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愛した君への最初で最後の手紙  作者: 幸(ゆき)
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それぞれの道

 翌週にお見舞いに行き、ノックして部屋に入ると、中年の背の高いやせ型の男と話をしていた。

 

 田中さんがこっちを向いて、

「今、弁護士と話をしていて、もうすぐ終わるから椅子に座って待っていてくれ」と言われ、


 ベッドの前にあった椅子を隅に持って行って、座った。


 直ぐに弁護士が、「そう言う事で」と話し、

 田中さんが「分かりました。よろしくお願いします」と言い、弁護士が帰っていった。


 座っていた椅子をベッドの前に持って行き、座りなおしてから、


「事故の事ですか」


「そうだ」


「父親が交通事故で死んで、裁判をして大変だったので」と、昔あった事を話した。

 

 時折頷きながら聞いてくれ、


「大変な事があったんだな。

俺の場合は、自分入っていた保険に弁護士特約を付けていたから、


『300万までは弁護士費用が出るから、着手金などは払わなくても良い』と、弁護士に言われた。 


ただ、難しい事は分からないけど後遺障害と言うのがあって、


『下半身麻痺になっているから、保険会社からもらえる金額が、かなりの金額になる」と、言われ、


『その場合の成功報酬は取れた金額の10%になるので、弁護士特約の300万円では足らなくなるかも分かりませんので』と、言われた。


 結婚を約束していた彼女が死んで、俺だけ生き残って、しかもこんな姿になって、

 彼女の両親にも申し訳ない気持ちでいっぱい出し、金なんか1円もいらないから元に戻して欲しい。


 いつも考えている。

  あの時彼女を誘わなければ、1人行っていれば、後5分遅れて迎えに行っていれば、後5分早くに迎えに行っていれば、電話がつながらなかったら、バイクが故障していたら、

 そんな事ばかり考えている」と、

 涙を零しながら話され、何て答えていいのか分からずに黙っていた。


「ごめん。せっかく来てくれているのに、

 毎日少しの時間のリハビリとテレビを見るぐらいしか出来なくて、トイレに行くのも大変で、しんどくて苦しくて、

 

 だけど俺が死んだら母親が一人になるから頑張って生きて行こうと思ってる。

 今回の事故で金は入ってくるだろうけど、母親が年を取って死んでいく時に、こんな俺を残して死んでいく時に、どんな思いになるのだろうかと考える時もある」

 

 何て答えていいのかわからなかったが言葉を捜して、

「そんな事を言わないで下さい。ここに田中さんを頼りにしていて必要にしている人間が目の前にいているでしょう」と、言った。


 田中さんは、作り笑顔をしながら頷き、

「もう直ぐ、ここの病院を退院してリハビリ病院に移る事になるから、リハビリも頑張らないとな」と、か細い声で呟く様に言った。



  田中さんがリハビリ病院に移り、病院にお見舞いに行くたびに、

「早く店を出して俺の分まで頑張ってくれ」と言われて、店を出す決意をして物件を探し、店を出した。


 オープンの日には病院に外出届を出してくれて、車いすでお母さんと来てくれ、凄く喜んでくれた。


 田中さんはリハビリを頑張り、数か月たち季節が変わったが、キセキは起こらず下半身麻痺は治らなかった。

 

 時々病院に外出届を出して、お母さんと店に来てくれ話をした時は、少しだけ明るい表情になっていた様に感じた。


「リハビリ病院の退院日が決まった」と、電話があって、

 

お見舞いに行くと、


「母親の故郷の鹿児島に行って、お爺ちゃんとおばあちゃん達と暮らす。

 下半身は動かないけど、上半身は動くから、何かうまい物を作って販売するよ。

 出来ればネットでも販売するから、松には負けられないからな。

 またこっちにも来るし、松も鹿児島に遊びに来いよ。

 電話も掛けるから、何か困った事があったらいつでも掛けて来いよ。絶対だからな」と言って、鹿児島に行った。


             ・・・・・・・


 少し昔の事を思い出して、翼の方を向いて「え、嘘、からかってない。『嬉しかったんだって』と、言った。


 



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