HP1から始まる初期装備
「あや、装備買いに行こう。1000ユートあれば武器と防具が買えるはず」
「その辺は分からないからるーに任せるよ」
ログインボーナスを確認した2人は、アイテムをイベントリに収納した後、武器屋に向かって広場を出た。
るーじゅの話によれば、この通りの先に【駆け出しの店 スターター】と言う武器屋があるらしい。
ゲームの中なのに目に映る光景はどれも現実そっくりで、あやはキョロキョロと周りを見回してしまっていた。
「きゃっ!」
「!すみません!大丈夫ですか⁉︎」
そのせいだろうか、通りを歩いていると、あやが別のプレイヤーにぶつかって転んでしまった。
幸いにもダメージは無かったのであやは気にしていないのだが、相手はそうではなかったようだ。
「気にしないで欲しいです。私も周りよく見てなかったので」
「そ、そうですか……。あの、すみませんでした」
その女性プレイヤーはしっかりと頭を下げるとその場を去っていった。
「あや大丈夫?」
「もうるーも……大丈夫だって」
「そっか……。あのプレイヤー、《勇者》だね」
「勇者?」
「そっ、《勇者 カイン》。βテストでかなり有名だったの。『ロール装備』も手に入れたらしいし」
「ろ、ロール?」
「《UO》の設定でね、大昔勇者と魔王が戦ったんだって。その勇者の魂が宿った装備を持ってるんだって」
「へー、それってすごいの?」
「すごいもすごい。最高レアリティだし、装備の《スキル》もすごいんだって。噂によると魔王の魂が入っている装備もどこかに眠っているらしいよ」
「へー」
「いつか私が見つけるんだから!でもその前に初期装備からだけどね。着いたよ」
そうして歩いているうちに、【駆け出しの店 スターター】という看板の店の前に着いた。
「さーて、βテストでは【初心者の剣】と【初心者の革鎧】で1000ユート使い切ったんだけどな〜。安くなってないかな〜。」
「あっ、るー見て!ここに『セット商品』ってあるよ!」
「ん?セット?そんなのβテストではなかったけど……ってえぇ⁉︎」
突然るーじゅがあやの言った棚を見て大声を上げた。
「ど、どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるかい!なにこれ破格だよ!」
るーじゅが手に取ったのは【見習い剣士セット】というアイテムだ。
「【初心者の剣】と【初心者の革鎧】。それに【ポーションⅠ】が2個入っててお値段だったの500ユート!これは買うしかない!」
「そ、そう。私はどれにしようかな〜。【見習い魔法使いセット】かな?」
「あや魔法系のスキル取ってないじゃん。それよりもこっちの【見習い盗賊セット】にしたら?革鎧に【初心者の短剣】が付いたやつだよ」
「じゃあそれにしようかな」
あやは【見習い盗賊セット】を手に取ると、るーじゅと共にカウンターに向かった。
「ん?あぁ!」
「何、あやどうした?」
「ここに【見習い料理人セット】と【見習い裁縫師セット】が売ってる…」
あやの見る先にある棚には、【見習い料理人セット】と【見習い裁縫師セット】がある。ちなみにその隣にはあやのログインボーナスの【見習い調薬師セット】が置いてある。
「これ……両方とも250ユート。安いね」
「欲しいけど…。0ユートになっちゃう。どうしよう?」
「本当なら残った500ユートでポーションとか買ったほうがいいんだろうけど……あやのHP1だし、魔法系のスキル無いし、ポーション買っても意味ないし。買っちゃえば?」
「………よし、買おう」
そう言ってあやは【見習い盗賊セット】に加え、【見習い料理人セット】、【見習い裁縫師セット】を購入した。
ちなみに、なぜ【見習い料理人セット】と【見習い裁縫師セット】が250ユートだったかというと、【見習い料理人セット】は《Unknown》の《料理》スキルが必要になるうえ、それほど重要視されないため。【見習い裁縫師セット】はセットに入っているアイテムの数が少なかったからである。
「さーてあや。装備持ったね?」
「はい、隊長!準備万端であります!」
2人ともそれぞれのアイテムを装備し、街の出口にやってきた。
「それでは冒険に〜……しゅっぱーつ!」
「いえ〜い!」
そうして二人は始まりの大地を駆けて行った。
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