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Utopia・Online〜開始初日で魔王になるエクストリームプレイ日記〜  作者: オタケ部長
HP1から始まる鉱山都市
41/56

HP1から始まる【スコシ茸】

食レポ難しい……


世の異世界飯作家は偉大だよ……


 [外道術師の研究所・食糧庫]


 この研究所最後の部屋である食糧庫。そこであやは少し落ち込んだ様子で棚を物色している。


『おいあや。何を落ち込んでいる?』

『具合でも悪いんですか?』

「いや……さっき{窃盗}ってスキル取っちゃって…」


 たしかにやってることはコソ泥だが、ハッキリと告げられると来るものがある。今もごそごそと棚の中を漁っているので否定できないのがまたつらい。


 槍持ちの骸骨戦士(スケルトンウォーリア)に使ってみると、一瞬で槍を盗むことができたので(骸骨戦士(スケルトンウォーリア)は「カタッ!?」とびっくりしてた)有用であるのが憎い。


「それにしても食糧庫もあるのか……当然と言えば当然?」

『だな。あまり公に街に出入りできる身分ではなかったようだしな、ここの主は。自給自足は必須だったのだろう』

『その割には干し肉となんかの種しかありませんよ。こんなものでお腹膨れるとは思えないですよ』


 棚には崖を登って自分で狩って加工したであろう【群集猪(クラウド・ボア)の干し肉】と【パンの実の種】や【塩の茎の種】などよく分からないものばかり。


『ひょっとして魔法植物じゃないか?』

「魔法植物?なにそれ?」

『読んで字の如く魔法でできた植物のことだ。基本種のまま持ち運びができ、使う時は土に植えて魔力を流せばいい。名前からパンと塩を作る植物だろうな』

「すごい!」


 なるほど。これがあればたしかに食事には困らない。携帯食糧の頂点と言っても過言ではないのではなかろうか。


『繰り返し使えるが限界はあってな。5回か6回使うと灰になって消えてしまうぞ』

「それでもすごいよ!どうやって作るの?」

『そこまでは流石に……魔女が作ると聞いたことがあるが……』

「魔女……」


 あやの頭に箒に跨って飛ぶとんがり帽子の魔女の姿が浮かぶ。なるほど、このゲームならたしかにいそうだ。【クッキーの葉の種】とか魔女っぽい名前だし。


「弟子入りしたら教えてくれないかな」

『無理矢理作らせれば良いのではないか?魔王だろう?』

「私はフレンドリーな魔王になりたいの!」


 あやは魔法植物の種のほかに酒などのアイテムも入手した。


 次は棚の横の扉。小部屋と通じているようだ。


「冷蔵庫かな?」

『冷たくはないですよ』

『開ければわかるだろ』


 中にあったのは一本の丸太。ただ所々に異物が生えており……


「これって……【ドクドク茸】と【マヒマヒ茸】じゃん。なんで毒キノコが……」

『おお。最高の食材ではないか。かなり贅沢をしておったようだな』

「え?」

『うん?』


 毒キノコを食材と称するエバー。そんなエバーの正気を疑うあや。


「いや、エバーアンデットだから食べれたかもだけどさ〜」

『生身の頃も食えたわ。無毒化したらすごく美味しいんだぞ』

「へーどうやんの?」

『{毒魔法}だな。魔導書あったろ?』

「あぁ、あれ!」


 書斎で見つけた【清く正しく毒魔法】はこのためだったのか!


 ということで研究所の外に出て実食。外で食べた方が美味しいし、毒キノコが生えてた場所で食べる気は起きなかったからだ。あの部屋にあった【ドクドク茸の原木】と【マヒマヒ茸の原木】は回収したが。


「えっと……“毒集め(ポイズンコレクト)”」


 試しに【ドクドク茸】に初級の{毒魔法}を使ってみると、みるみるうちに毒が抽出される。紫の毒々しい色合いだったキノコは、美味しそうなクリーム色になった。


 集めた毒は研究所にもあった【空き瓶】に入れておく。アイテム名は【ドクドク茸の抽出毒液】。対象を《毒Ⅲ》にするなかなか強力な毒だ。


 そして毒が無くなった【ドクドク茸】は【スコシ(だけ)】というキノコになった。詳細は以下の通り。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 【スコシ茸】レア度★★☆☆☆ 品質 普通

 5年に一度採れるか採れないかと言われる幻のキノコ。とても美味。食べたらこれ以外のキノコが雑草に見える。

 +HP50

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「なかなか豪語するな……」

『まあそれくらいうまいぞ。ただ塩かけて焼いて食うだけでもうまい』

「ほほう……?」


 毒抜きした【スコシ茸】をあや、さおピコ、くろピコの分の3つ用意する。


 ーージュー……


 ただ塩をかけてフライパンで焼いてるだけでもいい香りが漂ってくる。悲しいかな、この香りを味わえる嗅覚を持つ者はあやの他にいないのだが……。


 皿に移し、さおピコとくろピコが食べやすいよう3等分にする。ナイフを入れた瞬間、肉汁のように透明な汁が飛び出た。なかなか美味しそうだ。


「いただきまーす」

『いただきます!』

(ポヨポヨ)


 そして各々の口(さおピコは釣り針)に運ぶ。


『「!!」』


 そして衝撃が走った。さおピコの竿はピーンと真っ直ぐになり、くろピコも伸びる。


「美味しい!」

『うまいっす!』

(ポルポルー!)

『そうだろう、そうだろう。私も食べたいぞ』


 エバーがあそこまで自信満々に言ったのがよく理解できる。たしかにこれは美味い。キノコの王様と言っても納得してしまう。


 弾力はある。なのに歯を入れた瞬間繊維がほろほろと溶け、旨味の詰まった汁が溢れてくる。味は椎茸に近い。だが旨味が段違いだ。


 早くるーじゅにも食べさせてあげたい。あやはいいものを手に入れたと喜んだ。



次回、あやピコ。崖下をたつ

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