侵攻開始
「やっぱり、そうだよな」
群衆王はそうつぶやいた。
王都北西部、北と西、どちらから攻めようかと戦力分析をしていたところ、遠方にモンスターの群れを確認。特徴からして賭博王だろう。金に物を言わせた破城槌を用意して、一気に突破するらしい。
ポイントが馬鹿ほどかかるモンスターを一気に揃えて攻め込むらしい。
そして王城をみたところで、空に浮かぶ飛行船を見た。あれはたしか......
「創造王が、動き出した」
ゴーレムというのは本来岩の塊、飛行することなんて考えられないと思っていたが、あれを見た日には衝撃が走った。
創造王の秘匿技術。ゴーレムの変形をはじめとする数々の技術は、王国が数十年かけても手に入れることはできないとまで言われている。
討伐したゴーレムを解析しても、何一つ手掛かりはない。
そんな悪魔のような軍勢が、ちょうど反対側から侵入していた。
「それなら、ここから――――」
同じところから入らないのは単純にヒト種から取れるポイントが分散するからだ。
通常よりも倍率でポイントが増える。それなら取れるだけ取っておいて損はないだろう。
「ダンジョンコアを設置した。領地を広げるから、正面に進軍を開始」
ポイントの獲得量がダンジョンの外だと一気に減ってしまう、それは恐らく誰もが知っており、俺自身も経験している。
だからこそダンジョンをそこに即席で設置、そして土地を広げてダンジョン内部とすることで、最高効率でイベントを回す、いや周すわけだ。
「俺たちの未来のため、狩られてもらうぞ!」
群衆王も、続いて動き出した。
一方――――
「行け―! イケメン狩りだ!」
その言動から、誰かはもうお察しである。
そう、死霊王 哀川 愛理だ。
「ダンジョン領域をまだそこまで展開してないですが、よろしいのですか」
執事が確認を取ってくる。が、「イケメンが手に入ればいいのよ! 王都に戦力分散している今こそ攻め時じゃない! 薄幸の美少年......勇者に置いていかれた村人!」と聞く耳を持たず、小さな村を散発的に潰す行動に出た。
死者が増え、濁流のように、どんどんと嵩が増えていく。
「イケメンは逃げませんよ」
「......はっ!」
執事の言葉に、すぐに思いとどまった。
「イケメンと贅沢なお茶、したくはありませんか?」
「......はっ!」
すぐに考え直して、犯した罪を知った。
「そのためには、対価が必要なのですよ。稼がないと、贅沢は許されてないのですよ」
まるで金にがめついホストのように、言葉巧みに誘導していく執事は、もう哀川愛理専門家と呼べるほどにその知識をつけていた。
「なら、すぐにでも広げるわああああ!」
あっさりと誘導に乗ってくれる当たり、彼女は扱いやすい。執事の評価は変わらずじまいだった。
ちょっとずつ、量も増やしていこうと思ってます。頑張ります。




