17話 甘酸っぱいりんご
この島に来てから一週間程度経ち、私たちは島から一歩も出ずに議論をしていた。それはライディー社にどう立ち向かうのかとエピルスが活発に動いていることに。
今日も朝食が終わった後に、議論し合うのだろうとベッドから降りて着替える。
あれからギーディスと接触していないし、それにインディに情報を得たくてもお店が閉まっていた。だからクーヴァさんから情報を得ようとしたところ、クーヴァさんのお店は閉店していて探すにしても探し出せない状況だった。
ルシャンダも寝ずに探してもらっているけれど、お手上げ状態らしく今は睡眠をとってもらっている。急になぜこうなったのかを知りたいと着替え終え、食堂に入り、担当の子にご飯をもらって食べることに。
今まではお祈りをして食べていたけれど、今はもうみんなのタイミングで食べてもらってる。目の前にはウバンとチーシャが来て、私の隣はワイズが座った。
「おはようだべ」
「おっはよなの。今日も食べたら議論?」
「うん。それに頼まれたものもあるから、それを買いに行きたくて」
「だったら一緒に行く。モニター見る限り、ライディー騎士団増えたからな」
そうなんだよね。島から出ない理由も以前よりライディー騎士団が増えていて、ルシャンダには負担をかけてばかりだから出ていなかったのもある。食料はまだ困りそうにないし、この島には農園や小さな牧場があるから普通に生活できるからな。
話していると寝巻き姿のキアがやって来て、まだ眠たそうな表情をしている。
「姉貴、ワイズ、みんなおはよう。あのさ、施設って全て見回った?」
「人通りは見たけど、何かあった?」
「昨日さ、僕も人通りみてここがどんな島なのかわかったからそれについて話しておきたくて」
「わかった。じゃあ朝ご飯食べて、会議室で話し合おう」
ありがとうとキアは欠伸をしながらご飯をもらってくるみたいだった。
「そう言えばさ、チーシャが以前話してくれた人って見つからないって言ってたよな」
「モニター増えたから一つ貸してもらって、探してるけどいないの」
「その人ってどんな人だったか覚えてる?」
チーシャはうーんと考えチーシャが私たちの施設に来たのは確か七歳の時。七歳の時に出会った人のことを思い出せるかなと私たちはご飯を食べ切っていると、何かを思い出したようだ。
「その時、ライディー社の人と逸れちゃって、迷子になっちゃって一緒にライディー社の人を探してくれた人なの」
おっとまさかライディー社と逸れたら大騒ぎになってたような気もすると思ってしまった私とワイズ。
「探してる時、わえが落ち込まないように美味しいもの食べたり、おもちゃ買ってくれたの覚えてるの。お礼がしたくて会えたらいいなって」
ただ単にお礼がしたいってことなんだと知り、一体誰なのか以前ルシャンダからもらった画像を開く。女性ではなく男性。あれなんか見覚えがあるようなと、父親一覧を見るとやっぱりそうだとチーシャに聞く。
「この人だった?」
「その人なの!」
「よりによって父親かよ。会ったとしても逃してはくれそうにないぞ」
「同感だべ。無闇に父親と接触はしないほうがいいだべよ」
チーシャはしゅんと落ち込んでしまい、おそらく私たちの施設に異動になったこともあり、お祝いとしておもちゃとかもらったに違いない。私とワイズはちょっぴり羨ましい部分もあるけれど仕方ないと切り替える。
どうにかして会わせられないだろうかと私たちは会議室へと行き、そこにはイルル、コルア、ダディゴがすでにいた。
「キアは?」
「まだ食べてたけど、もう少しで来ると思うよ」
「そう。なら、先に始めておこっか」
レッツォがいなくなってしまったことで、橙のリーダーになったのはザズが認めたダディゴ。水の遺伝子は今までエリュウだったけれど、コルアが復帰したことによりコルアになった。コルアが一応ここでは最年長であり内容を進めてくれる。
「ライディー社に立ち向かうにはまだ戦力が必要になってくるのは以前にも話したわよね。以前はティル探しのついでにリアとワイズが行ってくれてたけれど、ティルはライディー騎士団に入っている。リアとワイズはそれでもティルを連れ戻したいのは変わらないであってる?」
私とワイズは頷き、コルアは話を進めていく。
「二人は今まで通り、ティルと接触するのはもちろん、絶対に二人は捕まってほしくないから十分に気をつけて。それであたしも能力が復活したから、あたしも能力者探しをしに行こうと思う。もし仲間集めをしたい人がいるなら挙手してほしい。強制はしない」
どうなんだろうと最初は誰も手を挙げなかったがスッと手を上げたのはウバンだった。
「一度ぼかぁ、島を出ただべが、戻って来て植物の水やりだべしかできなかっただべ。力の出し方も島じゃなく、島の外でも練習したほうが効率的にいいだべと思うから行くべよ」
すると今度はイルルが発言する。
「たわしはできればサポート側の方がついてると思うさかい。せやからルシャンダのサポートにつきたいんや」
「イルルは今まで通り、ルシャンダのサポートに回ってくれると助かる。チーシャとダディゴはどうしたい?」
チーシャは悩んでいるようで、ダディゴは決心した瞳をしていた。
「僕らはザズさんから指導を受け、そういう役目は慣れています。みんなに言えば手伝います」
「そうなるとこの島を守る役目と仲間探しの二つの役割に、それから私生活の役割もあったわね。まずはそこを整理してから担当を振り分けしましょう」
さすがまとめるの早いと聞いていたら、ようやくチーシャが応えを出す。
「わえも仲間探しに行くの」
「わかったわ。ただし、一人で動くのは危険だからちゃんとチームで動くのよ」
はーいと一番目を離せないのはチーシャで、きっと父親に会いたいからなんだと思ってしまう。話しているとお待たせとキアが早速きて、例のことを打ち明けてくれる。
「コルア、話ても大丈夫?」
「人通りまとまったからいいわよ」
「じゃあ遠慮なく。この島を隅々まで確認したところ、ここはカディヴィアが保持している島の一つ。だからライディー騎士団が来る恐れはないから安心していいっちゃいいんだ。ただ」
キアは言いたくないような表情をしていて、言えない事情があるなら無理して言わなくていいよとは以前伝えてある。少しして一度ワイズの顔をみて苦笑いしながらこう言った。
「まだわからないけど、ギーディスの団、つまりワイズの兄弟たちが来るかもしれない」
「赤遺伝子の子たちが?」
「いや、全員じゃないと思う。疑われるのも恐れて貴重な人材はこっちに来るかもって話。それに食料が減って来たらカディヴィアの人が来るから警戒だけはしないでほしい」
「どうやってカディヴィアの人だと認識すればいいんだ?」
ワイズが質問してきて、キアはポケットからあるものを見せてくれる。
「これがカディヴィアの紋章。いつもは私服姿だから一見疑うかもしれないけど、これを見せてくるはずだからその時は通してあげて」
なるほどねと確か建物内にもこのマークが記されていたなと思い出す。
「ついでにもう一つあって、これは全員にみてもらったほうが早いからついてきてほしい」
となればみんなを招集しなければならないと思ったら、ルシャンダが寝癖をつけたまま全員食堂いるでありますと言ってくれた。ありがとうとルシャンダに告げ、食堂にいるみんなとキアについて行くことに。
施設から少し離れた先にキアは地面を叩くと、自動に地面が動きそこには地下に通じる階段が現れた。また秘密研究所でもあるのかなと階段を下り、長い通路を歩き切ると大きな扉があってカディヴィア行きと書かれてある。
「万が一、何か起きて対処できなくなった時、この受話器を取ればカディヴィアの本部に繋がる。扉が開くかどうかはわからないけど、助けてはくれるはずだから覚えておいてほしい」
「えっとつまりここからカディヴィアの人が来るってことでいいのかしら?」
「ここは緊急用扉だから、船でくるってさっき試しに問い合わせてみたから。それともし姉貴の力でも治せない病が発生した時とかも連絡してくれれば駆けつけて来れるらしいから」
どうせならカディヴィアに保護されたほうが一番いいのではないかと思ってしまうほどだ。一度、私も使いたいと思い、私とキアは残ることに。
「姉貴どうしたの?」
「私が言えばみんなの手配書って消えるかな」
「それは…無理だと思う。本当はワイズの手配書もなくすよう総司令官が伝えていたらしいけど、ギーディスがほら赤遺伝子の父親の役目をしてるから姉貴だけになったって聞いた」
手配書がいつ復活するのかもわからないけど、試しに聞いてみるのもいいかもしれない。もしだめと言うならこう告げるしかないと受話器をとる。
スリーコールでカディヴィア本部ですと聞こえ、リアですと告げるとお待ちくださいと音楽が流れた。数秒後、リアどうしたと男性の声が聞こえる。
「お兄ちゃん?」
『そうだよ。なかなか会いに行けなくてごめんな。それでどうした?母さんなら回復に向けて療養に集中してるよ』
「そっか。お母さんのことじゃないの。逃走者の手配書を廃止するようにできない?」
お兄ちゃんは黙り込んでしまい、無理かなと待っているとそうだなとお兄ちゃんが言う。
『手配書は廃止するよう伝えてはあるが、見込みは薄いだろう。ただ今回の商談で条件はつけてあるからそれに応えてくれると思うぞ』
「条件って何?」
私はお兄ちゃんが言っていることが理解できず、お兄ちゃんとの会話が終わってしまった。受話器を戻しキアに心配されるも走ってワイズのところへと向かう。
なんで、なんでと頭の中にその言葉がぐるぐる回って、ワイズを見つけ飛びついた。
「リア?」
「どうしよう。私っ」
「話聞くから一先ず落ち着こう」
ワイズは私の背中をポンポンと優しく叩き、私が落ち着くのを待ってくれる。お兄ちゃんが言ったことがまだ信じられない。ワイズの温もりで少し落ち着き、近くにあったベンチに座り、打ち明けるとワイズもえっという表情をいていた。
「俺に実の妹が?」
「いるみたい。ワイズのお母さんがカディヴィアの総司令官」
「しかも俺の妹がティルのフィアンセってどういうことだよ。俺、なんも聞いてないんだけどな。待った待った、え?つまり俺とティルは義兄弟になるのかよ」
ワイズはまだ信じられないような表情をしていて、私の手を強く握る。私も信じられないでいると、ワイズは私の瞳をみて質問してきた。
「こんなの卑怯だってわかってる。それでも俺は、リアが好きだから、こんなチャンス逃したくない」
ほおを染めまっすぐ見つめてくるワイズで、ティルにフィアンセができてそのお相手がワイズの妹。そうなったらどんな未来が出来上がるんだろうと興味心があった。ティルとワイズで一緒にいられる未来。
私の気持ちはもう決まってるよと私はワイズにキスして、よろしくお願いしますと告げるとルシャンダが放送し始めてしまう。めちゃくちゃ恥ずかしいとお互い照れ笑いしながら、ワイズからキスをもらった。
その夜、なぜかパーティーとなってしまい、みんなからおめでとうと言われる一日であった。
翌朝、隣にはワイズがまだ寝ておりゆっくり起きようとしたらワイズの手が私の手に乗っかる。ワイズは狸寝入りしていたようで、おはようと言われたからおはようと伝えた。
そう言うやりとりをしていたら、扉が開いてネフィラたちがニヤニヤと見ていた。んっもうと恥ずかしくて扉を閉める。
「別によかったじゃん」
「もう、みんなったら」
「リアがどちらを選ぶのかみんな掛けてたみたいってウバンから聞いた。そういうの好きだよな」
多分イルルがみんなに情報を流したんだと、着替えてくるねと伝えて自室に戻った。寝巻きから私服に着替えているとキアが入ってくる。
「おめでと、姉貴」
「ありがとう。キアは好きな子とかはいないの?」
ピクッと動いてもしかしているのかなとキアの顔見る限りいるっぽい。どんな子なのかなと着替え終えるとキアが恥ずかしながら言った。
「シフォンだよ」
なんと。まさかのまさか、ライディー騎士団の人を好きになるとはびっくり。
「姉貴たちと出会う前、シフォンは僕を普通の人間だと認識していたみたいで、救ってくれたことがあったんだ。それで何度かその食事に誘ってもらったことがあって」
シフォンがキアに食事を誘う場面が想像できないと、キアはその続きを語る。
「楽しい食事で、ある時、言われたんだ。父親に紹介したいって。何も言えずにいたし、父親は僕のことを知ってると認識したから、それ以来会うのをやめた」
「それお兄ちゃんには?」
「言ったら怒られたよ。姉貴がシフォンと接触してる時、実はこっそりみてた」
言えない事情があって人目会いたいと能力使っていただなんて。まさしく禁断の恋。シフォンはティルの団だから接触はあると思うけど、お兄ちゃんの許可が出ないと出られないってことか。
「キアはどうしたい?」
「できれば気持ちは伝えたいけど自信がない」
なるほどね。普段はパーカにダボッとしたズボン。一度、キアに背を向けもしかしてと思い当たる節が一つあった。
「キア、もしかしてその格好でシフォンと会ってたりしてない?」
「だいたいこういう服着てたかも」
キアに言いたいけれど、言ってしまえばキアが傷つくのが目に見えてる。うん、これは姉としてシフォンに伝えて置かねばならないとキアにくっつき、写真を撮る。
「急に写真なんか撮ってどうしたの?」
「もしまたシフォンと会ったら伝えとくね。キアが会いたいって」
「だったら僕も」
「キアはこの島にいてほしいな」
もの言いたそうな表情をしているもお願いと言ってくれて、さてどうやってシフォンを探そうか。私の勘だとシフォンはキアのこと女の子ではなく男の子として認識してるに違いない。
だからシフォンは友達を父親に紹介したいからそう言うことを言ったんだろう。可愛い妹のためだからなんとしてでも会わせたい。
朝食を食べ終えた後、ルシャンダにシフォンを探してもらい、ちょうどセキーレ街にいるらしい。
「なんでシフォンでありますか?」
「ちょっとシフォンに用事があってね。ワイズちょっと出かけて」
「俺も行くってば。一人は危険すぎるだろ」
ですよねとゲートを開けてもらい、セキーレ街へと入る。それにしてもライディー騎士団が多いから、ルシャンダに誘導しててもらいつつ、シフォンがいるお店へと入った。綺麗と見惚れている場合じゃないと店員に席を案内してもらう。
メニューを見ながらシフォンどこだろうと周囲を見ていたら二階の席にザズと一緒にいた。
「普通に入ったけど、何がしたいんだよ」
少々不機嫌になっているワイズで、かくかくしかじか説明すると、ワイズが笑い出す。
「そういうことか。それならそうと早く言えよ」
「えへへ。キアのためにもまずはシフォンに伝えておかなきゃって」
飲み物を頼みつつ店員さんに呼んできてもらって、シフォンとザズが気づき下に降りて来た。ワイズは私のと形に座り向かいにシフォンとザズが座る。
「余たちを呼んで何がしたいのですか?これからエピルスを襲撃しなければならないので手短にお願いします」
「シフォン、この子見覚えある?」
今朝撮ったやつを見せると、シフォンは固まりザズがつんつんとつつくと倒れてしまった。
「シフォン、シフォン!」
ザズが呼びかけるとどこにいるんですかと鼻血を出しながら席に着席するシフォン。
「この子は私の妹、キア。あなたがライディー騎士団であることに気づいていながらも、あなたの会食を楽しんでいたみたい」
「父さんに会わせたいって伝えたからいなくなったのはなんとなく知っていました。リア様のそばにいらっしゃるなら、余は仕事に集中できます」
「キアはシフォンに会いたがってる。会いたくないの?」
「会いたいです。とても。リア様、お伝え願えますか?余は騙して会っていたんじゃないと。キアがどんな思いでいるのかは分かりません。ですが余はキアの笑顔に救われていたんです。あの笑顔が大好きで、いつまでも見ていたい。もう少し大きくなって、キアを守れる存在となり必ず迎えにくると」
無線ではルシャンダがキアを叫んでおり、そこで倒れているのだろうと理解した。ちゃんと女の子と認識されててよかったとホッとする。
「わかった。伝えとくけど、迎えに来るときは」
「わかっています。それでは余とザズは仕事があるので。ザズ兄さん行きましょう」
じゃあなとザズに言われ二人がいなくなり、私とワイズはキア大丈夫と聞く。ルシャンダがりんごのように赤いでありますと言っていて、キアは大切にされていることがわかった。
ザズがそばにいるからのちに逃走すると認識して、会計を済ませた後、私たちは島へと帰った。
◇
ウリを探すもいなく逃げられたかと部下たちにはそのままウリの捜索に当たってもらった。ルマは今、館長になんと言われているのか、想像はつく。あの試験を合格し僕の団に入ったにも関わらず、躊躇してしまったことだ。心が完全に壊れなければいいと館長室の前で待っていたら、扉が開きルマが出てくる。
ルマの目が腫れており、相当怒られたんだとルマの頭を撫でようとしたら、手を振り払われ自分の部屋へと向かってしまった。
ルマとウリはとても仲が良く、そして僕たちがしたように逃走を図ったが逃げ切れたのはウリだけだと聞いた。その後、ルマたちは僕と同類の訓練を受けさせられ、唯一耐え切ったのはルマのみだった。それ以外の子たちはどうなったのか定かではない。
エワンも島に行ってから様子がおかしかったし、シフォンとザズは任務でここにはいないから。どうするべきかとモニター室で画面を見ていくと、見たくもない映像が映っていた。
それはリアとワイズが映っている映像で、楽しそうに喋ってる姿。後もう少し、もう少しと自分に言い聞かせながらエピルスの動きをみる。
他の四天王はどうなったのかまだ報告は上がっていないが、捕まえられたのだろうかと映像を拝見していたら、右側のモニターに映っている人物を見て止めるよう伝えた。
「拡大できる?」
はいと拡大してもらい、やはりそうだと画面の位置からここの距離だと二日ぐらい程度でつく。ただ任務中でもありそこに行くのは正直きつい。悩んでいると違う画面から何かをキャッチしアラームが鳴る。
「何が起きた?」
「ファンズマのようですが、今まで戦ってきたファンズマではない模様です。どうされますか?この地には約三十程度の団員がいます」
「それなら僕が行く」
「ハイス団長、新種でなんの種類かまだはっきり」
「僕ならわかる。エワンをちょっと借りていくね」
そう言ったハイス団長は行ってしまい、エワンはまだ戦えるような状態じゃないのに大丈夫だろうか。とにかく無線をつけエワンを呼びかけ続けた。




