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ケース2 遠藤浩二 其ノ壱

「......あれ? なんで寝てんだ?」


「どうしたのたろー」


「いや、記憶にぽっかり穴が開いたような感覚が......」


「あぁ、出力上げすぎて記憶飛んだのかな」


「出力!? 何その物騒な言葉!」


「それより、どこから無いの、その記憶」


「うーん、だれかがダンジョン壊滅したってとこらへんまでは覚えてるんだけど......」


「あぁ、そこかー」


「そこそこ」


 その後全能神から説明があった。


 昔々あるところに、五部川という男がいた。

 異世界行ったら本気出すという男が。


 その男は、ダンジョンを生成してから、ゴブリン主体のダンジョンを作った。

 そして数を増やして村を攻めたが、道中会う熊に五部川は殺され、最後の命令を果たすためゴブリンは村を攻めた。


 がその村には強いヒトたちがいて、男一人を殺したこと以外何も得られなかった。


 それで、死んだ一人のために報復に来た村の人々が、拠点もろともすべて潰した。





「っていう男の物語のどこを見たのか知らないけど、「小説を書くぞ!」ってたろーが言ってたからもう一回見たらいいと思うよ」


「ちなみに書いてないのか? データどこにもないけど」


「うん、ダル絡みしてきたから雷で黙らせたら、そのまま記憶失ってるから」


「なんてこったい、先にアイデアくらい書き記しておけよ......」


 悲痛なたろーのつぶやきが響く、そんな一日の始まりだった。





「あ、たぶんこれだわ」


「やっと見つけたの? ダンジョン大丈夫? 前蟲毒がなんだの言ってたけど」


「成功したらあとは適量の資源を定期的に投下で大丈夫だろう。あとこれ成功するなら大迷宮的にしようか」


「まーた大迷宮」


「そ、そんなこと言わんでくれ」


「それで、ダンジョンが大丈夫なのはわかった、小説どこ書くの?」


「言わないぞ? それは面白くない」


「そう。まぁ、楽しみにしてるわ」


「任せとけ。最高傑作に仕上げてやるぜ」


「がんばって」


「ロリの応援が何よりの励みです」


「一回くたばれ」


「あひゃあああ! これ、癖になる!」


「あ、だめだこいつ」


 そういわれ、そのまま全能神に押されて執筆部屋へと追い込まれる。


 ここは一度はいると数時間出られないという、はかどらないと気はただの地獄部屋だ。


 たろーはそれに少し抵抗しながらも、結局入っていった。









 たろーがその部屋から出てきたころ、全能神はウキウキとした表情でたろーを待っていた。

 金髪が頭と一緒にふらふらと揺れ、白い服がフリフリと舞う。


 この真っ白な世界が、何もない世界が、彼女を主として際立たせている、そう感じざるを得ない、そんな雰囲気を感じていた。



「次の面白そうな人! 楽しみだけど二人で見ようと思って待ってた」


「なんてかわいいんだこの野郎......野郎じゃないか」


「とりあえずいこ」


「おう」


 二人は、その人の記録を世界のログ検索をして再生する。

 今度は、五部川のようなクソ野郎じゃないことに期待して。


 なぜ敵を応援するかのように見守るのか。一度は疑問に思うだろう。

 例えヒト種を間引きするとはいっても、自分のダンジョンからすればただの敵なのだ。なぜ見守るのか。

 いつか殺されるとして、自身の作り上げてきたものを壊されるとしても。それでも見守る。

 五部川のようなクソ野郎を再生したとしても、彼らは見るだろう。何度胸糞悪くなろうとも。


 きっと二人は、それが楽しいのだろう。少し二人の楽しいはズレているが。

 たろーはただ、ぜっちゃんが楽しみにしていたから、という理由だけだろう。


 だが、私―――――全能神は違う。


 この男を呼ぶまでに、どれだけの年月が経過しているか。容姿に騙されやすいが、それこそ億などという単位が少なく見えるほどの時間を過ごしている。


 そして世界を作り出し、管理し続けた。

 もう、娯楽という娯楽は試した後なのだろう。


 神との交友関係がなかった私はいつもこの部屋で一人でしかいなかったため、一人オセロが限界だったのは彼には内緒だが。


 そして初めて呼び出した、己の助手的な存在。


 初の試み。初めての話せる相手。


 生まれてから初めての経験が濃密に過ぎていく。

 この日々が楽しかった。ただ、新鮮で、世界に色がついたかのようだった。


 だから。後悔しないよう、全部する。たろーの時間が有限だとしたら。私の時間が無限だったら。


 一人残された時に、私が後悔したくない。

 今を後悔しない。たろーがこちらを向いて、「楽しかったか?」そう聞かれた時に「もちろん、最高だった」そう返せる、そんな時間を。


 だから、すべてやる。面白くなさそうだからと切り捨てない。それが本当に面白くなくたって、きっと最後は笑って「そんなこともあったな」なんて言えるから。




 私は見る。だからたろーも見る。

 そしてそれが思い出になる。


 だから、二人は世界を見続ける。

 それが、期待を裏切ろうとも。





「ふぉっふぉっふぉっ、よく来てくれたの。ここは神の世界、とでも言うべき場所じゃ。おぬしたちにはこれから異世界へと行ってもらって、あることをしてもらう」


「な、なんだってー!!!」


 俺はそう叫んだ。


「ここにいる百人には、ダンジョンを作ってもらう。ルールはまぁ......いろいろあるから、ナビゲートつけとくので、そちらにきくよーに。なお、異論反論はうけつけないので、頼んだぞ」


 そんな投げやりな態度で、俺はあっけなく異世界へと送られた。


「情報受信中――――――完了。」


 そう言った瞬間、目の前にいた妖精が姿を変え、黒髪の少女となった。


「おはよう、私のマスター。私はダンジョンマスター支援用ピクシー第三号」


 無表情の彼女は、その腰ほどまで伸びた髪を揺らし、そう言うのだった。


 正直に言うなら、俺のドが付くほどのタイプの女性だ。

 元の世界にいたら、それこそ何とかして連絡先を手に入れてお近づきになりたいと思うくらいには。

 なのに、その女性が目の前にいても、距離を感じた。


 そうだな......距離を感じない方法。


「マスター、か」


「マスター。何か不満?」


「名前で呼んでほしいかなって」


「わかった。名前で呼ぶ。エンドウとコージ、どっち?」


「じゃ、コージで」


「わかった、コージ」


 美女にそう簡単に名前を呼ばれるとなかなかうれし恥ずかしだが、距離を縮められたことにまずは喜ぶべきなのだろう。


「それじゃ、君のことはそうだな......」


「私はピクシー。名など不要。」


 そう、あくまで仕事上の関係だと言わんばかりの口調でそう話す。

 その圧に押され、何を話そうか忘れてしまった俺は、とりあえずあの自称神の言っていたことを思い出す。


「とりあえず、ダンジョン、作るって言ってたけど、どうしたらいいのかな......」


「それなら」そう言って彼女が取り出したのは一つの握りこぶし大の水晶。普通の水晶かと思えば、そうでもないらしく、ひとりでに光っている。


「何処に作る?」


 その問いに、俺は一考する。

 もちろん、前の世界でダンジョン経営とかダンジョンマスター物は読んだことがある。けれど、そのどれもが特徴を持っていて、一概にこれをすれば間違いない、というのがない。ある人はリスク覚悟で蟲毒みたいなことをするし、ある人はゴブリン無双をしたり、ある人はトラップで戦意喪失させたりと、いくらでもやりようあるからなぁ......


 だが、実際のところ、今いる森林からコアを持ったまま出ていくのも得策ではないだろう。

 何故なら大抵のダンジョンマスターはダンジョンが強くなってからダンジョンの外に出るのが普通なのだ。

 理由としては、ダンジョンを作ることに全リソースを割いた能力値を最初は強いられるために、敵対生物に対して抵抗する術を持っていないというのが一番に上がるだろう。

 稀にただの引きこもりだとか、そんなこともある。ダンジョンのポイントで護身術を身に着けられることも多い。が、コアを守るのに四六時中マスターが抵抗するのも大変で仕方がない。


「そうだ」


「どうしたの? マスター」


「最初を持たせるだけなら、強いやつを一体配置して守護させよう、そして後半、攻めるための兵士を作ろう」


「わかった、ならダンジョン、これで作って」


 そういって渡してきたのは一つのタブレット端末。操作は結構簡単にできる上に、慣れてきたら細かく設定できる、新設設計のようだ。


「それじゃ、コアはこの森林で、形は塔。コアの前に一部屋置いて、ハイ・ベアを配置。そしてウルフを五×三配置。」


「それでいいの」


「あぁ。これが俺の答えだ。結局今を生きようとしたら、後半苦しんで、結局死ぬんだろう。それなら今苦しんで、あとのために投資するって、そう考えたんだ」


「わかった」


 こういうのは従順と感じる人がいるのだろうが、俺にはただの人形に見えて、主人の命令だけをきいて動くロボットに見えて仕方がなかった。


「なぁ、お前も何か意見あれば言ってくれよ」


「? 何故」


「そのほうが良いものが作れるだろう?」


「そう、わかった」


 本当にわかっているのかは正直わからない。

 けれど、きっと彼女なら何かしら考えて、そして言ってくれるだろう。

 そんな確信が、どこからか根拠なく湧き上がってくる。


「それで、マスター、今日はどうする?」


「ウルフに訓練させる」


「訓練?」


「そう、訓練。ウルフって、統率が取れていそうだろ? リーダーを決めて、動きを練習させる」


「そう、分かった。ちなみに自分たちの居住区に回すポイント、残ってるの?」


 そう言いのこし、彼女は塔の中に入っていった。


「なにそれ、聞いてない......」


 悲しい男のつぶやきがただ広い森の音に消されるのだった。


 中に入ると、先ほどまで画面で見ていた光景が広がっていた。

 リッチーが一人で広場を守護し、その前に狼が五体でワンセット、それが三部隊待ち構えていた。


「ウルフたち、これから訓練を行う。リーダー、はいお前、お前、お前。細かい戦闘の指示はこいつを中心に組み立てること。いいな!」


 そう言うと、彼らは「ウォン!」と鳴いた。」


「けっこう知能高いようで驚いた」


「そうなのか?」


「そう。ステータスの知能に依存する」


「そうなのか。そしてやっぱり存在するステータス!」


「ちなみに大抵の村人はスキルだけ知るけど、ステータスは貴族じゃないとこの国では大抵見られない」


「そうなのか、あ、ウルフたち、森で狩りをして、ここで処理すること!」


 そう言うと、ウルフは「ウォン!」と鳴いて森へと動き出した。


「魔物をここで処理してもポイントは微々たるものだけど」


「そうなのか......それは知らなかったな。ありがとう」


「ん......どういたしまして」


 この空間で一人突っ立っているだけの熊であった。

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