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Utopia・Online〜開始初日で魔王になるエクストリームプレイ日記〜  作者: オタケ部長
HP1から始まる鉱山都市
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HP1から始まる領主謁見(後)

時が経つの早過ぎん……?



今年までには最低二話くらい投稿したいと思います


「ギルド職員のマーサから、君が複数のスコシ(だけ)を持ち込んだという話を聞いた」


 神妙そうな顔で話す伯爵。何かまずかっただろうか……。もしかしてスコシ(だけ)はあまり流通させてはいけないものだったりするのだろうか?


「えーと、何かいけなかったですか?スコシ(だけ)って持ってるだけでやばい的な……」

「いえいえそんなことはありません。もしそうなら依頼した(わたくし)もタダじゃすみません。あや様が今思っているようなことはないかと」

「その前に少し、この街の話をさせてもらおう」


 そう言って伯爵が取り出したのは大きな森と平原、そして街が描かれた地図。ファース近辺の地図だ。


「まだこの世界にきたばかりの異界人であるあや殿は知らないだろうが、我がファースはチュートリア大森林から採取できる素材を王都などに卸すことで収入を得ている。だが我々が取り扱う素材は数こそ多いが希少性に欠ける。他の地域でも採取できるし、レア度も低いのだ」

「買い叩かれることこそありませんが、あまり高値での取引ができません。そのためファース領の財政状況は悪くもありませんが誇れるほど良い訳でもありません」

「えーと、つまりもっと儲けを出したいってことですか?」

「まあ恥も外聞もなく言うとそういうことだな。例えばチュートリア大森林から大規模なモンスターの氾濫が起こり城壁が壊れた場合、城壁の修理や領民の補填に回せるほどの貯蓄はない。そういったことが起こる前に財政状況を改善する必要がある。そこでそれだ」


 エリックが持っているスコシ(だけ)を指さして続ける。


「ただでさえ希少なスコシ(だけ)が多数発見された。仮に群生地があり、スコシ(だけ)を安定して採取できるとすれば我が領の財政状況は一気に改善することができる。そこであや殿にはこのスコシ(だけ)を入手した経緯を教えて欲しい、というのが本題だ」

「無論情報料もお支払いします。最悪、あとで伯爵に倍にして返してもらうことを条件に私のへそくりからも出しますので」

「……と、言うことだ。いきなりこのようなことを言われても困るだろうが、返答を聞かせてもらいたい」

「なるほど……」


そう言われ顎に手を当て考え込むあや。一見涼しい顔をしているが……内心はめちゃめちゃテンパっていた。


(どどどうしよ!?群生地なんてないし、『清く正しく毒魔法!(あの本)』見せる?いやまだ正直に話して良いのか悪いのか……)


 ゲーム初心者のあやにとっては、何が得で何が損か分からない。ここにるーじゅのような熟練者が居れば話わ変わっただろうが、無いものは無い。


 ただここにはゲーム熟練者はいないが、長きを生きた元魔王がいる。


『これは……あやよ、今から私の言うとおりに喋れ』

(エバー?)

『私の声はお前とさおにしか聞こえないからな。考えがある。任せろ』

(わ、わかった)


「……分りました、お話します。ただ群生地を見つけた訳じゃありません」

「そうなのか?であれば一体……」

「これです」


 エバーの指示通りに取り出したのは、{毒魔法}が込められた魔書『清く正しく毒魔法!』。


「この魔書の込められている魔法は{毒魔法}。これの初級魔法の“毒集め(ポイズンコレクト)”という魔法で【ドクドク茸】と【マヒマヒ茸】の毒抜きをしたら【スコシ(だけ)】になったんです」

「なんだと!?」

「あや様。こちらで実際に試して頂けませんか?」


 エリックにどこからか取り出した【ドクドク茸】をあやに手渡す。何で主人の近くで毒キノコを持ち歩いているのだろう、怖。


「冒険者時代は毒とかで一撃必殺を狙うスタイルでしたからな~。簡単な毒の調合は自分でできるようにしているのですよ」

「おい私はその話知らんぞ。あや殿が帰ったら詳しく聞こうか」

「……“毒集め(ポイズンコレクト)”」


 気を取り直して渡された【ドクドク茸】を【スコシ(だけ)】に変える。抽出した毒液も【空き瓶】に入れておいた。


「あや殿を疑っていた訳では無いが本当のようだな……」

「抽出された毒液も強力ですな。しかもそれを可能にするその魔書……一級魔書ですな」

「一級魔書?」


 今の疑問はエバーの指示ではなくあや本人の疑問だ。


「使用者に魔法スキルを与えるアイテムの総称を『魔書』と呼びます。『魔書』には3つのランクがありまして、三級魔書は使用者に魔法スキルを与えると効果が失われます。二級魔書は使用者に魔法スキルを与えると{○○魔法強化}のようなスキルに変化します。そして一級魔書は使用者に魔法スキルを与えても効果が変わらず、他の者にも魔法スキルを与えることが可能になります。二級、三級の魔書なら人の手でも作り出せますが、一級となりますと現状遺跡やダンジョンでしか発見されませんな」

「じゃあこれはとってもレアな物なんですか?」

「それはもう。付け加えるなら{毒魔法}は(わたくし)でも聞いたことない、おそらくレア属性。レア属性の一級魔書となりますと……(わたくし)と伯爵の財布を合わせても到底払いきれない額になるんじゃないでしょうか?」

「うっそ……」


 こんなふざけたタイトルの本にそこまでの値が付くとは思ってなかったあやの顔は途端に青ざめていく。


「まあ魔法使いでもない(わたくし)の見立てですので、一級魔書じゃないかもしれないが、お高いことには変わりないでしょうな~」

「つまり買い取りは難しいか……」

『あや、今だ』

(あ、うん)

「私としてもせっかく手に入れた物を譲るには惜しいと思ってて……ですので『貸与』って形にしませんか?」

「となると……譲るのではなく、貸してもらえるということか?」

「これが一級魔書であることが前提ですけど、毎月一定額いただければこの魔書をファース伯爵に貸します。確か教会では神の名の元に約束事を必ず履行させる誓約書?が作成できるんですよね?それを使って契約しませんか?」

「……どう思う?」

「その一定額がいくらかによりますが、だいぶ譲歩してくださっているかと。あや様はどのくらいの額をご希望ですか?」

『あやよ、さっき言った通り強気に行けよ』

「……これからファース領のスコシ(だけ)関連で得た利益の……4割ほど」

『ばっかお前!強気に7割で行けって言ったろ!』

(流石に半分超えは取りすぎだって!)

「4割か……」

「あっ、難しそうなら2割でも……」

『この状況でさらに値切るだと!?』

「さすがにそれは……細かく煮詰める必要はありますが、5割ほどが適切でしょうか?ただ商売が軌道になるまでは支払いを待って欲しいのですが……」

『!おいあや。“あれ”を出してゴニョゴニョ……』

「えと、ならこれもお付けします!」

 

 あやがエバーの指示で取り出したのは[外道術師の研究所・食糧庫]で回収した【ドクドク茸の原木】と【マヒマヒ茸の原木】だ。


「これは魔書と同じ所にあった茸の原木です。これがあればスコシ(だけ)の生産もやりやすくなるんじゃないでしょうか?」

「確認します……ふむ、たしかに。旦那様、これらの原木はこの場で買い取り、魔書に関してはやはり5割が適切かと」

「なるほど……原木の相場は?」

「市場に出回ったことがないので正確なことは言えませんが……スコシ(だけ)のことを考えると1つ80万ほどでしょうか?」

「では合わせて200万だな。これは事業が軌道に乗る前に、まともに支払いが出来ないであろうことも踏まえてだな。もろもろに関する契約書も明日までに用意しよう。構わないだろうか?]

「大丈夫です。私の方もまだ{毒魔法}修得できてないので。明日また来ればいいんですか?」

「ああそれで構わない。今日はこちらの急な要望に応じてもらい、感謝する」

「ありがとうございました。ささ、宿までお送りいたします」


 こうして伯爵との謁見を無事に終えることができた。それもエバーのおかげで穏便かつかなりの利益が入る最良の形で。ついでにクッキーとお茶っ葉も貰えた。


「無事に終わってよかった~」

『何が無事か!ギリギリまで絞り取れただろうに……』

「でも7割はやり過ぎだって……」

『まあまあお嬢にはお嬢のやり方があるんすよ』

『だがこれからの活動のための充分な資金を確保できたのに……』

「別にそれは今日今すぐじゃないても良いじゃない。私達の冒険はまだ始まったばかりなんだし」

『それもそうだが……』

「それにあんまり追い詰めても爆発しちゃうかもでしょ?人にお願いするコツは恐怖という鎖ではなく恩という首輪を自分からつけて貰うことだよ」

『お、おう……』

『ひぇ』

「って前に読んだ漫画のキャラが言ってた」

『今のは魔王っぽかったぞ』

「褒められた?まあ要は私達らしく無理のないペースで行こうって話ね」

『とりあえずは分かった。だが今日は焦った方が良いんじゃないか?{毒魔法}も修得のための茸は使い切ってしまっただろう』

「あ、買うなり取りに行くなりしないといけないのか……」

『まだ宿に残っているようでしたらルシアとアレス(あの二人)を誘うのはどうすか?』

「あー良いかも。採用」

『あざす!』


そうして3人であれこれ予定を立てながらルシアとアレスと合流すべく、宿屋に戻っていった。

次回は本編とは違う感じにします。


それと用語解説回みたいなのもそのうち用意しようと思います。よく分からない単語などがあれば教えてください。

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