6話 スノーリア国①
イルルが目覚めて私たちは一度、島へと帰り、ルシャンダが敬礼をしてお疲れ様でありますと言った。荷物を持って食堂へ入り、ただいまとみんなに伝えたら、おかえりと言ってくれてみんなのリクエストを配布していく。
イルルはウバンに頼んで施設内を案内してもらっている。レッツォに工具を渡すと嬉しそうにしながら、これで修復できなかった部分も直せると、修復作業へ行ってしまった。
「姉貴、おかえり」
「ただいま、キア。キアにもお土産買ってきたよ。はい」
発信機がないか確認しつつ、ありがとうとキアは私があげたキュービックキューブで遊び始める。ソアレも今は大丈夫そうだねとモニター室へ戻り、ルシャンダと話した。
「今回もありがとね」
「いいであります。それにしても、今回はやばかったでありますね。遺伝子の父親、三人に接触するだなんて、和吉は耐えれらないであります」
「私も正直、驚いてるの。なぜこのタイミングで父親に接触することになったのか。今まで父親と接触はなかったのに」
「ライディー騎士団のハッキングは厳重でありますから、そう簡単に入手はできないのであります。ただ言えるとしたら和吉の読みではこれを探しているのではありますか?」
ポチッと見せてもらったのはある一枚の写真。研究者が多くいる中、前列の中心には私のお母さんが笑っていた。
あれ、お母さんの隣でしゃがんで笑っている人、ギーディスじゃない。それにアリュアさんの家付近に、ファンズマを出した人や、イルルの父親であるカディーラもいる。
「ルシャンダ、確かライディー社ができたのっていつ頃だったか調べられる」
ルシャンダはキーボードでかちゃかちゃとやり、出てきたのは年表。私たちが生まれる前に会社はあるけれど、騎士団が結成されたのは私たちが生まれた年代。
それまで騎士団は結成されていなかったとすれば、私たちは第1期生ということになるのかいまいちわからない。そこにキアが入って来て、ある相談を持ちかけられた。
「姉貴、会議を開きたい。できれば偉い人たちって言えばいいのかわからないんだけど、その写真を含めて話しておかなければならないことがある」
「わかった。場所はどこにする?」
「ここでいい。ルシャンダはそこから離れられないだろから、姉貴、呼んできてもらえない?」
キアに頼まれ私はまずワイズを探しに回り、探していたらちょうどレッツォの手伝いをしている。事情を説明してワイズと手分けをしてかき集めてもらった。
一応、赤はワイズ、橙はレッツォ、黄色はルシャンダ、緑はウバンが戻って来たのでウバン、水はエリュウ、青はネフィラ、紫はチーシャが代表という形で役割の指揮をとってもらっている。
適当に座りやや大きめなホワイトボードには七人の写真を貼り付けていたキア。この写真、どうやって手に入れたのと思うほどだった。
「これで全員?」
「全員だよ」
「集まってもらってありがとう。早速なんだけどこの人たちがそれぞれの父親の顔を覚えててもらいたい。父親=団長として動いている人物と捉えていたほうがいいかも。この人たちに今後、接触するようならなるべく避けてほしいんだ」
「そうは言ってもさ、俺の親父超絶馬鹿親父だったし、なんか知らないけど協力してくれてたのは確かだ」
ウバンも私もギーディスに関してはなぜか親しみやすさを感じだったと納得していたら、ギーディスはそういうやり方をしてくると注意される。
「ギーディスは一番最初に父親として任命されたのもある。だからありとあらゆる手段で、逃走者を確保しているから気をつけるべき。それにギーディスは以前元部下を殺めたこともあるから一番に警戒してほしい。特にワイズは」
げっという顔をしているワイズで、私たちはとんでもない人と接してしまったのねと、私とウバンはため息が出てしまう。
「特に自分の子にはばか親レベルで、べったりくっつくから気をつけてほしい」
「俺が氷化させたカディーラとイルルの兄、オーデュエ。実際に倒し切ってはないけど、施設は崩壊した。それでも警戒はしておくべき?」
「警戒はしておくべきだと思う。それにあの程度でカディーラは倒れないから、十分に気をつけて。それで今回、集まってもらったのは、他でもない。以前話したようにライディー騎士団に立ち向かう人数が必要だ。姉貴、資料とかもらってない?」
インディにもらった人材資料をキアに渡し、写真を端っこに寄せ、ペラペラと資料をめくりある人物の写真をホワイトボードに貼る。
「名はスノファ。スノーリア王国の女王で、能力は現在不明。ただこの国はファンズマによって侵略されている。おそらく、カディーラの部下たちが、現在調査をしているところだと思う」
そこに挙手をしたチーシャで、キアがどうぞと言うと椅子から立ち上がり発言した。
「わえが思うに、そこの国は氷のファンズマじゃない気がするの。水遺伝子を好む炎のホデュヴィや岩のガディッグが人間に成り済ましている可能性が高いの」
「そういうパターンが多いのは確かなことだ。そうなればカディーラの部下であっても、騎士団にとっては弱点。手出しはできないはずだ」
「そうは言っても女王様と接触は難しいんじゃない?私たちは逃走者でもあるんだよ」
女王だとしても私たちは一応逃走者でもある。たとえ会ったとしても、女王様に直接会えるわけがない。インディに情報を得たくても、女王との接触は不可能だって言われそうな気もする。
侵入したとしてもうまくいけるかわからないし、チーシャが言ったようにホデュヴィやガディッグだとすればネフィラと一緒に行ってもらうのが策かな。
「イルルに占ってもらうってのはどお?」
急にウバンが言い出し、そう言えばそうだったねとウバンにイルルを連れて来てもらい、どうするかを決める。イルルは何事と目をまん丸にしながら空いている席に座り、キアがイルルに伝える。
「来てもらって早々なんだけどイルルの力を使いたい」
「構わへんけど、何しとってるん?」
「ターゲットになりやすい人を騎士団より先に島へ連れて帰るんだよ」
「ほんまに?スノーリア国行ったことあるさかい。女王を占ったこともあるぐらいやよ」
私たちは驚愕してしまうほどで、ここに女王の知り合いがいるだなんてさっきの時間はなんだったというの。
「そんなに驚かなくてもえぇんちゃう。まあたわしはアイディー街以外でも有名やったから、あちこちで占ってたんよ」
「どんな占いしたの?」
チーシャが興味津々の目でイルルを見ており、イルルはえっとなぁと頭の中にあるものを引き出してくれる。
「そん時は確かスノーリア国の未来を知りとうたいと言ってたやな。それを占った時に兵に見つかってなぁ。伝えそびれてたや」
「スノーリア国の未来はどうなった?」
「国が滅ぶ未来やったで。誰かに国が滅ぼされている瞬間やったな。誰が敵だったか忘れよったが、確か見えたのはあの忌々しい父上の姿も見えはった。思い出すだけで吐き気しそうや」
カディーラにやられて相当ショック受けていると私とワイズは悟る。今回、イルルは落ち着いて過ごしてもらったほうがよさそう。それにまだ首の痛みは残ってそうだし、今後はルシャンダのサポート側についてもらおうかな。
「なら誰がスノーリア国へ入るかだよな。敵もそこまで把握できてないなら、チーシャの言った通り、確実にファンズマを倒す目的で動くなら、ネフィラは必要だな」
「えぇうちでいいの?うち、まだ水もしっかり使えてないんだけどな」
「大丈夫、俺もまだ刀がないと炎出せないから、少しは実践してみるのもありかもよ」
行きたくなさそうなネフィラであっても、行きますぅと言ってくれる。
「なら姉貴、ワイズ、ネフィラは明日、早速出発してもらっていい?」
「うん、わかった。もし何かあったら無線で言ってくれれば応答する」
「それじゃあ今日の会議は解散で。あの姉貴、スノーリア国から帰って来たら、僕の最大な悩み聞いてほしい」
いいよと伝えたらやったと笑顔を出し、モニター室から出ていくキアだった。みんなもそれぞれ役割分担をしに戻ってもらい、私はイルルに部屋を案内する。
ここは同じ遺伝子同士のエリュウが担当なんだけれど、エリュアはいま、下の子たちにかき氷を配る時間になっているため、私が代わりにすることになった。
「ここえぇね、施設は賑やかやし、外は空気が美味しいや」
「気に入ってくれたなら、よかった。イルル、あのさ」
「ティルのことやろ?あれから何度か試しにやってみたんよ。普通の人なら見れるんやけど、ティルは別格やった。見れへんくて、まるで心を完全にシャットダウンしたかのように真っ黒いんや」
「そっか。ティルは私と過ごしていた時も、実際はそうだったのかなって、ふと思うことがあるの。私たちに向けていたあの笑顔は偽物だったんじゃないかなって。それでも私はティルを信じたい」
ティルはなぜ騎士団に入り私たちを追う側についたのか。今のティルだとその答えはきっと答えてはくれない。私たちの知るティルを戻さない限り、永遠にティルから逃げる日々を過ごすことになる。
「諦めず、ティルの未来予知みて、はっきりしたら伝えるさかい。それまでは仲間増やそうや」
イルルにそう言われ、そうだねと到着しここがイルルの部屋。よろしくと私たちより年上の女性、コルア。年上でありながら下の子たちの面倒を見てくれている。
以前は私たちとティル探しに協力してくれていたけれど、足を負傷し車椅子生活となってしまったから、戦うことが不可能となった。そのためここでの管理や外の情報は私たちがやっている。
「えへへ。占い師ちゃんが来てくれるだなんてよかったじゃない。あたしはコルアよ」
「よろしゅうな。まさかリアたちの上がいるとは知らんかった」
「びっくりしたでしょ。基本的に部屋からあまり出ないし、外の情報はリアたちに任せてる。本来ならリアたちじゃなくあたしが仕切るところなんだけどね。能力を奪われて療養中ってところかな」
「能力が奪われるん?」
イルルはびっくりした顔をして、あのことを思い出すと少し辛いと下を向いていたら、コルアに怒られてしまう。
「リア、落ち込んでも意味がないのはわかってるでしょ。あたしは大丈夫よ。あたしの能力は瞬間移動の能力だったの。戦闘には必要な能力で、そんなある日にライディー騎士団と接触してね。リアたちを逃そうとしたときに、なんでも切断する能力者が現れて、そこで足を奪われたの」
「想像するだけで吐き気が」
「まあそうなるわね。ワイズがその人を追い払ってもらっている間に、リアたちに救われた」
あれは思い出したくない出来事であっても、焼きついてしまってる。切断する能力者はまるでコルアを本当に切断するためにきたあの表情は忘れもしない。
触れただけで切断できる能力だなんて、誰も接触はしたくはないもの。
「義足も作ってもらったこともあるんだけど、昔みたいに走れなくてこの島で下の子たちをみることを決めたの」
「たわし、そいつぶっ飛ばしたいんやけど」
「気持ちだけ受け取っとく。ありがとう、イルル」
コルアはすでに諦め違う道を選ぶことを決心しているから、私たちは自由に動ける理由の一つでもある。ただ私たちの願いは昔みたいに走ってほしいという願望は常にあった。
イルルはコルアと談笑し始めたし、そっと私はその場から離れモニター室に戻り、インディからもらった資料を見返す。ここで医療関係の能力者がいてくれればいいのだけれどまだ見つけられていない。私も治癒能力者だけれどくっつけることはできないし、コルアの足は騎士団によって奪われてしまった。
たとえ医療関係の能力者が見つかったとしても、コルアはきっと今の生活を選択する。やっぱりいなかったとあった場所に戻した。
「ねえ、ルシャンダ」
「今日は休むのであります。リアが考えていることは全て和吉とワイズには伝わっているであります。もし辛かったり、嫌になったりするなら、我慢する必要はないでありますよ」
ルシャンダの言葉に救われ、つうと涙が出てしまい、誰にも聞こえないようにとそっと扉を閉めてくれる。音楽が流れると同時に、私は思いっきり涙を流した。
ルシャンダは音楽を流しながらでも、ワイズを呼び出してくれて、すぐにワイズは来てくれる。何も言わずワイズは抱きしめ、大丈夫、俺はリアの前から消えたりしないからと耳元で言ってくれた。そしたら和吉もと私とワイズを大胆に抱きつくルシャンダで、少し気持ちが楽になる。
その夜、久々にモニター室で川の字で、他愛ない話をしながら就寝した。
翌日、ルシャンダはいつも早起きだから同じ時間に起き、私とワイズは手を握りながら浜辺で朝の散歩をしている。心地よい風に吹かれながら、浜辺に足跡をつけながら話す。
「昨日はありがとう」
「いいよ。俺が全て受け止めるから、我慢できなくなったら言えばいいよ」
「うん。スノーリア国行ったことないけど、ルシャンダ、ちゃんとゲート開けるかな」
「さあな。ハッキングさえできれば確実に入れそうだけど、吹雪とか降ってたらさすがに難しそうだよな」
ルシャンダはハッカーでもあり、防犯カメラのハッキングさえできればゲードは簡単に開ける。ただゲードを開けない箇所も複数あり、その場合は近い場所でゲートを作ってもらうのが基本。
朝ですよという放送が流れ私とワイズは建物に入り、みんなで食事をする。
食事が終え、私は暖かい服装に着替えていたら、イルルがノックをして入ってきた。
「もし、父上か兄上に会ったらでえぇんやけど、たわしの人生は自分で決めるさかい。せやからほっといてくれやって言っといてくれへん?」
しばらくは氷化されているから会う確率は低いだろうけれど、伝えとくと伝え準備ができゲード部屋へと入る。ワイズとネフィラも準備が完了しており、ルシャンダがゲートを開いて私たちはスノーリア国へ。
◇
団長会議が終わり、カディーラが欠席だけであっても会議にならないぐらいのレベルだった。館長はとてもお怒りであっても平気でいられるのが凄すぎる。
僕はこのままカディーラ団長の代理でスノーリア国へと行き、調査をすることになったものの、ルマとエワンは雪で遊びそうだから今回はシフォンと二人だけで行く。
部屋に入るとルマとエワンは遊んでおり、シフォンはソファーでタブレットをみていた。
「ルマ、エワンを頼むよ」
「なんじゃなんじゃ?今回は妾とエワンは留守番なのか?」
「そう。だから大人しく待ってて。シフォン、行こう」
はいとタブレットを持ちながら立ち上がり、支度を始める。スノーリア国でリアたちに会えたら一番いいけれど、今回はカディーラ団長の代理として調査に当たるからリアたち探しはできない。たとえリアたちに会えたとしても、調査が先だ。
準備が整い馬車に乗って出発し、シフォンのタブレットで調査内容を確認する。
スノーリア国内ではある奇妙な現象が起きているという。雪国でありながらも、雪が全く降らない現象が起き、体調不良を起こす、いわば気象病が発生しているということ。スノーリア国の民は暑さが苦手と聞いているから、おそらく炎のホデュヴィがいるはずだ。
一度行ってみないとわからないものだと、シフォンにタブレットを返す。
「ティル様、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ん?」
「リア様のことです。以前、直接お会いはしておりませんが、お見かけしたのです。リア様がワイズ様と手を繋いで歩いているところを。あの二人はその、そういう関係なのでしょうか?てっきり、リア様はティル様のフィアンセだとばかり」
リアがワイズとそういう関係性ではないと思いたい。それとも僕が館長の息子だとキアに言われたから、僕から離れようとしているとしたらどうだろうか。
「ティル様、お顔色が」
「大丈夫。覚悟はしてたからいいよ。僕と離れて三年も経つし、リアのそばで支えていたのはワイズだ。そういう関係になってもおかしくはないよ」
「よろしいのですか?」
「ワイズから取り返す。そのためにも色々と準備はしておかなくちゃね」
たとえ二人を引き裂いたとしても僕はリアがいればそれだけで十分。なんとしてでもリアを取り戻して、館長に認めてもらう必要があるからだ。
会いたいな、リアとスノーリア国に入るまで空を見上げていく。
◇
暖かい格好でくるんじゃなかったと後悔する私たちで、コートを脱ぎ長袖をめくって歩いていた。ルシャンダが出してくれたゲートはスノーリア国から少し離れた村、コユキューラ村でも雪が全くなくそして異常な暑さ。
真夏のような暑さで村の人たちは外で歩いている姿を見かけない。とにかく状況を確認しようと私は一つの家に訪ねる。ドアノブをひねってみるも、応答はしてくれず留守かなと別の家を訪ねようとしたら、扉が開いた。ただ開けてくれた本人が倒れていて、隠れていたワイズとネフィラを呼びこの人をベッドに寝かせる。
「気象病にかかってるらしいな」
「この暑さは半端ないもんね」
私は治癒力を使い少し顔色がよくなるも、毛布しかここにはなく、薄手の布団はないらしい。まずは毛布をどかして、氷枕を置くもすぐ氷が溶けて逆効果になる。
「この村は一体どうなってんだ。ルシャンダ、わかりそうか?」
『スノーリア国の新聞を見たであります。ここしばらく雪が降っていない状況で、気象病が流行っている模様であります」
「ならチーシャの勘は当たったっぽいね。うちとワイズは逃走者の貼り紙ここにも貼られてたから動けそうにないけど、リア全部見れそう?」
「平気。警戒されるだろうけど、この人が起きたら無線で状況教えて」
了解と二人が言い、私は一軒一軒訪ねては治療をし、多少動ける人から村長さんのご自宅を案内してもらった。村長も気象病にかかっており、治癒力を使い様子を見ているとありがとうございますと村長の娘さんに言われる。
「ありがとう。あなた、能力使ってるとなればライディー騎士団?」
「いいえ。私は逃走者です。それでも私は逃走者の貼り紙が貼られないから、あまり知られない。ただご安心ください。私たちは決して、あなたたちに危害を加えるつもりはないので」
「そっそう。父は助かりますか?」
「現状を見る限り、暑さに慣れてないことで、再び気象病にかかるかもしれません。それと衣服が厚すぎるので薄手の服があればこの厚さは乗り越えられる。後、水分補給も」
娘さんに説明をしていたら、ワイズから応答が来て目を覚ましたという。
「他の村人も治癒の力で村人も助かったみたいですよ」
よかったとほっとしている娘さんであっても外がやけに騒がしく、娘さんと出てみるとワイズとネフィラが村人たちに囲まれ逃走者と村人たちは叫んでいた。まさかこんな早く回復するとは思わなくても、村人は厚い服装で汗をかき始めている。
「お前ら二人を捕まれば、はあはあ」
「皆さん、やめてください!この人たちは命の恩人です!」
娘さんがそう言うも武器を捨てない村人たちで私はワイズとネフィラの盾となった。
「今、私たちを捕まえてもこの気温は変わらない。今までの気温に戻す方法はスノーリア王国が原因。私たちはそこに行ってなぜそうなってしまったのかを突き止める必要がある」
「それはライディー騎士団が調査してもらってる。ここでライディー騎士団を呼べば」
バタンと倒れてしまう男性で、ワイズは男性が着ているコートを脱がし、日陰へと連れてってやや大きめの葉っぱで仰ぐ。ウバンを連れてくるべきだったかもしれないと少々考えてしまうも、とにかく今は服と布団をなんとかしなければならない。
そう思って村長の娘さんに聞いてみることに。
「服の素材はどこで買っていますか?」
「スノーリア国から仕入れている素材になります」
そうなると服を作るにしても、その素材じゃだめな気がして、ルシャンダに問った。
「素材が豊富な場所調べられそう?」
『調べてみるであります』
「ありがとう。それからもしゲート開けそうならウバンをこっちに来させてほしいの」
ラジャーでありますとルシャンダはカタカタとキーボードを打ちながら、ゲードが開きウバンがやって来てくれる。少しでも風の調整をお願いして、肌寒い風が吹く。
「今はこれが限界だべ。何か手伝えることがあれば手伝うべよ」
「ありがとう、ウバン」
話していたら見つけたでありますと応答がきて、リングが光り、触れて確認した。スノーリア国の端っこにあるセキーレ街にあるらしい。
私とワイズは何度か訪れたことあるし、行って素材を集めるしかなさそうかな。
「ウバンとネフィラはここで待ってて。素材をとりにワイズと行ってくる」
「わかった。何かあったら教えるね」
ネフィラとウバンにここを任せ、ルシャンダにゲートを開いてもらい、セキーレ街へと入った。ここはスノーリア王国から離れていることもあり、普段の気温で雪も積もっている状態だ。
同じ現象が起きていなくてよかったと、ホッとしながら歩いていたら、逃走者待てという叫び声が聞こえる。てっきりワイズかと思ったが違ったようだ。
私とワイズは逃走者が誰なのかを確認するため、ルシャンダに誘導してもらいながら進む。私たちの仲間か、それとも新たな人なのかもしれないとルシャンダに言われた場所へ到着した。
大広場で逃走者は人たちに囲まれている状態らしく、行きたくても無闇に動いたら捕まる可能性だってある。悩んでいると逃走者が言い放った。
「ライディー騎士団を信じるお前らは間違っている!ライディー騎士団はファンズマと繋がり、いずれ全世界はライディー騎士団とファンズマに滅ぼされる!信じるのはただ一つ!逃走者の組織、エピルスの言葉を信じろ!」
煙玉で姿を消した逃走者が何かを撒き、その一つのビラをワイズと一緒にみる。大きくエピルスとあり、その下には文章が書かれていた。
逃走者はライディー騎士団によって、実験体とされ利用されていた者たち。信じるか否かは手に持った君にかかっている。少しでもエピルスに興味を抱き、助けをいただけるなら報酬は必ず渡すと誓おう。エピルス一同。
読んでいたらライディー騎士団が来て、私とワイズはルシャンダの誘導で逃げ切れた。