表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラッドカラー  作者: 福乃 吹風
14/195

14話 島崩壊!?

 ワイズとルシャンダで島の移転をいつにするか話し合っていたら、キアとイルルが同時にモニター室へと入ってきた。息を切らしながら、やばいとハモる二人である。


「島の近くに小舟があるで」

「警報が鳴り止まない」


 イルルが言うに青遺伝子のがきている軍服を着た男とエリュウの妹、エワンが島付近にいる。キアは秘密の研究所の警報が鳴り止まないのはお母さんが危険を知らせていることなんだと理解した。

 ルシャンダに侵入者がいることをみんなに知らせてもらい、イルルは他にライディー騎士団がいないか確認をしてもらう。キアはワイズと一緒にお母さんを動かす準備をしてもらうことにした。ギーディスの船に乗っていたとすればすぐにライディー騎士団が来てしまう。


「イルル、どう?」

「今はあの二人だけみたいや」


 二人だけならなんとか対処できるかなと考えていたら、外から叫び声が聞こえ急いで外にでる。人魚のままになったネフィラが青遺伝子の人に捕まってて、隣にはエワンがいた。


「お久しぶりですの、リア」

「エワン、それから」

「よっリア。元気そうでよかったわ」


 ネフィラと同じ青遺伝子で、能力は泡を持つブルバ。施設で過ごしていた時、一緒に過ごしていたけれど、館長命令で別の施設に異動して以来会ってはいなかった。

 ここでみんなと挑むにしてもブルバの泡に触れたら、その泡に入ってしまう恐れがある。バブルの弱点となるのは氷だとしても、そこにエワンがいるからきっとうまくいかない。


「さっさと捕まえて帰りたいですわ」

「言っとくけど、この島は泡で覆ったからこの島から出ることもできない。それからリアたちには悪いんだけど、リアの仲間に俺たちの仲間がいる。それとリアの母さんを引き渡してもらおっか」


 狙いがなんとなく理解できたことで、エワンの能力が雪だし積もり始めていく。キアが言っていたことは事実であって、内通者がいるのも把握していた。

 それが誰なのかもイルルの能力で私とキア、ワイズが知っている。おそらく今、お母さんを捕まえに行っている頃だろう。



 僕とワイズで母さんを移動させるために研究所へと急いでいたら、もう一人の足音が聞こえる。やっぱりついてきたかとワイズにアイコンタクトをとり、僕は姿を消した。それでも足音を消さないってことは狙いが母さんだってこと。

 姉貴たちと今まで一緒にやってきた仲なのに、全ての表情は嘘だったということなのだろうか。ワイズと一度離れワイズだけが研究所へと向かっている間に、緊急通路から僕は研究所内へと入りながら無線を耳につけた。


「ルシャンダ、新しい島のゲートを開ける準備をしておいて」

『ラジャーであります!キア、後方に新手がいるでありますよ』

「ちっ。勘づかれたか。適当にそいつを違うところへやっといて」

 

 キーボードの音が聞こえながら楽勝でありますとルシャンダはやってくれている。うまくゲートに入ってくれれば一番いい。イルルが言うに姉貴の仲間、小数がなぜか内通者となっていることが判明した。なぜ今まで姉貴たちと過ごしていたのかと考えてみれば、一つだけ納得できる部分が存在する。

 今までは兄貴と一緒に旅をしてきたから姉貴と接触することはなかった。そして今回、僕が姉貴たちに姿を現したことで内通者が動き出していたのと、ティルにこの研究所をハッキングされたのも一致する。


 カードキーをかざし母さんを移動させようとした時のことだった。母さんが目を覚ましたのだ。


「母…さん」

「時間は残されていないわ。いい、キア」


 子供姿の母さんは僕の耳元で囁き、そんなのは無理だと母さんに告げる。


「こんなことしたら、僕も兄貴も姉貴に、それからギーディスだって」

「大丈夫。ルシャンダ、聞こえるわよね。リアがいるところへ案内してちょうだい」


 ルシャンダがあわあわしてそうと僕からも頼んでもらい、ゲートが開いて母さんを支えながら姉貴のところへと行く。


 ◇


 どうするべきか悩んでいるとゲートが開き、現れたのはキアとキアに支えられているお母さんだった。ブルバはびっくりしており、エワンもお母さんがどんな姿なのか知らずにいるから驚いている。


「あなたたちの未来を奪ってしまった責任は私たちライディー社。どれだけ謝罪しても許さなくていい。それでもこれだけはわかってほしいの。あの人以外、あなたたちの父親は子想いで、ただ単にあの人の指示に従わなければ、愛する者たちを奪うことになる」

「そんなの知っても情もわかない。さっさと捕まってくれればいいんだけどな」

「そうですわ。あたくし、あの人のことをお父様だと思ったこと一度もないですわ」


 カディーラの性格にしたら父親と認識している水遺伝子の子は相当いないんだろうなって気がする。お母さんは何かを思い出したように苦笑いしながらそうと呟いた。

 裏切り者さんたち以外のみんなは無事に新しい島に移動できたかなと家を眺めていたらエリュウがくる。エワンはエリュウが来たことで、ブルバの後ろへと隠れてしまった。


「エワン、ごめん」

「気安く呼ばないでくれる?エワンがどれだけ傷ついていたか知らないだろ」

「これは誤解だ、ブルバ。俺はエワンのことを思って氷化させただけだ」

「は?氷化させるのがエワンのためってか。こんなことして、本当は妹が邪魔だったんだろ!」


 ブルバはエリュウがどんな思いで私たちと逃走したのか知らない。私が口出ししようとしたらお母さんに止められ、見守ることしかできなかった。


「エワンを氷化させたのは、間違ってたってあの日からずっと思ってた。それでもエワンに対する館長のやり方があまりに酷くて氷化させた。それ以来、何度も館長に面会できるよう言っても、氷化が解けてないと言われっぱなしで」

「呆れた。それでもお前はエワンのために残るべきだった!」


 ブルバはエリュウと仲がよかった。訓練の休憩中に、ブルバがエワンと遊んでいる姿を見て、焼きもち焼きながらちょっかい出すエリュウを見て、みんなが笑ってたな。

 リングが光り触れてみるとルシャンダから裏切り者は島から追い出したそうで、無事に新しい新天地へとみんなは到着しいるらしい。


「逃げたとしてもお前らを絶対連れ戻す。そのために俺はっ」


 ブルバが何かを言いかけた瞬間のことで、ブルバとネフィラが刺されてしまう。エワンはエリュウが助けたからよかったけれど、気配すら気づかなかった。

 刺したのは見たこともないファンズマで、エワンはトラウマなのか叫び出す。


「私が出たことで現れた…ファンズマの帝王、ジェバール。ここにいたらあなたたちも危ないわ。ルシャンダ、ゲートを開けてリアたちを逃しなさい!」

「お母さんも一緒に」

「いいえ。狙いは私の遺伝子。リアとキアを失うわけにはいかないの。私なら大丈夫。さあ早く行って!」


 お母さんを置いて逃げたくなく迷っていたら、ワイズがきて私の手を引っ張り、ゲートの中へと入るしかなかった。ファンズマの帝王、ジェバール。そしてヨウミの父親。ゲートが段々と小さくなっていき、お母さんから愛してると告げられ、ゲートがしまった。

 よりによってエワンとブルバも新しい島に入れさせちゃったけれど、どうしよっか。エワンはあまりの恐怖さに気絶してしまってよかったのかもしれない。ブルバの手当てをしてワガラ都市まで送ってあげるのがベストだろうか。


「姉貴、ギーディスに伝えにいくからついでにこの二人も一緒に連れて行く」

「私も行くよ」

「いや、姉貴はここにいてほしい。ファンズマの帝王が現れた以上、姉貴の能力は危険だからとにかく大人しくしてて。その代わり、エリュウを連れて行くから」


 姉としては危険なところには行ってほしくないけれど、ギーディスの居場所を把握しているのはキアだからキアに任せるしかないか。一先ずネフィラとブルバの傷を癒してからにしよう。

 その場で傷を癒してあげ、キアはエワンを抱っこし、エリュウはブルバを運んでギーディスのところへと向かってもらった。


 新しい島は設備が整っており、部屋も以前の家とは比べ物にならないぐらい。これは一人部屋使ってもよさそうと感じる。ルシャンダは早速、モニター室へと入り、旧島でハッキングしていたものを削除やらしてくるそう。

 みんなは好きな部屋を使ってもらい、私は余った部屋を使うことにした。それにしてもこんないい設備が整っている島があるだなんて、どうやって探したんだろうかと疑問に浮かぶ。

 それに下の子たちが喜びそうな遊具も設置されてて、もしかしたら以前からギーディスの団が建築してくれたのかなと思い始めた。


 風呂上がり、旧島はどうなってしまったんだろうと食堂にはテレビが設置されていて、一応観ておこうかなとポチッとつけたら島が報道されている。

 ヘリコプターからの中継であって島は全体に火が回っており、三年過ごした思い出が消えて行く。お母さんは無事なんだろうかと不安が込み上げていた。するとワイズが私の手を握りこう言ってくれる。


「リアとキアの母さんは絶対に無事だよ」

「大丈夫って信じたいよ。それでも少し不安がある。ファンズマの帝王でヨウミのお父さんだもん」


 お母さんが出てきた理由はおそらく別にあるんだと感じる。それにネフィラとブルバが刺された理由としては力を奪うためでもあった。昔、ヨウミが言ってた言葉を思い出す。ヨウミのお父さんは私たちの能力を奪えること。

 ネフィラが起きたら一応確認はしておくべきかと、ワイズとニュースを見ていたら、遠くから気配は消しているものの感じる。チーシャだろうなとワイズと笑い合っていたら、ルシャンダから呼び出されモニター室へと向かった。


 行ってみると前のモニター室より画面が多くあって、これだったらいろんな場所を把握できそう。椅子に座りルシャンダに旧島の様子を見せてもらった。

 お母さんとファンズマの帝王であるジェバールがまだ映っている映像で、その様子を見せてもらうとお母さんと口論しているようにみえた。次の瞬間、知らない人が現れその人がお母さんと消えた後、爆発が起きジェバールは姿を消す。


「お母さんを連れてったのって」

「調べたのですが、情報が一切なかったであります」

「あれじゃないか?リアとキアの兄貴って言う人なんじゃない?」


 資料がない以上確かめる術はキアであっても、キアはエリュウと一緒にギーディスのところへ行ってもらっているから聞き出せない。仮にお兄ちゃんが助けているのなら安心はできるけれど、お兄ちゃんじゃなかったら危険性が強いよ。

 私はお兄ちゃんの顔知らないから特定できないでいると、ルシャンダがゲートを開けそこからキアとエリュウが帰還する。


「おかえりであります!キア、帰ってきて早々質問であります。この人知っているでありますか?」


 どれとキアは大きな画面をまじまじとみて、お兄ちゃんだったら即答で答えるのに、キアはまじかと言い出した。ちょっと貸してとキアはキーボードでカタカタと打ち、見せてくれたのはある組織の情報だった。

 組織名はカディヴィアと言って、ライディー社とは別の研究組織らしい。


「僕と兄貴は赤ん坊の頃、この組織に保護されてた。だからライディー社から狙われない対象といっても過言ではない」

「つまり私の手配書が出回らない理由って、その組織と館長が取引をしていたってことなの?」

「そこまではわからないけど、ギーディスと母さんは最初、カディヴィアにいた人物。母さんは僕を産んだ後、ライディー社に戻っ

てあの島を封鎖した。僕と兄貴は母さんを探し回った結果、あの島に辿り着いたってことになる」


 とんでもない情報で、ルシャンダは頭が沸騰しているし、ワイズもエリュウも知らない研究組織を聞いてぞっとしていた。


「お兄ちゃんとキアはそもそも、カディヴィアの一員ってことでいいのかな?」

「いや、保護されたけどカディヴィアの一員じゃない。ただ兄貴はお金を稼ぐために一応、カディヴィアの総長を任されている人でもある」


 目が飛び出てしまうほどの驚き情報で、すでに追いついていけない私たち。お兄ちゃんがそんな人だったとは知らず、だったらお兄ちゃんの命令でお母さんを助けてくれたのだろうか。


「って言っても兄貴、仕事ほったらかしにしすぎる癖があるからな。だから母さんを人質にとれば戻ってくるんじゃないかって、カディヴィアの人が動いたんだと思う」

「お兄ちゃんに会えないの?」

「しばらくは会えないって言われたから無理。まあカディヴィアの人が母さんを保護しているなら安心だよ。じゃっ僕、風呂入ってくる」


 言いたいことを言ったキアは行ってしまい、エリュウも整理がついていないのか行ってしまわれた。ライディー社にファンズマ、それから新しいカディヴィアという組織。

 カディヴィアという組織がなんの研究をしているのかは、ホームページに載っていた。カディヴィアも遺伝子の研究を行っている組織。私はカディヴィアに守られているということでいいんだよね。カディヴィアに行けばみんなも助かるのかなとその当初は思っていた。


 ◇


 よりによって俺の船にブルバとエワンが入っていたとは知らず、しかもキアからの情報だとファンズマの帝王であるジェバールがブルバとネフィラを襲ったという。幸い俺の団にいさせたカディヴィアの仲間をいれさせといて正解だった。

 妹は無事、カディヴィアに帰還したと報告も受けている。あそこは安全な場所だから妹には手出しはできないだろう。ブルバはリアによって傷は癒えたものの、とても怯え切っていた。エワンもせっかく兄であるエリュウと会えたんだろうが、部屋から一歩も出ないと聞く。ファンズマの帝王が出た以上、ライディー社は今まで以上に警備が固くなる。今のうちに施設内にいる子たちをカディヴィアに逃すのもありかもなと、歩いていたらティルが俺を待っていたようだ。


「逃走を手助けしたのはギーディス団長」

「どこに証拠があるんだよ。俺は何も手伝ってはいない」

「ギーディス団長はライディー社に入る前、ある組織にいたと館長から聞いた。その組織はライディー社が見つけられない、秘密の島を複数所持している。その一つをリアたちに渡したのでありませんか?」


 そこまで調べ尽くしているのかよと突っ込みたくなるところだが、俺をすでに敵視しているのは見え見えだった。館長にいつばれてもおかしくはないと動いてはいるが、先にティルから仕掛けられたら終わりのようなものだ。館長は俺を信頼し切っているから動ける。

 館長に報告される前に手を打っておきたいところだが、ティルは俺の言葉を信じない。そうとなれば一つ手を打っておく必要がある。


「それを調べるのもティルの役目だろ。それに島を探すのもいいが、ファンズマの帝王ジェバールが出たことにより、ヨウミが黙っちゃいねえぞ。ヨウミに奪われる前に先手を打っといたほうが身のためだ」


 ジェバールは以前からリアの能力を欲しているから、ヨウミはリアを執着している。リアの治癒能力とは別に違う能力があることを知っているからだ。それを知っているのはティル、そしてワイズしかいない。

 ティルは拳を作り、なぜそれを知っているという目つきで俺を睨んでいた。そりゃあ、幼少期から見ている俺たちにとっちゃ実物だったからだよ。今まで現れなかった能力を見せられた時の高ぶりは今も忘れはしない。

 ヨウミがリアに見せたあの姿がリアの能力を引き出した。リアはそれすら覚えていないだろうがあの日、ヨウミを殺害したことを。それを目撃したティルとワイズは能力を使いリアの暴走を止めたな。記憶を書き換える能力を持つ子に頼んでいたこともわかっている。


「そんなに睨まなくてもいいだろ。このことは上層部のみが知っている情報だ。ティルとワイズが止めている場面は俺ら父親が実際に見ていたことだからな」

「リアにこのことは」

「伝えてない。今も俺らの仕業だと思わせている」


 ティルはこのことを恐れリアを逃したんだと理解ができた。

 ティルは一礼して去って行き、なぜここに残ったのかもわかっちまう。それでもティル、本当にお前はそれでいいのかよとティルの背中を見届けた後、ノアと接触しに行くことにした。


 ◇


 僕の部屋に戻り、机にあったものを思いっきり床に落とし叫び出す。リアが僕の手に入っていないし、ワイズがリアといる姿を想像するだけで苛立ちが込み上げてくる。ワイズと僕の能力が逆だったら、リアのそばにずっといられたのは僕だった。

 リアに会いたい、声が聞きたいと床に落ちている書類をくしゃくしゃにしていたら、なんじゃとルマが様子を見にくる。


「えらいこっちゃ。何荒れとるんじゃ、全く」

「リアに会いたい。リアがいない生活なんて耐えきれない」


ペシっと叩かれルマが書類を片付けながら言われる。


「妾もずっと会いたい人ぐらいいるのじゃ。それがたとえ逃走者であっても、今は我慢するべきじゃろ」

「どれだけ探しても邪魔ばかり入るし、リアが怖がっているのも事実だ。向き合いたくても、またあの瞳でみられると辛すぎる」

「しゃあないじゃろ。昔と違う訓練を受けて情をコントロールできぬようされておるんじゃからな」


 この三年間、耐え切れると自信があったがやる気を出せなくなったのは、新聞に載っていた写真でやる気を失ったのもある。それはワイズとリアが手を握って品物をみている姿。

 三人でいた時はワイズではなく僕ばっか頼ってくれたリアが愛おしくてたまらなかった。何がなんでもリアのもとに行かなくちゃと、厳しい訓練も乗り越えていたのに、あんなのをみたら心が折れる。それにワイズから言われてたことがあった。


 俺、リアに告ろうと思う。断られるかもしれないけどさ。


 僕がいないからワイズは気持ちを伝え、リアも諦めてワイズを選んだんだろう。一度は失恋したから前に向かなくてはならないと前向きに動いていたが、リアと再会した時、まだ気持ちが残っていることに気がついた。

 こうなったら何がなんでもリアを取り返そうと動いても、邪魔ばかり入ってきてリアと接触することが少なくなってしまった。


「ルマ、僕」

「新しい女入れてみるか?そうしたら気が紛れるじゃろ?」

「リアがいい」

「ずこっ。そんなにリアがいいのなら、正直に告ればよかろう。怖いもなにもその想いは前々から持っていた想いじゃろ?リアはわかってくれるはずじゃ」


 それはわかってるけどさと、僕も資料を片付けていたらシフォンがどうされたんですかと慌てて駆けつけてくれる。ルマが言いそうになって、思わずルマの口を塞ぎなんでもないと伝えた。


「そう言えば館長様がティル様を呼んでくるよう申しつけられました」

「館長が?なんだろう。ルマ、資料頼むね」


 うむと黙々と資料を片付けてくれるルマで、僕はシフォンと一緒に館長室へと向かう。何か任務が渡されるのだろうかと館長室へ入った。ソファーには館長と知らない女の子とその両親が談笑している。


「館長、お呼びでしょうか?」

「あぁ。シフォンは下がっていい」

 

 シフォンが部屋から出ていき、座りなさいと館長の隣に座ることになった。


「紹介する。ニディアと言ってな。お前のフィアンセとなる子だ」

「初めまして、ニディアと申します」

「ちょっと待ってください。リアはどうするんですか」

「リアは私の道具だ。お前に与えたつもりはない。ニディアの両親はなーーー」


 そこから館長の言葉が耳に入らず、ただ聞き流すことしかできなくて、リアを連れ戻したら好きにしていいという条件は嘘だったことに気づいた。

 僕が今まで我慢して館長の言うことを聞いていたけれど、これは絶対に嫌だと言ったらどうなるか想像がつく。館長が話し終え、ニディアとご両親が帰った後、反論した。

「話が違う!リアを連れ戻したら、好きにしていいって言ったのにどうしてっ」


 館長からひっぱ叩かれ、怒られる。 


「さっきも伝えただろ。ニディアのご両親から多額な資金をいただいている。リアは所詮、俺の道具の娘だ。道具の娘も道具にすぎん。ファンズマを全滅させる武器がリアなのはお前もわかっているだろ!」

「ファンズマと和解を破る父さんはどうかしてる!それにこんなこと僕は望んでない!」


 久しぶりに父さんと言ったけれど、館長は僕の首を掴み父さんの能力が発動してしまった。


「お前は私の言うことだけを聞いていればいいんだ。あんな小娘のどこがいい?私が納得できる情報でもあるのか?私を失望させた小娘だぞ。お前は諦めが悪い子だが、あの小娘はお前を見捨てたようなものだ」

「っっ」


 言いたくても思うように声が出ず、違うと言いたかった。苦しくてもがくも手を離してくれない。リアのいいところはたくさんある。誰にでも優しく、いつもみんなのことを考え行動し、笑顔が素敵で、全ての行動が可愛かった。

 母さんはなんでこんな人と結ばれたんだろうと思ってしまうほどだ。


「あの小娘と結ばれたいというのならば、説得できる情報を持ってこい。期限はひと月だ。それまでに持ってこなければお前は俺に従ってもらう。いいな?」


 手が離されて呼吸を整えながらお辞儀をし、館長室を出た。もっと反論していたら僕じゃ僕でなくなっていたかもしれないと僕の部屋に入る。

 ひと月で情報を集めろと言われても、邪魔が入ってリアとちゃんと話せない。どうすればいいと悩んでいたら、リアと何日か一緒にいた人と島で暮らしていた人たちが帰ってきているはずだ。

 話を聞いてみるしかないと探しに行こうとしたら、レッツォが僕の部屋の前にいた。


「レッツォ、おかえーー」


 なぜかレッツォにひっぱ叩かれ今日で二度目とほおをさするとものすごい威圧感を出すレッツォ。僕何かしたかなと思い当たる節を思い出していると部屋に戻され、きっちり扉を閉められた。


「ティル、ばか」

「へ?」

「大馬鹿、阿呆。リアとワイズはずっとティルのこと探してた。今もだ。それなのに、なんでこうなってる?なぜ心が折れた?リアとワイズとの関係を知ったからか?迂生はずっとリアとティルが結ばれるだと思ってたから何も言わず見守っていた。それなのにさっきのはなんだ?」

「ちょっと、レッツォ。話が全く」


 レッツォはそっぽを向きほおを染めていて、余計にわからないのだがとレッツォのことを待っていると口が開く。


「迂生はその、リアが好きだったから。それでも迂生には程遠い存在だなって感じがしたから」


 ライバルが増えたとこっちも赤くなって、今思えばリアって結構人気だったことを思い出してしまう。レッツォは僕がいなかった三年間で何が起きたのかを教えてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ