ある日――――
「俺を全知神にしてくれ」
「――――わかった」
今の数瞬ですべてを読んだのか、やけに話が早い。
単純に勝負に負けたからしおらしいのかもしれないが。
「ありがとう」
「――――たろーは不器用。私の補佐をして居てもずっと一緒に居られるのに」
やはり読まれていたらしい。
しかし、きっと彼女は読んでいたからこそ、俺の回答もわかるだろう。
――――いや、俺から言ってほしいから、そうやって聞いているのか。
少し待ったものの、沈黙が流れたため俺が口を開いた。
「ぜっちゃんが倒れたとき、俺は無力だった。だから、俺はぜっちゃんに助けられる存在から、助け合える存在になりたいと、そう思った。今こうしないほうが、後悔するだろうさ」
「――――やっぱり、そう言うんだ」
わかっていた、としたり顔をしているぜっちゃん。ここでキスでも挟んでしまえばラブコメとしては完璧だったんだろうが、残念なことに俺はそこまでの度胸は持ち合わせていない。助け合える存在になりたいと言った数秒後に信頼を失ってはわけないだろう。
「全能神の名において命ずる、其方を全知神とする」
その言葉を聞いた瞬間、俺の意識は途切れた。
「ん――――」
「あ、たろー、起きたんだ。どう? 神になった気分は」
あぁ、そうだな......
「そこまで変わらないな」
「そう。でもおかげで世界の処理がそっちの仕事になったから、結構私にも余裕ができた。ありがとう」
「そう言ってもらえると全知神になった甲斐があるな」
いつものような日々。
「ねぇ、たろー」
全能神は問う。
「どうしたぜっちゃん」
いつものように、俺も返すのだった。
数多の世界を管理する二人の物語は、これからも続いていく。
さて、これにて完結となります。
思えばプロットなしで見切り発車した割には、十万字という大台を超えられて驚いています。
これからも、少しずつ表現等々の細かな変更があると思いますが、とりあえず、完結表示にさせていただきます。
それでは、長らく『世界変革のすゝめ ~我が物顔で世界を害すヒト種よ、一回引っ込め~』を読んでいただき、ありがとうございました。
これからも、大山 たろうと作品をよろしくお願いいたします。




