HP1から始まるログインボーナス
かつてないペースで小説が書ける……
「……ハッ!ここは⁉︎」
「あや!本当にごめん!」
あやが死亡してから15秒後。ログインした場所と同じ位置に白い粒子が集まり、あやは復活した。
「えっと『死亡しました』ってなったんだけど……あれ?死んだの、私?」
「ごめん……自分が攻撃力上げてるの忘れてた……。次は気をつけるわ…」
るーじゅも、まさかポカポカしただけで死ぬとは思わなかったのだ。仕方がない。
……余談だが、運営の方もサービス開始早々に死亡者が出るとは思ってなかった。今頃必死になってシステムを見直しているところだろう。
2人は広場の端にあるベンチに座った。
「えっとさー。あやは何でステータスこんなのにしたの」
「とりあえず10ずつ割り振ったんだ。MPは多くしておけば色々できるかなぁーって思って…」
「…99にしたの?」
「うん」
「………あちゃぁ…」
「あちゃぁ⁉︎」
「だからと言って何でHPを1にしたんだよー!すぐに死ぬじゃん!」
「……えっ」
慌てて自分のステータスを確認するあや。
数秒後……心配になるほど顔を青くする。
「……あとでSP使って{体力増強}スキル取ろう」
「……うん」
「それで…このスキル構成は何?何で{料理}取ったの?」
「ゲームの中だしいくら食べても大丈夫かなって」
「{演奏}は?」
「楽器とか弾いたことなかったし、やってみたいなって」
「{水泳}は?」
「海無し県だから思いっきり泳ぎたいなって」
「{釣り}は?」
「同じく海無し県だからって」
「……{サバイバル}」
「キャンプとかしたいなぁって思って」
「………」
全てを聞いたるーじゅは俯いてしまった。
いや無理言って誘ったのは私だし、サポートするって言ったのも私なんだけど……これは流石に……と言いたいような顔をしている。
「どうしたの?」
「いや何で《戦闘系スキル》取らなかったの?」
「いや戦うの怖いじゃん。なるべく戦いたくないし」
「{水泳}とか{釣り}とか{サバイバル}とか取ったらいやでも戦闘しなくちゃだと思うのは私だけかな?」
「えっ?」
「川とかあるのって街の外にあると思うし、街の外に出たらモンスター出るよ。キャンプも街中では出来ないだろうし」
「……え〜…」
「……せ、戦闘になったらサポートするから!あやはもう5個の《生産系スキル》を使って頑張って……って何で{魔力操作}のスキル取ったの!」
「魔法覚えるのに役立つかなって」
「いや魔法系のスキル取って一度魔法使ったら勝手に取れるよ!」
「えぇ⁉︎」
「何でそれだけ《戦闘系スキル》取ったの……」
「えっ、{魔力操作}は《Unknown》の覧にあったんだけど……」
「えっ、何で⁉︎《戦闘系スキル》だと思ったのに……」
ひとしきり悩むとるーじゅは結論が出たのか手をポンと合わせた。
「……まぁ悩んでも仕方ないか。あ、そうそう。私2時間経ったらログアウトするね。晩ご飯食べなきゃ」
「20時に?ちょっと遅くない?」
「いや19時……ああもしかして知らない?このゲーム内では時間加速していてね、ゲームの2時間が現実での1時間になるの」
「えっ⁉︎そ、そうなの?」
「そうよ。メニュー画面開けてみたら?」
言われるがままにメニュー画面を開くあや。
それの一番上には{4/15 18:07}と{4/15-2 6:14}と表示されている。
「左にあるのは現実の時間。右にあるのは《UO》の時間。一日が二回もあるから{4/15-2}ってなるの」
「へーって今日私晩ご飯食べたから現実の22時までゲームできるから……」
「8時間も⁉︎羨ましいなあー」
「ん?この横の箱のアイコンは何?光ってるけど何だろう?」
「んー確かログインボーナスだったかな。私のも光ってるし。押してみよっか」
「うん!」
「せーの」で押すと2人の前に光の粒子が集まり、それぞれアイテムになった。
「私のは【ベータチケット】?βテストと同じLVになったらその時使ってた装備と交換できる……今は駄目かぁ、当時はLV49だったし…頑張ろ。あやは?」
「……【見習い調薬師セット】」
初めてのアイテムが、なんだかお得感溢れる物だったからか、あやは微妙そうな顔をした。