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ブラッドカラー  作者: 福乃 吹風
11/195

11話 シガッグ街①

 翌日、コルアの車椅子を押すザズで、その隣を私は歩いていた。シガッグ街は工場がたくさんある街で、その影響か街並みは汚染されている。シガッグ街に住む人たちはほぼ作業着で過ごしていた。

 私たちも作業着っぽい格好で歩いているから警戒はされないだろう。


 キアが言うには、ここでコルアの足を奪った人物が現れると聞いているけれど、早く出会わないよね。そう考えていると視線を感じ、後ろを振り向くと誰もいなかった。


「リア、どうした?」


 ザズに呼ばれなんでもないと伝えながら歩いていると、叫び声が聞こえ、私たちは叫び声の方角へと急ぐ。行ってみるとそこにファンズマの一種であるダンガスが複数出現していた。

 ライディー騎士団もまだ来ていないことだし、ザズと協力して倒そうか考えているとあの感覚を感じる。確かにいると私はコルアの車椅子を引いた同時にダンガスに囲まれた。


「ふわぁ。よくみたらリアじゃん。元気?」

「…誰?」

「ひっどいじゃん。って言ってもあんま覚えてないか。自分はエピルス幹部、ノデッド。ここから離れたほうがいいよ。今、ヨウミがライディー騎士団とやり合ってっから」


 ノデッドという人と会ったことはないし、ヨウミがここにいるなら一度撤退はしたほうがいいのかもしれない。そう考えているとザズがノデッドに聞いた。


「なぜ、リアがいることをヨウミに知らせない?」


 んーと人差し指を頬に当て考え始めるも、ノデッドは欠伸をして背伸びをする。コルアの知り合いではないっぽいから、ここから離れるべきだとザズに伝えようとした時だった。

 コルアが自分で車椅子を押しているから、その先をみると凝視しているシフォンがいる。ただ私に気づいたシフォンは行ってしまわれた。


「待って!シフォン!」

「追っても無理だよ。シフォンは」

「あの時、助けたのにどうして」


 コルアとシフォンの関係性がわからずにいると、ルシャンダが無線で教えてくれる。


『リア、覚えてありますか?コルアとはぐれて大騒ぎになった時のこと。そこでシフォンとコルアは出会ってるであります』


 言われてみればコルアと行動していた私とワイズで、一度はぐれてその頃、ルシャンダはまだ慣れていないことも多かったから探すのに時間かかった。数週間後、探し回ってコルアと合流することができたんだっけ。

 

「あれいつもなら攻撃してくるシフォンなのに逃げてんじゃん。えっとあんたの名前は知らないけどさ、ヨウミに知らせたらやばいことになるから言わない」


 私の頭を撫でるノデッドは周りにいたダンガスが消えていく。


「どちらにせよ、ヨウミは自分からリアと会いたいだろうから今日会ったことは黙っとく。って言っても無線でバレバレなんだけどな」


 ノデッドの表情が笑顔ではなく苦笑いを作っており、まだ会いたくはないと思った。


「さてヨウミが暴走しそうだから、さっさとシフォンを追いかけたほうがいいじゃん。そこに君の足を奪ったやつもいるから」


 そう言ったノデッドは私から離れ行ってしまわれ、コルアはまだショックを受けているようだけれど、シフォンを追いかけることにする。



 どれくらい走っただろうか。あの人を生かしたのに、なぜこの場にいるのと久しぶりに息を切らしていた。ティル様が現在、ヨウミと接触しているから幹部を確保せよと指示をいただいているのに、余は逃げ出すだなんて。

 このままじゃ余はおそらく罰を受ける。会いたくはなかったと地べたに座り込んでいると、ぱこんと軽い拳骨をもらった。


「久しぶりに見たのう。そんなに凹まなくてもよかろう、シフォン」

「余はずっとあの人を騙してた。顔を合わせる資格なんてない」


 地面を見つめながらルマに告げると、ルマはしゃがんで近くにあった枝をとり絵を描きながら言う。


「仕方ないのじゃ。シフォンは潜入捜査で動いていたんじゃろ?あそこで伝えてしまったら、ばれてシフォンの命も危なかったんじゃろ?助けてくれた恩を仇で返すようなことはしていないんじゃからしっかりせえ」

「それでも余はあの人の足を奪わせてしまった」


 あの時、館長に全てを報告し、その後、仕事をしていたら切断の能力者である、ツァッセさんがあの人の足を持って館長と話している姿を見てしまった。能力を失ったあの人、コルアさんはあれ以来見かけず普通に生活していることを願っていたのに。


「何、メソメソしてんだ?」


 振り向くとそこにはツァッセさんが来ており、しかも大きなスーツケースを持っていた。棒キャンデーを加えながら余にスーツケースを渡す。


「館長命令、それを利用してザズを取り戻せだってさ。もしヘマなことをしたら、大好きなコルアさんを切断するよう命じられてるってわけだ。ちゃんとやれよ」

「シフォンが今までどれだけ辛い思いしてたか!」

「ルマ、いい…。あの時は未熟だったから、任務をきっちり果たせなかっただけだから。今度は失敗なんかしないと館長に告げといてくれますか?」

「ふうん。お手並み拝見とさせてもらおうか」


 これで問題を増やせば館長はもっとお怒りになるのは承知している。館長が抱えている案件はヨウミさんの件、それから奥様の件に、リア様の件の他にも複数抱えていらっしゃる。

 ここで余がしっかり任務を果たしておかなければ、ティル様のもとにいられなくなるのは嫌だから。


 ただ少し不安が大きい。コルアさんは余が普通の子として認識しているはず。ちゃんと向き合ってくれるのはわかってるけれど、まだ心の準備ができないと手を胸に当てた。ドクンドクンといつもより早く動く。


「お?ティルじゃ。ヨウミは?」

「消えたから撤退命令が出た。ツァッセさんはなぜこちらに?」

「シフォンを少し借りてくぜ。館長命令でザズを取り戻すから」


 ティル様は余の顔をみて、心配な表情をしながら余にある提案を持ち出した。


「もし、会いたくないのならルマに任せればいい。館長には僕が伝えとくから」


 いつもティル様は余やルマたちのことを一番に考え、嫌なことも全部引き受けてくれる。この人についていきたいと思えたのもそうだった。

 感謝を述べようとしたその時、コルアさんの声が聞こえ、ルマは余の姿になり、余はティル様と帰ることを選んだ。


 ◇


 ルシャンダに誘導してもらいながら、シフォンがいる場所へ行くも、一つルシャンダに言われていることがある。それは以前、ティルに成り済ましていた子だということ。それでもコルアはそれでも構わないと会うことにした。そこにコルアの足を奪った張本人がいるからだ。

 そこでザズが裏切るのかはまだ特定はできていなけれど、何かが起きたらワイズが来てくれる。


 到着するとスーツケースを持った偽物のシフォンと飴を食べている人が立っていた。


「シフォン…」


 コルアがシフォンの名前を呼んでも、偽シフォンは無言状態でいる。スーツケースの中にはおそらくコルアの足が入っているのだろう。それにしてもやっぱり違和感を感じる。コルアがここに来ることもわかっていたような感覚。

 すると飴を食べていたコルアの足を奪った人が喋り出す。


「取引、どうする?ザズ。コルアの足を返すかわりに、リアを引き渡してもらおうか」


 その言葉で偽シフォンが驚愕しており、私もコルアも混乱しているところザズが私を拘束した。


「悪いな、リア。それからワイズ」


 無線を取られその無線を壊すザズは拘束した私をあの人のところへ運びそうになった。そこにワイズが登場してザズは私を盾にする。


「どういうことだよ!」

「まんまと引っかかるお馬鹿さんが悪い。俺は緑遺伝子の団からティルがいる団に入団する予定だったんだよ。コルアの能力を復活させるために、俺は動いていた。ついでにリアを手土産にすればティルが喜ぶだろうなってな」

「まさか」

「今頃、島は大騒ぎになってるだろうけど、大丈夫か?」


 無線が壊されたから状況が読めないけれど、ワイズの表情が青ざめていき、島のみんなが危ないことを理解した。


「ワイズ!私はいいからコルアを連れて島に戻って!」

「だけど」

「いいから早く!」


 ワイズはここに残りたそうな雰囲気でも、仮にそっちにティルがいたとすれば能力を発動させる気だ。無効にできるのはワイズだけだし、ワイズはすぐ戻ると言いコルアを連れて島へ戻ってもらう。

 ライディー騎士団に連行されるのは嫌だけれど、みんなが無事でいてくれることを信じるしかないと思った矢先のことだった。


 どこからなのか水が溢れていきどんどんと水域が上がっていく。ザズは緑の遺伝子だから簡単に吸収できるはずなのに、上手くいっていないようだった。その影響でザズから離れることができたとしても、あの人と偽シフォンはスーツケースの上に立っている。

 逃げるとしても手錠がかかっているから、思うように泳げないと思っていたら、ノデッドともう一人が小舟に乗って現れた。


「やっぱりついてきて正解じゃん。あーヨウミ。リアは保護するけど裏切り野郎はどうする?うん、了解」


 無線でやり取りをしてるノデッドは乗っているもう一人の耳に囁くと蜂が大量に現れ三人を攻撃し始める。その間に私はノデッドに助けられ、小舟に乗せてもらった。

 様子が見れないぐらい大量の蜂が遠ざかっていき、三人から離れた後、段々と水が引いていき、小舟が停止する。手錠を外してくれて、お礼を言っていたら懐かしい声が聞こえ、私は咄嗟にノデッドの後ろに隠れた。


「そんなに警戒しなくてもよいではないか」

「いやいや、ヨウミ。今の姿見てみ。ファンズマの姿になってる」


 ノデッドに注意されているヨウミは自分が写っている姿を見て慌てて人間の姿に戻る。それでも昔のことを思い出してしまい震えが止まらないでいると、隣にいた子というより以前会った子で私に蝶々を見せてくれた。


「ノデッド、ハディック、まだライディー騎士団がいるようだ。別の場所で話そう。リア、危害は与えないから安心して」


 そう言われてもと思いつつも無線がないし、リングを触れても壊れてしまっているのか反応がない。渋々、ヨウミたちについて行くことになった。


 シガッグ街の南東にあるこぢんまりとした店に入ると、エピルスの人たちがいてヨウミを慕っている。奥の部屋へと行きソファーに座らせてもらい、向かいにヨウミとノデッドが座った。


「ここはエピルスのたまり場になってるから安心して。さて、どこから話そうか」

「あの件は話しておく必要あるんじゃん?」

「あれね。あれというのはティルのことだ。リアの兄であるノアに言われ、ティルを止めてほしいとね。そうしないとティルがワイズを殺害するらしい」

「ティルがワイズを殺すはずがない。信じたくないよ」


 信じたくはないし、ティルがワイズを殺すだなんてあんまりだよ。ぎゅっとネックレスを掴む。


「これは本当なんだ。ノアがずっと帰って来ないのも、ワイズの死が関係するからだ。同じ未来が起きないよう、ワイズが生きる未来を探し続けてる」

「…じゃあ私がライディー騎士団に戻れば」

「ノアがそれを望んでいるわけないじゃん。それに島のみんなはどうする?」


 ヨウミとノデッドに言われてしまい、動揺を隠しきれないでいると、ヨウミさんと聞き覚えのある声が聞こえた。


「あれ?リア、なんでここにいるんすか?え?まさかノアに散々怒られてたのに、ヨウミさん勝手に連れ出してないっすよね?」

「それは言わなくていい。それで島は?」

「ギーディスの団だったから大丈夫なはずっすよ。念の為、脅しは入れといたっす。今頃、リア探しでルシャンダがハッキングしている頃っすよ」


 ギーディスの団だとしてもその場にギーディスがいなかったら、みんなが危ないような気もする。本当にこの人たちを信用していいのだろうかと考えていたらドアベルが鳴った。

 誰だろうと思っているとギーディスの声が聞こえ、ヨウミが部屋から出ていき数秒後、お迎えだよと私を呼んだ。部屋から出るとギーディスが不機嫌な顔をしているも、私の手を取って店を後にする。


「ギーディス」

「変なことされてないか?」

「大丈夫。それより、聞いちゃったの…。ワイズが」

「俺も知ってる。直接言われた時は言葉を失ったけどな。今はノアを信じて今できることをするだけだ。それと」


 耳元で言われ衝撃なことを教えてくれたギーディスは、にっと笑い周辺を見て、ルシャンダに合図を送っているのかゲートが開きワイズが顔を出した。


「親父、ありがと」


 照れくさそうな表情をしながらワイズが言い、ギーディスはワイズの頭を撫でて私の背中を押す。頭を下げて私は島の中へと入った。


「何もされてない?」

「うん、ヨウミたちに会ったけど、何もされてない。それよりギーディスから聞いたの」

「見つかった時は正直驚いたけど、親父の団は大量の食料とか運んでくれただけだ。親父はルシャンダにゲートを開かして、リアの居場所突き止めてくれたよ」

「ギーディスの団、元々私たちを捕まえる団じゃないって聞いた時はびっくりしちゃったけどね。それと教えてくれたんでしょ?新しい島」

「今、ルシャンダが本当なのか調べてもらってる最中だよ。本当に名も知られていない島なら、そこに住もう」


 住んでいる島がライディー騎士団にばれてしまった以上、違う場所に移転する必要があったからよかったのかもしれない。コルアはショックで寝込んでいるらしく、様子を見に行った。

 ザズの狙いがまさか私だなんて思ってもいなかったことだし、私と引き換えにコルアの能力を戻すと言ってた。つまりコルアも、私もライディー騎士団に捕まるところだったってことになる。


 コルアはシフォンとザズの裏切りでショックを受け、寝ているから部屋から出ようとすると、呼ばれコルアのベッドに座った。 

 

「イルルの占い、聞いたの。そしたらザズは元々緑遺伝子の団で、潜入捜査で島に来ていたことがわかった。ルシャンダも相当ショックを受けてたわ」

「入れてしまったルシャンダを責めるつもりはないし、久しぶりに会えたことはかわりないよ。それより、シフォンのこと教えてくれる?」


 コルアはゆっくりと体を起こし、足が切断される前のことを私に教えてくれた。


 ◇


 あたしの足が切断する前に起きた事件に、遭遇したあたしはある少年と出会った。名はシフォンで、取引現場を目撃してしまったことにより、ある組織から逃げていたらしい。

 てっきりある組織というのはライディー騎士団のことかと思えば全く別の組織だった。その当初のシフォンは遺伝子マークがなかったから、一般の子どもだと認識して逃走を手伝ってあげることに。


「シフォンのお家は?」

「ワガラ都市」


 よりによってシフォンが住む家がワガラ都市だなんて信じたくはなかった。ワガラ都市は無論、ライディー社本部がある場所だからだ。

 それでもシフォンを一人にさせるわけにはいかないと判断し、まずは追っ手が来ないように仕留めておかなければならない。


「よし、ある組織のところまで案内してもらってもいい?安全に帰れるようにしてあげるから」

「ある組織って言っても、ファンズマの取引だった」


 おっとそこでファンズマがいるだなんて、だとすればライディー騎士団が手を打つはずだからライディー騎士団に任せるか。シフォンに聞いたとしても、ファンズマの種類はさすがに把握してなさそうだな。

 考えていたらファンズマが追って来てしまい、あたしはシフォンを抱っこし能力を使う。これくらい走ればしばらく追手は来ないだろうと、息を整えているとシフォンは目がぐるぐる状態となっていた。


 シフォンが目を覚ますまで、周囲を警戒しながらルシャンダに情報を与えつつ、リアたちの合流場所をワガラ都市にできないか聞いてもらう。

 待っていたら先にシフォンが目を覚まし、ゆっくりと起こしてあげる。


「あれ?余は…」

「ごめんね。実はあたし、能力者なの。能力が瞬間移動で、さっきの追手と距離離したから大丈夫」

「能力者初めて見た」


 何も知られていなくてよかったとほっとし、ワイズの声が聞こえワガラ都市に向かうから、そっちも気をつけてと言われ、ワガラ都市に向かうことになった。

 ワガラ都市には少し距離があるため、村や町で寝泊まりして、ようやくワガラ都市に到着。さすがにここは手配書が多く、あたしの手配書も貼られてある。さすがにきついとあたしとシフォンは路地裏に入り、どうするか考えていた。


「思うように動けなくてごめんね」

「いえ。余は大丈夫。ここまでで大丈夫です。ここからは一人で帰れます」

「いいの。家まで送らせて」


 どのみち、リアとワイズと合流できなければ帰ることもできないと様子を伺い、行こうとした時のこと。ファンズマと出会してしまい、やるしかないかとナイフを構える。ファンズマの一種であるシャーガで、あたしとの相性は抜群でよかった。

 すんなりとシャーガを倒し、狙いはやっぱりシフォンだったみたい。


「これで一先ず、シフォン?シフォン!」


 どれだけ叫んでもシフォンの姿がなく、まさかと倒したシャーガに質問した。


「あの子はどこへ行ったの?」

「し…らね…」


 そこでシャーガは気を失ってしまい、もしかして倒している隙に捕まったんじゃないかと焦った。恐れていたとしても探し回っていると無事にご両親と再会できている場面が見れてリアたちが来るのを待った。

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