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ブラッドカラー  作者: 福乃 吹風
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4話 アイディー街③

 よりによって俺たちが捕まるだなんて思いもよらず、目の前にいる奴にイルルは仕方なく指示に従い、オーデュエと接触するよう命じられた。 


 昔は無効化できていたのに頑丈に作られている枷を外すこともできず、馬車に乗せられ、あの施設へと送られるのだろう。乗る前に目隠しをさせられたから、場所も把握できない。俺はこのまま馬鹿親父の元へ連れて行かれるのかは不明だ。


「もう時期、残りの二名も合流致しますわ。たっぷり遊んであげますの。イルルはまず、あたくしたちと同じ遺伝子マークをつけてもらってから、父様ととさま流の訓練をしてもらいますわ」


 イルルは何かを言いたくても口も塞がれている以上、喋ることもできない。奴の名は聞いてないが、俺とイルルは背後からくる奴に気づかず、抵抗したくても踏みつけられるような感覚だった。

 その隙に枷がはまり、動きたくても動けずこの状況に今、陥っている。


 声からして俺たちより下で少女と取るべきだろう。少女は鼻歌を歌いなんとかして逃げる策を考えなければルシャンダが沸騰しそうだ。

 リアまで捕まったら今までの三年間が無駄になっちまうから、なんとしてでも逃げ切ってリアたちを救いに行かねえとな。そう思って無効化を試していると、無駄ですわと笑う少女。


「何度やっても無駄ですわ。以前、逃げられたことで枷は強化されましたの。ワイズの力でも不可能ですわ。ただ館長がいる愛の施設じゃないことは伝えておきますわね」


 館長がいるあの施設じゃないなら、なぜか安心してしまう自分がいる。俺は館長の施設にいた頃、みんなと違う訓練が行われ、次第にはその力を利用しようとベッド生活が多かったこともあったからだ。


「大人しくなってどうしたのですわ?そうでしたの。お口チャックしてましたわね」


 少女はくすくす笑い、もうすぐ着きますわと俺とイルルに伝える。武器も何もかも没収されたし、リアとウバンの状況が読めないままIDの確認をしている声がした。

 到着したっぽいなと停車し、降りますのと少女に突き落とされては大人が俺を運び、イルルの足音が聴こえないとなればおそらく別方向へと連れて行かれたのだろう。何度かIDをかざす音を聴き入れられカチャッと合図が入った。

 誰もこれ外さないのかよと思ったら、目隠しと口についているガムテープを外してくれたのは馬鹿親父だった。げっと顔に出していたら、枷が外れる。


「なんで外してくれる?」

「自由になりたくなかったら、またつけるよ」


 にこにこしながら枷を持つ馬鹿親父で、ため息が溢れながら出られる場所はあの扉しかないようだ。


「逃がしてくれたのに、なんでここにいるんだよ。普通に親父の施設あるだろ」

「いやいや、ワイズがまだアイディー街にいるのはわかってたから、ここにいるわけ。知らなかった?遺伝子マークの意味。それが発信機だから、どこにいるか特定ができるってことだよ。ただし、ワイズたちが住むあの島に入ってしまうと特定ができない」


 その言葉に俺は言葉を呑み込む。インディの場所にいたって確実にばれるじゃねえかよ。インディがこんなに協力してくれてるのに、インディを危険に晒してるようなものだ。


「どうした?顔色悪くなってんぞ。それとも情報屋のことが心配か?」

「…知ってたのか」

「知ってるも何も、俺の知り合いだし、元俺の部下だった奴だよ。大丈夫、元部下を排除するつもりはない。それに俺はワイズの他にも逃走した子たちのことも心配してる。まあ言うても俺以外、まともな父親じゃないしな」


 それ自分が言うかと再びため息が出そうになったところ、リアとウバンも入って来て、知らない奴も入ってくる。


「これはギーディス団長はん。なぜこちらにいらしはったんや?」

「そりゃあ、息子にユフェちの息子、それから館長の娘を引き取りに来た。三人連れて帰っていい?」

「団長はんの息子はんはえぇです。ただ、他二名は父上に聞かない限り、お連れは無理や。ここに来るんやったら、父上と」

「えーオーち乗りわっる。カディっちにさっきの件で、三人はいいよって言われてたのに、ひっどーい」


 馬鹿親父は犬のような目をし、その間にリアとウバンの枷とかを外してあげた。逆らえないようで分かりようしたと言い、行ってくれたからよかったよ。


「よし、それじゃあ君たち帰ろうか」

「待って。イルルを置いては帰れない」

「あのなー俺はワイズが心配でここに来ているだけだ。ここで俺の言うこと聞かないと後悔すんぞ」

「助けてくれたのは感謝しています。それでも、イルルを見捨てたくはないの」


 馬鹿親父に反論するリア、グッジョブと思っていると、馬鹿親父は参ったなと頭をかく。


「手出しは禁止されてると、めっちゃ館長に怒られるんだけどな。んーこのまま帰りたいのは山々だが仕方ない。その代わりっちゃなんだけど、これ終わったらワイズ連れて帰っていい?」


 それは却下と俺たち三人ははもり、ふうむとまた悩む馬鹿親父。


「ならワイズ、俺とある勝負をし、勝ったら今回は協力しよう。ただし、ワイズが負けたらワイズ、俺と一緒に帰ってもらう。それでいいな?」


 馬鹿親父と勝負か。やってやろうじゃんとリアとウバンには下がっててもらい、何をすればいいのか教えてもらう。


 やり方は簡単で、炎を保ち続けられるかどうかということだ。俺はまだ武器を持ってないと力が出せない。ここで意地でも炎を出さないと、俺は親父のところに帰るしかなくなる。

 ここで親父を越えないといけないってことかと、馬鹿親父は胡座をかき、俺も同じことをした。


 深呼吸をしてリアが審判となり俺と馬鹿親父の朝鮮が始まる。炎を纏う親父には簡単かもしれないが、俺はこれっぽっち炎が出ていない。

 諦めてたまるかとやっていても、うんともすんとも炎が全く出ない。馬鹿親父に馬鹿にされながらもまだ時間はあると炎を出すことに集中しに行った。



 ワイズと真逆の方向に連れて行かれ、何度かIDをかざす音を耳にする。一体どこへ連れて行く気なんやろうと思いながら進み、ここで止まれという指示を貰いはった。

 ここは一体どこだやろうとしばらくして、目隠しと口につけられたガムテープが外れた場所はあまりにも恐怖しかなかったや。

 あちこちには氷に眠っておる人たちがおって、この人らは全てたわしが占ってきてはった人たちやと冷や汗をかいてしもう。少女は冷ややかな目で笑い、早よう、ワイズがおるところへ行かへんと大変なことになりそうや。


「そろそろ、父様ととさまがいらっしゃるの。同じ遺伝子マーク同士、仲良くいたしましょ、イルル姉様」

「あなたのお姉はんになったつもりはない」

「そう言っても無駄ですの。父様ととさまはずぅーとイルル姉様を連れ戻さなかった理由。言ってしまったらイルル姉様はどう思うのか、想像がつきますわ。だってほとんどの里親になる者は全員、ファンズマによって飼育されているんですもの。イルル姉様も、所詮モクディガンに利用され、そして開花させた。これも教育の一種ですわ」


 これはたわしが一番最初に未来予知で見たものや。最初から全部、たわしがわかっているのも見抜かれているような瞳。武器も奪われてしもうたし、父上を待つしかないのかと黙り込んでおったら懐かしい声が聞こえたんや。

 嘘や、嘘やと聞こえる方角をみるとそこには兄上が、武装した姿でおる。元々たわしを利用してはったということかと睨む。


「怖いで、イルル。可愛い顔が台無しや」

「母上の情報を知りたいと来てはり、母上と口論していたのはウバンが原因やろ?」

「さすがは未来予知を見るイルル。大正解やで。そう、本来はウバンをとっ捕まえるために動いたんや。ウバンを捕まればご褒美をくれるゆうてな。そやけど、母上に見抜かれてなぁ。相談しはってもあのヤンデレ親父、イルルのことしか考えていなかったんや。せやから逃走者の振りをして様子を伺ってた」


 まだ打ち明けてはいなかったことは、資料に載っていたのが兄上だということや。本人かどうかわからなかったやけど、ようやくわかったやで。兄上は前々から父上の部下っちゅうことをリアたちに言わんと。

 新しい足音、これはちゃう。父上の足音やと暴れていても枷をとることができず、父上はたわしの頬を撫でやっと手に入れたと言い張る。


「離れてや!」

「離れるものか。オーデュエ例のものを温めておけ。エワン、イルルを抑えててもらっていいか?」


 リアたちと同じあれをつけられると父上からエワンがたわしを抑え込み、兄上が父上に焼印を渡しており嫌やと暴れても無理やった。

 父上はたわしの右首に焼印を押し当てていき、たわしは痛みに耐えられず叫び出す。


「オーデュエ、冷やす物を持って来てくれ」


 痛くて全身麻痺がかかったように全く動かず、終わったらエワンがよしよしと頭を撫でるんや。兄上は氷をタオルに巻き焼印に触れると激しい痛みが走流やんけ。

 これが水遺伝子のやり方なんかと印がついてしまったことで、もう父上からも兄上からも逃げられないっちゅうことや。リアたちがいてくれるから大丈夫やと思っても、未来はそう簡単に上手く変えられないんやねと眠気が来てしまう。ここでお終いなんかなと兄上に抱っこされるのを感じ、深い眠りへとついた。



 なかなか火がつかないワイズで、冷や冷やする私とウバン。ギーディスの挑発に乗っちゃ駄目なのに、挑発に乗っちゃったことで、余計に焦り失敗するばかり。

 時間制限とはないけれど、一度も火がつかなければギーディスの指示通りになってしまう。集中させてあげたいのにギーディスはふざけているし、そろそろワイズが怒りそうな気もする。


「ウバン、どう思う?」

「見てる感じ負けになりそうな予感しかないべ。だったら…あの、ぼかぁは違う能力だけど、やってもいいだべか?」

「もちろん。ウバンは植物ともう一つ力があるはずだ。出せていないほうを出してみようか。ワイズかウバンのどちらかが出せたら、協力してあげる」


 私はすでに二つの力を出せているから、参加しなくてもいいってことかな。二人とも頑張れとウバンはギーディスの挑発に乗らず、目を閉じて集中力を高めていく。

 見守ることしかできなくて武器と無線は盗られちゃったけれど、このリングは盗られなかった。こっそりチャット画面で、イルルの情報を教えてもらっていると、すでに遺伝子マークはつけられ、別室で寝ているそうだ。その通路と脱出通路を確認してもらった。


 遺伝子マークをつけられた時は、本当に辛かったなと思い返していると風がないのに風が拭き始める。ウバンの力が開花し始めているのなら、早めにイルルを連れて脱出はできそうだ。

 お見事と炎を纏っていたギーディスが拍手をして、炎が消えていく。


「息子より上達できるとはねえ」

「おいっ」


 悔しそうなワイズであっても、ウバンが開花できたことですぐに行動をするつもりらしい。


「さて、俺ができるのはこの施設を全焼させることだ。ワイズたちがやることはただ一つ。ウバンの風に守られながらイルルを探すことだ。リア、イルルがいる場所はわかっているよな?」


 チャット画面をみると完了したでありますと来ており、ギーディスに頷いた。


「なら十秒後に燃やすから探し出せ。ここは氷の施設だからすぐに燃え尽きるだろうからイルルを見つけ次第、すぐに脱出をしろ。いいな」


 感謝を述べるとギーディスは調子乗りそうだから言わず部屋から出て、ウバンの力を借りつつ、ロックがかかっている場所は全てワイズが無効化する。

 十秒後、火災警報が鳴り始め逃げて行く人たち。途中で逃走者じゃないかと言われながらも、私たちは火の中へと飛び込んだ。これですでに避難されてたらイルルを救う手段を失う。

 ルシャンダ、こっちでいいんだよねとチャット画面で打ちながら走っているとワイズが止まった。


「ワイズ?」

「来る。避けろ!」


 私はワイズに守れながらしゃがむと地面には雪が溶け込んでいる。


「残念ですの。全てワイズがやったのなら、お仕置きが必要ですわ。相性が悪くても父様ととさまの邪魔はさせない」

「俺の能力、わかってんだったらさっさとそこどいてくれないか?」

「嫌ですの。ここから先に行こうとしても、先ほどオーデュエ兄様がイルル姉様を連れていきましたから、さっさとお帰りになったらどうですの?」


 ここで引き下がる訳には行かないと私はウバンとワイズの肩に手を触れ能力を吸収した。この子を傷つけるつもりはないけれど、イルルを追いかけたい思いが強く炎、風、植物の三つを合わせてこの子にぶつけた。


「何をするの。離して!離しなさいよ!」

「ごめん、こうでもしないと先に進めないから。それに私をあまり怒らせないほうがいいよ。あなたの力、全て吸収していいのならやってあげるけど」

「嫌なのっ。あたくしの大切な力っは」


 あまり下の子たちには怒ったケースがないけれど、私の仲間を守るために時にはこうしないとならないと感じる。


「大丈夫。この風が守ってくれる。連れて帰りたいけどごめんね、エワン。敵ならお兄ちゃんと会わせられない」

「エリュウ兄様がいらっしゃるの?あたくしも連れてって!お願い!」

「リア、長くはいられないしエリュウがどんな思いでいたか知ってるだろ?」


 エリュウがなぜエワンを置いて私たちと逃走をしたのか知っている。エワンを一度、氷化させてしまったことが原因でしばらく会わせてはくれなかったと言っていた。その時もエワンは氷のままとなって一緒に逃走ができなかったのもある。

 まさかここでエワンと会えるだなんて思いもしなかったけれど、連れては帰れないと私たちはイルルを追いかけることにした。


 ルシャンダの案内に炎から脱出したその先で、馬車に乗り込んでいる姿が見える。ウバンの力で妨害しオーデュエが馬車から降りた。


「ギーディスと一緒に帰ったんじゃなかったんか?邪魔されようともイルルはもう騎士団の一員や。見逃してやろうと思ったんやけど、逃走者は逃走者らしく捕まっとき」


 そこにアイディゴス数体が現れてしまい、その隙に逃げられてしまい、ワイズは刀があればと落ち込む。武器、全て没収され戻るにしても、もうぼろぼろになってそうと立ちすくんでいたら、袋が飛んできた。

 みるとそこには私たちの武器が入っており、袋に焼かれた文字がある。


 武器必要と思ったから、返しとく。追記、エワンは無事だ。Byワイズの父よりとあって、やっぱり感謝を述べるべきだったかと思っても、私たちはアイディゴスを倒していく。アイディゴスは氷だからワイズにとっては有利。

 すぐに倒せ馬車を追いかけたらなぜか馬車が止まっており、どうなっているのと近くに行ったらそこにエリュウがいた。オーデュエとまさかのまさか、カディーラも氷化されている。


「エリュウ、出てきても大丈夫だったの?」

「平気だ。それにこの二人がいたせいで、エワンにずっと会えなかったのもある。ちょうどモニター室で見させてもらってたよ。気を使わせちゃってごめんな」

「エリュウはどうしたい?」

「エワンに謝りたい。ただこの二人を凍らせてしまった以上、エワンは俺のことを敵視するのは見え見えだからさ。謝るのはまた今度するよ」

「そう。じゃあ私たちも帰ろう。その前に一度、インディの店に戻ってお土産持って帰らなくちゃね」


 ワイズとウバンはイルルを背負い私たちは氷の施設を出て、インディの店へと戻り、イルルが目を覚ますまでお土産を買いに出かけた。



 さすがは俺の息子と焼け焦げた施設は崩落し、脱走者が増えこれで怒られるのは俺ではなくカディっちとなるわけだ。ぴいぴい泣いているエワンはまだ泣き止まそうにない。それにしてもエリュウがやったのは間違いはないだろうな。

 カディっちとオーデュエは、エワンを氷化から戻したにもエリュウと会わせていなかった原因で、こうなったんだからな。その一方、イルルのほうはリアたちと一緒に逃げたということか。


「エリュウ兄様に会いたかったっ」

「会いたい気持ちが強ければその内、会えるよ。そうだ、推薦してあげるよ。同じ年齢の子が新しい騎士団にいる。その子と一緒にいればきっとすぐ会える」

「本当に?」


 本当だと慰めながら俺の推薦状で入れるかわからないが、ティルはエワンを入れるだろう。同じ年麗かは実際わからない、少女もいるしな。確か名はルマだがルマはわがまま旺盛なところがある。

 仲良くできるかどうかは実物だなとエワンの涙を拭き取っていると、早速お出ましだ。

「なぜ、あなたがいらっしゃるんですか?ギーディス団長」

「やあ、ティル。でかくなったな。これはワイズが起こした炎だ。俺の息子さすがだなって見てたわけ」

「戯言じゃ。嘘に決まっとるじゃろ。妾は認めん」

「失礼ですが、何が起きたのですか?」


 さあなと誤魔化し、ティル以外は現場をみて誰が脱走したのかを記録し始める。ティルは俺が慰めている子に興味を示し、やっぱり食いつき早いな。


「エワン?」

「ひくっティル?」

「エリュウに氷化させられていたのに、無事だったんだ。よかった」

「エリュウ兄様がっどうしてっ」


 再び泣いてしまいおいでとティルがやるから降ろし、ティルのところで思いっきり泣く。余計なこと喋んなよとティルの瞳を見ても、腹立たしいと思ってしまうほどだ。

 やってやらねえなと俺の施設に帰ろうとしたら、ティルに引き止められる。


「ギーディス団長、何をお考えになっているのかは知りませんが、僕はリアもワイズもそれ以外のみんなも取り返します」


 館長に感情コントロールされてんなと手を振り、一度アイディー街へと入る。

 ティルは昔、リアたちがどこへ向かったのか聞き出すため、ありとあらゆる尋問を受けていても吐かなかった。いつまで持つだろうと様子を見ていたが、去年。限界を越え等々心が壊れ始め、僕を見捨てたと呟いていたのを思い出す。

 何も言わず無言になりながら、激しい訓練にも耐えていたのに、あんなあっさりと心が折れるものなのか。人それぞれだろうけれど、ティルはそう簡単に心は折れない派だと思っていたのが間違いだったと言うべきだろう。


 IDをかざしあるバーへと入り、元俺の部下であったインディの隣に座って、インディと同じ酒を頼む。


「ワイズたちは無事帰って来たか?」

「あぁ無事だ。なぜ偽情報も含ませたのか、理由を教えてもらおうか」


 酒をもらい少し飲んで、インディに情報を流す。


「そうでもしないと、カディっちがさ、俺の息子にまで手を出しそうになったから、嫌になったんだよ。だから」

「違うんじゃねえか。目的はお前の妹を探すためでもあったんじゃねえのかよ。万が一にあの子たちが死ぬような運命になったら、お前が殺されるハメになるんだぞ」

「覚悟はしてるよ。それに後々(のちのち)、キアが話してくれそうだし、俺はのんびり可愛いワイズと遊ぶつもり」


 この親馬鹿とインディは酒を飲み干し会計はもちろん俺が支払う。


「インディ、この街から離れたほうがいい。勘づかれてはいないがティルに勘づかれそうだ。気をつけてくれ」


 肝に命じておくとインディはそう言い残し、インディがいなくなるとキアが姿を現した。キアはインディが座っていたところに座り、何飲むと聞くとじゃあオレンジジュースでと頼むキア。


「妹、元気にしてる?」

「今のところは大丈夫。母さんの呪い、やっぱり姉貴の力じゃ治せなかった」

「だろうな。館長の力は偉大だものだから、娘だろうとも館長の力にはまだ勝てはしない。見ててそう思ったよ。リアは本来の力を出していないこと。もちろん、キアもだよ」


 わかってると何もできていないキアは不貞腐れ、わしゃわしゃと頭を撫でると、照れながらやめろとワイズを見ているようだった。


「僕も何かと鍛えてはいる。それでも僕は兄貴や姉貴みたいな力はないし役に立てないのが一番辛い」

「まあまあ、キアはノアやリアの力はないだろうけど、同じ力を得た者だ。リアに教わってみたらどうだ?きっとリアは協力してくれる」

「何度か触れてはみたけど、何も得られなかったような感覚だった」

「簡単にいくものじゃない。努力の積み重ねにより人は変化するものだ。諦めず努力すれば必ずいい方向へと進むよ。心配しなくても、リアたちがいるだろ?それでも言いにくいことがあれば、いつでも顔を出しに来ていいから」


 まだ納得していない部分もあるんだろうけど、オレンジジュースを飲み干して、ご馳走様と俺に言う。


「ギーディス、本当に兄貴の居場所知らないの?」

「いや、知らない。その内帰ってくるんじゃないか?」


 だといいなと呟きながらキアはインディを追いかけに行った。

 俺もノアの居場所は把握してないが、おそらく騎士団に潜入されているか、他のところで仲間をかき集めているかのどちらかだろう。


 会計を済ませ息子がどこにいるのかをチェックしながら、俺の憩い場へと帰って行った。

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