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ブラッドカラー  作者: 福乃 吹風
38/195

38話 忘却から少しずつ

 モニター室から楽しそうな声が聞こえて、入ろうとしたけれどその会話が丸聞こえだった。


「ワイズのこと認識してるミライすごすぎるでしょ」

「可愛すぎです。ミライはちゃんとワイズを父として見てるんですね」

「そうと決まれば、早めに記憶回復の能力者探さなきゃだべ」


 俺はモニター室に入るのをやめ、自室に入り自然と涙が出る。一番忘れちゃいけない記憶を忘れちゃうだなんてな。ノックが聞こえ、涙を拭き取り開けるとキアが心配な目でいた。


「様子おかしかったけど、大丈夫?」

「モニター室から聞こえちゃってさ」

「そっか。無理して思い出さなくていいと思う。リアとミライはワイズが苦しまない方向性でこの島を出たんだし、ゆっくり思い出そうよ」

「それでもリアやミライを傷つけてるようなものだ」


 思い出せなくて、自分が嫌になりそうになっていると、キアはちょっと来てという合図を出しついていく。建物を出て浜辺でキアは靴を脱ぎ、靴を持って歩き始める。


「リアは朝、起きるのが早いからいつもこうやって靴を手にして歩いていたんだ。ワイズは好きな人がこんな形で歩いていたらどうする?」

「俺だったら羽織りを着させて、隣を歩く」

「その通り。リアとワイズは毎日、こうやって手を繋ぎながら散歩してたんだ。ルシャンダの朝コールがなるまでね」

 キアは何かを思い出せるんじゃないかと俺に語ってくれているんだと感じた。キアの隣を歩き何か思い出せたらいいなと思う。


「ちなみにリアは僕の姉貴だよ。最初は姉貴って呼んだら違和感感じるかなって思ったから、姉貴の名前で言ってたけど、これからはいつも通りに言わせて」

「そうなの?」

「それも忘れてるのかい」


 キアに突っ込まれキアとリアの関係性が知れて、パズルのように一つのピースがうまった。するとふざけているのかルシャンダが朝ですよーと放送していて、つい笑う。そっかこの辺にも防犯カメラあるもんな。

 まだ思い出せないけれど、明日から少し早めに起きて、朝の散歩でもしようと思った。


「姉貴と連絡できなくて、寂しい気持ちはあるけど、姉貴は今も一人で考えてるんだ。ワイズとどう向き合えばいいのか。ずっとね。もし会いたくなったら、直接じゃなくて電話はできると思うからかけてみたらどうかな?」

「連絡してみる。少しでもリアが一人で抱え込まず、俺に直接言ってほしいしな。って言ってもリア電話番号変わってたような」

「カディヴィア本部に連絡すれば大丈夫だよ。大体、姉貴はミライのこともあるし本部にいると思う。あっ!ちょっと待ってて」


 スマホを取り出し誰かにかけているようで、俺は海を眺めているとごめんとキアが謝る。


「姉貴、任務に行ってるから基本、本部にいないって言われちゃった」

「いいよ。リアが俺のために時間をくれているってことだろ?だからもう少し情報もらえたり、懐かしい場所に行けばなんとなく思い出せそうな気がして」

「だからなのかな。姉貴がスマホを変えた理由。わからないけど、そう考えておこう」


 そうだなとそこからは他愛ない話をしながら、建物に入りキアは少し体を鍛えるためトレーニング室へと行った。俺は自室に戻ってさっきのこと忘れないようにいつも何かある度に書いていたノートを探す。

 あれ、そういやあのリングノートが見当たらないなと探すもなかった。まあいっかとノートを開き、リアとキアが姉妹だということを書く。


 二年前、正確に言うと目を覚したのは刺されてから半年後、知らないところにいて、そばには親父がいるも妙に痩せ衰えていたな。目を覚したことで親父はよかったと俺に抱きついて泣いていっけ。

 少しずつ回復した頃、親父はいつも通りに戻って、あることを言われた。


「早く、リアたちに知らせなきゃな」

「リア?」


 そこで親父は驚愕した瞳をし、リアだよ?と再度言われるも、俺の記憶にあるのはティルとルシャンダたちと過ごしていた日しかなかったことだった。

 それでも親父は冗談はよせよとスマホを取り出し、写真を見せてくれるもパッとしなかったのが印象的だったな。それで俺は脳の検査を行い、その結果記憶障害があることが判明した。

 一番大切な記憶だけが思うように思い出せない症状らしく、一度親父は診察室から出てったな。少しして鼻を啜りながら主治医に聞いた。


「ワイズの記憶、戻るよな?」

「今の現状ではなんとも」


 それを聞いて親父はどこかへ行ってしまって、残された俺は主治医にありがとうございましたと伝え部屋を出る。最初は一番大切な記憶がどんなものかわからず、病室に戻って引き出しの上に置かれていたスマホをタップした。

 親父が言っていたリアとのメッセージがあったようでそれを開く。そこには赤ん坊の写真とメッセージが添えられていた。


 ワイズ、ミライが生まれたよ。性別は男の子と言う報告でそこで激痛が走り何日か寝ていたらしい。激痛が走るということはリアとミライのことを完全に忘れているんだと実感ができた。

 ただ起きた時の前日辺りからミライの成長していく写真が送られていなかったな。それでもその写真を見ながら、体力の回復を一年半行い、島に帰って来た。


 ノートに書き込むのは前からの癖で記録してたけど、あのリングノートを見れば思い出せるかも知れない。

 そんなことを思いつつ書いていると、またノックの音が聞こえ、誰だろうと開けたらコルアだった。


「今大丈夫?」

「うん。何かあった?」

「今後のことで話しておきたい」


 今後のことということはフリジンダ社のことだろうと思い、部屋に入るのかと思いきや社長室。卒業したら本格的にフリジンダ社が動くから、いろいろとコルアが準備をしてくれてたらしい。

 社長室にあるデスクトップには、リアとキアとそして俺が写っている写真たてが置かれていた。


「これって俺が飾ったやつ?」

「そうよ。それからこれはリアから預かってたもの」


 大きな袋をもらい、出して見るとそれはスーツ。知ってるこのスーツとつうとほおに濡れていく。コルアは表情を緩めちゃんとした仕立て屋さんで作ってもらったらしい。

 

「他のみんなの分もリアが全てやってくれたの」

「コルアじゃなく?」

「ううん。あたしはリアをサポートしただけでほとんどリアが準備してくれたわ。学校に行きながら経営学を学び、カディヴィアと商談しながら、準備が整った。後はワイズが帰って来るのを待っていたのよ」


 リアがそこまで準備していただなんて思わなくて、フリジンダ社の周りにみんなが住める家も着々できてた。俺が理想としていることをリアは成し遂げてくれてたんだ。


「後はワイズの記憶がこの一年で戻れたらいいわね。戻ったらちゃんと迎えに行くのよ。あたしたちはワイズとリア、そしてミライの幸せを望んでいるのだから」


 だからリアは俺の負担にならないように、何も言わずいなくなったんだと理解する。コルアはただとこうも言っていた。


「これは言うべきか迷うの。ギーディスからもきつく言われていることなんだけど」

「何?」

「あなたには双子の兄がいて、その兄、アイズが今、リアとミライのそばにいるの」


 思わずスーツを落としてしまい、俺に兄がいるのかと今まで言われたことがなかった。まあニディアがいるのは知ってたけど、なんで親父は何も言わなかったんだろう。


「正直言って見てられなかったのよね。リアにとっては辛い時期、支えてもらってたけど、リアの隣はワイズでしょって。アイズはなぜだか知らないけど、リアに付きっきりでこの先に何が起きるのか。ごめん、余計なこと言って」

「いや、いい。リアは俺が記憶を失っていると聞いた時、結構なショックを受けたはずだから。楽しみにしていたのが、失ったように。できるだけ早く記憶が回復するように努力はする。リアと一緒に行ってた場所、今度行ってみるよ」

「あたしたちも協力するから、頼ってね」


 うんと言いながらスーツをとり、自室のクローゼットにしまうことにした。


 じゃぶんっと湯船に浸かり、リアがどうしてるか気になる。俺がいなかった二年間、俺の兄であるアイズに支えられていたんだよな。後で親父に確認するとして、ミライが仮に兄貴を父親と認識したら後戻りはできない。なんとしてでも記憶を戻してリアとミライに会う。

 そうなるとまずは元ライディー社に訪問するのもありかもな。学校の休日に元ライディー社で見学すれば何か思い出せるかも知れない。


 いろいろと考えていると隣では極楽でありますとルシャンダが言っていた。


「ルシャンダ」

「どうしたでありますか?」

「今度の休みにさ、元ライディー社、今なんだっけ?そこに行きたいんだけど」

「早速記憶回復の場所に向かうのでありますね。新しい会社名はニューダ社でありますよ」


 それと言いながら、ルシャンダに相談を持ちかける。


「さっきさ、コルアに言われたんだ。リアとミライのそばにいるのが俺の兄貴だって。親父、そんなこと言ってなかったから、てっきりシングルマザーとして育ててるのかと思ったよ」

「あれほどギーディスにきつく言われていたのに喋るとは後で後悔しても助けられないであります」

「大丈夫。後で親父に連絡するけど、コルアから聞いたとかは聞かないよ。それでさ仮にミライがアイズのこと父親って認識したら、後戻りはできなくなる。だから一日でも早く、リアとの記憶を取り戻したいんだ。そのために俺のリングノートを一緒に探してほしい」


 リングノートと疑問を抱くルシャンダで数秒後、豆電球がついたように何かを閃く。


「それならリアが持っているでありますよ。最初は捨てるつもりだったでありますが、ミライが拾ったから大切に保管しているであります」

「そうなのか」

「そうであります。リアにとってそのノートは辛かったというべきことが書かれてありました」


 どんなことを書いていたんだと思い出すにしても思い出せず、とにかくリアが持っているのなら今度聞いてみるとしよう。


 風呂上がり俺はベランダに出て、親父に連絡を取ってみる。仕事中だから出ないかと切ろうとしたら、どうしたと親父の声が聞こえた。


「親父、あのさ」

『ん?』

「リアとミライに会いたい。記憶がなくても会えば何か思い出せるんじゃないかって気がするんだ。居場所教えてくれない?」


 親父はだんまりとしてやっぱり無理かと、親父の言葉を待つとこんな回答がきた。


「住んでいる場所、実は俺も知らない。カディヴィアのどこかに住んでいるのは確かだが、ディリーに聞いても答えてはくれないからな。まあしいて言うならアイズ、お前の兄に聞いてみる。それからでもいいか?」


 おっとそこで兄の言葉出すとは思わなくて、アイズのことを聞いてみる。


「アイズってどんな兄貴なんだ?俺、会ったことがないから」

『アイズは一卵性でもあって、ワイズとそっくりすぎるかな。性格も似てるしおまけにアイズはリアに惹かれている』

「それ一番聞きたくなかった」

『悪い。いずれにしてもリアはアイズのこと、ワイズの兄として接しているから気にすんな。まあミライのためにどうしたらいいのか、悩んでいると言うのは聞いてる。このままミライがアイズのこと父親だと認識したら、リアは覚悟をするだろう』


 親父も薄々感じていたんだろうな。俺も覚悟を持って記憶回復をしなければならない。


「兄貴のこと教えてくれてありがとう、親父」

『いいよ。わかり次第、連絡する。それじゃあ、おやすみ』


 おやすみと伝え通話を終え、就寝することにした。



 ワイズからの質問に戸惑った。俺はリアからワイズを引き離したようなものだし、ディリーからきつく言われてっからな。住所は絶対にワイズに伝えるなと。アイズが隣の部屋を借りているし、どうすっかなとデスクトップにあるフォルダーを開く。

 ワイズに刺さった短剣は館長が作ったものじゃないことが判明し、その短剣は一番大切なものを奪う悪魔の短剣と呼ばれている。これを作った場所は不明でどこで館長がそれを手にしたのかは不明だ。


 普通の短剣だったら今頃二人は幸せに暮らしていただろうにと資料を閉じ、報告書を確認していくとノックが聞こえる。入れと言うとニディアだ。


「お父様」

「どうした?」

「このままでいいの?アイズお兄様をリア義姉ねえ様のそばにいさせて」

「問題ないだろ。そもそもアイズは命令で動いているだけだ。心配する必要は」


 大アリと机を叩き落ち着けと言いたいも、ニディアは我慢がもうできないような表情をしている。とにかく座ろうかとソファーに座らせ、向かいのソファーに腰を下ろす。


「アイズお兄様は、すでにリア義姉ねえ様とミライのことを愛おしく見ている。見ているニディアは辛いし、みんなだって辛いもん。そうさせたのはお父様でしょ?なんとかしてよ」

「それはそうだが、ワイズの体調も考えて送らないでほしいって言っただけだ」

「それでもリア義姉ねえ様は送り続けたかったはずだよ!だってワイズお兄様の子だもん!」


 ニディアからそんなことを言われるとは思っていなくて、ニディアにとっちゃ大切なものがぐちゃぐちゃになるのを一番に恐れているのが伝わる。

 ティルから引き離すためにニディアを使ったように、今度はワイズのためにと思い、アイズをリアのそばにいさせていた。


 どちらが正しいのかはこれも親の役目であり、子供たちが幸せでいられる環境を整えるべきか。それとも見守るかのどちらかだろう。


「ニディア、リア義姉ねえ様に相談したいことあるのに、避けられてるっ。これも全部お父様が悪いっ」


 ニディアを苦しませていただなんてなと隣へ行き、すまなかったと伝えるとお父様の馬鹿と俺の胸で泣くニディアであった。



 リアが一番恐れていることを知った時、俺は本当に馬鹿だなと思ったよ。リアとミライにとって何が必要なのか考えず、俺はずっとリアとミライのそばにいた。

 一卵性でもあるから、いつかはミライから呼ばれる言葉がなんなのか察しした時点で、離れるべきか。それともそばにいるべきかと考えてしまう。ワイズの恋人と子どもを奪うつもりはないけれど、俺はリアに一目惚れをしている。

 この前、告ったし一応考えてはくれているから、そのことに関しては何も聞かないと決めているしな。どうするべきか悩んでいるとスマホが鳴り、誰かと思えばクワエだ。えっとクワエは俺と一緒に行動していた奴で、俺と一緒にリアを止めようとした奴。


「なんだ?」

『なんだとはなんだよ。ったく心配して損した。新居はどう?』

「いや、普通だよ。それより、何かあった?」

『学校でさ、妙な噂で始めたよ。まだワイズには知らせないようにワイズの周りには消音はってる』


 どんな噂だろうと聞くまでもなく、なんとなく察しがついた。


「俺とリアの件?」

『自覚してるんだ。二人が中退した理由でみんな噂しまくってる。リアとアイズが付き合ってる話とか、リアの子は実はアイズの子だったりしてとか、いろいろ。それワイズが聞いたらショック受けそうでさ』


 それは一理あるなと冷蔵庫を漁り、ラーメンを作りながら答える。


「俺は元々学校嫌いだから辞めただけだ」

『ふうん。そう言ってもリアのこと好きなんでしょ?ファンクラブ入ってるもんね』


 余計なことは言うなよと思いながらも、俺の部屋は一度もリアに見せていない。なぜならキアとリアのポスターやグッズがわんさか置いてあるからな。


『ティルはそれを聞いてすごい目つきで睨んでくるから、ワイズとティルの前では喋らなくなったけど』


 ティルは俺と最初に会った時は、とても怯え切ってたが留置所から出た頃にはシャキッとして礼儀正しい奴だなとは思っていた。しかしだ。ティルは俺の顔を見るたびに睨んでいて、おそらくリアの隣にいたかったんだろうという目つきだった。

 それからはティルはニディアと一緒に行動しているのを見かけている。


「俺はただリアが再び起こさないようにと総司令官から指示もらってるだけであってそういう関係じゃない。いずれその噂は消えるだろ」

『どうだろう。みんな噂したい派だからしばらく続きそうな予感もするけどね。そうだ。連絡したのはこれじゃない』


 喋り出したのはクワエのほうじゃんかと思いながらも、報告を受けた。


『行方不明だった子と接触したよ。状況は把握できなかったけど、デッドハラン王国に従ってるっぽい』

「俺も一人、この前接触した。何をしているのかは聞かなかったけど、ルマがオーケル館長の姿となっていることが判明している」

『総司令官はなんて?』

「考えるらしいからそれまで待機になったよ」


 なるほどねえとクワエは言い、俺たちの任務は一時中断するかどうかだ。ノアも不在だから俺が行かなければならない。


『じゃあそっち優先になっちゃうかもね』

「多分な。一応、クワエも記憶回復を持つ能力者を探してくれ」

『わかってるよ。じゃっそれだけ報告したかったから、何かあったらまた報告する』


 うんと相槌を打ち、通話が切れ、俺はラーメンを食べながらワイズの特集を見ていった。


 お父様に本音をぶつけニディアは、ティルがいる寮へと訪れてみる。男子たちがちらほらニディアを見ていても、気にせず男子寮へと堂々と入りティルの部屋に入った。

 ティルは勉強中でも、どうしたという表情で椅子を用意してくれる。そこに座りティルにあることを相談した。


「アイズお兄様を引き離してほしいの」

「急にどうしたの?」

「もう見てられない。お父様にぶつけてもすまないばかりで、このままミライが勘違いしてアイズお兄様を父親としてみるのが一番嫌なの。お願い、ティル。ニディアのことはほっといていいから、リアのそばにいてあげて」


 ティルはニディアが発言した言葉にびっくりしていながら、ニディアの手を握る。


「それは…できない。リアにとって必要なのは僕じゃなくワイズであり、アイズなんだよ。たとえ好きな気持ちがあったとしても、リアはもう僕のことただの幼馴染であり親友としてみてるから」

「それでもいいの。ただ二人は中退してカディヴィアの社員として動いてるから、リアを無理矢理でもニューダ社に来させる」


 ニディアの発想はめちゃくちゃかもしれないけれど、アイズお兄様はきっとリアとミライを手放さない。そしたらティルはそっと抱き寄せる。


「本当にいいの?」

「ティルがまだリアのこと諦めていないのなら、ニディアはティルを応援する。だってティルはワイズお兄様のライバルでしょ?アイズお兄様に負けないで」


 こんなことしてもリアはアイズお兄様と一緒にワイズお兄様が記憶戻るまで一緒にいるはず。なら尚更、ティルをこのまま縛りつけるのはよくないもん。お父様とお母様になんて言われようとも、ニディアはこれからアイズお兄様の邪魔をすることを決めた。


「ありがとう、ニディア。どんな結果になっても、ワイズの親友でありライバルで、お互いリアが好きだということを思い出させる。その前にニディア、一つ頼んでもいい?」

「何?」


 ティルは首に下げていたペンダントを取り出して、ニディアに伝える。


「ワイズ、これを付けてなかったし、見せた時もピンと来てはなかった。もしかするとどこかで落としたのかもしれない。二年も経ってるから、探せないかもしれないけど探したいんだ」 

 

 ペンダントを落とした場所はおそらくエピルス本部だった場所。あそこは焦げ落ち廃墟のままになっている。


「それじゃあ、今度の休日、探しに行こう」


 ありがとうと感謝されティルはニディアから離れて、ニディアはティルの部屋から出た。これでよかったんだとニディアは家に帰る。


 ただいまと普段と変わりない使用人たちにお帰りなさいませ、ニディア様と言われるもちっとも嬉しくない。お父様はほぼいないし、お母様も仕事が山積みで帰ってきたことすらなかった。

 自室に入り床に座り込んでニディアの前からどんどん宝物が壊れていく。キアに愚痴ろうかなと鞄から取り出して、スマホを見ると、十分前、知らない電話番号から来ていた。

 誰だろうとその電話番号にかけると、リア義姉ねえ様からだ。


「リア義姉ねえ様?」

『ごめんね、携帯変えちゃって。どうしても見てほしいのがあるから送る』

 なんだろうと思うとピコンとなり、通話のままにしてメッセージからきているところをタップすると動画。それをタップしたらミライがテレビに向かって、パーパと言っている。テレビに映っているのはもちろんワイズお兄様だ。


「リア義姉ねえ様、ミライが」

『そう。ミライがね、ワイズのことパパって言ってすごく嬉しかった。総司令官とギーディスにはまだ見せてないの』

「あの二人なら喜んでくれるんじゃないかな。キアには見せましたの?」

『ううん。多分、ルシャンダが見せてると思うから連絡はしてない』


 意外だな。てっきり妹だから、すぐ報告してそうなのに何かあったのかはキアに聞いておこう。


「ワイズお兄様が見せたら喜びそうですわね。アイズお兄様は?」

『ちょうどその時、アイズがいなかったからパパって言ってたのかもしれない。今日のところは帰ってもらったよ』


 恐れていたことが的中するのではないかと思い始めた。アイズお兄様とは一旦離れたほうがいいのではないかと感じる。


「リア義姉ねえ様はどうされたいのですか?」

『ミライのために悩んでる。ミライのそばにいてくれたアイズか、それとも記憶をなくしたワイズか』

「ティルは考えたことは?」


 ニディアがそう言うとティルはと少し声のトーンが低くなった。ティルを手放したけれど、逆効果にならなきゃいいなと言葉を待っていると意外な言葉を言う。


「本当はね、ティルと一緒にミライを育てるつもりだったの。そしたらニディアが悲しむだろうからやめておけって、アイズに言われちゃったの」


 アイズお兄様、リア義姉ねえ様のそばにただただいたかっただけじゃんと、アイズお兄様に呆れてしまうほどだ。それかリア義姉ねえ様を見張るために、お父様とお母様が言ったのかもしれない。

 もう一つ、お兄様はリア義姉ねえ様のファンでもあるからとられたくはなかったと言うべきだろうか。なんか悔しすぎるとリア義姉ねえ様に言っちゃう。

 

「アイズお兄様、リア義姉ねえ様のファンだから、ただそばにいたかっただけかもしれないですわ。アイズお兄様の部屋に入ったことは?」

『一度実家にお邪魔した時に、部屋見せてくれたけど』


 しまった。引っ越す時、全て処分するのかと思ってたけど、全て持ってったんだった。仕方ない。アイズお兄様が大切にしているものは言わないでおこう。


「ファンクラブのグッズご存じ?」

『この前、ヨウミとあったときに見せられたよ。ついでにアイズが愛用しているものも見せられた』


 声が笑っていたとしても怒っていることが伝わり、フォローするにしてもできないなこれと思った。ならこう答えるしかない。


「ティルがそう言えば、ペンダントを探しに行くって言ってましたの。今度の休日」

『ごめん。その日、アイズと出かける用事があって』


 アイズお兄様に先手取られるとは思ってもみなかった。


「仕方なくってよ。アイズお兄様と存分に楽しんで。それじゃあ、ニディアはそろそろ夕飯食べますわ」

『ごめんね。また予定があえば出かけよう。それじゃあ』


 通話が切れ、本当はまだ言いたかったことはあったけれど、週末、ティルと絶対にペンダントを探して思い出させるんだから。私服に着替え食卓の間でのんびり夕飯ができるまで、テレビを観ていった。

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