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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私のにしては読んで貰えてるっぽいやつ

妹に全て譲る姉の話

作者: 大貞ハル

流行りのクズ妹書こうと思ったらこんな事に…

「お義姉さま、このブローチを譲ってくださいな」


「…」


妹のヘレーネは姉であるルーラ = ドレーゼの持ち物をなんでも奪っていく。

このブローチも見つからないように隠しておいたはずだった。


「仕方ないわね。大事にしてね」

「もちろんよ」


ダメだと言っても聞かないし、両親も助けてくれない、いや、そもそも妹は後妻が産んだ娘でありこう言った嫌がらせをさせているのは義母だろうと思われる。父親であるアンドレーアス = ドレーゼ公爵は家のことに口出しするつもりは無いようだった。


小さなテーブルと椅子以外、もはや家具すらまともに残っていない部屋を見回す。

衣服やアクセサリーもどうしても参加せざるを得ないようなイベント事に行くための最低限の物しか与えられず、普段は使用人の制服のワンピースを借りて着ているし、ベッドもないため部屋に併設された使用人用の部屋で寝起きしていた。


「お嬢様…」

「良いのよ…」


6人ほど居た侍女も今は1人だけ。まだ1人残されていただけ良かったと言うべきか。その1人エメリナ = ハンフリーも、ルーラの担当を外されたら屋敷を出るとまで言ったことで残されたのだが。

侍女、メイドと言っても彼女の実家は子爵家だ。体裁を気にする貴族社会である事ない事話されるよりは置いておいた方がまだ良いと言う判断だろうか。いや、わざわざない事を言うまでもない状況なのだが。



そんなある日。

「お義姉さまにプレゼントがあるの」

「あら、そうなの?」

「左手を出して」


ルーラが素直に左手を上げると、不格好な腕輪をガチャリと取り付ける妹。

そんな顔を外ではしないで欲しいと心配になるほど醜い笑顔を浮かべる妹の顔を不安げに見上げると勝ち誇ったように自分の左手に付けられたチェーンタイプのブレスレットを見せびらかす。ブレスレットに取り付けられたチャームの宝石がキラリと光る。魔法道具だろう。


「これは魔法使いを拘束したり、魔力タンクとして利用するための魔道具よ。お義姉さまは魔力が使えなくなって、こちらで利用できるようになるの。素敵でしょ?」

「そうね、ありがとう。大切にするわ」

「…」

一瞬能面のような顔になる妹。

「ふん、つまらない。まあ良いわ」


そう言って部屋から出て行ってしまった。


「お嬢様…」

「あの子は本も読めなければ簡単な呪文も唱えられないのに、魔力なんてどうするつもりなのかしらね…」


そう言うルーラも高位貴族の公爵家の娘である。訓練以外で魔法など使ったことはなかった。



後日、ブレスレットを外して改造しているとバタバタと足音が聞こえてくるので腕に戻す。

彼女の知識と能力であればこの程度の魔道具は子供のオモチャと変わらない。


ノックもせずに部屋に義妹が飛び込んでくる。


「昨日初めて見たのだけれども、お義姉さまの婚約者の方、結構素敵ね。私に譲ってくださらないかしら」

「えっと、それは難しいのではないかしら…」

「あらどうして?どうせお義姉さまを気にいるわけも無いでしょうし政略結婚なのでしょう?」


確かに利益うんぬんもあるだろうが、そもそもルーラを家から追い出す為の計略だ。おそらくこれは義母の入れ知恵ではなく妹の独断だろう。


「そうね、お義母さまに相談してごらんなさい。私が決めた婚約ではないから…」

「そうよね、お義姉さまに言っても意味なかったわね」


そう言って開けっぱなしになっていたドアから駆け出して行った。


侍女のエメリアがそっとドアを閉める。

「…」

「…せっかくこの家から離れるチャンスだったのに。いっそ領地にでも行こうかしら」


ここは王都にあるタウンハウスだ。領地にも屋敷はある。

ただ、向こうには向こうで義理の弟が居るわけだが。



その後順調に婚約は入れ替えられ、義妹と元婚約者が結婚したのでルーラは領地に帰ることにした。

帰ると言っても、両親は領地経営に興味がなく、一緒に生活していたルーラも領地には行ったことがないが。


騎乗した騎士2人の護衛と2頭立ての馬車にルーラと侍女のエメリナ、荷物はトランクが4つ、ルーラの荷物とエメリナの荷物がさほど変わらないと言うとても公爵令嬢の引越しとは思えない状態だった。


領境の森の中で馬車が止まる。


馬車を降りると前後を挟むように騎士や魔導師が立っていた。

護衛や御者もそちら側だ。


「もはや隠す気も無いのですね」

「いえ、隠していますよ。この森は現在何者も立ち入ることは出来ませんので」


隊長と思われる騎士が返した。


「大人しく死んでください」

先頭にいた若い騎士が剣を抜いた。


「それは難しいかと思いますよ」

「お嬢様」

「貴方は少し下がっていてちょうだい」

「…」


「無駄ですよ」

4〜5mは離れていたはずの騎士が一瞬で目の前に迫り、振り上げた剣で斬りつけた。

恐ろしく鋭い一撃だったが、真っ二つになったのは騎士の方だった。


焦った後衛の魔導師達が、隊長が止める間も無く魔法を放ち燃え上がる。


「ダメージ反射のスキルですか…」

「ね、難しいでしょう?」

「しかし、スキルである以上、同等以上のスキルの攻撃を使えば無効化出来ますし、それだけのダメージを出せるスキルであれば、非ダメージ0と言うことは無いのでは?」

「まあ、確かにそうですが…」


スキルと言うのは簡単に言えば魔力を必要としない魔法だ。個人差が大きく、魔法の方が便利程度の能力しか無い場合から、チートと言って良いほど凄まじいスキルまで格差がある。


その点、ルーラのスキルはチート寄りだった。一般的なダメージ反射系スキルは跳ね返せても2割程度だ。攻撃した側が一撃必殺の威力を持っていた事もこの被害の要因ではあったがルーラのスキルが反射するダメージは、元の攻撃力の数倍から数百倍に増幅されるのだった。


「しかも、貴方には攻撃手段がない」


「いえ、このスキルにはこんな使い方もありますのよ?」


そう言うと、腰を落としグッと力を込める。

地面を蹴って前進する。その行為は地面に力を加える事で返ってきた力を移動に利用する事である。

その力をダメージとして受け、数百倍にして足の裏から地面に打ち込む。

それによって超加速した全身に何トンもの空気抵抗が発生した。

当然、それも全て増幅して反射した。


前方にいた主力部隊が衝撃波で吹き飛ばされ肉塊になった。

後方で退路を塞いでいた騎士達はその場にへたり込むか逃げ出して行った。


「お嬢様、お怪我は?」

「大丈夫よ。受けたダメージは全てヘレーネとその血族に譲るようにこの腕輪を改造しておいたから。あの子は私の受けたものは何でも欲しがったから、きっと喜んでくれていると思うわ。ふふふ、これもよこせとか言い出さないかちょっと心配だったのだけど杞憂で済んで良かったわ」

「…」



腰を抜かしてへたり込んでいた騎士を脅し、馬車を操作させて領地の屋敷へと帰ると、義理の弟達と家令が死んでいた。王都の屋敷に連絡を入れると、父親は無事だったが、義母は死に、義妹は瀕死の重症となっていた。いきなり義妹が死んだのでは困るので引き受ける割合が下げられていたのだ。それらの罪も義妹の犯行に見えるように魔道具を細工済みだ。


「あ、魔力が戻ってきたわ。ヘレーネもダメだったみたいね」

「…もう、危険なことはおやめくださいね」

「そうね…」


侍女のエメリナが心配そうに告げる。確かにあの義理の家族達には報復される理由があったが、さすがにこれだけの事をして平然としている主の心が心配で仕方がなかった。


あんな義母でも公爵は愛していたようで、すっかり老け込んでしまい弟の三男を養子に迎え家を継がせた。


「私はね、エメリナが居てくれたらもう他は何もなくて良いと思うの」

「さすがにそれは難しいと思いますが、少なくとも私はお嬢様が不要だと言うまでお側に居させて頂きますよ」

「ほんと? ありがとう」


ルーラは領地の片隅にあった別荘を貰い受け侍女のエメリナと幾人かの使用人を連れて移り住んだ。事情を知らない公爵は婚約のトラブルや家族の死で傷心したのだろうと判断し、特に咎める事もなく援助したのだった。

主人公と侍女の関係はご想像にお任せします(え

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