HP1から始まる初調合
るーじゅが慌てて【安らぎの小川】に戻ると、そこの手前にある採取ポイントで採取をしているあやを見つけた。
「あ、るー。おかえ―」
「あや!大丈夫?」
ちょうど採取を終えたあやが出迎えると、るーじゅはあやに駆け寄ってあやの身体をペタペタと触った。
「うん、大丈夫だよ。ごめんね、やられちゃって」
「そんなのいいよ。こっちこそごめん。油断しちゃった」
お互い謝り合うと、一緒に【安らぎの小川】に入っていった。
「るー見て見て!採取したらこんなの手に入れた!」
そう言ってあやが見せたのは、1m程の一本の木の棒。
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【木の棒】レア度☆☆☆☆☆品質 普通
ただの木の棒。村の子供達がよくチャンバラに使う。
+攻撃力3
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「これ{加工}してさ、釣り竿作れないかな?」
「……あやはいっつもあやだなぁ」
なんだか安心したるーじゅであった。
その時、
『ピロリン』
「ん?フレンドメッセージ?」
「βテストの時の人?」
「うん。なになに……『久しぶりに一緒に狩りに行かないか?』だって……。どうしようかな……」
るーじゅとしては行きたいようだが、あやの事もあるし…という顔をしている。
「行ってきたら?私の事なら気にしないでいいよ」
「いいの?でも……」
その顔には「あや私がいないとまともに戦えないでしょ?」とハッキリと書かれている。
それを見てあやは、
「さっきのウサギでちょっと疲れちゃったし、しばらく{調合}を試してみるよ」
「そう……?でも……」
まだるーじゅは悩んでいるようだ。
あやは悩んでいるるーじゅの背中を押す。
「それに私……るーがいろんな人と触れ合ってくれたら嬉しいかなぁ」
それを聞いてるーじゅはハッと顔を上げた。
そして何かを決心したような顔をすると……
「分かった。行ってくる。あっ、でもその前に……」
るーじゅが取り出したのは、【ツノウサギ】のドロップアイテムだ。
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【ツノウサギの角】レア度★☆☆☆☆品質 普通
ツノウサギの頭に生えている角。ちょっとしたアクセサリーにもなる。
【ツノウサギの肉】レア度☆☆☆☆☆品 普通 鮮度 良
ツノウサギの肉。普通のウサギよりちょっと美味しい。
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「えっ、いいの?るーが1人で倒したのに……」
「お詫びと先行投資。それで美味しいの作ってね。ウサギのシチューとか気になるんだけど……」
「牛乳とか無いからな〜……。【見習い料理人セット】にどれだけ調味料があるかによるけど……串焼きにするとかが精一杯かも」
「串焼きも好き!じゃあ待ってるねー!」
るーじゅは森の外に向かって駆け出して行った。
「行っちゃった……{料理}はあとでにしよう…」
そう呟きながらそこそこの広さがある【安らぎの小川】内で良さげな場所を探す。
すると上流にある小さな滝のすぐそばにテーブルの代わりになりそうな岩を見つけた。
「ここ結構いい場所なんじゃない?さてさて……」
イベントリの中から【見習い調薬師セット】を取り出す。
岩の上には、レトロなお医者鞄がでんっと乗っかっていた。
「えっと中身は……」
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【薬師鞄】レア度☆☆☆☆☆品質 普通
薬師の鞄。薬師の必要な物が全部入っている。
アイテムボックス(調合道具のみ)
【薬師のレシピ帳】レア度☆☆☆☆☆品質 普通
薬師が覚えたレシピを自動的に記録する手帳。
レシピ(【ポーションⅠ】、【マナポーションⅠ】)
【薬研】レア度☆☆☆☆☆品質 普通
薬草を粉末状に加工する道具。使いこなせれば一人前。
【乳鉢】レア☆☆☆☆☆☆品質 普通
薬草をすり混ぜる道具。使いこなせれば一人前。
【ビーカー】レア度☆☆☆☆☆品質 普通
薬草を煮たりするのに使う。使いこなせれば一人前。
【アルコールランプ】レア度☆☆☆☆☆品質 普通
薬草を煮たり焼いたりするのに使う。使いこなせれば一人前。
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それに【ヒルヒル草】3つと【空き瓶】が3つ付いていた。
「結構色々あるなー。まずは【ポーションⅠ】からにしよう。レシピは……」
【ポーションⅠ】(【ヒルヒル草】×3、【水】)
「水は川の水でいいかな。まずは【薬研】で粉末状にして…」
【見習い調薬師セット】に入っていた【ヒルヒル草】を粉末状にし、【水】と一緒に【ビーカー】に入れ、【アルコールランプ】で火にかける。
3分ほど経つと、【ビーカー】の中身は緑色のドロっとした液体になった。
「うぇぇ……あんまり美味しくなさそう……」
あやにとっては、味が何よりも重要な要素らしい。
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【ポーションⅠ】レア度☆☆☆☆☆品質 劣
見習い調薬師が作ったポーションⅠ。レベルが低く、単純に【ヒルヒル草】三つ混ぜただけ。成長の余地あり。
+HP15
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「作り方は合ってるのに……」
ブツクサ言いながら、【空き瓶】にポーションを移す。
これを三度ほど繰り返すと、
『{調合}スキルがUPしました』
「やっとLV2か……先が思いやられるよ……」
作った【ポーションⅠ】をイベントリの中に入れようとすると、あやはイベントリのアイテム覧に【ブルースライムジェル】の文字に目を向けた。
「…………」
あやの右手には【ポーションⅠ】。左手には【ブルースライムジェル】。
そしておもむろに【ビーカー】の方を向いて……
「えい」
投入!
「どうせピーマン30個分なんだし、レアドロップでもまた手に入るよ、星1だし。うん」
そして煮詰める事しばしば。
ドロっとした青緑色の液体がビーカーの中に入っていた。
スライムジェルを入れた影響か、さっきの【ポーションⅠ】よりもドロっとしている。
「うわぁ……」
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【ジェルポーション】レア度★☆☆☆☆品質 劣
ピーマン30個分よりずっと苦いポーション。良い子は食べてはいけない。
+HP20
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回復量は上がっているのだから成功といえば成功だろうが、これはダメだろう。
「と、とりあえず瓶に戻そう……」
そう言って、【空き瓶】にポーションを戻したのだが、足した【ブルースライムジェル】の分のポーションが入らなかった。
「し、収納できない……」
余った分を【ビーカー】ごと収納しようとするが、瓶に入れないとダメなのか『収納できません』と出てくる。
「………」
あやは無言で【木の棒】を取り出し、釣り竿を作ろうとした。
【ジェルポーション】のことはいったん忘れることにしたようだ。