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ブラッドカラー  作者: 福乃 吹風
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24話 上機嫌なディナー

 潮風の匂いがここまで来て、かもめたちが飛んでいる姿も見えた。私は景色がよく見える大きな水槽に閉じ込められている。水槽の中には家具が設置されており、扉付近には人間形ファンズマがびっしり壁側にいて、正直ホラーの中にいるような気分。幸い水が入っていないから良かったというべきなのかな。


 ワイズは無事だろうかと不安が大きいものの、無事でいてくれると信じ、暇だからテレビをつけると外では騒動が起きてい

た。

 私が誘拐された事件であっても、カディヴィアではなくライディー社の本部で報道されていた。そして偽の情報で優秀な人材が誘拐されたと出ている。しかも館長が喋っているからすぐ消した。

 私が逃走者だということは伏せていて、これをお父様が見たら逆鱗に振れるのではないかと感じる。私の私物は没収されちゃったし暇すぎた。


 ワイズたちが来てくれると信じて、少し横になろうかなとベッドに行こうとしたら扉が開く。そこにヨウミが現れた。


「久しぶりだね、リア。具合はどうだい?」

「ここにいるから気分が悪い。逃げないからファンズマ消してもらえると嬉しいかも」

「すまない。父上に後で伝えとくとしよう」


 ファンズマの帝王が置いたのねと諦めるしかなく、なぜ私をここに連れて来たのかを知らなければならない。


「ヨウミ、なぜカディヴィアと和解したのに、私を誘拐したの?」

「それは決まっているではないか。我が輩はずっとリアが欲しかったからだよ。リアのヒーローはどちらだろうね」


 清々しい表情で言われ、この水槽に閉じ込められていなかったらヨウミをひっぱ叩いてた。ワイズが死ぬ運命がここなら絶対にヨウミを許さない。


「あまりストレスは抱え込まないでほしい。欲しいものがあれば言ってくれ」

「じゃあここから出して」

「それは無理な話だよ」


 そう上手くいかないものかとベッドに座り、ヨウミにあることを聞いた。


「ワイズが死ぬ運命は知ってるの?」

「もちろん。ノアから聞いた」

「ワイズが死なない未来を私たちはずっと探してた。こんな早く、ワイズの死が近くなるだなんて信じたくない。お願い、ワイズに連絡させて。心配させたくないの」

「わかった。少し待っててくれ」


 ヨウミはこの部屋から一旦出て行き、少し待つと人間形のファンズマは消えヨウミが私の鞄を持ってくる。

 どうやって渡してくれるのだろうと思ったら、上がなんとファンズマだったらしく、ファンズマが私の鞄を受け取り、ゆっくりテーブルの上に置いた。


 スマホを取り出してワイズに連絡するも、応答してくれなくて、まだワイズはあそこにいるのかなと思ってしまう。


「ワイズは無事、島に帰ったとエピルスの団員が言っていたから、大丈夫ではないか。ルシャンダにここをハッキングさせているから、すぐ来るであろう」

「それならいいの。ワイズとせっかく、仲間集めしようとした時に、ハディックたちに会ってしまったのがいけなかった」

「医療関係の能力を探しに行ったのではないか?」

「なんでそれを知ってるの?」


 ヨウミはポケットから何かを取り出したと思えばヨウミのスマホで私に見せてくれたのはある記事だった。


 ボルダウ国で流行病が発症し、ボルダウ国は封鎖を行っていたところ、ある救世主が現れたそう。流行病がなくなり、そして怪我人だった者たちも傷が癒え、他の病に患った者たちも完治をした。救世主は今もボルダウ国に移住しているという。


「そう、その人に会いに行く途中で」

「ふむ。ボルダウ国であっても、指名手配書はあったはず。エピルスの団員も実際にその国に行ったのだが、実は帰って来ていないのだ。防犯カメラがない理由も、見られたくないものがあると我が輩は思っている」


 見られたくないものがあるなら私たちが行ったとしても、無意味だったなのかもしれない。はっと思い出してヨウミに尋ねる。


「スノーリア王国も防犯カメラは設置されていなかった。ボルダウ国も防犯カメラがなかったし、他の他国も防犯カメラがない。スノーリア王国はホデュヴィに乗っ取られたと聞いたけど、ボルダウ国もファンズマが乗っ取っているとしたら?」


 ヨウミは何かを考え、エピルスの人たちはとてもいい人たちだけれど、ファンズマは違う。仮にカディヴィアの力を借りてファンズマを野放しにしたら大事になるのは確かだ。

 ファンズマ帝王が何を考えているのかは定かではないけれど、キアが言っていたことが本当に起こり、今度はライディー騎士団が追われる羽目になる。


「ファンズマが関係しているというのなら一理あるかも知れぬが、ファンズマは平穏を望む、人に危害を与えないはずだが念のため、父上に相談しておこう」

「ありがとう、ヨウミ」

 ヨウミはファンズマの帝王に話をつけてくれに行ってくれて、私は少し横になり眠りについた。



 ◇


 リアが連れ去られて翌日となり、ライディー騎士団は今も捜索に当たっているようだった。

 俺たちはルシャンダのおかげてリアの居場所を特定でき、今は偵察で俺とキアで様子を見ていた。エピルス本部にはファンズマも多くいるし、突破するには時間がかかりそうだ。

 エピルスの奴らもいるが普通に歓迎はしてくれなさそうな感じ。


「ルシャンダ、エピルス本部の設計図盗めそうか?」

『もう少し時間かかるであります』


 ルシャンダがエピルス本部にハッキングして、設計図を盗んでもらっている最中だ。どこになにがあるのか把握しておけば、リアを救いやすいと思ったから。

 それにキアが手を繋げば一緒に透明化できることが発覚して、スムーズにリアを救いに行けそうだ。一度島に戻りインディーの情報を元に誰がエピルスの幹部を相手にするか、モニター室でリーダーたちが話し合っているところだった。


「そっちはどうだった?」

「外でもエピルスにファンズマが結構うろついているから、ルシャンダの力を借りるしかない」

「設計図、入手できたであります。今、印刷するでありますね」


 ルシャンダに設計図を印刷してもらい、ホワイトボードには四天王の写真とヨウミの写真が貼ってあって、能力も書いてある。


 タングは水属性、ハディックは虫属性でノデットはエスパー系睡眠属性、ウリは電気系光属性、そしてヨウミは水系海属性。この五人がエピルスの幹部とも言える位置にいる。

 俺の場合、弱点が水だからタングとヨウミは相性が悪い。ハディックは相性がいいからいいとして、問題はノデットとウリだ。


「初期のファンズマもでる可能性が高いですし、そうなるとチームで動くとしても戦力が足りないですね」

「ソアレたちの年齢はさすがに連れて行けないとなると、俺たち含めてざっと十五人で、ルシャンダとイルルはサポート側だから十三人か」

「同じ箇所に一種のファンズマが密集してくれたらいいだべだが、そうもいかないべよ。映像を見る限り一種じゃなさそうだべ」


 ダディゴ、エリュウ、ウバンが話していて、実際に見てきた俺とキアも同じチームで動くのはやめたほうがいいと思っていた。


「そうね。今のチーム制を考えると、今までは同じ遺伝子にまとめていたけど、組み換えしたほうがよさそうだわ」

「わえはすり抜けることができるし、挑発担当がいいの。そういうチーム作ってなの」

「それは置いとくとして、うちらの能力を活かして、リアを救いに行くにしても、途中でライディー社と出会した場合どうするのかも考えなくちゃ」


 コルア、チーシャ、ネフィラの意見を聞き、ネフィラの意見は確かなことだ。仮にリアを助けに行っている間にライディー騎士団と出会した時が問題となる。

 これはみんなが一番嫌なことはわかっていても、俺たちだけじゃリアは救えない。


「みんな、ライディー騎士団と協力しよう。一番危険なのはわかってる。それでもリアを確実に助けるにはこの方法がいいと思うんだ。リアを助けた時点で、昔みたいに脱出をすれば大丈夫じゃないか?今回はルシャンダがここにいてくれることで多くのゲートは出せるだろ?」

「そうでありますね。ライディー騎士団に協力を求めるのは勇気がありますが、ここは一つ和吉に提案があります」



 指示を出しながらリアがいる場所を特定していると、画面が切り替わりそこに写っていたのはルシャンダだった。しかもルシャンダはきっちりスーツの姿でいる。

 緊張しているようにも見えるけれど、ルシャンダが話し始めた。


「お仕事中失礼であります。ライディー社ライディー騎士団副長である、ティル殿。これからフリジンダ社長兼総司令官であります、ワイズ社長より商談話を聞いてくださいであります」


 すると画面が切り替わりワイズもちゃんとしたスーツを着て、久しぶりティルと言われる。怒りはグッと堪え話はなにと聞くとワイズはまっすぐな瞳で、こう言った。


「リアを確実に救うために協力をしてもらいたい。ルシャンダの力ですでにリアの居場所は突き止めている。本当はライディー騎士団の力なんて借りず、助けに行きたいのが本音だ」

「じゃあワイズたちで行けばいい話しだ。こちらはこちらでリアの居場所を突き止めそちらに行く」

「これを見てもか?」


 一部の映像が切り替わりそこには想像以上のファンズマがいて、これだと人員を配置するのに時間がかかりそうな気もする。


「こっちはライディー騎士団の能力とかも知ってるし、ルシャンダの力を借りれば解析して、人員を簡単に組み替えられる。それからライディー社が今まで隠してきたことを公表すればリアは解放されるんだ。どうするかはティルに頼みたい」

「こちらのメリットはなにになる?」

「メリットはカディヴィアに行ける権限を与える。また繋げるからそれまでに答えを出してくれ」


 ワイズがそう言うと普段の画面に切り替わり、モニター室にいた者たちが全員僕の顔をみた。ライディー社が唯一入れない場所がカディヴィア。

 館長もさっきの商談話は聞いているだろう。そうは言っても、リアを救ったとして、僕のメリットはどこにもないということだった。館長が全世界に公表すればこっちは楽な仕事だけになる。それでも館長は絶対に公表したくない情報と言ったらリアのことだろう。民の信頼があってこそライディー社は成り立っているようなものだ。


「その話、受けたらどうかな?」


 考えているとそこにニディアが来ていて、私服ではなくライディー騎士団の団服。


「どの道、あの騒動は止まらないだろうし、ティルのお父様は今も隠し通しておきたいのは事実でしょ?なら協力してる振りをして、リアを助けたらシフォンの能力を使い、ティルの力を使えば逃走者全員捕まえられるでしょ?」


 それは一理あっても一応、館長に報告する必要がある。


「ニディア、一緒に来てほしい。みんなはそれまで待機しておくよう伝えて。行こう」


 館長室へと入ったら、物は散乱しており、頭を抱えていた。


「館長」

「ティル、ワイズとの取引に応じろ。ライディー社を失うわけにはいかない。それからこれでファンズマの帝王を殺せ」


 すっと出てきたのは短剣でなにを示しているのかがわかる。これは呪いの剣だということを。人間に害はないとはいえ、一回だけ館長は人を呪っている。それがどんなものなのかは僕たちにはまだ知れないことであっても、館長はファンズマの奪還を目指している。

 承知しましたと呪いの剣をいただき、ワイズから連絡が来るのを待ちながら全団員たちに一斉送信した。各自、施設へと帰還し指示が出るまで待機せよと。


「ニディア、頼みがある。きっとリアを救出後、ワイズを殺す未来があるらしいんだ。だからその時はニディアの力で止めて欲しい。僕は他の人たちにはかけられるけど、自分にはかからないから」

「みんなを逃すってことでいいの?」

「うん。いいんだ。みんなの未来をこれ以上奪わせたくないし、これが仮に罠だとしても僕の覚悟は決まってるから」


 どんな結末になるのかは目に見えている。だからこれが僕がやる最後の任務だと思っていた。



 夕方になり私は一度、水槽から出されてエピルス四天王たちとヨウミにファンズマの帝王でディナータイムとなっていた。食べる気分ではなく、飲み物だけをいただいていたらファンズマの帝王に言われてしまう。


「栄養取らないと身が持たんぞ」


 そう言われても何か入っているんじゃないかと思っていたら、大丈夫っすよとタングが言い出す。


「毒味もしたっすから、安心して食べてっす」


 このディナーから早く退散したいから、いただくことにして、ヨウミは本当に私がきたことで上機嫌。

 それにしてもヨウミたちの料理と違い、身体に優しい料理だということに気づく。ヨウミたちも知っているんだと遠慮なく、栄養を取っていた。


「新しく会社立ち上げたのにすまなかったな」

「いえ。それより公表してほしいというのは?」

「カディヴィアから商談を受け、実行しているだけということだ。あやつは口が硬い奴だから簡単にはいかんだろう。本来、リアとワイズが生まれた時、カディヴィアが受け取るはずだった。しかし奴は手放したくないという思いが強くてな。カディヴィアの者を呪い、その者たちは徘徊し研究員を襲ったという」

「お母さんが呪いにかかったのって」

「カディヴィアの者を守ろうとした時にかかってしまった。守りきれなかった私の責任でもあり、あの島でナユを見守っていた」


 公表してほしいというのは私とティルのことなんだと知り、キアが言っていたことが本当に起きる。ティルはなにも悪いことしていないのに、責められるのはどうかと思った。

 館長は民たちから罰せられるのは理解できるけど、ティルや他の子たちは今まで館長命令で動いてたようなもの。


「リアは心配しなくてよい。我が輩たちが必ず守り抜くと誓おう」

「そうは言ってもヨウミさん、変なこと考えないでくださいっすよ。リアちゃんが来てから、デレデレしてるのノアさんに言いつけるっすよ」

「ノアにまたいろんな乗り物に乗せられても、自分たち助けないからじゃん」

「僕が、ヨウミさん、助けるから、大丈夫」

「ヨウミ、こんなんでごめんね。うちらが止めても、聞かない人なんだけど、いい人だから許してあげて」


 もしピンチになったら四天王のみんながお兄ちゃんに言いつけてくれるなら、少し安心できるかもしれない。


「皆よさぬか。父上、笑わないでください。小さい頃、失恋した我が輩であっても、リア愛は止まらないのは仕方ないであろう」

「良いではないか。失恋した我が子と失恋相手とこうやってディナーをするとは思っても見なかったが、ヨウミは誰よりも先にリアの幸せを願っている。少々いたずらな部分もあるだろうが、許してやってくれ」

「はい」

「さて私は席を外すがディナーを楽しみたまえ」


 ファンズマの帝王は先に退出され、なぜか四天王のみんなは力が抜けたようになる。


「あれ絶対リアに目をつけてるっすね。ノアさんに報告しておきましょうか?」

「失恋相手をどうするか、想像するだけでぞっとするじゃん」

「僕は、そうに、見えなかった」

「あれどう見ても、ファンズマの帝王、ヨウミとくっつかせる作戦でいこうとしてない?」


 えっと困惑しているとヨウミがよさぬかと四天王を叱った。


「リア、気にするでない。父上は昔っからそういう人なゆえ、怖いことは起きぬ」

「うん。こうやって話してみて、ヨウミのお父さんがどんな人なのか知れて嬉しかった。あの時は怖い思いしちゃってごめんね」

「良い。ウリ、リアを頼む。我が輩たちも食事が終えたから、席を外すとしよう。おやすみ」


 ウリ以外、出て行ってしまって、ワイズたちの動きを知りに行くんだろう。ごちそうさまと伝えるとウリがお風呂場へと案内してくれるそうで、連れてってもらうことにした。



 タングたちを連れ出た訳は、父上の様子がおかしかったからだ。父上はリアの能力を抜き取ったのは確認済みしている。父上はその他にも恐れていることがあるのかと、ノデッドの能力を使いながら、情報を抜き取ってもらっていた。


「ノデッドが父上の心を読み取っている間に、タングは緊急通路を確保。ハディッグは虫を使ってエピルスに伝えてくれ。時が来たらファンズマから脱出すると」


 二人は頷いてこっそり行ってもらい、ノデッドは我が輩を呼び首を横に振る。


「無理じゃん。心が読めないし、喋っている様子もないじゃん。どうする?」

「ノデッドの力でも難しそうか。オーケルのほうは?」

「あぁなんか、呪いの剣を息子に渡したから、後は時間の問題だって心が叫んでるじゃん」

「呪い。そのようなもので、父上に勝てるというのかは不明だがティルからそれを受け取らねばならぬ」


 ルシャンダがハッキングしている形跡はあるが、ライディー社がハッキングしている形跡はないとエピルスの団員は言っておった。もしやワイズはティル、つまりライディー騎士団に協力要請でもしたのであろう。

 面白くなってきているが、リアが少々心配になってきた。父上がリアの能力を消していないのなら、ノアが言っていたことが起き、そしてあの力が発動するのではないだろうか。

 念のため、このことはノアに伝えておくべきかもしれぬとスマホを取り出し、連絡するも音信不通のようだ。仕方があるまいとこのことはワイズとティルが来た次第伝えとけばよいか。


「ノデッド」

「ん?」

「父上が何をするのかはまだわからぬが、万が一に備え、準備は進めとくよう伝えといてくれぬか?」

「わかったじゃん。ヨウミ、この一件で死ぬなよ」


 用心すると伝えノデッドに行ってもらい、我が輩はそれまで司令室で皆を動かして行った。

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