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ブラッドカラー  作者: 福乃 吹風
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1話 島生活と再会

 真っ黒い雲に覆われ遠雷が鳴り響き、今でも雨が降り注ぐような中、少人数が同じところを一斉に走っていた。まるでどこかから脱出し逃走しているように何度も後ろを振り向いている。

 ぽつ、ぽつっと降り始め次第に雨が強くなり、一番年齢の下であろう子が転んでしまった。それに気がついた少女はその子を立たせていると懐中電灯の光が向かってくる。

 少女はその子を抱っこしみんなが逃げた先へと急いだ。


 船場に到着しみんなが船に乗っている最中に、見つかってしまい一人の少年が船から降りた。察しした少女は止めに入る。


「ティル、お願い!一緒に逃げよう!」

「ごめん、みんなを逃したい。リア、ワイズ、みんなのこと頼むよ」


 ティルという少年は最後の子を船に乗せてあげ、ワイズは船を出港させた。一人残されたティルは船を見つつ正面からくる大人たちに向かって発する。


「止まれ!」


 すると大人たちは固まり、儚い笑みを浮かべさせながら大人たちに言い放つ。


「どんな手をかけようとも、僕の家族は絶対に探させない!例えワイズの力を持っていたとしてもだ!」


 固まっていた大人たちが次々と動き、ティルは確保され拘束されてしまった。上品のスーツを着た男がティルの前に立つ。


「よくも逃がしてくれたな、ティル」

「館長、どんな手を使われても、僕は絶対にリアたちを守る」

「今はな。連れて行け」


 館長の顔が何か企んでいようとも、絶対に守ってみせる。

 家族であり心友であるワイズ、みんなのこと、そしてリアを頼むよ。いつかみんなのところに絶対に行くから。 





 船を出港させ小さな無人島へと辿り着いたリアたちは船から降りる。全員降りたのを確認し、船となっていた大人が元へと戻り無人島暮らしが始まった。



 

 三年後…




 ザーザーと波の音が聞こえ、空を見上げると雲一つない空にカモメたちが飛んでいた。今日もまた平凡な一日が送れそうとサンダルを手に持ったまま裸足で浜辺を歩く。


 私たちがあの場所を離れて三年の年月を経てずっと思っていた。私も残ればよかったという後悔、そしてみんなは無人島暮らしが飽きてしまい、ルシャンダの力で家族がバラバラになってしまった。

 密かに暮らせているのか、それとも組織に連行されてしまったんじゃないかと不安が大きくなるばかり。


 私たちは本当の家族ではないけれど、施設に集められた被験体で能力を授かった。最初は嬉しかったけど、出かけることも許されず、いつも能力を試すための実験が続きある化け物退治をしていた。

 それが嫌になって仲間をかき集め、ようやく脱出できたと思えばこの有様になっちゃった。これでよかったのか、それとも違う道があったんじゃないかと考えてしまう。


 ポンッと頭を叩かれ振り向くとワイズが羽織を持ってて、私にかけてくれた。


「朝からそんな顔すんなって。ティルなら大丈夫。あいつは絶対に逃げ切ってるはずだ」

「でも三年経ってもティルはどこにもいなかったんだよ。館長に捕まってたなら、もう二度と会えない」

「信じるしかないよ。今日はあそこ、また行くんだろ?俺も一緒に行くよ」

「ありがとう、ワイズ。みんな起こさなくても起きちゃうね」


 恒例の音楽がこの島中に流れワイズが手を差し伸べ、その手を掴み自宅へと戻る。自宅へ入ってみると朝ですという放送が流れ、一斉に扉が開き自分の持ち場へと向かっていく。

 私とワイズはモニター室へ入ると、ルシャンダは満足した顔で敬礼しながら朝の挨拶をしてくれるのが日課だ。


「リア、ワイズ、おはようであります!本日は敵さんたちが昨日と比べて少なめであるようですが、くれぐれも気をつけてくださいであります」

「おはよう、ルシャンダ。思ってたより少なめのは意外だな」


 モニターを確認してみるといつもならもう少し組織の人間が歩いているのに、今回だけはなぜか少ないことがわかる。


「諦めがついたようじゃないよね。それに私たちが逃げた後でもあれは未だに出現してることが多い。急にどうしたんだろう」

「まあそこも含めてティルを探しに行こう。ルシャンダはいつも通りにゲートを開けて俺らを誘導して」

「ラジャーであります!」


 何か違和感を感じるもモニター室を後にして、食堂へと向かった。

 最初は釣りをしてお魚をずっと食べていたけれど、畑を作り野菜が育つようになり、いろんな料理ができる。ただ狩りをしようと考えていたけれどこの無人島には動物がいなかった。自然溢れる無人島でも動物も虫もいないのがとても不思議に感じる。


 食堂ではすでに私たちを待っていたかのように着席をして私たちも席に座り手を合わせる。


「ティルがいてくれたことで私たちは逃げ切れたその思いを絶対に忘れずに。そしてティルとこの島から出たみんなが無事でいることを願って。いただきます」


 いただきますというみんなの声を聞きながら、朝食を頬張った。

 みんな美味しそうに食べながら、談笑してこれがずっと続いてほしい。何も恐れずに平和に暮らせる日がきっと訪れると信じている。今はまだ未完成の家族だから、早くティルを見つけなくちゃ。


 ご馳走様と伝え食器を片付けた後、私は一足先に自室へと入って旅路の支度をしていると一番下のソアレが入ってくる。ソアレの手が震えており、次第に足も震え始めていつもの症状が起きると私はソアレを優しく包んだ。

 大丈夫、大丈夫だよと頭を撫でて上げると震えが収まり行かないでと言われてしまう。


「ソアレ、ちゃんと帰ってくるから。新しい本も買って来てあげる。だからみんなの言うことちゃんと聞くんだよ」

「でもっリアがいないと発動しちゃう」


 ソアレの能力は誰もが知っている。ソアレは不安定になると爆発して死の危険性が訪れる。それでも私たちはソアレを連れて逃げた理由は能力を消す方法を探すため。もしあそこにいたなら確実にソアレは処分されていたから。

 私はいつも通りにソアレのおでこをくっつけ私はソアレの能力を吸収する。私の能力はなぜか特殊で他人の能力を吸収でき、治癒の力を持っている。

 これでしばらくは大丈夫かなと離れるとワイズがノックして行くぞと言われたから、鞄を背負いゲート部屋へと向かう。


「ソアレ、大丈夫か?」

「吸収したからしばらく、発動はしないと思うよ」

「なら大丈夫か。今日こそティルが見つかれば作戦立てられる。それに新しい能力者が見つかるかもしれないしな」


 ワイズが言った通り、ここ最近新しい能力者を見つけることが増えていた。なぜなのかはわからないけど、組織より先に助けてこの島に居させてる。

 新しい人たちから情報をもらった時、同じ組織から脱出してひっそり暮らしていたことが判明。ただすぐ見つかることが多く転々としていたところ、私たちと遭遇しこの島でゆっくり生活ができていると言ってたな。おかげで私とワイズはティル探しに行ける喜びに感謝しなければならない。


 ゲート部屋に到着しルシャンダがゲートを開けてくれて、私とワイズはローブについているフードを被りながらゲートの先へと入った。

 見慣れた景色であっても油断はせず、ティルを探す。ここは何度も来て思い出の街でもあるから、もしかしたらいるんじゃないかと私とワイズは考えていた。


 それにしても美味しそうな出店がたくさんあって、思わず足を止めちゃいそうだな。観光客も多いから人混みに入りつつ、ティルがいないか探していると組織の者が目の前を歩いていて物陰に隠れる。


「ルシャンダ、どうなってんだよ」

『ごめんなのであります。ゲートを開けた瞬間と同時に現れた模様であります!』

「気づかれたとかじゃないよね?」

『わからないであります!とにかくその場から離れて、右に進んでくださいであります!』


 了解と伝えて私はルシャンダの誘導により、組織から離れ違う道を歩み始める。人混みだとはいえ、こんな近くに組織の者が現れるだなんて、よっぽどのことがない限り出会さない。それにルシャンダはいつも状況を見てからゲートを開けてくれている。

 となるともしかしたら組織内で、能力者を探す能力者がいたら間違いなく捕まる可能性だって出てくるはず。


 ここは慎重に動かないとなと歩いていたら、逃走者よとなぜか叫ばれワイズは小声で合流しようとワイズが走る。逃走者の紙が貼られているのはわかっていた。

 だけど唯一、私だけの顔は晒されていない理由が未だにわからない。私は観光者風に歩み合流地点へと目指す。


『相変わらずワイズはすぐ見つかりますであります…』

「しょうがないよ。張り紙のせいで逃走者の顔がばれているんだもん」

『そ、…あります』

「ルシャンダ?ルシャンダ聞こえない」


 通信妨害されているのと不安になり私はすぐさま合流地点へと急ぐ。ワイズと走っていると出店の店主に呼び止められた。


「お嬢ちゃん、見ていかないか?」


 チラッと見ると可愛らしいアクセサリーが並んでいても、ワイズにもしものことがあったらと戸惑う。でもここで不審に思われたらと思い近くへ寄って品物を見ていった。

 可愛いけれど所持金は少なく、すぐ立ち去ろうとしたその時のこと。隣でこれくださいと懐かしい声に、私は思わず声の主の方へ顔を向けた。

 やっと、やっと会えたと私は嬉しさのあまり抱きついてしまう。


「ティルっ」

「探させちゃってごめんね、リア」

「どこにいたの?私たちずっと探してたんだからっ」

「ちゃんと話す」


 ティルから離れティルは買ったネックレスを私につけ店主がほっこりした笑みを浮かべた。照れながらありがとうとティルに伝え、思い出の場所で話を聞くことに。

 

 温かい飲み物を飲みながら、ティルがこう告げる。

 

「みんなが行った日、僕はすぐ組織に捕まって何日も閉じ込められてた。でもある日、新しい人たちが増えて同じことが起きるからと再び脱出に成功したんだ」

「じゃあ島に行こう。みんなもティルに会いたがってる」

「僕もみんなにいや、リアに会いたくてずっと捜してたんだ」


 ティルが私の頬に触れその手を握り、私もだよとティルに近づこうとしようとしたら、いきなりティルが距離を離した。私とティルの間に見知らぬ少年がいる。


「汚い手で姉貴に触れんな」

「再会の邪魔をしないでもらえる?リアは僕のところに来てもらわなきゃならない」

「は?何言ってんの?姉貴をてめえに渡すもんか。館長の息子であり、今はえっとなんだっけ?あぁそうそう、ライディー騎士団のツートップであるティル様」

「え…」


 どう言うことなのと困惑していたらライディー騎士団に囲まれてしまった。ティルは私に向けて微笑んだまま。


「ちっ面倒なやつら呼んじゃって最低だな」

「君が邪魔をするからだよ。君が来なければリアは僕一人で騎士団に連れていけた。正体がばれちゃったなら奪うまで。二人とも動かないで」


 ティルの能力にかかり体が動かずワイズの能力、少し吸収しておけばよかったとティルがこっちに来ようとした時だった。後ろからライディー騎士団がやられる声が聞こえワイズが私に触れると体が動く。


「ティル、どういうつもりだよ!」

「ワイズが来たから今回は見逃してあげる。次会った時は全力でリアを返してもらうから。リア、会えてよかったよ」

「ティル、待って!」


 手を伸ばそうともワイズが行くなと止められ、ティルはライディー騎士団を連れて去ってしまった。いなくなったことで私を助けてくれた少年は苛立ち近くにあったものを蹴飛ばす。


「あの…」

「…助けてくれてありがとう。話したいことがある。ゲートを出せ」

「お前、言い方が」

「まあまあ。ルシャンダ、ゲートをお願い」


 あいあいさーという声に無線が復旧していてよかった。きっとティルの仲間がやったんだと理解した上で島に戻った。

 

「お帰りであります!新しい住居さんでありますか?」

「僕は先住民だ。お前たちが後から来ただけ。こっからはまず姉貴と二人きりで話したい。それから全員に伝える。それでいいか?」

「なんか納得いかねえけどな。まあリアを助けてくれたからなんか理由があるんだろう。何かあったら言えよ」

「わかった。それでどこで話す?」


 ついて来てと行ってしまわれ、少年の後を追いかけて行く。家を出てまだ何も予定していない場所へと歩いた。無人島にある山を多少登り、少年が地面を叩くと地面から地下に繋がる通路が現れる。松明を持ちこっちと言われて、下へ降りると同時に扉がしまった。

 三年もいたけど全然気づかなかったなと下へ降りると、少年は壁に手をつける。すると壁が開き、秘密研究所らしい施設に到着。中に入り歩きながら少年は私に教えてくれた。


「ここは僕たちが生まれた場所でもあるらしい。だけどある日突然と僕たちは引き離された。それがなんだかわかる?」

「ライディー騎士団?」

「そう。ライディー騎士団によって一度は施設へと赤子を送り、成長したら組織へ連れてって姉貴たちが経験したことが行われる。母さんはそれを阻止するためにここを封鎖した」

「どうしてそんなことを?」

「そこはみんながいるところで話す。それより、まずは姉貴の力を借りたい」


 なんだろうと研究所の一室に案内してもらうと、そこにはベッドが置かれ、いろんな点滴をつけている少女がいた。


「母さん、連れて来たよ」

「え?この子がお母さん?」

「びっくりするのはわかる。でも本当なんだ。僕も最初言われた時は本当に驚いた。母さんが復活すればあの組織を潰すこともできる。お願い、姉貴。母さんを助けてあげて」


 つぶらな瞳をされまだ正直考えられないけれど、少年が言うお母さんの手を握り治癒力を当てるも目を覚ます様子がない。


「やっぱり姉貴の力でもその呪いは消せないのか」

「呪い?」

「うん。ティルの親父が呪いをかけたらしい。いろんな治療をしても母さんは目覚めないままこの島を守り続けてる。もし母さんが死んだらこの島がばれる可能性が高い」

「でもどうしてすぐに教えてくれなかったの?」


 少年は悔しそうな表情を浮かべながら伝えてくれる。


「それもみんながいる時に伝える。ここはまだ誰にも教えないでほしい。僕はまだみんなを信用できてないから。もしかするとここを知るためにスパイがいる可能性もある。姉貴は信頼してるからここに連れて来ただけ」

「わかった。このことは誰にも言わない」


 何か治療法があれば助け出せるかもしれないと、この場から離れみんなのところへと戻った。

 ワイズが食堂にみんなをかき集めてくれており、少年は堂々とワイズが使う机に座って喋り出す。


「僕はキア。お前らが来る前からずっとここにいた先住民。様子を伺って僕は表に出てきたとも言える。僕の能力は透明人間」


 すっと姿を消しみんなはどこへ行ったのとキョロキョロして、声だけが聞こえる。 


「みんなの体の一部に遺伝子マークがあるのは知ってるよね?」


 姿を現しワイズが使う机にはおらず、みんなの中心に立っていた。

 確かにそれぞれ遺伝子マークはついている。ただ七色に振り分けられているのも何か訳があるのかな。

「遺伝子マークは前からみんな持ってるけど?」

「色は七つあるのは知ってる?色によって整列してくれると嬉しいんだけど」


 私の遺伝子マークの色はみんなと違うけど、どうしたらいいんだろうかと悩んでいたら、姉貴は僕の隣と言われてしまった。渋々少年の隣に立つ。

 ワイズは赤でルシャンダは黄色とそれぞれ色分けに並んでもらい着席してもらう。


「本来ならば七色が多い。だけど姉貴や僕は白」

「え?ちょっと待った。俺たちは親に捨てられて施設で育ったんぞ」

「それは真っ赤の嘘だ。施設もライディー騎士団には変わりない。赤子になった子たちを次々に施設へと移し、嘘を子供たちに言い聞かせていた。しかも色で分かれてたんじゃない?」


 言われてみればそうかもしれない。私とティルは別格だったけどワイズの遺伝子マークの赤がみんなについていた。大きくなって騎士団に連れて行かれてそこからは散らばっていたっけ。


「色そのものは同じ人の遺伝子によって作られたもの。だから同じ色を持つのは家族同然とも言える」

「色に分けた理由は家族そのものだから?」

「それも言えるけど、本題はこっから。七色の意味には化け物と繋がってる。例えばワイズの場合、木属性の化け物を退治するよう命じられなかった?」


 ワイズが考え始めみんなも心当たりあるような仕草を取り始める。私は常にティルとワイズと一緒だったし、何かあるたびにみんなの力を分けてもらってたから考えもしなかった。

 キアはみんなが考える仕草を見つつ、話を続ける。


「僕らはその化け物を退治するための道具として生まれてきた存在。だから常に化け物たちに狙われる」

「ストップ」


 突然とワイズがキアにストップをかけ、キアは近くにあった机に座りながら何と問う。


「俺たちは化け物でもライディー騎士団にも狙われるケースは多い。ただずっと気になってた。なぜリアだけは襲われないんだ?」


 ワイズが質問する言葉にキアは口ずさみ沈黙が走る。

 私もそれは気になっていた部分でもある。私はなぜみんなと別格なのか。なぜ今まで私だけ化け物やライディー騎士団にも狙われなかったのか。

 まだ言いたくない表情を出しているも、いいよね兄貴と胸に手を当てて少年は私の顔を見て答えた。


「姉貴と僕、それからもう一人兄貴がいる。僕ら三人はあいつの実子だからなんだよ」


 ざわざわとみんなが動揺をし始め、あいつとは恐らく館長の実子。いやでも待って。だとしたらとキアに聞いてみる。


「キア、なら私とティルは実の家族?」

「これも伝えて置かなければならない。ティルと僕らは異母兄弟。ティルはあいつの奥さんの子で、僕らはあいつが道具として見ていない母さんの子ってことになるかな」


 その言葉でみんなは愕然としていて、私もまだ信じられないことに言葉を失う。

 すると何かを察したのか、いきなりキアは立ち上がって窓を開け耳を澄ましていた。


「この音……」

「キア?」


 呼びかけると窓を閉めなんでもないと言いながら、また机の上に座り語り始める。


「まあ混乱はあるだろうけど、これが真実。それと」


 キアが言いかけそうになった時にワイズがキアの手を握って首を横に振り、あのことはまだみんなには伝えない方が良さそうだよね。

 

「じゃあティルが戻って来ないのは家族と一緒にいるからでありますか?」


 唐突のルシャンダの問いに、キアは濁しつつそうなるかなと答えた。みんなはその言葉に落ち込み、下の子供たちはティルと泣いてしまう。ソアレは目一杯泣きたい気持ちでもグッと堪えていて、私はソアレをそっと抱きしめてあげる。

 すると私が来たことで私の服を掴み、ティルに会いたいよと泣いてしまった。


 私たちより家族を選んだと認識させ、これから先、みんながティルを嫌うことになってしまうんじゃないかと恐れる。けれど今は泣いてもいいよねと私も堪えていた涙を流した。


 ◆


 ライディー騎士団本部に戻り、館長に報告後が終え、司令室へと足を運んだ。あちこちには多くのモニターがあり逃走者がいるかを見ている。

 リアたちと逃げた時は三十七人だけど、誰一人見つけられてはいない。そして違う場所で逃走者が発生し、ざっと見て百人弱の逃走者がいる。


 それにしても今日は驚いた。まさかまだ生きていたとは思いもよらない。腹違いのキアが現れた時点で館長の勝ちだ。すでに仕組ませているから、もう時期館長が探していた道具を見つけられる。

 

 モニターを見ていたら、僕の仲間がやって来て新たな任務が出たのだろうと司令室を後にした。


「残念じゃったなぁ。後もう少しでティルの宝物手に入ったのにー」

「あの演技はなかなかだったよ、ルマ」

「ティルに褒められたのじゃー」


 褒めたら嬉しそうにはしゃぎ回るルマは変身能力者。僕になって誘導してもらった。恐らくだがキアも僕らの仲間を既に把握していたとしても、話をうまく合わせた理由は僕が敵だと認識させたかったからなのだろう。

 そうすることでリアは僕から離れ警戒を抱かせるつもりらしいが、そうはさせない。今度こそ失敗は許すものか。


「次の逃走者追跡は誰?」

「こちらになります」

 

 ありがとうと伝えつつ、歩きながら書類を見ていった。

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