HP1から始まるスライム召喚
一月中
30000pv
狙いたい
ブックオフたのしっ
「なにそれ?」
さおピコが持ってきたのは古びた本。表紙も擦れてとても読めるものではない。
『部屋の隅に落ちてました。なんかの魔導書ではないかと』
「ふーん……ゴホッゴホッ!」
『お嬢!』
受け取ると埃が舞う。思わず咳き込んでしまった。ゲームとは思えない再現度だ。
『大丈夫ですか!』
「平気……埃吸い込んじゃっただけ」
気を取り直して本を開いてみるが、書いてある文字が読めない。あやの知る言語じゃない。ちなみに《UO》の文字はプレイヤーにも分かるように日本語で書かれている。
「これ何の本?」
魔法陣があることから魔法関係の書物だと思うが……アイテム名も【本?】となっているだけで、{鑑定}を使っても何の本かわからない。謎だ。
『ほう……これはこれは……』
エバーが何かに気づいたようだ。あやの胸元で左右に揺れる。
「エバーこれ読めるの?」
『まあ一応私が生きてた頃の言語だからな。あやが理解できんのも無理もない。この言語を取得し、なおかつ召喚術の知識もないと常人では理解できん』
『ってことはこれ召喚の魔導書ってことですか?』
『うむ。ここには【ブラックスライム】を召喚する方法が書かれている』
「ブラックスライム……」
あやの脳裏に浮かぶのは、極光を放つブラックスライム。触手を放つブラックスライム。黒い酸を放つブラックスライムなどなど……。
全体的にいい思い出がない。
「焼き捨てない?」
『アホ言え。むしろやるぞ。今のあやに必要だろう』
「えー!?でもスケルトン召喚したよ?」
『だがレベル低いし、火力が足りない。ブラックスライムならその点合格だ』
「言うこと聞かないかもだよ?呼び出した人頭蓋骨だけになってたよ?」
『おそらくだが、素材の問題だろう。この本には【スライムジェル】と【スライムの核】が必要とあるが、かなりの数が必要になる。その術者は数を揃えるために、スライムの種類を気にせず集めたのだろう。そのせいで、術が安定せず、ビッグブラックスライムが出てきてこんな有様になったのだろう。だがあやは、ビッグブラックスライム倒した時の素材があるだろう?』
「まあ、【ブラックスライムジェル】と【ブラックスライムの核】ってあるけど……」
『ならあやに逆らうことはないだろ。それに、一度は倒した相手だ。いざとなれば、“カラミティバベル”お見舞いすればいい。ご丁寧に魔法陣まで描いてくれてるのだ。いい具合に利用すればいい』
「うーん……」
相変わらずエバーはあやの説得がうまい。話を聞いてて反対する理由がない。
結局あやは、部屋にあった魔法陣の中心にイベントリから取り出した核とジェルを置き、魔法の発動をすることにした。ちなみにジェルは50個ほどあったのだが、いきなり全部は怖いので3個くらいにすることにした。
『ある程度なら私も補助しよう』
『私も貯めてる魔力出します!』
「お願いね。私も……{死を望む者}!」
あやの体から黒い魔力が放出され、そのままエバーの補助によって魔法陣に流れ込む。
魔法陣は光を放ち、【ブラックスライムの核】と【ブラックスライムジェル】が徐々に混ざり合う。
『順調だな』
「そうだね。ん?HP足りないな。ふんっ」
【邪炎ノ外套】の邪気でHPを回復させようとするあや。
次の瞬間、魔法陣の中心が強い光を出し、周囲にあるものを吸い込み始める。
「うぉぉぉぉぉ!なして!?」
『分からん!あや何した!?』
「知らない!私知らない!」
「ギュォォォン!!」と風が鳴り、周囲にある骨と瓦礫と骨がどんどん中心に吸い込まれ、その勢いは留まるところを知らない。
その時、あやのイベントリから残りの【ブラックスライムジェル】が勝手に出てきて、吸い込まれる。
「なんでー!?」
光は徐々に黒くなり、吸い込みの勢いも落ちてきている。
そして全ての【ブラックスライムジェル】が吸い込まれると……
(ぽよよーん)
光が収まり、出てきたのは黒いスライム。
「えっと……成功?」
『分からん……そもそもこんな現象起こるはずがないんだが……邪気を使ったからか?』
(ポヨポヨ)
黒いスライムはあやの足元に近付き、まん丸な瞳であやを見上げている。
「……かわいいからよくない?」
『いいわけあるか!不可解な点が多いと言うのに……』
あやは黒いスライムをなでなでした。ぷるんとした触り心地がとてもいい。
そして黒いスライムは【ブラックスライム?LV1(名前をつけてください)】となっている。
「……名前いるの?」
(プルプル)
「そっかそっか〜」
『はっ!?名前ー!?ちょっ、ちょっと待てあや!』
「いいじゃん名前くらい。えーと……」
『だから待てとーー』
「じゃあ『くろピコ』ね」
(ポヨポヨー!)
『まてぇい!』
ブラックスライム?は嬉しそうに踊り、跳ねるのを繰り返した。
そして段々と黒い体が、なおだんだんと深い漆黒になり、まんまるな瞳は赤く変色する。
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【くろピコ】LV1
種族 邪悪粘体
状態 従魔 (あやピコ)
HP-50
MP-30
攻撃力-100防御力-50敏捷値-100
器用さ-20精神力-50知力-50
《スキル》-{物理耐性}{魔法吸収}{咆哮}{毒生成LV1}{捕食吸収}{変形}{巨大化}{触手LV1}{邪纏}
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「くろちゃん強いねー♪」
(ポヨポヨ〜♪)
『あやぁぁぁぁ!』
エバーがすごい声量で念話してきた。かなりお怒りのようだ。
『あや!お前は自分が何をしたのかわかっているのか!?』
「何って……名付け?」
『あのな!魔物が名前を持つというのは、他の魔物とは違うという、言わば上位種になるということだ!それをそんなあっさりと……』
あまりの怒りのせいか首元でプルプルと震え出すエバー。
『最高ではないかー!生まれたてで名前を持つほど素質のある魔物を従えるとは!やはりお前は魔王にふさわしい!』
まったくお怒りではなかった。
「あ、怒ってなかった」
『無視したことは怒ってるぞ』
『どっちですか……』
ホッとするあやに、いまだ震えてるエバー、呆れたように釣り糸をくねらすさおピコ。
その一人と一個と一本の様子を、くろピコとスケルトン達は静かに見守るのだった。
7つの大罪にも匹敵すんじゃね?
冬休みの宿題は踏み倒したー!




