リハビリを始める
翌日朝食の後、若い男が病室に来て、
「今日からリハビリをする理学療法士の担当です」と笑顔で挨拶され、感じのいい話しやすそうな人だなと思った。
身体の動きのチェックをした後、ベッドに横になって動かしにくい箇所のマッサージを始めた。
「昨日、見てくれた人とは違うのですね」
「はい。松長さんのリハビリは理学療法、作業療法、言語聴覚の3つあって、毎日3つのリハビリをしてもらいます。
それぞれのリハビリに担当がいてるのですが、土、日、祭日に関係なくリハビリがあり、スタッフには週休2日制と有給があるので、その日によってリハビリをする人が変わります」
「へぇ、そうなのですか」
「はい。でも各自の担当がいて見ているので安心して下さい」と話をしてくれ、
リハビリが終わり、病室から出て行った。
暫らくしてドアをノックする音が聞こえて返事をすると、日本人ではないような若い女子が入って来て、
「作業療法の担当です」と、挨拶をされ「リハビリ室に行きます」と言われて、ついて行った。
部屋を出て少し左に行き右に曲がると左にナースステーションがあり、7,8人の車椅子に乗っている人達が、ナースステーションの前に車椅子に乗ったままいて、
右側には幾つか大部屋があり、そこを越えて行くと左側にリハビリ室と書いている広い部屋があって、中に入った。
中に入ると黒色の細長いベッドが幾つもあって、数人の人が横になってマッサージを受けたり、空いているスペースでスクワットやテーブルで手を動かすリハビリなどをしていた。
空いているベッドを指さし「横になって下さい」と言われ、横になり動かしにくい所や痛い所をチェックした後、そこのマッサージを始めた。
ナースステーションの前に車椅子で居た人達の事が気になって、その人達の事を聞くと、
バカにしたように、
「あの人達は高次脳機能障害があるから、変な行動をしないか見張られている。
看護師達も忙しいのに」と、嫌味な顔をしながらため息を付き、
「本当に大変だよ。それから私は韓国人だけど日本には5年以上いているから日本語は大丈夫で、本の翻訳もしてるから」
「え、本の翻訳。凄いですね、どんな本ですか」
「医学書の。難しい言葉が出てくるから調べながらだけどお金も出るし、安いけど。ここの給料が安いから」と、うっとうしそうに話し。周りを見渡した後、
「私は日本の公立大学を卒業して、ここにいてる。
専門学校や私立の大学を卒業している人達より頭がいいから、何か聞きたい事や分からない事があったら他の人に聞くんじゃなくて、私に聞いてくれたらいいから」と言われ、妹が大学受験をした事を思い返した。
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「私立大学の医学部は凄くお金も掛かるし、受験生が女子や、浪人している人の年齢によっての差別もあると言われているし、コネや寄付金なんかのやり取りで点数にゲタを履かせるって言う噂もあるから受けたくない」と言っていて、
国公立大学の何処の大学を受験出来るかを決めるテスト(共通テスト)では良い成績を取っていて、有名大学の医学部を受験する事が出来たが
「万が一落ちて浪人するのは嫌だし、何処の大学を卒業しても国家試験を合格すれば医者になれる。それに医者になってからも大学院に言って勉強しないと行けないと思っているから、有名大学に行きたいと思ったら、そこの大学院に行けばいいと思ってる。
今は国公立大学の医学部だったら何処の大学でもいいから確実に合格できそうな所を受けるよ」と言っていた。
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韓国から日本に来て、日本語を勉強して公立大学を出ているって、凄いなと思い信頼出来ると思った。
リハビリが終わって病室に戻りパソコンを開いて、今いている病院を検索した。
ホームページを見ると脳神経内科やリハビリテーション科はあるが脳神経外科は無く少し不安になって、今度あの作業療法士に聞いて見ようと思いながら、担当医を検索すると大学院生と書いていた。
手術をした国立脳医療センターを検索し、主治医や見てくれた医者達のプロフィールを見た後、もやもや病に付いて書いているページを開いた。
治療の展開や手術の実績などを見て行き、モヤモヤ病には虚血型と出血型があると書いていて、虚血型は脳梗塞のリスクが高くなり、出血型モヤモヤ病は1度出血をすると毎年7%出血する確率が上がっていくと書いている記事を見つけ、その記事を何度か読み返しながら翼と妹の態度が不自然だったのは、この事をきっと知っているのだろうと思った。
記事を読み続け、子供のもやもや病の症状を見ると頭痛があって眠ると治る。リコーダーやハーモニカの演奏などによる過呼吸が引き金となって症状が出る事が多い。と書かれていて、子供の頃の事を振り返り、この事は自分の子供の頃にあてはまっていると思った。
昼食を食べて暫くすると、若い背の高い女子が来て「言語療法士です」と、簡単な挨拶をして「1階下の階のリハビリ室に行きます」と言われ、向かった。
エレベーターを降りて少し歩くと、右側に大きな部屋があって多くの子供たちがリハビリをしている様に見え、そこを越えると両側に個室があり、通路の奥に長椅子が幾つかあった。
左側の奥から2番目の個室に入り、幾つかの質問をされた後、少し動揺をした様子で、
「少し待っていて下さい」と言って部屋から出て行き、年配の男性と戻ってきて、
リハビリのやり方を年配の人に教わっているように見え、この人で大丈夫なのだろうかと少し不安になった。
翌日の作業療法のリハビリで言語療法士の事を話すと、
バカにしたように笑い「やっぱり私立大学や専門学校を卒業した人達はレベルが低い。何でも私に相談して」と言われ、
「昨日、ネットでここの病院の事を検索したのですが脳神経外科の医者がいてないようで、もしも何かあったら脳神経外科のある病院に搬送されるのですか」
「ここの病院は脳神経外科の外来はないけど、入院患者の為だけに脳神経外科の医者は沢山いてる。松長さんの主治医も脳外科の医者だから大丈夫です」と言われ、
リハビリが終わってからもう1度パソコンを開いて検索したが、ホームページ上には脳神経外科医はいなかった。
翌日の昼食後に、不愛想で態度の悪い中年の女の人が来て「高次脳機能障害の検査をします」と言われ、
個室に向かい、一般常識的な簡単な検査をいろいろ受けたが、すごく疲れた。




