



 うちら捕まっちゃったと枷をつけられ檻車かんしゃに乗せられ、目的地はスノーリア王国。王国では何が起きているのか見られるけれど、コユキューラ村でホデュヴィがいただなんて信じられなかった。

 抵抗しようと思ったけれど、うちは実際に水を出したこともない。うちはただ人魚の姿になれるだけの能力。ホデュヴィの弱点は水なのに、役に立てれなかった。村人は怯えていてウバンはまだ目を覚ましていない。

 村長の娘さんがホデュヴィの姿になった時、ウバンは村人を守るために動いた。うちはただ尻餅をついてその場を見ていただけ。そう思うとリアやワイズは凄いなと身体を縮ませ顔を伏せた。

 

 うちがあの施設にいた頃、みんなと違ってうちの能力が人魚ということから、大きな水槽にずっと閉じ込められてた記憶しかない。脱出する時、ウバンが水槽を壊してうちも脱出ができたようなもの。それなのにうちが役立たずなの知っているのに、リーダーに選ばれたのは青の遺伝子でうちが一番年上だから。

 他に年上がいたらこんな思いしなくて島で泳いでたとこんなことを考えていたら、うちの腕を掴む人がいた。


 顔を上げるとウバンが大丈夫という瞳で見ていた。


「ウバン…ごめん」

「いいんだべ。ネフィラが訓練を受けずにいたの知ってたべよ。いざ立ち向かうには勇気がいるだべ。帰ったら一緒に練習しようだべよ。だから今、ネフィラがやるべきことは村人の不安や恐怖を少しでも和らげるべきだべ」


 枷がついていながらもうちの頭を撫でるウバン。少し気持ちが楽になれて、うちは少しでも不安や恐怖を取り除くために歌った。


 スノーリア王国に着く頃に、歌うのはやめておけと注意され、うちは黙りあれがスノーリア王国。王国に入った景色はごく普通に暮らす人たち。スノーリア城へと運ばれるうちらは何をされるのだろうと停止し、降りるとホデュヴィたちがぞろぞろとやって来た。

 ウバンと離れてしまい男女別々に連れて行かれ、首に番号札をつけられる。一体何が起きるのと、行けと言われたから行くしかなかった。


 その奥へと入った瞬間、ここは何と唖然としてしまうほどぐらい。下では男性陣が汗水垂らしながら、炎のもとで何かを作業している。玉座に座っているホデュヴィは女性陣を見て、仕分けし始めた。

 ただうちは選ばれずそれ以外の女性たちはホデュヴィ兵に連れて行かれてしまう。玉座に座っていたホデュヴィが立ち上がり、うちに触れそして首元を見られた。


「逃走者が紛れているとはな。まあライディー騎士団に通報はしない」

「ここで何をしているの?」

「決まっている。ここが俺様の国だからだ。簡単に言えば俺様はライディー騎士団の協力者。つまり俺様も父親の役目をしているといううことだ」


 ファンズマが父親だなんて信じられないと驚いていたら、来いと入って来たのがスノファ女王。いやいや、ファンズマの子が産めるはずがないと困惑していても、ライディー社は遺伝子の研究する場でもある。

 信じられない光景を目の当たりにし、スノファ女王はもう諦めている瞳をしていた。一つ気がかりなのが属性が異なっているということ。ファンズマのほうでは属性は関係なしに研究しているということなの。ホデュヴィは火属性でスノファ女王は水遺伝子だから氷。


「人間側では教えてはいないようだな。まあちょうどいい。教えてやるよ。俺たちファンズマがライディー社に契りを交わしたのか。昔は俺たちファンズマと人間は絶えない戦が続いていた。そして時が過ぎ終止符を打つため、ある条件を出した。それが遺伝子。遺伝子をお互いに分け与える代わりに、互いを干渉しないと。まあそれでもファンズマは破ることも多いから、ライディー騎士団ができたというわけだ」


 これ絶対にうちじゃなくて、リアやワイズが聞くべき部分だよと思いながらも、ならなぜこのようなことをしているのか知らなくちゃならない。


「ならなぜ人間を利用しているの?このままだったら、王様もそれ以外のホデュヴィもライディー騎士団に捕まる」

「あぁ挑発だよ。そうでもしないと、ライディー騎士団は俺たちの家族を奪うからだ。この前の記事も読んだ。ライディー騎士団によって、俺たちの仲間が亡くなったと。破っているのはてめえたちだろうがってな」


 確かに施設にいた頃、みんなの声がよく聞こえてた。ファンズマを倒した話や無実のファンズマを連れて来ちゃった話とか。


「直接ライディー騎士団に報告は?」

「何度も訴えた。ただな、いくら話をしても奴らは聞く耳を持たねえんだよ」


 ホデュヴィの言葉にうちの心に突き刺さる。ファンズマも所詮、普通に暮らしたいのに差別化され生きているということ。うちらはなんのために今まで戦ってきたのと自然に涙が出てくる。

 みんなが今までやってきたことは全部無意味じゃんとそこにしゃがみ込むと、スノファ女王が優しく包んでくれた。


「あなたは何も知らずに生きてきた。逃走者の子たちも何も知らずにやっていることは承知しています。私がホデュヴィの子を宿すと決めた時も、そのことを知り、ライディー社に歯向かうためでもある」

「それでも下でやっている男性陣は一体何を?」

「あれはライディー騎士団に立ち向かうための武器を作ってるの。人手が足りなくてね。それでもお金はきちんと支払うし、夜になれば家に帰らせる。そのことを伝えてほしいの」


 そうは言ってもそう簡単にファンズマを信じられない。


「信じるか否かはお前次第だ。それに今、奴がいるからしばらくここにいたほうがいいかもな」

「奴?」

「ライディー騎士団、ツートップのティルだ」


 この前の話でティルが敵側についているのは知ってるけど、まさかここに来ているだなんて思いたくはなかった。リアがティルと接触したら一番やばいかもしれないけどワイズがいるから大丈夫だよね。


 ◇


 スノーリア王国に着くも、馬車に追いつかず、結局城に行くしかないと様子を伺っていた。それにしてもホデュヴィが兵だなんて信じられないし、スノーリア兵は一体どこへ行ったのか。ルシャンダに調べてもらっているけれど、少し時間はかかるっぽい。

 ネフィラとウバンが心配だし、村の人たちも大丈夫か心配になって来た。それに謎の黒豹はなんだったのか少し興味が湧く。


「なあ、リア。なんかおかしくないか。この王国」

「私も思ってた。手配書がどこにも貼られてない。このまま普通に動いていいのかな」

「ただライディー騎士団が調査でいるはずだから油断はできねえしな。とりあえず人混みがなさげのところ通るか」


 念の為に私たちは大通りから歩くのではなく細い道を歩くことにした。他の国や街とかは多くの手配書が貼られているのに、不思議とここは貼られていない原因を知りたい。それともティルがここにいて手配書を全て外し、罠を仕掛けているとなれば早めに王国から離れるのが一番。

 ただネフィラとウバンを奪われたくはないし、なんとしてでも二人を救出してから考えよう。


 細い道を通り抜け城に近づいた時のことだった。目の前にさっき見かけた黒豹が私たちをじっと見ている。なんだろう、この違和感と思っていたら、黒豹の姿が人間へと変わり、会釈された。


「リア殿、ワイズ殿、陛下の命により、お連れするよう申し付けられております。こちらへ」


 唐突なことに衝撃があるも、私とワイズは黒豹について行くことになったけれど、城の方角ではなく城下町にある小さな家に到着する。

 黒豹はただいま戻りましたと告げるとロッキングチェアに座っていた方が立ち上がりこちらを向いた。


「カリシー、茶と菓子の用意を。お初にかかる、私の名はコルファ、前スノーリア王国の王でもあった。話したいことがあり、君たちを招いたのだ。さあ座りなさい」


 失礼しますと私とワイズはコルファ陛下の向かいにあるソファーに腰を下ろしカリシーという黒豹からお茶をいただく。


「君たちはファンズマと戦っていたのはライディー騎士団から聞いている。そして君たちは逃走者となった」

「陛下、なぜ逃走者の手配書がないのですか?」

「ここはホデュヴィによって、国は奪われたようなものだ。手配書がないのは理由がある。カリシー、あれを見せてあげなさい」


 はいと近づき首元を見せてもらうと、私たちと同じ遺伝子マークではなく二本の線が入っていた。これってクーヴァさんが教えてれた情報だ。


「カリシーさんはエピルスの仲間ですか?」

「はい。某はあるお方の命により、陛下のそばにいるよう命じられました」

「陛下はなぜこちらにいらっしゃるんですか?」


 私の問いに陛下とカリシーさんは目線を下にし、寂しそうな瞳をしていた。聞かないほうがよかったのかもしれないと、謝ろうとしたら、陛下が教えてくれる。


「ホデュヴィが王となり、そして娘はホデュヴィといることを決めたのだ。すでに娘はホデュヴィとの間に子を授かっている。私は反発した結果、城から追放されてしまってな、ここにいる」


 予想外なことでファンズマとの間に子を授かるのは禁止されていたはずだ。資料を見たとき、スノファは養子としてスノーリア王国の王女となったと記されてた。

 何か見落としていた部分があるのなら、一体何があると考えていたらルシャンダが慌てている声がする。


「ルシャンダ?どうかしたの?」

『大変であります!ティルがこっちに来るでありますよ!逃げたとしてもライディー騎士団がいるであります!」

「こんな時に、なんでティルが来るんだよ。ルシャンダ、誘導は難しいか?」

『うぅ。今の段階でありますと、無理であります』


 ルシャンダが誘導できないとなれば、どこかに隠れるしかないと悩んでいたら、コルファ陛下がここへ入りなさいと床収納を開けてくれた。二人分入れるスペースで私とワイズは中に入り扉が閉まる。

 カリシーさんは大丈夫かなと入ってくる足音が聞こえた。しかも私たちの上にティルの足が見える。


「陛下がこちらにいらっしゃるとお聞きして参りました。なぜこちらにいらっしゃるのですか?」

「兵を見たらわかるだろう。今はホデュヴィが王だ。知りたいのであれば城に行けばいい」

「王女もいらっしゃると思っていましたが、そういうことですか。失礼します。シフォン、行こう」


 気づかれず行ってくれると気を緩んでいたら、立ち止まってコルファ陛下に告ぐ。


「床収納にいる逃走者2名は今回、逮捕はしません。ですが今後ライディー騎士団に歯向かうことがあればあなたの立場が悪くなるだけです。僕はあなたを守りきれないので、くれぐれもお気をつけてください」


 完全にばれてると思っていても、ティルたちは行ってしまったようで、床収納の扉を開けてくれるコルファ陛下。それにしてもティルが私たちを見逃してくれるだなんておかしいと感じてしまう。

 

「どうする?城に行ったら確実にティルと接触するかもしれねえよ」

「わかってる。ティルより先にネフィラとウバンを助けなきゃ」

「夜まで待つのがよろしいかと。夜になれば民たちが城から出てきます。おそらくネフィラ殿もウバン殿も出てくるかと思われます」


 カリシーさんがそう言うならそれまでスノーリア王国を観光することにした。



 リアとワイズがいたのは把握していたけれど、調査を進めるため今回は見逃した。スタスタと城へ向かっているも民は僕たちを睨んでいるのがわかる。相当ライディー騎士団は憎まれているんだろうと思いながら、城に到着するとホデュヴィ兵に止められる。

 だが僕は止まれと心で叫び門兵に扉を開けさせ城内へと入り、その光景を見て怒りが込み上げていた。


「シフォン、ハイス団長に連絡を。ホデュヴィにより人間がこき使われていると」


 かしこまりましたとシフォンはハイス団長に連絡をとってもらい、僕は先に王の間へと急いだ。人をなんだと思ってると襲いかかってくるホデュヴィ兵を動かなくし王の間へと入る。

 そこに悠々と玉座に座っているホデュヴィに、膝の上にいるのがスノファ王女。いや今は女王と言うべきだろう。スノファ女王の腹が膨らんでいる。


「来たか」

「貴様、契りの内容に含まれていることは知っているはずだ。なぜ破る?」

「破る?破ってんのはてめえたちのほうだろ?俺様たちは平凡に暮らしていきたい。それなのによ、てめえらがやっている行為はなんだ?罪もねえファンズマも殺して何がしたい?」

「人間を守るため。ここで処罰はしたいけれど、あれは一体なんだ?」

「教えるつもりはねえよ。ツートップのティル様」


 話の通じる相手だと思っていたようだが、違うようだった。ならこちらも動かせてもらおうか。シフォンの合図がきて上を見るとハイス団長と団員たちがいる。


「ならあなたたちを拘束しなければならない」

「やれるのなら、やってみろ」


 シフォンは能力封じをしてもらい、ハイス団長たちが降りてきた瞬間のことだった。浸水し確かにシフォンは能力封じしているはずだ。それなのにどうなっていると周囲を警戒していると水の上に立つ人物がいる。

 それにホデュヴィもスノファ女王もその人物に守られていた。


「初めましてというより久しぶり、ティル」


 その声に聞き覚えがあり思い出した。小さい頃の記憶でリアやワイズは忘れているかもしれない。昔、こっそり施設を抜け出して、一緒に遊んでた子がまさかここで会うだなんて思いもよらなかった。


「久しぶり、ヨウミ」

「覚えててくれるだなんて光栄だよ。ここは引き下がってもらいたい」

「それはできない。違法をしている以上、見過ごすわけにはいかない」


 ここで争いたくはないけれど、ハイス団長たちは青遺伝子だから水の中は有効だ。僕と話している隙にスノファ女王を救ってもらおうと思ったが、仲間がいたようだった。


「ティル、これを館長に渡してほしい。この現象はこちらに任せてほしいと。館長ならわかってくれる」


 ヨウミの読みが分からなくても浸水していたのに、水が引き始めていく。


「それじゃあよろしくね」


 そう言われいつの間にか僕たちは城の外に追い出され、ハイス団長は何か思い詰めた表情でいた。


「ハイス団長」

「妙。あいつは能力がありながら、ファンズマの匂いがした。渡された手紙も気になる。帰ろう」


 ハイス団長は最年少でしかも僕と同じ歳。最初はハイスが年齢を偽っているのだと思い込んでいた。なんせネフィラは僕の一個下だし、ネフィラの父親だとしたら、どうやってやったのか想像がつかなかったからだ。

 改めて確認をしたところハイス団長は生まれた当初から、遺伝子を吸い取られ、母親となる女性に打たせていたらしい。青遺伝子の父親はそういう役割をしているそうだ。


 そうは言ってもネフィラは絶対に信じないだろうなと、僕らはヨウミに渡された手紙を渡しに一度、ライディー本部へ帰還することに。 

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